フィリピンで第22回ノーニュークス・アジアフォーラム & 韓国・台湾・インドの厳しい状況

             バターン原発正門前で

フィリピンで第22回ノーニュークス・アジアフォーラム

佐藤大介(NNAFJ事務局)  <はんげんぱつ新聞 580号より>

1985年6月18~20日、バターン民衆は38000人の地域ストライキで、完成したバターン原発を凍結させたが、歴代政権はバターン原発の復活を試み続けてきた。昨年9月、国家原子力安全法(フィルアトム法)が成立し、原子力規制庁が創設され、バターン原発の再活用、新規サイトでの大型原発およびSMRの建設が検討されている。バターン原発改修の事業化可能性調査を現在、韓国水力原子力㈱が行っている。

フィリピン3度目となる今回のフォーラムも、1997年、2018年と同様、マニラとバターンで開催された。日本・台湾・韓国・インド・オーストラリアから27名が参加した。

6月17日はフィリピン大学で若者集会。これは、23年の韓国フォーラム、25年の台湾フォーラムの若者集会を引き継いだものだが、音楽演奏や全員参加のゲームなど楽しい企画で、皆すぐに友達になったようだ。

18日は国際会議。夕方、街頭アクションの後、バターンへ移動。19日はバターン州都バランガ市で150名の住民集会。各国報告などで、原発の危険や、原発が高額なこと、そして、各国でどのように反対運動をしているかなどを共有した。

圧巻は20日のモロンだ。バランガ市を朝5時半出発、モロン町の原発に向かった。7時、バターン原発正門前に住民たちが集まり、180名でランサギン・アクション。約半数の若者たちは皆、ひまわりの「顔はめパネル」だ。コールは「ランサギン(解体しろ)!」。その後、20台の車でゆっくり街宣しながらモロンの町へ。

教会で9時から200名の住民集会。「先輩たち」15名が壇上に並び、次々に語った。戒厳令下での困難な運動と弾圧。41年前のこの日の闘い、警官や軍隊、戦車に立ち向かったこと。若者たちの大きな拍手。

この4年間、毎年この時期に「民衆ストライキ記念集会」が行われ、大勢の若者たちが先輩たちの経験を聞いてきた。バターン州の若者たちは、先輩たちに学びながら、先輩たちとは違う自分たちのスタイルで、独自の創意工夫で自由に楽しい運動をつくっている。死神たちに扮した姿で街頭パフォーマンス、50台の自転車デモ、原発模型の展示と公設市場での署名キャンペーン。歌やダンス、演劇も。

20日午後はモロン町内デモ。若者たちのドラム隊を先頭に、小さな家が軒を連ねる細い道を練り歩いた。休日の町内は、日本の原発現地と違って、子供も大人もやたら多い。手を振る人やこぶしを上げる人。

21日のまとめの会議でフォーラムは終了した。その翌22日、モロン町議会は、同町内における原子力施設の建設および操業、ならびに放射性物質の保管を禁止する「非核地帯条例」を制定した。バターン原発に反対する住民たちのこれまでの運動が導き出したものだ。

コラソン・ファブロスさんは10年前、「ノーニュークス・アジアフォーラムを開催することで、現地の人たちが力づけられる。インドネシアでも、タイでも、フィリピンでも原発をくいとめているが、そこでフォーラムがはたしてきた役割はとても大きい」と言ったが、そのとおりのフォーラムだった。

韓国・台湾・インドの厳しい状況

NNAFJ事務局 <はんげんぱつ新聞580号より>

韓国

フィリピンでのノーニュークス・アジアフォーラム1日目の6月17日、韓国参加者たちに本国から連絡が入った。その日、韓国水力原子力㈱が、新規原発建設予定地として、大型2基を慶尚北道ヨンドク郡、SMRを釜山市キジャン郡に選定したのだ。

19日にフォーラム参加団体一同の名で国際共同声明を発表した。「私たちは、韓国の原発拡大政策が韓国だけの問題ではなく、アジア全体の核リスクを高める決定であることを懸念している。韓国政府は、国内の新規原発建設を、国内の原子力産業の維持と海外輸出拡大のための戦略的基盤として活用している。したがって、韓国の原発の拡大はアジアと世界で核の危険を増大させ、公正なエネルギー転換を遅らせる結果をもたらすだろう・・・ アジアの未来は、より多くの原発ではなく、安全で持続可能な再生可能エネルギーにある」

福島原発事故以降、サムチョクとヨンドクへの新規原発建設が計画されたが、それぞれ住民投票の勝利によって白紙撤回させた。そして、文在寅政権は2017年に「脱原発宣言」をした。しかし現在、使用済み核燃料の原発敷地内乾式貯蔵施設の建設計画とセットで、10基の原発の寿命延長が進められている。日本とよく似た状況だ。韓国では、26基が稼働中、4基が建設中、廃止が2基である。

また、原発輸出を国策とし、すでにUAEのバラカに原発4基を輸出し、チェコ、ポーランド、ブルガリア、フィリピン、カザフスタン、ベトナム、インドネシア、トルコへの原発輸出をねらっている。

台湾

フォーラムの若者集会で発言した林冠伶さんは、第三原発再稼働の危機を訴えた。「恒春の第三原発再稼働は、貧しい僻地に核リスクを負わせる、エネルギー植民地主義です」。彼女は、台湾南部を拠点とするNGO、地球公民基金会の専従スタッフだ。

台湾は、昨年5月17日に、6基の原発のうち最後の第三原発2号機が40年で運転終了となり、原発ゼロとなった。しかし、立法院で多数を占める野党の「原発を再稼働せよ」との攻撃はすさまじい。8月に行われた野党提案の第三原発再稼働の国民投票は、投票総数が成立要件に達せず不成立となった。にもかかわらず、今年3月27日に、台湾電力が第三原発の再稼働計画を政府の原子力安全委員会に提出した。「安全審査」は1年半〜2年かかるとされている。原子力安全委員会は4月28日、第三原発所在地である屏東県恒春鎮において「第三原発再稼働審査・地方説明会」を開催した。

林冠伶さんは、いま懸命に南部の多くの町をまわり、住民たちと対話を繰り返している。「私は若いのでなかなか信用してもらえないのです」といいながら、日本語で「わたし、がんばります!」と。

インド

ノーニュークス・アジアフォーラムに、インドのウダヤクマールさんが15年ぶりに参加した。彼が2011年夏に日本でのフォーラムに参加し、インド南端のクダンクラムにもどり、福島の状況を伝えた直後から、クダンクラム原発稼働阻止闘争が1年以上にわたり大きく盛り上がった。毎日のように数千人の集会、断食、道路封鎖など、非暴力行動を貫いた。12年9月、3万人の住民が原発包囲抗議行動を行ったが警察による大弾圧で多くの逮捕者が出た。そしてクダンクラム原発は運転開始されてしまった。ウダヤクマールさんは、最高刑が死刑の国家反逆罪で訴えられ、パスポートを10年以上取り上げられ、その後も出国制限されてきた。彼は昨年、「核のない未来賞」(ドイツの財団が主催)を受賞したが、賞金は全部、クダンクラム現地の困っている人々に配っている。

強権的なモディ政権による抑圧は厳しく、運動はなかなか困難である。現在、24基が稼働中、ロシア製のクダンクラム原発3~6号機と国産の加圧重水炉、計8基が建設中、10基が計画中だ。また、インドの原子力損害民事責任法は、原発事故時の賠償責任を、事業者だけでなく、原発供給者(原発メーカー)にも追及できる規定を設けていて、フランス・米国・日本などからインドへの原発輸出計画における最大の障壁となってきたが、昨年12月に廃止されてしまった。

ウダヤクマールさんは「ニュークリアイズムとファシズムはコインの表裏一体です。ファシズムが原子力開発を進め、原子力開発がファシズムを支えています。インド政府は、原発が気候変動への解決策だとして、巨大な原発推進プログラムを推し進めようとしていますが、それは核兵器の開発のためでもあります。インドはヒトラーの国ではなくガンジーの国でなければなりません」と訴えた。

はんげんぱつ新聞 https://cnic.jp/hangenpatsu/

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

録画公開中 https://www.youtube.com/@NoNukesAsiaForum
★ フィリピンNNAF 2026 録画(日本語通訳音声あり)

06/18 vol.1
フィリピン大学にて ・開会式 ・基調提案 カービン・ブンスア(バターン環境保護若者ネットワーク)、ラエ・グロリアンナ(STEPGen)、アティ・トレビラス(リサ・オンティベロス上院議員秘書)

06/18 vol.2
フィリピン大学にて ・テーマ討論 【安全】 ローランド・シンブラン(フィリピン大学)、デイブ・スウィーニー(オーストラリア自然保護基金)、【経済】 松久保肇(原子力資料情報室)

06/18 vol.3
フィリピン大学にて ・テーマ討論 【代替エネルギー VS 偽りの解決策】 ユ・エスダー(韓国環境運動連合)、S.P.ウダヤクマール(インド反核運動全国連合)、エイナ・エイナーソン(アイスランド)、【地域の成功事例】 マリス・カルデナス(CENTRO)、ファン・ロンシー(台湾環境保護連盟)

06/19 vol.1
バターン州バランガ市にて ・パネル討論 ジェフ・チュア(グリーンピース・フィリピン)、コラソン・ファブロス(非核フィリピン連合)、イ・サンホン(慶州環境運動連合)、ウェイ・ヤン(台湾・気候行動ネットワーク)ほか

06/19 vol.2
バターン州バランガ市にて ・パネル討論 ウェイ・ヤン(台湾・気候行動ネットワーク)、S.P.ウダヤクマール(インド反核運動全国連合)、デイブ・スウィーニー(オーストラリア自然保護基金)ほか。
・若者セッション エンリケ・ベレン(バターン環境保護若者ネットワーク)、ジミー・ナヒル(フィリピン民族民主青年連合)、佐々木かんな(柏崎刈羽原発再稼働の是非を考える新潟県民ネットワーク)、曽根俊太郎(元高校生平和大使・新潟)、イ・ミンホ(ソウル環境運動連合)、林冠伶(台湾・地球公民基金会)

日本語通訳音声ですが、聞きづらい点が多々あるかと思います。また、プロジェクタの画面がカメラの都合で全く見えません。ご了承ください。
(チャンネル登録してくださいね)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【フィリピン No Nukes Asia Forum ダイジェスト映像】
https://www.youtube.com/watch?v=7NyV8MEKm8Q
(編集:韓国・環境運動連合、2分40秒)
韓国・日本・台湾・インド・オーストラリアから27名が参加。
6月17日、フィリピン大学で若者集会。18、マニラ国際会議・ミニデモ・街頭アクション。19、バターン集会。20、バターン原発前でアクション180名・モロン教会で集会・町内デモ。22、モロン町議会・公聴会を傍聴 → モロン町「非核地帯条例」が可決された。