台湾と連帯して脱原発をめざす(後藤政志)
3月、台湾に招かれ、講演会、記者会見、交流会、シンポジウムが行われ、「東日本大震災・福島原発事故15周年の夕べの祈り」では、ろうそく点灯、黙祷を通して、より安全な未来を祈りました。
以下、概要を報告します。

■ 3月9日「緑色公民行動連盟」主催で、台北市の国立台湾大学・会議センターにて公開講演会が開催された。講演タイトルは「福島原発事故後、私たちは何を学んだか? 技術、制度、責任の観点から日本の原子力政策を検証する」。
具体的には、「無謀な再稼働に走る日本の原子力事業に未来はない ― 台湾と連帯して脱原発をめざす日本の元原発技師」として、1時間半程度講演をした。通訳が入るので、用意した資料は大幅に減らしたが、メディアの取り上げ方から見て基本的な話は十分伝わったと思う。
日本の原発の再稼働状況、福島原発事故の概要と、事故が未だに収束していないこと、福島県ほか周囲の除染されていない林や森は、人が安心して住める場所になるまでは相当な年月がかかること、トリチウム汚染水の海洋放出や、デブリ取り出しの困難さなどを報告した。
その上で、原発事故というものが、どのように進展していくか、そして、それを防ぐことの難しさを、福島原発事故の具体例を上げて解説した。
また、福島原発事故による避難の範囲が平均的に半径30㎞程度であったが、それは、事故の途中で偶然、事故進展を阻止することができたためであり、最悪の事故シナリオでは、半径約200kmから300kmほど汚染が広がる可能性が指摘されていた。
チェルノブイリ原発事故でも、600 km以上も離れた場所に高濃度の汚染が広がっており、台湾や日本のような島国では原発事故の影響の範囲は、国自体が立ちいかなくなるレベルの事故が想定される。
万一事故が発生した時に、個人にとっても国にとっても取りかえしのつかない甚大な影響がある原発は、たとえ少々のメリットがあっても、安全性の観点からみて利用すべきでない技術であると訴えた。日常的にも放射性物質を大量に生成しながら、その核のゴミの処分方法すらない原子力を、電力に使うことなど全く合理的でない。
会場では、日本の状況と原発の被害の大きさについていくつか質疑があった。
■ 3月10日、メディア・インタビュー
福島原発事故と、原発のリスクがどれほど厳しく危険なものであるか、かなり長いインタビューであった。日本におけるインタビューとは比較にならないほど、突っ込んだ話ができたと感じている。後日公開されたテレビ、ラジオ、新聞等の報道からもこのインタビューの持つ意義は大変大きかったと感じている。
■ NGO交流会
この交流会では、中身の濃い討論ができた。私の方からは、原子力事業者が地震のリスクを十分にコントロールできると保証することの難しさについて詳しく話をした。
また、台湾も日本も、福島原発事故以降しばらくの間は、ほぼ脱原発の世論が多数を占めていたと思うが、現時点では政治の側から原発回帰路線が強調されるようになり、老朽化した原発やトラブル続きの状況でも、再稼働への世論が強くなってきているように見える。
しかし、日本において、原子力産業はすでに衰退期に入ってきており、人的にも技術的にも、原発を安全に稼働する力量も、マンパワーも失われてきている。日本では、トラブル(柏崎刈羽原発の制御棒など)への対応や、不正(浜岡原発の地震動策定における耐震偽装)の現状からみて、電力会社はトラブルを解決する姿勢も能力も欠いているため、大規模な事故の発生するリスクが極めて高く、現在、福島原発事故以前の状況に近いと説明した。
大規模な事故を防ぐためにも、原発に対する反対の声を上げることを訴えた。
台湾の人たちとさまざまな意見交換できたことは、大変有意義であった。

■ 3月11日、福島原発事故15周年シンポジウム。新聞記事を元に紹介する。
「全国廃核行動プラットフォームは3月11日、福島原発事故15周年シンポジウムを開催し、後藤政志氏を招いて講演を依頼した。
後藤氏は、福島第一原発の格納容器の設計に携わった経験にふれ、福島では放射性廃水が今後30年間も海洋に放出され続け、これまで想定されていなかった多くの問題が生じる可能性があると述べた。
2024年に日本の能登半島で発生した地震では、道路が閉鎖され、地盤が最大4メートル隆起したと指摘した。この震度は、原発の許容範囲を超えている。
東京電力は福島原発事故の際に、炉心溶融を2か月間否定した。このような認識だけでも、東京電力は原発を運営する資格がないと言える。
さらに、『原発は攻撃に対して極めて脆弱だ』と後藤政志氏は述べた。航空機やミサイルによる攻撃を受けた場合、格納容器が破壊され、内部で火災が発生する可能性があると説明した。使用済み燃料貯蔵プールも非常に脆弱である。後藤氏は、原発の設計に携わっていた際、電力会社から破壊試験の実施を拒否されたという。
後藤氏は、日本の原発稼働に反対し、台湾が『非核家園』への道を歩み続けることを願っている。
民進党の郭昱晴議員と張雅琳議員も出席し、後藤氏への支持を表明した。張議員は、原発には『安全』『核廃棄物処理』『社会合意』という3つの原則があると強調し、再稼働の問題は理性的に科学的に議論されるべきだと述べた」

■ 東日本大震災および福島原発事故15周年祈祷会(台湾長老教会)
「『福島を忘れるな』と題した分かち合いの会が行われ、日本の原子力専門家である後藤政志氏、環境保護同盟の創設会長である施信民氏が講演を行った。その後、会衆は賛美歌599番「どんな時でも」を歌い、ろうそくに火を灯し、栄光の光の詩篇を歌い、黙祷を捧げた。最後に、済南教会の林世雄長老が十字架を担ぎ、会衆を率いて教会を出て、立法院(国会)を一周し、福島原発事故と地震・津波の犠牲者を追悼した。その様子を下記写真に示す」(これも新聞記事より抜粋した)
このイベントでは、私は福島原発事故を再度起こさないために、お互いに努力すべきであると強く訴えた。
今回の台湾訪問は、多くの人たちとの交流ができ、双方の国で状況をよく見ながら、脱原発の道を探ることの意義を実感できるものでした。関係各位に心から感謝しております。ありがとうございました。

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台湾電力が3月27日、第三原発の再稼働計画を政府の原子力安全委員会に提出した。台電によると、安全審査に伴う検査は1年半~2年かかる。原子力安全委員会の審査通過後に再稼働の可否が判断されることになる。第二原発については、使用済み核燃料の乾式貯蔵施設の完成後に、再稼働に向けて安全検査を行うという。
以下は、3月21日と26日の全国廃核行動プラットフォームの声明。
(*全国廃核行動プラットフォームは台湾120団体のネットワーク)
第二原発・第三原発の再稼働に断固反対する
全国廃核行動プラットフォーム 3月21日
本日、頼清徳総統は公の場で「経済発展およびAI発展には電力が必要であるため、原発再稼働を検討している。評価の結果、第二原発および第三原発は再稼働の条件を備えている。今月末に再稼働計画が原子力安全委員会に提出される」と述べた。
全国廃核行動プラットフォームは、厳正に声明する。「安全の確保」「核廃棄物の解決」「社会的合意」は、いずれも未解決であり、台湾は国土が狭く人口が密集しているため、原発事故のリスクに耐えられない。したがって、第二原発および第三原発の再稼働には断固反対する。
昨年の第三原発再稼働の国民投票は成立要件に達せず否決とされ、第二原発はすでに廃止措置段階に入っているため、延長に向けての安全審査を行う必要はない。
にもかかわらず、今回の総統発言は、その立場を逸脱しており、再稼働に妥協する姿勢を示すもので、極めて不合理である。
「行政手続」を理由に、第二原発・第三原発の再稼働手続きを先行させ、その後に安全審査を行うという進め方は、政治的圧力によって審査期間が短縮されるのではないかとの疑念を生じさせる。
原発の安全は軽視できるものではなく、反核・推進の立場を問わず、与野党はこの危機に真剣に向き合うべきである。安全審査は形式やスローガンに堕してはならず、このような逆行的な政策は破局的な結果を招くおそれがある。
とくに第三原発は、地質安全およびコストの面で極めて高いリスクを抱えている。
恒春断層が敷地を横断し、原子炉からわずか900メートルの距離にある。1号機の下には断層破砕帯が存在し、2号機は背斜軸上に位置するため、地震時には下方からのせん断破壊を受ける可能性がある。耐震設計は0.4g(約400ガル)にとどまり、台湾電力の最新評価である1.384gを大きく下回っている。冷却系や燃料プールは大地震に耐えられない恐れがある。全面的な耐震補強に必要な工事内容や費用も未だ明らかではない。
延長運転のコストも非常に高い。米国の類似機種では、5年間の延長だけで約3892億元を要し、発電コストは1kWhあたり約4元に達するため、決して低廉な電源ではない。
電力需要についても、「AI対応のため原発が必要」という主張は、RE100を掲げる国際的IT企業が再生可能エネルギーへの投資を原発よりはるかに重視している現実を無視している。また、台湾は原発に依存せずとも、将来のデータセンター電力の大部分を無炭素電力で賄えるとの研究も存在する。
今回の総統発言は不適切であり、過去の公約にも反している。
頼総統自身が言ってきた「安全の確保」「核廃棄物の解決」「社会的合意」という三原則も満たされていない。
与野党の反対意見を無視し、社会的対話の手続きを省略し、民主的議論を欠いている。
長年の民進党の反核方針が、このような軽率な総統発言によって覆されてよいはずがない。
全国廃核行動プラットフォームは、地質リスク、老朽化した設備、核廃棄物問題を理由に、頼総統の一方的な再稼働方針に断固反対する。
老朽原発は再稼働すべきではなく、エネルギー転換を後退させてはならない。
原発再稼働計画に反対する
全国廃核行動プラットフォーム 3月26日
私たちは、第二原発・第三原発の再稼働計画に反対する。原発再稼働は、単なる行政手続ではなく重大な公共政策決定であり、政府は政策責任を負い、核廃棄物の最終処分および原子力安全リスクに正面から答えるべきである。
▶ 緊急対応計画がなければ、「安全」は成り立たない
日本の福島事故と同様に半径30kmの避難を想定した場合、第二原発は北部で約683万人(台北市・新北市・基隆市)に影響し、第三原発も南部(屏東県)で約5万7千人に影響する。現行の半径8km圏内の防災体制では不備が深刻だ。
「核子事故緊急応変法」の早急な改正、緊急対応区域の拡大、さらに行政院による県市長会議の開催、核廃棄物の最終処分および避難計画について協議すべきである。また各自治体首長は、原子力安全をどのように実現するのか明確に表明すべきだ。
台湾は国土が狭く人口密度が高く、原発が都市に近接しているため、緊急対応区域の拡大は不可欠である。とりわけ運転開始から40年を超える老朽原発の再稼働が検討される中で、最低限の対応区域拡大すら行わないのであれば、「原子力安全なくして原発なし」という原則は成り立たない。対応区域の拡大は安全を保証するものではないが、最低限の政治責任である。
法改正後にこそ、政府は省庁横断的な対応体制を整備し、計画強化、訓練拡大、ヨウ素剤配布を進めることができる。これらがなければ、事故発生時に関係機関や住民は準備不足のまま混乱に陥り、被害リスクを増大させることになる。立法院の与野党は、真に原子力安全を重視するのであれば立場を超えて速やかに法改正を行い、緊急対応区域を拡大しなければならない。
▶︎ 核廃棄物はどこに置くのか
原発再稼働の支持者たちは、「リスクは他者が負担する」という前提に立っている可能性があり、原発の影響を直接受ける現地住民に対して不公平である。
世論調査によれば、遠方の原発再稼働には高い賛成があっても、自地域への原発や核廃棄物処分施設の設置には必ずしも賛成していない。
たとえば金門では、遠方の第三原発再稼働への賛成が93%に達する一方で、自地域への原発設置賛成は42%、核廃棄物受け入れ賛成は35%にとどまる。苗栗でも遠方の原発の再稼働賛成は85%だが、自地域への原発設置賛成は約5割、核廃棄物受け入れ賛成は4割未満である。
核廃棄物の最終処分場が決まらないまま再稼働を進めることは、原発現地住民にさらなる負担を強いることに等しい。
原発をめぐる議論には、十分な情報公開、現実的な廃棄物処理の解決策、そして影響を受ける原発現地住民に実質的な拒否権を与える民主的手続が不可欠である。それがなければ、住民にリスクを押し付ける非民主的で無責任なエネルギー政策である。
▶︎ 政府は答えるべきである
全国廃核行動プラットフォームは、原発利用にはその代償と向き合う必要があると強調し、以下の三点を要求する。
- 老朽原発の軽率な再稼働に反対すること。重大な政策変更には民主的手続、リスク検証、情報公開が不可欠である。
- 政府は「核廃棄物をどこに置くのか」に明確に答え、県市長会議を開催して、核廃棄物の処分と避難計画を協議すること。
- 立法院は速やかに「核子事故緊急応変法」を改正し、緊急対応区域を30kmに拡大し、事故対応能力を強化して国民の生命と財産を守ること。

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信199号
(26年4月20日発行、B5-32p)もくじ
・台湾と連帯して脱原発をめざす (後藤政志)
・第二原発・第三原発の再稼働に断固反対する (全国廃核行動プラットフォーム)
・福島核事故15年 脱核宣言大会 (ヨン・ソンロク)
・老朽原発は直ちに止め、SMRは直ちに撤回せよ (「福島核事故15年 プサン市民大会」組織委員会)
・機張、蔚州、慶州、盈徳、原発誘致申請を撤回せよ (ヨン・ソンロク)
・南鳥島での地層処分という“奇策”に潜む様々な問題点 (高野聡)
・東海第二原発差止訴訟 控訴審 第8回口頭弁論・意見陳述 (谷田部裕子)
・県民投票実現のための署名収集 (酒匂宏樹)
・東電柏崎刈羽6号機再稼働、相次ぐトラブル、新潟県内外の動き (大賀あや子)
・新潟県民と原発問題の軌跡
・柳井市議会議員選挙の結果と中間貯蔵をめぐる動き (中川隆志)
・〈戦争を想定して〉税金を投じて兵器を買い込みながら、
〈戦争を想定しないで〉原発を放置している論理矛盾 (水戸喜世子)
・チラシで声を拡げ、なし崩しのスソキリ処分を阻止したい (末田一秀)
・「私たちには、核・原発の時代を終わらせ、
平和な世界を創る力があることを思い出しましょう」 (武藤類子)
・「原発のない社会へ・2026びわこ集会」基調報告 (井戸謙一)
・No Nukes Asia Forum in Philippines - 開催のお知らせ
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