トルコ「原発建設を民意で止める」 メティン・ギュルブズ氏 インタビュー

ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.140より140-3s

2016年4月24日、チェルノブイリ原発事故から30年を迎えるのに合わせ、トルコ北部の街シノップで原発に反対する集会とデモが開催された。シノップでは、アレバ・三菱による原発建設が予定されている。だがシノップを含むトルコの黒海地方はチェルノブイリ原発事故による放射能汚染も経験しており、住民による原発反対運動が続いている。

シノップでは毎年、チェルノブイリ原発事故の起きた4月に合わせ、シノップ反原発プラットフォームが大規模な反原発集会を呼びかけている。今年はアンカラやイスタンブールで爆破事件が相次いだため、会場には多数の警官による厳重な警備体制が敷かれていた。しかし、全国から約8千人の参加者が集まり、集会は終始、祝祭的な雰囲気で行なわれた。ステージでは地方議員や環境活動家らがスピーチを行ない、「原発と私たちは共存できない」「シノップにも、トルコのどこにも、そして世界のどこにも原発はいらない」などと訴えた。集会前には参加者がシノップ市街地をデモ行進し、会場に面した海岸では地元漁師らが漁船に反原発の横断幕を掲げてアピールした。また、会場では原発の風刺画展も開催され、住民らによる作品が展示された。

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シノップ反原発プラットフォームのメンバーであり、福島での第17回ノーニュークス・アジアフォーラムにも参加したメティン・ギュルブズ氏へのインタビューを行ないました。以下はその内容の一部を編集したものです。

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― シノップでの反原発運動は、いつどのように始まったのでしょうか。

シノップでの原発建設計画は、1970年代から断続的に続いてきました。1970年代後半には、シノップのインジェブルンで原発建設に向けた調査が行なわれました。しかしこのとき反対運動は存在しませんでした。何の調査が行なわれているのか、住民の誰も知らなかったのです。

1986年4月26日、チェルノブイリで原発事故がありました。トルコの黒海地方は、チェルノブイリからの距離が遠くはありません。黒海地方はチェルノブイリからの放射能で汚染されてしまいました。私たちの活動の原点は、このときの汚染被害にあります。

シノップ反原発プラットフォームは1994年に設立されました。設立時の反原発プラットフォームは、職業・労働団体、政治政党、共同組合など23の団体から構成されていました。署名活動や、シノップ住民やトルコ市民への啓発活動などを行なってきました。

原子力庁がシノップを原発予定地と正式に発表した2006年には、チェルノブイリ原発事故の日に合わせ、4月に大規模な反原発集会を開催しました。人口約3万6000人だったシノップで、2万人もの参加者が集まりました。それから毎年、シノップ反原発プラットフォームはチェルノブイリ原発事故の日に合わせて反原発イベントを開催してきました。2011年の福島原発事故後は、福島を津波が襲った日に合わせ毎年3月11日にもシンポジウムや記者会見を行なっています。

トルコの原発建設計画は、現地の住民に何の説明もないまま進められています。トルコは日本と同じように、地震の頻発する国です。シノップでは住民の3分の2が原発に反対で、私たちの反原発運動を支持しています。反原発集会には、子供から高齢者まで、住民が家族ぐるみで参加します。原発建設をめざす人々は、シノップの人々が原発を拒否していることに気づくべきです。

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― 原発反対の民意で、政治を動かすことはできるのでしょうか。

それは可能です。私たちはアルティヴィンやゲルゼで、民意が政治を動かす例を見てきました(注)。政権がいくら原発を望んでも、トルコにはそれに反対する民意が存在しています。民意が望まないプロジェクトを進めることは、非常に難しいでしょう。

現政権は増加する電力需要を賄うためと言って原発の必要性を宣伝していますが、政府の電力需要予測は過剰な見積もりです。さらに、トルコには電力効率改善の余力や再生可能エネルギー利用の大きなポテンシャルがあります。電力を補うために原発が必要なのではありません。原発を持つことは、数ある選択肢の中からの、現政権による政治的な選択です。共和人民党や人民民主主義党といった野党は、この選択に反対しています。つまり政治を動かすことで、原発を持たないという選択も可能なのです。

― シノップに原発輸出を計画する日本に対して、どのような思いを持っていますか。

日本を地震と津波が襲ったとき、ニュース映像を見ながら、自分自身もそれを経験しているかのような恐ろしさを感じました。トルコでも地震が起きるので、私たちはその恐ろしさをよく知っています。

福島原発事故はまだ続いています。環境の放射能汚染が続いており、日本の人々は事故の起きた地域の作物を食べることができません。福島の原発からは、大量の汚染水が海へ流れ続けています。そして日本は原発事故の後、50基近くあった国内の原子炉を停止しました。原発は日本社会にとってリスクが大きすぎるからです。他方で、日本政府は原発を他国に売ろうとしています。これは受け入れ難いことです。

私たちは日本に対する好感を持っていますし、コンピューターや家電など、日本製品の良さも知っています。しかし日本製の原発が欲しいかというと話が違います。

日本人は私たちの兄弟であり親友です。日本製品や日本政府に対するボイコットは行ないたくありません。私たちと日本の人々の間には何の問題もないのです。しかしトルコで日本企業による原発建設計画が進めば、私たちは何らかの行動をとらなければならなくなるでしょう。日本政府や企業の動きを用心深く見極める必要があります。

(注)トルコ北東部の街アルティヴィンでは、1980年代から金鉱開発が計画されている。環境への悪影響を懸念する住民による反対運動が1995年に始まり、現在も開発に抵抗を続けている。シノップ県のゲルゼでは、石炭火力発電所の建設計画に対する住民の反対運動が、2012年の計画中止まで続いた。

(聞き手・編集:NNAFJ事務局)

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信140号(6月20日発行、B5-26p)もくじ

●トルコ「原発建設を民意で止める」メティン・ギュルブズ氏インタビュー
●韓国・高レベル核廃棄物処分場計画、全面白紙化しろ!
(脱核地域対策委員会、核のない社会のための共同行動)
●南オーストラリア州での放射性廃棄物処分場計画(ジム・グリーン)
●南オーストラリア州のバーンディウータに放射性廃棄物処分場計画
●ロシアとミャンマーが原子力技術で実務機関を設立へ
●インドの「核の夢」が、ジャールカンド州の先住民に悪夢をもたらす
(プレルナ・グプタ、クマール・スンダラム)
●フランスの原子力産業の大規模な汚職事件を受けて、
モディ政権はジャイタプール原発計画を見直せ!(CNDP)
●米印首脳:インドにおけるWH社製原子炉建設で準備作業開始を歓迎
●アメリカとの原子力取引は、インドの人々と環境の破壊につながる(CNDP)
●福島原発災害語り部行脚 ~タイ編(藤岡恵美子)
●大地動乱の時代の真っただ中、伊方原発再稼働のバクチを許すな(小倉正)
●ここに来たのはきっと誰かに呼ばれたから(とーち)

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