ミティビルディ原発建設計画、環境裁判所が許可を撤回、しかし政府は原発建設計画をコバーダにシフトして継続

国家環境裁判所は518日、グジャラート州のミティビルディで原発建設計画に付与されていた環境上の許可を白紙撤回した。この勝利は、人々の不断の抗議行動なしにはなしえなかったものである。長年にわたってミティビルディ原発反対運動のキーパーソンであったクリシュナカント氏の声明をぜひ読んでほしい。しかしながら、モディ政権は原発建設計画をさらに推し進める態度を変えておらず、アンドラプラデシュ州のコバーダで同様の計画を推進する姿勢だ。危険なミティビルディの原発建設計画に対して人々が大規模な抗議行動をどのように行なってきたのか、そしてこれまでに付与された環境上の許可がどれほどの茶番であったのかをぜひ知ってほしい(Dianukeより)

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公聴会をボイコットし、会場から出てきた4500人の住民

ミティビルディ原発建設計画、環境裁判所が許可を撤回、

しかし政府は原発建設計画をコバーダにシフトして継続

クリシュナカント・チャウハン

グジャラート州バブナガル県のミティビルディでの、ウエスチングハウスによる600万kWの原発建設計画は、公式に撤回され、アンドラプラデシュ州のコバーダで建設されることとなった。

このたびのミティビルディでの原発建設計画中止は、2013年以来続けられてきた住民運動の成果である。

一つの闘いが終ったが、新たな闘いが始まる。ミティビルディの人々は、コバーダの人々の闘いに全力で連帯していくことを決意している。

■ 公聴会ボイコット

ミティビルディ周辺の村々の住民にとって、決定的な転機となった重要な一日があった。

原発建設計画に関する公聴会が2013年3月5日に開催されることとなった。普段は当局から全く意見を求められることもなく、耳を傾けてももらえなかった人々にとって、意見を述べることができる貴重な機会と思われた。

女性たちを筆頭にした村人たちは、数週間前から準備に奔走した。周辺の30の村々で小さなミーティングが開催され、原発がもたらす負の影響について、また公聴会への参加がどれだけ重要かということについて話し合われた。本来はこうした活動をすべき当局は、公聴会への参加を呼びかけるどころか、原発建設計画に関する情報を提供することすら怠っていた。

そして当日、普段は文字も読めない無学な人々と思われている村人たち4500名が、公聴会会場を訪れて行列を作った。当局は村人たちに対して、衣服上からの身体検査を行なった。飲み物のボトルは持ち込み禁止となった。人々が持参してきた弁当も検査された。金属探知機が用いられ、どこを見渡しても警備員や警察官がいた。しかし村人たちはひるまなかった。

公聴会が始まったが、会場の内外に展開された数百人の警備員や警察官たちによって、公聴会はきわめて威圧的な雰囲気の中で行なわれた。バブナガル県の地方長官が公聴会の議長を務めていたが、原発の問題点を明らかにしようとしたリーダーや村長らの発言を不当に制止した。

村人たちは、この公聴会がくだらない茶番劇であって、NPCIL(インド原子力公社)の都合のよいように、建設への手続きを正当化するためだけに開かれたものであると気づいた。

そして「公聴会の実行委員たちは、人々が心配している問題点に関して話し合うことに興味がないようなので、私たちはこの公聴会をボイコットします」との宣言が、地域のリーダーからマイクを通してなされた。

数分以内に、人々は全く何のスローガンを叫ぶこともなく平和的にウォークアウトを実行した。だだっ広い公聴会会場はがらんどうとなり、マスコミと政府関係者と役人とNPCILのスタッフだけが残された。

当時グジャラート州首相だったモディの、大統領選挙戦でのスローガンは「グジャラートの発展モデル」であった。しかしここで起きたことは、巨大な原発推進勢力や専制的な政治家たちが、人々の勇敢で途切れることのない闘いによって駆逐されたというできごとだ。その背景には、現在も進行中の福島原発事故の影響があった。

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中央政府とグジャラート州政府が採用した、原発建設計画を推進するために当初から行なってきた憲法にのっとらない違法な行為や手段についても言及しておきたい。

原発建設予定地とされた土地に隣接する81ヘクタールに及ぶ広大な森林について、その土地を意のままにするために、グジャラート州のタルカ開発事務所は、地元のジャサパラ村の村長に対して、「州政府がその森林をNPCILに譲渡することを認可する決議を村議会で通してほしい」という手紙を送った。

タルカ開発事務所は、土地の譲渡に関して地元議会の意見を聞こうとするのではなく、違法に、そして憲法の定めるところに背いて、すでに文章ができあがっている決議を村議会で通すよう村長に命令したのだ。

これは、当時グジャラート州首相だったモディが採用した、村人たちから同意を得るための新しい手法だった。

ジャサパラの村議会は全会一致で、タルカ開発事務所からの書簡について非難と拒否の決議を行なった。村議会はさらに全会一致で、NPCILが森林以外の用途で使用するために、当該の森林を譲渡することはできないと決定した。

■ デモ、書簡、供述書

2007年以来、住民たちはNPCILや州当局によるさまざまな戦術を経験してきたが、打ち砕くことのできない固い意思を見せつけ、ミティビルディ原発反対運動を継続してきた。デモ行進、抗議行動、討論会、記者会見などが住民によって開催され、原発に関する事実やデータが明らかにされてきた。

2013年9月23日、土砂降りの雨にもかかわらず、原発建設で影響を受ける村の人々がジャサパラ村からデモ行進を行なった。69台のトラクターや車、50台のバイク、老若男女2500人が参加した。「自分たちが必死で育てた食べ物を食べる権利を奪うな!」「命はやるが土地はやらない!」「綿の木を育てよう! 緑を豊かに育てよう!」「原発はいらない!」などのスローガンが叫ばれた。

デモ隊は、通過する村々で人々とのミーティングを行ないながら、40キロ先のバブナガルまで行進した。ゴールのクリケット場では到着したデモ参加者らとともに大集会が行なわれた。原発建設で影響を受ける村々を代表する住民たちが、地方長官を通じてマンモハン・シン首相あての書簡を手渡した。その書簡は次のように述べている。

「原子力損害賠償法を骨抜きにしてはならない。破局的な福島原発事故の影響によって斜陽化が加速した国際的な原子力企業たちに対して、損害賠償を問われない活動の場所を提供することは、まさにインドの人々の命や安全を原子力企業の利益のために売り渡すことに等しい。私たちは、ユニオンカーバイド社(現在のダウ・ケミカル社)が引き起こしたボパール毒ガス事件の悲劇という犯罪を忘れてはいない。同時に、インドの政治家たちがその罪人たちを何の罪も問うことなくアメリカに逃亡させてしまったという恥知らずなエピソードについても忘れてはいない。あの罪人たちは、身の毛もよだつようなあの大災害に対する損害賠償について何の責任も負わずに逃げおおせたのだ」

書簡はさらに「インド政府は、福島原発事故がさらに状況を悪化させていることが明らかになってきているというときに、人々の命をリスクにさらしている」と指摘し、「日本ではすべての原発を停止せざるをえなくなっており、ドイツ、スウェーデン、スイス、イタリアといった国々は脱原発の決断をした。インド政府が、持続可能、再生可能、小規模分散型で合理的な形態のエネルギーにかじを切り、国内の電力生産のわずか3パーセント未満しか貢献していない原子力を手放すという歴史的な機会を選択しそびれたことは非常に不幸なことである」としている。

書簡は、原子力損害賠償法が骨抜きにされてインドの一般市民の命が危険にさらされることへの強い抗議を宣言した。ミティビルディ村、ジャサパラ村、カダルパール村、マンドバ村、パニヤリ村、ソシヤ村、カンタラ村、チャイヤ村、ナヴァアム村、バンカル村、ゴリヤリ村、バヴィナパラ村、クッカド村、ラカンカ村、モーチャンド村、オダルカ村、ガリブプラ村、タルサル村、カドサリヤ村、アラン村、マナール村、バドバディヤ村、ハサブ村、グンディ村、バディ村、アラパール村、サノダール村、パドヴァ村、ヴァヴディ村、サンカダサール村、ラジパラ村、トラパジ村、カタヴァ村、バパダ村、サタラ村、バラパラ村、コリヤク村、マタヴダ村、ジュナ村、ラタンパール村、クダ村、ブンバリ村、トルディ村などの村々が、この書簡に署名している。

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土地を失ったり生業を失ったりすることで直接的に影響を受ける農民や農園労働者らも、供述書を提出して彼らの反対の意思を表明した。

それらの供述書は「この地域には、インド政府、アメリカ政府、ウエスチングハウス社、インド原子力公社らが原発を建設することを計画しています。私は、私の農場の土地がこの計画のために接収されてしまうことに対して強く抗議します」とし、「私は、どれだけ金額をつり上げられようが、私の農場をグジャラート政府、インド政府、またはインド原子力公社に対して売却することを断固として拒否します」ともつけ加えている。

同様の供述書は、影響を受ける村々の農園で働く労働者たちからも提出されている。彼らは土地を所有していないので、現在働いている農園が自分たちの生活を成り立たせる唯一の資源であることを訴えている。

■ ジャサパラ村が「非核地帯宣言」

2014年3月9日、5つの村の村議会が「ミティビルディのジャサパラ村を非核地帯にする」と宣言する決議を通過させた。

この決議は全会一致で行なわれ、決議のコピーは当時の大統領プラナブ・ムケルジー氏と首相のマンモハン・シン氏、グジャラート州首相のナレンドラ・モディ氏、国連事務総長のパン・ギムン氏にも送付された。

この決議には「ここを核のない地域のまま守りたいという民衆の願い」が記されている。「私たちは、核燃料サイクルのすべての部分に反対しており、原発をはじめとして、核燃料サイクルにかかわるいかなる機器や原料が持ち込まれることについても反対し、いかなる放射性物質の貯蔵にも反対する」

■ 原発から、
     参加型の活気のある民主的文化へ

こうした抵抗運動は、「土地収用、土地回復、再定住における公平な補償と透明性に関する法律2013」が、民衆の利益に反する形で改定されることへの反対の声にも発展した。

2014年8月14日、住民たちが集まって「きれいな空気、飲料に適した水、肥沃な土地、栄養、汚染されていない食べ物、次の世代のための安全な暮らし」を求めていくとの宣誓を行ない、「土地、農業、農産物、種子を守り抜くためなら、我々はあらゆる手段をとる」という声明を発した。

ミティビルディの数千人の住民たちは、原発建設反対の声を絶え間なく上げ続けてきた。2007年以来、スローガンは「ここに原発はいらない」だった。しかしいま、非核地帯とする決議を受けて、スローガンは「ここに原発はいらない、どこにもいらない、世界中のどの国にもいらない!」となった。

(ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.146より)

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信146号(6月20日発行、B5-32p)もくじ

  • トルコ・非常事態宣言下のシノップ反原発集会(NNAFJ特派員)
  • 日印原子力協力協定 参議院可決による国会承認議決 抗議声明
  • 「日印原子力協定国会承認阻止キャンペーン」活動報告(大久保徹夫)
  • 参議院外交防衛委員会 意見陳述(川崎哲)
  • 日印原子力協定を承認・批准しないことを求める請願署名
  • ジャドゥゴダ・ウラン鉱山、ゆっくりと蝕む暴力(アンエリス・ルアレン)
  • ミティビルディ原発建設計画、環境裁判所が許可を撤回、しかし政府は原発建設計画をコバーダにシフトして継続(クリシュナカント)
  • モディ政権による新規原発10基建設という発表に抗議する(NAAM)ほか
  • 高レベル処分場、適地提示を機に反撃を(末田一秀)
  • 岡山の高レベル廃棄物問題(妹尾志津子)
  • ムン・ジェイン大統領の「脱原発宣言」に対する声明(エネルギー正義行動)
  • 5.18民主化運動37周年 記念辞(ムン・ジェイン)

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