ジャドゥゴダ・ウラン鉱山、ゆっくりと蝕む暴力

5.Bhatin_interviewing women
バーティン村の女性の話を聞く著者

アンエリス・ルアレン(カリフォルニア大学准教授)

「映画『仏陀の嘆き』の中で、5〜6人の男がイエローケーキ(ウラン粉末)の入ったドラム缶を素手で押していたシーンを覚えているか?」 ジャムシェドプールで私を迎えにきたアシシュがこう聞いてきた。頷きながら私は彼らがサンダルしか履いていなかったことを思い出していた。「彼らはみな死んでしまった。何らかのがんで死んだんだ」アシシュはつづけた。私は呆然とした。

アディヴァシ(インド先住民族)の若き活動家で写真家のアシシュ・ビルリーは、私のジャドゥゴダ滞在中のガイドを引き受けてくれた。地元の人々ががんで死に追いやられた、という彼の話はほんの序の口でしかなかった。その後、私は恐ろしい事実をとめどなく聞くこととなった。

2017年3月、私はジャールカンド州東部のジャドゥゴダを訪れた。1967年に操業開始したウラン鉱山は、インドで最長操業中の鉱山だ。ジャドゥゴダのウラン鉱床の品位は極めて低く、精錬で、大量のウラン残土と鉱滓(低レベル放射性廃棄物)が生み出される。

専門家たちは、この鉱山の放射性廃棄物やウランの移動に関するずさんな安全基準と、周辺住民への著しく無頓着な保護対策に言及し、「鉱山を運営するUCIL(インド・ウラニウム社)は、ゆっくりとしかし確実に地元住民を蝕んでいる」と非難している。

ジャドゥゴダの小学校。外壁はウラン残土を再利用して作ってある

ジャドゥゴダ鉱山は、現在、一つの露天掘りを含めた7つのウラン鉱山に拡大中で、UCILは、鉱山、精錬所、鉱滓処理などを管理運営し、周辺住民に対し「何ら健康リスクはない」という態度をとっているが、村人たちは彼らの土地がゆっくりとだが大規模に破壊されつつある、ということを記憶してきた。

直近では今年2月、ジャィヘルタンとして知られる、儀式祭壇を取り囲むように生えている聖なる沙羅双樹の小さな森が、近くの鉱滓池から流れ出た汚染水で死に絶えてしまった。ジャィヘルタンは、アディヴァシの数ある儀式の神髄、つまり祖先が大地との約束を結んだ象徴的な場所として、彼らを大地と結びつける中心である。アディヴァシの伝統規範によれば、ジャィヘルタンに生える木を1本でも傷つけたものは厳しく罰せられることになっており、いわんや全てのジャィヘルタンの木立を殺したとなれば、それは伝統規範の域を超えてしまっているという。

1990年代から村人たちは、3本足のヤギが生まれたこと、不妊や血液疾患の牛など、家畜被害を報告してきた。家畜のゆっくりとしかし確実な被害を目撃し、村人たちは自分たちの身体が鉱山や精錬所の汚染の影響でどうなってしまうのか不安になっていった。先住民族の権利擁護団体であるJOAR(ジャールカンド反放射能同盟)は、ウラン鉱山が人体へ及ぼす影響の調査を始めた。

JOAR創立者の1人、ガンシャム・ビルリーはこう説明した。「UCILの鉱夫として働いていた父は、1984年に突如肺がんによって死亡し、母も1991年に肺がんで死亡した」。ビルリーは、母はウランの塵がこびりついた父の制服を洗濯していたことが原因でがんになったのではと疑うようになった。UCILの責任を追求するべく、ビルリーは仲間の先住民族権利活動家ドゥムカ・ムルムらとともに1998年にJOARを設立した。

悲惨なことに、UCILの医者たちは意図的な誤診・誤治療を鉱夫たちに行ない、肺がんやその他のがんに苦しんでいる彼らを若くして死に追いやっていた。

1995年のジャワハラール・ネルー大学の研究者による調査によると、周辺に暮らす女性の3分の1は不妊、5分の1は流産し、半数は不規則な生理周期がみられたと報告されている。

1996年1月、第3鉱滓池建設のための道路工事のため、何の前ぶれもなくチャティコチャ村というアディヴァシの村の30数軒がブルドーザーで破壊された。そこに暮らす家族たちは補償も移住も用意されず、引き続き汚染にまみれた近所で暮らし続けている。2017年、チャティコチャ村の大多数の女性が流産を経験している、と私は聞いた。

先天的奇形、脳性麻痺、手足の変形、血液がん、腫瘍などが蔓延しており、第3鉱滓池から5キロメートル以内にあり約2000人が住むバンゴ村では、26人の子どもたちが障がいか病気をもって生まれた。専門医と専門治療へのアクセス不足によって、これらの子どもたちの半分以上は10年以内に死んでしまったという。

6.Chapri_Proposed Nuclear Plant Meeting_03.2017
チャプリ村で。チャプリはジャドゥゴダから10キロ離れた村で、小規模の原子炉建設計画がある。村人たちは猛烈に反対している。

デリーや西ベンガルの研究者による調査が行なわれた結果、また日本、北米、オーストラリアなど世界の反核・反ウラン鉱山活動のネットワークを通して、JOARはUCILが「より良い近隣者」となるよう圧力をかけた。

UCILは鉱滓池にライナーを設置するなり、ウラン運搬専用の道路を別個に建設するなり、鉱滓池から最も近い住民を移住させるなりの方法で、近隣住民を保護する道を探ることができたのだが、彼らはコスト削減だけを選び、地元住民を無視し、ゆっくりと蝕んでいった。

UCILの鉱滓池は、コンクリート、ゴム、その他のプラスチックなど北米のウラン鉱山で標準となっている物質では覆われておらず、従って汚水は雨期に漏洩して地下水へと混入し、保護カバーがないので風によって有毒な埃が村々へと降り注ぐ。

2000年よりビルリーと仲間が地域住民への啓発として、鉱滓池からの直接の水の使用に関して忠告してきたが、住民はそれでも、鉱滓池からわずか600メートルの水流から、家畜や洗濯、風呂などのために水を使い続けていた。

飲料水の汚染が明らかとなった試験結果の後、UCILは2005年から安全な飲料水を3つの村の住民に供給しはじめた。

直近では、JOARは、公共道路を使っての、カバーなしでのウラン運搬は放射性物質を周囲へ拡散する危険がある、ということを指摘し、UCILは現在ウランの運搬に防水シートの覆いを義務づけるようになった。

今年の5月下旬に、強烈な砂風が吹き荒れ砂塵が舞い上がったとき、第3鉱滓池近辺の村々は放射性塵埃によって完全に覆われてしまった。JOARとチャティコチャ村とその近辺の村人たちは抗議活動を行ない、UCILに対して、即座に第3鉱滓池をカバーし塵埃を阻止するように要求した。また、ティライタンド村とチャティコチャ村近辺の鉱滓池の汚染を計測し検査することも要求した。

UCILがこの要求に回答しなかったので、村人たちは大地を守るアディヴァシ・アイデンティティの象徴として弓矢を手にとり、工事現場に行進していった。そこはUCILが第1鉱滓池の拡張工事を行なっている現場で、彼らは即座の工事停止を要求した。

第1鉱滓池拡張工事は2014年に開始され、村人たちは工事の停止を何度も要求してきたのだが、UCILは、村人との交渉のときには停止を約束し、その後直ちに工事を再開してきた。

また、JOARは、ドングリッディ村の移住と住民への補償をUCILに要求してきた。過去10年間にさまざまな事故(鉱滓パイプの決壊を含む)が起き、汚染水が村々に流入し、ドングリッディ村では家の中まで入ってきた。

JOARは、国際的なウラン取り扱い基準を全ての操業過程に取り入れるようUCILに迫り、かつ、医療補償、収入補償や移住補償などを定める「被曝補償法」の制定を訴えてきた。

地元住民たちとJOARは、UCILに新規鉱山の操業計画をやめるよう働きかけてきた。しかしUCILはおかまいなしに2003年以来、バンドゥフラングの露天掘りを含む、新規の4つの鉱山操業を開始し、トゥラムディでは新たな精錬所を操業させた。
(ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.146より)

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信146号(6月20日発行、B5-32p)もくじ

  • トルコ・非常事態宣言下のシノップ反原発集会(NNAFJ特派員)
  • 日印原子力協力協定 参議院可決による国会承認議決 抗議声明
  • 「日印原子力協定国会承認阻止キャンペーン」活動報告(大久保徹夫)
  • 参議院外交防衛委員会 意見陳述(川崎哲)
  • 日印原子力協定を承認・批准しないことを求める請願署名
  • ジャドゥゴダ・ウラン鉱山、ゆっくりと蝕む暴力(アンエリス・ルアレン)
  • ミティビルディ原発建設計画、環境裁判所が許可を撤回、しかし政府は原発建設計画をコバーダにシフトして継続(クリシュナカント)
  • モディ政権による新規原発10基建設という発表に抗議する(NAAM)ほか
  • 高レベル処分場、適地提示を機に反撃を(末田一秀)
  • 岡山の高レベル廃棄物問題(妹尾志津子)
  • ムン・ジェイン大統領の「脱原発宣言」に対する声明(エネルギー正義行動)
  • 5.18民主化運動37周年 記念辞(ムン・ジェイン)

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