ハンビッ原発3・4号機の格納容器の空隙問題、根本的な安全性確保できぬまま再稼働

小原つなき(韓国・脱核新聞編集委員)

ハンビッ原発の門の前で抗議、22年3月10日

尹錫悦(ユン・ソギョル)政権は、文在寅(ムン・ジェイン)前政権の「形だけ脱原発」政策を完全に廃棄し、原発大国への道を歩み出そうとしている。新規原発の建設や老朽原発の寿命延長などに積極的な意欲を示し、原発の割合を32.8%まで拡大することを打ち出している。

こうしたなか、格納容器の空隙問題で5年以上運転を停止しているハンビッ原発4号機にも拍車がかかり、再稼働は今や秒読み状態となっている。

■ ハンビッ原発3・4号機の格納容器の空隙問題

全羅南道・霊光(ヨングァン)郡にあるハンビッ原発4号機は、2017年の定期検査中に深刻な欠陥が相次いで明らかになった。格納容器の内部鉄板(ライナープレート、厚さ6㎜)の腐食やコンクリートの空隙が多数見つかったのだ。とくに、格納容器の最上段と上部ドームへの連結部位には約20cm幅の空隙が格納容器全体を一周(137m)する形で見つかった。また、蒸気発生器からは20年間放置されたと推定されるハンマーが見つかった。

その後の調査で18年には、主蒸気系配管の貫通部の下部コンクリート(厚さ167.6cm)に、わずか10cmを残した形で深さ157cm(縦90cm、横330cm)にも及ぶ大型の空隙が追加で見つかった。4号機の格納容器の欠陥は、コンクリートの空隙だけにとどまらず、コンクリートの鉄筋露出やグリス漏れにも及んだ。同様の欠陥は、4号機と共に建設された3号機でも見つかった。

韓国の原発において、格納容器の欠陥問題のはじまりは、2016年6月に遡る。ハンビッ2号機で格納容器の内部鉄板に腐食による穴(1~2mm)が見つかった。その後、ハンビッ1号機でも50ヶ所で内部鉄板の腐食が見つかった。

当初、原子力安全委員会と韓国水力原子力は「内部鉄板の腐食は、ウェスティングハウス社が韓国で建設した初期の原子炉のみに限られ、韓国型の原発であるハンビッ3・4号機以降に建設された原発には及ばないであろう」という見解を示していた。しかしその後、腐食はハンビッ4号機でも大量に見つかった。しかも、問題は、上記のようにコンクリートの空隙へと深刻に発展していった。

これに対し、17年11月「ハンビッ原発安全性確保のための民官共同調査団が構成され、全面的な調査(18年4月~19年6月)が始まった。同時に、韓国のすべての原発を対象に格納容器の健全性調査が行われた。

こうした調査の結果、ハンビッ原発3・4号機の格納容器の欠陥は、韓国のその他の原発に比べて圧倒的に多いことが明らかになった。とくに、コンクリート空隙は全国で発見された数の75%以上がハンビッ原発3・4号機に集中していることがわかった。

           鉄板 腐食空隙鉄筋 露出グリス 漏れ
3号27212418440
4号2981402315
合計57026420755

■ 空隙の最大の原因は、建設当時の手抜き工事

ハンビッ原発3・4号機(各100万kW)は、1989年12月に建設が始まり、95年3月と96年6月にそれぞれ稼働した。それまでの原発とは違い、韓国内の企業が主導して建設される「韓国型原子炉」として注目された。しかし、技術も経験も不足するなか無理な建設が進められた。

格納容器の欠陥の根本原因は当時の建設の過程にあるといえる。たとえば、工事期間を短縮するため24時間の連続作業が行われるなか、無許可でコンクリート工場の運営が行われたり、禁止されている冬場でのコンクリート打設が平然と行われた。そのほかにも、図面を無視し現場で即席で設計を変更したり、資材などの品質に対する管理監督を省略したりするなどの不正行為が当たり前のようにくり返された。

当時、工事に従事する作業者や地元住民らは、デモ、籠城、国会請願など、ありとあらゆる方法でくり返し抗議を続けた。しかし、事業者である韓国電力は、住民の声に耳を傾けるどころか、逆に住民を脅迫して反発を鎮静し強引に工事を進めたという。ハンビッ原発3・4号機に欠陥が生じることは、建設当時から目に見えたことだった。

そして、韓水原の社長は、2018年の国政監査の際、当時指摘されていた手抜き工事が事実であることをついに認めた。

■ 地域住民と環境団体、「安全性は確認されていない」

しかし、その後、韓水原と原安委は、拙速な安全性審査と補修工事を経てハンビッ3・4号機を再稼働させることを急いだ。そして、3号機は20年11月に再稼働した。その際、霊光地域の住民は、4号機のドーム部分に対する精密な調査の実施や手抜き工事に対する真相究明などを柱とする7つの要求事項を提示し、3号機の再稼働に条件を付けた。しかし、7つの約束はほとんど守られないまま、拙速でうわべだけの調査が行われた上で、4号機の再稼働への手続きが進められてしまった。

地域住民と環境団体等は、格納容器の欠陥など、手抜き工事で建設されたハンビッ3・4号機の安全性は立証されていないと主張し、こうした状況では4号機の再稼働を容認することはできないという立場を表明している。

韓水原は、ユン政権の原発推進政策にも後押しされ、原安委の最終承認を経て遅くとも11月中には4号機を再稼働する方針を明らかにしている。

ハンビッ原発1・2号寿命延長反対、光州市で

■ 老朽原発の寿命延長にも

それ以外にも、ハンビッ原発を抱える霊光では、ユン政権下で押し進められる原発推進政策によって老朽原発の寿命延長にも今後対応を迫られることになる見通しだ。

ユン政権は、任期内に18基の原発の寿命を延長することを掲げている。現行では、設計寿命40年を越えて稼動させる場合には、原発事業者は設計寿命満了日の5~2年前に原子力安全委員会に「安全性評価報告書」を提出しなければならない。しかし、9月15日の原子力安全委員会で、「安全性評価報告書」の提出期間を10~5年前に前倒しする原子力安全法施行令改定案が議決された。

ユン政権の任期内にできるだけ多くの原発の寿命延長を確定することがねらいで、こうなると18基の原発が寿命延長の手続きに入ることになる。ハンビッ原発も例外ではなく、ハンビッ1・2号機も近く寿命延長の手続きに入ると見られている。

これに対して、霊光をはじめとする全羅南道各地や霊光から約35kmの光州広域市の市民社会団体で作る「核のない世界・光州全南行動」は、今年6月から、「霊光ハンビッ原発寿命延長反対のための光州・全南1万人署名運動」を行っている。

福島原発事故の記憶も薄れ、ユン政権下での「原発必要悪論」が世論を占め始めるなか、署名運動を通じて、少しでも多くの人が原発の問題に関心を持ち、脱原発の世論が再び広まることを願っている。

*<小原つなき> 2000年に大学の交換学生として全羅南道・光州の全南大学社会学科に在籍後、韓国に移住。光州環境運動連合に勤務し、福島原発事故以降は地域の脱原発活動に参加。現在は、2012年に発刊した脱核新聞の編集に参加している。

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信178号(10月20日発行、B5-24p)もくじ

・ハンビッ原発3・4号機の格納容器の空隙問題、
  根本的な安全性確保できぬまま再稼働 (小原つなき)

・地域住民をいけにえにする核廃棄物敷地内貯蔵基本計画と
  特別法案を廃棄せよ (脱核ウルサン市民共同行動)

・オーストラリア・放射性廃棄物処分場建設計画に反対し、
  ポートオーガスタで一丸となって抗議デモ (ベサニー・アルダーソン)

・バターン原発の復活を許さない (Nukes Coal-Free Bataan)        

・フランス・ビュールより、寿都町の住民の皆さんへの連帯メッセージ      

・KKのKKについて (桑原三恵)                 
・GX 実行会議における柏崎刈羽原発6,7号機再稼働方針確認への抗議と撤回の要請
 

・東海第二原発事故がおきれば被害地元の再稼働反対運動 (佐藤英一)    

・元原発作業員の訴えに反響 ― 京都・大阪・福岡講演ツアー報告 ― (池田実)

・原発事故12年目 ― 汚染水問題の向こうに私がみる希望 (宇野朗子)   

・川内原発の運転延長申請に強く抗議する (ストップ川内原発! 3.11鹿児島実行委員会)

・日本弁護士会連合会シンポジウムでのスピーチ
  (子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会/三木信香)

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「コリ2号機閉鎖! 老朽原発寿命延長反対! 6.18全国脱核行動 宣言文」「脱核新聞・創刊100号へのメッセージ」

      40年稼働した核発電所 「もうやめたい、休みたい」
    コリ2号 (点滴)ユン・ソギョル政府  脱核新聞100号より 

韓国では、2023年コリ2号、24年コリ3号、25年コリ4号、ハンビッ1号、26年ハンビッ2号、ウォルソン2号、27年ハヌル1号、ウォルソン3号、28年ハヌル2号、29年ウォルソン4号、計10基が設計寿命を迎えるが、新大統領は寿命延長するとしている。

6月18日、釜山駅前広場で、「コリ2号機閉鎖! 老朽原発寿命延長反対! 6.18全国脱核行動」が開催された。コロナウイルスまん延のなか、400人が参加した。集会を終えた参加者たちは釜山駅から光復路までデモ行進した。

コリ2号機閉鎖! 老朽原発寿命延長反対! 6.18全国脱核行動 宣言文40年間、お疲れさま。さようなら、コリ2号機!

17年6月18日、5年前の今日は、韓国初の原発であるコリ1号機が永久停止した日だ。40年間稼動してきたコリ1号機の永久停止は、脱核社会と安全な世の中を念願する釜山(プサン)、蔚山(ウルサン)、慶尚南道(キョンサンナムド)の800万市民がともに成し遂げた成果だった。そして5年前の今日、釜山で文在寅前大統領は「安全なエネルギーへの転換を通じて、脱原発時代に進む」と約束した。あれほど熱望してきた核のない安全な世の中に向かって一歩進むかのようだった。

しかし、5年が経った今、尹錫烈(ユン・ソギョル)政府は、「原発強国」という政策を推進している。尹錫烈大統領は候補時代から、原子力産業界の利益だけを代弁し、国民の安全と生命の声には耳を傾けてこなかった。その上、まるで原発が気候危機の解決策であるかのように主張し、経済成長だけを掲げ、気候危機を正義的な方法で解決する意志がないことを端的に表わしている。

その中でも、2030年以前に設計寿命が満了する老朽原発10基の寿命延長は、国民の不安と安全を全く考えない計画だ。釜山のコリ2号機は、ユン政府が推進する老朽原発寿命延長の最初の対象だが、寿命延長ではなく永久停止して廃炉を進めなければならない。40年の寿命を守って稼動を停止し、来年4月には安全に廃炉するのが当然だ。今日、全国から集まった私たちは、老朽原発の寿命延長に反対し、コリ2号機の閉鎖を促そうと思う。

4月4日、韓国水力原子力(以下、韓水原)はコリ2号機の定期的安全性評価書を原子力安全委員会に提出し、本格的なコリ2号機の寿命延長手続きに突入した。しかし、その始まりから手続き上の違法性が明らかになった。本来は、設計寿命が満了する2年前に定期的安全性評価書を提出しなければならないが、韓水原は期限に1年も遅れて提出したのだ。

それだけでなく、コリ2号機の寿命延長は、安全性も経済性も担保できない。

コリ2号機は、1983年に稼動が始まって以来、計29件の故障が発生し、台風や豪雨のような自然災害によって原子炉停止などの事故が発生した。さる6月3日には、コリ2号機の内部遮断器で火災が発生し、自動停止した。

このように老朽化した原発の安全性を確保するためには、最新技術基準を適用し、設備を改善しなければならない。これには莫大な費用がかかるため、原発が他のエネルギー源より経済性があるという主張は事実とは異なる。

また、原発の寿命を延長すれば、使用済み核燃料すなわち高レベル核廃棄物もさらに増える。現在、コリ原発の使用済み核燃料はすでに約85%が飽和し、2031年には完全に飽和する見通しだ。全国24基の原発で毎年750トンの高レベル核廃棄物が発生しているが、これをどこでどのように処理すればいいのか対策も立っていない。

政府は、高レベル核廃棄物(使用済み核燃料)を原発敷地内に(乾式)貯蔵し、原発最大密集地域であるこの地域を核廃棄場にするという計画を持っているだけだ。これさえも市民社会と地域住民を排除したまま非民主的に決定され、進められている。原発最大密集地域である釜山、蔚山、慶尚道だけでなく霊光(ヨングァン)、蔚珍(ウルチン)のような原発立地地域を永久的な核廃棄場にするというユン政府の試みを決して容認してはならない。

原発現地の住民たちは数十年間、原発事故の危険の中で暮らしながら、放射能による健康被害を受けている。危なかしく密集している大規模原発で電気を生産し、他の地域、とくに首都圏に送電するために、超高圧送電塔が立てられ、村と共同体を破壊した。今後は、原発地域が高レベル核廃棄物の貯蔵場になるかも知れないという不安の中で闘っていかなければならない。さらに台風や洪水や山火事のような気候災害は原発の安全も脅かしている。

このように危険で不平等で非民主的なエネルギー生産の構造を変えていかなければならない。老朽原発の寿命延長ではなく、再生エネルギーの拡大と、安全で正義の転換を始めなければならない。40年間稼動した古い原発を再利用するという政策ではなく、高レベル核廃棄物に対するきちんとした対策づくりを進めなければならない。

コリ1号機が永久停止した5年前の今日のように、来年4月8日は、コリ2号機が稼動を停止する日にならなければならない。

今日この場に集まった私たちは、コリ2号機の閉鎖と老朽原発の寿命延長禁止、そして正義のエネルギー転換に向けて、共に力を合わせて連帯していく。

ユン・ソギョル政府は

老朽化した原発の寿命延長を禁止せよ!

コリ2号機の閉鎖を決めろ!

原発振興政策を直ちに廃棄せよ!

安全と正義のエネルギー転換を約束せよ!

2022年6月18日
コリ2号機閉鎖を促す釜山市民行動、脱核市民行動、気候危機非常行動、宗教環境会議、脱核慶南市民行動、脱核釜山市民連帯、脱核蔚山市民共同行動、韓日反核平和連帯


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【脱核新聞・創刊100号へのメッセージ】 「韓日脱核連帯しよう、原発寿命延長をとめよう」 反核アジアフォーラム日本事務局・佐藤大介 (脱核新聞22年6月号より)

2012年から脱核新聞を毎号読んでいます。韓国各地の運動状況を知ることができます。 毎月編集して発行するのは大変ですが、脱核新聞は脱核勝利の必要条件の一つだと思います。

反核アジアフォーラム通信(隔月)に、いつも脱核新聞の記事から、日本語訳を掲載しています。

女性たちが立ち上がると運動は広がるし、強くなります。チェルノブイリ事故以後、世界中がそうでした。韓国公害追放運動連合の女性たちが1988年に訪日して私たちと交流したときから、韓国と日本の脱核運動の「行ったり来たり」が始まりました。翌89年、日本でもヨングァン3・4号機建設反対署名を集めて韓国に届けました。

「推進派は活発に国際連帯をしているので、反対派も国際連帯しなければならない」と、韓国側から提案を受け、1993年に第1回反核アジアフォーラムを日本で開催しました。8カ国30人が九州・四国など7コースに分かれ、原発現地など全国28カ所で集会を開きました。翌94年の第2回フォーラムは韓国で開催され、日本からは36人が参加しました。ヨングァン、コリ、ウルチンなどで住民たちとともに集会とデモを行いました。第9回フォーラム(2001年)ではウルサンなどでデモ、第15回(2012年)ではサムチョクとヨンドクでデモをしました。第20回は2020年に韓国で行われる予定でしたが、コロナウイルスにより延期となりました。反核アジアフォーラムは各国持ち回りで、台湾、インドネシア、フィリピン、タイ、インドでも行われてきました。

フォーラムのとき以外にも、これまで多くの韓日の人々が交流してきました。クロプ島・トクチョク島核廃棄場建設反対闘争(95年)、ヨングァン5・6号機建設反対闘争(96年)などに、日本から多くの活動家が応援参加してきました。プアン核廃棄場反対闘争(2003~04年)のときには新潟県の仲間も参加し、「巻原発建設反対・自主住民投票」の経験を伝えました。プアン闘争は「みんなが主人公」のすばらしい闘争でした。学ぶところが実に多いです。日本の多くの学者も韓国で講演しました。「核発電と日本(日本と原発)」などの映画も韓国で上映されました。

韓国からも、とくに福島事故以後、現地をふくめ多くの活動家が来日して交流してきました。

21年1月と2月、福島汚染水海洋放出反対「韓日ズーム集会」に、それぞれ150人、200人が参加し、韓日共同声明を発表しました。その後、汚染水海洋放出反対の国際署名(110ヵ国8万人)を集め、国際同時行動が行われました。

第2回フォーラム以来のキム・ボンニョさんや、小原つなきさんほか、これまで通訳してくれた方々に本当に感謝します。

日本で2030年までに40年の寿命を迎える原発は計11基です。そのうち4機は現在稼働中で、7機は10年以上稼働を停止しています。それぞれの現地住民と都市の人々が連携して、集会、デモ、署名、裁判などで、「老朽原発うごかすな」「再稼働反対」の運動を展開しています。

老朽化した原発の寿命延長は、日本と韓国をはじめ世界各国で2020年代の最大の課題です。これを止めなければ、どこかで必ずチェルノブイリや福島のような事故がくり返されるでしょう。

原発の寿命延長は、日本と韓国で連動しています。互いに影響し合います。韓日の原子力マフィアは連携しています。

私たち韓日の脱核運動は、互いに学びあい、励ましあいましょう。新規原発を稼動させず6基の原発の寿命延長をせず2025年に原発ゼロを実現する台湾に続きましょう。少しでも早く「原発」時代を終わらせましょう。

원문 原文:https://www.nonukesnews.kr/news/articleView.html?idxno=10079

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信176号(6月20日発行、B5-24p)もくじ

・韓国:コリ2号機閉鎖! 老朽原発寿命延長反対! 6.18全国脱核行動 宣言文

・脱核新聞・創刊100号へのメッセージ(佐藤大介)

・フィリピン:私たちは、二度、バカにされるのか?(Nukes Coal-Free Bataan)

・バターン原発は電力危機を解決しない(AGHAM)

・タイ:地元団体はオンカラック研究炉建設に反対(バンコクポスト)

・ロスアトムとの協力をやめよう -ロシアへの制裁のなかでの原子力-(エコ・ディフェンス)
https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2616

・理解と合意なき汚染水海洋放出設備工事の中止を!(大河原さき)

・「311子ども甲状腺がん裁判」第1回口頭弁論・原告意見陳述(原告2さん)

・311子ども甲状腺がん訴訟第1回期日(中野宏典)

・泊原発に差し止め判決、すみやかに廃炉を(川原茂雄)

・川内原発20年延長阻止へ、意見広告運動に協力を(向原祥隆)

・老朽美浜3号機の再稼働を許すな(宮下正一)

・5.29「原発のない明日を -老朽原発このまま廃炉!大集会 in おおさか-」に 2100 人、美浜3号機再稼働阻止に向けてさらに前進を(木原壯林) 

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「憐憫のない人たち」(チャン・ヨンシク)「高レベル核廃棄物管理基本計画と特別法案の撤回を促す全国行動・声明書」

共に民主党の党本部前で、1月25日(撮影:チャン・ヨンシク)

「憐憫のない人たち」 チャン・ヨンシク(写真作家)

久しぶりにソウルに行ってきました。 汝矣島(ヨイド)にある共に民主党の本部前で、「高レベル核廃棄物管理基本計画と特別法案の撤回を促す全国行動」が行われれたためです。 釜山からバスを借りて夜明け道を走り、ソウルに向かいました。

大統領選挙を控えた国会前の風景は混雑していました。 様々なスローガンを書き込んだ垂れ幕が掲げられ、一人デモをしている人もいました。共に民主党の本部前は、警察が陣を張っていました。原発がある釜山(プサン)と霊光(ヨングァン)、そして、蔚山(ウルサン)と慶州(キョンジュ)から、地域を代表する市民たちが集まりました。 ソウルからも宗教環境会議代表や緑の党の党員たちが参加しました。

文在寅(ムン・ジェイン)政府が無責任に高レベル核廃棄物(使用済み核燃料)を原発立地地域に保管するという基本計画を立て、国会もまた特別法案を成立させようとしています。

文在寅政府の主要公約である「脱原発政策」は雑巾になりました。核マフィア(原子力ムラ)の執拗な攻勢に積極的に対処できなかった結果です。文在寅政府が、新古里5・6号機の建設の公論化過程を経て、「脱原発政策」に手をこまねいていた結果です。 政府の主要政策が攻撃を受けても、一途に対応できなかった政権与党の無能と無責任の結果です。

これまで原発立地地域の住民らは、一方的な犠牲を強要されてきました。 原発を稼働すれば「核種」という放射性物質が排出されることは当然のことです。気体と液体 の放射性物質は住民の健康権と生命権を脅かしました。

原発を建てる際にも、原発の危険性について住民たちに話しませんでした。むしろ原発があれば、地域が発展すると宣伝しました。 住民たちはその宣伝にだまされたのが唯一の過ちでした。古里(コリ)で初めて原発を建てるときも、「小さい電気工場一つが建設される」と嘘をつきました。「電気工場ができると地域が発展する」と懐柔しました。村の住民たちは、「その小さい電気工場が原発であると知っていたなら、命をかけて反対したはずだ」と言います。

この50年間、一方的な犠牲を強要されてきた地域と住民たちに、再び犠牲を強要しています。全国の原発があるところに「敷地内貯蔵施設」という名で、高レベル核廃棄物の「乾式」貯蔵施設を建設しようとしています。 これは原発がある地域と住民たちに無限の犠牲を強要することです。原発立地地域を核の墓にしようということです。

政府は、このような重要な問題を決定する過程で、意見の収れんを経ずに一方的に進めました。 意見聴取期間に提出された意見も無視しました。25の原発立地地域と近隣地域の自治体、議会、市民団体が送った意見書を黙殺したのです。 全国の市民団体と環境団体も、政府の基本計画に対して審議の中断を要求しましたが、黙殺しました。

これに先立ち21年9月15日、共に民主党の国会議員24人が、「高レベル放射性廃棄物管理に関する特別法案」を国会に発議しました。この特別法案は、政府の基本計画と一脈相通じていて、高レベル核廃棄物の「敷地内貯蔵施設」建設を法制化する内容を含んでいます。

高レベル核廃棄物特別法案を代表発議した金星煥(キム・ソンファン)議員はソウル蘆原区地域選出の国会議員です。 彼が蘆原区長だった2012年、蘆原区の月渓洞の道路から基準値以上の放射能が検出されました。放射能に汚染されたアスファルトを全面撤去し、廃アスファルトは、蘆原区庁の裏にある公営駐車場とマドゥル水泳場にそれぞれ235トンと94トンずつ臨時保管された後、保管容器に密封され、慶州の中低レベル放射性廃棄物処分場で永久に保管されることになりました。そうしたことを先頭に立って推し進めた人物です。

自分の地域区では、放射性物質は保管できないと否定しておいて、廃アスファルトとは比較もできないほどの高レベル核廃棄物は、原発がある地域と住民たちに押しつけるという特別法案を代表発議し、取り消す意向はないと述べています。 厚顔無恥なことです。

5年前の大統領選挙では脱原発が主要テーマでした。 大半の大統領選候補らが原発の危険性に同意しました。 文在寅候補と安哲秀候補は、これ以上の原発を建設しないことに同意しました。5年が過ぎた今、5年前の時間で止まっているのではなく、むしろはるかに後退しています。欧州では、原発は気候危機の代案にならないとし、原発を廃炉にしているにもかかわらず、韓国の現在の大統領選候補らは原発をさらに建設すると述べています。

電気を最も多く使用している所が、原発と核のゴミ捨て場の負担を負わなければいけません。そんなにクリーンで経済的だというならば原発をなぜ首都圏に建設しないのでしょう。 首都圏から最も遠く離れた孤立した地域に建設し、そこに核廃棄場も建てるというのは原発が安全ではないということに対する同意であり、逆説です。

原発と核のゴミ捨て場を首都圏から最も遠く離れた所に建てるというのは差別です。地域と地域住民を差別することです。 地域と地域住民たちを排除することです。

50年前、原発を初めて建てる時も、住民たちの意向をろくに聞こうとしませんでした。50年が過ぎた後も同じです。原発があるところに、10万年以上も保管しなければならない核廃棄物の貯蔵施設を建設することについて、誰にも問わずにいます。それは民主主義に対する暴挙であり、暴力です。 国家暴力です。

灰色の空の下、怪物のようだった汝矣島の国会議事堂を眺めながら、釜山に帰る道で、国民の力のユン・ソギョル候補が、「PM2.5の発生を減らすため、脱原発を白紙化して、原発最強国を建設する」という公約を発表したというニュースを聞きました。ユン・ソギョル候補には、放射能の被害によってがん闘病する地域住民に対する愛民と憐憫の心はどこにもありませんでした。(カトリックニュース「今ここ」より)

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【高レベル核廃棄物管理基本計画と特別法案の撤回を促す全国行動・声明書】

政府は、原発立地地域に無限の犠牲を強要する「高レベル基本計画」を撤回せよ

国会は、原発立地地域を核の墓にする「高レベル特別法案」を撤回せよ

全国の原発立地地域と、ソウルを含めた全国の市民・環境団体、宗教界などは、コロナの懸念にもかかわらず今日この場に集まった。政府が、無責任に、高レベル核廃棄物(使用済み核燃料)を原発立地地域に保管しろという基本計画を立て、国会が、特別法案を通過させようとしているからだ。

政府と政界が、国民の安全と生命と人権を踏みにじり、未来世代に不平等を強要する現状況をこのまま見過ごすわけにはいかない。私たちは、政府と政界に、生命と平和、平等と人権のために良心をかけて国家政策を正すことを要求する。

韓国は1978年の古里1号機の商業運転を皮切りに44年の間に原発建設を拡大し、現在、合計26基の原発から出た高レベル核廃棄物を各原発に保管している。政府と原発事業者は、この44年間、高レベル核廃棄物の中間貯蔵施設や永久処分施設の建設場所を選定することもできないまま、原発を維持し続けてきた。

これまでの間、原発の近隣に住む住民たちは、原発を稼動することによって必須的に放出される気体と液体の放射性物質に露出されてきた。彼らは日常的に健康上の被害を受け、原発の様々な事故や、地震・台風などによる事故の脅威の中で暮らしている。

ところが今回、政府が樹立した「高レベル放射性廃棄物管理基本計画」と、国会に係留中の「高レベル放射性廃棄物特別法案」は、26基の原発から出た高レベル核廃棄物を敷地内に保管するようにする内容を盛り込んだ。これまでの「臨時貯蔵施設」と呼ばれる使用済み核燃料プールが飽和となれば、「敷地内貯蔵施設」という名で、高レベル核廃棄物の「乾式」貯蔵施設を全国の原発サイトごとに新たに建設せよという内容だ。

これは、原発立地地域に無限の犠牲を強要することであり、原発立地地域を核の墓にしようとするものだ。 私たちは、無責任な政府と政界の核エネルギー政策に対し、憤りを超えて惨憺たる心境だ。

政府は12月27日、原子力振興委員会(委員長、キム・ブギョム首相)を開き、産業通商資源部(以下、産業部。日本の経産省にあたる)が拙速に用意した、「第2次高レベル放射性廃棄物管理基本計画」を議決した。

この基本計画は、産業部が行政予告した後、わずか20日で確定したもので、産業部は基本計画の樹立過程において原発立地地域と全国の意見収集を経ておらず、意見聴取期間に提出された意見も無視した。25の原発立地自治体と近隣地域自治体、議会、市民団体が送った意見書を黙殺したのだ。それだけでなく、全国の市民・環境団体も政府に基本計画の審議の中断を要求したが受け入れられなかった。

これに先立ち昨年9月15日、共に民主党所属の24人の国会議員が、「高レベル放射性廃棄物管理に関する特別法案」を国会に発議し、11月23日、産業資源委員会の全体会議に上程した。現在この法案は、産業資源委員会の法案審査小委、与野党の幹事協議と案件上程を控えている。 この特別法案は、政府の基本計画と脈を共にし、高レベル核廃棄物の「敷地内貯蔵施設」建設を法制化する内容を含んでいる。

この「高レベル特別法案」を代表発議した金星煥(キム・ソンファン)議員は、昨年9月2日、この法案が産業部と協議を終えた法案だと明らかにした。そして産業部は12月7日、高レベル基本計画を行政予告し、政府は12月27日、基本計画を議決した。つまり、高レベル核廃棄物の「敷地内貯蔵」は、金盛煥議員をはじめとする共に民主党の国会議員たちと政府が積極的に推し進めたのだ。

我々は、共に民主党を強く糾弾し、政府の高レベル基本計画と国会の特別法案の撤回を要求する。

現政府をはじめ、国民の力、国民党、正義党などの政界は、高レベル核廃棄物の発生を最小限に食い止めるために脱原発の時期を明確にする「脱原発基本法」を制定し、全国民と真に疎通し、高レベル核廃棄物の処分対策を打ち出さなければならない。 そのために、我々は次のように要求する。

第一、政府は、「高レベル基本計画」を撤回し再樹立せよ。
第二、国会の金星煥議員らは、「高レベル特別法案」を、ただちに撤回せよ。
第三、政府は全国民参画を通じた高レベル核廃棄物管理政策を樹立せよ。
第四、与野党と政府は、脱原発基本法を制定し、核廃棄物の発生を最小化せよ。

2022年 1月 25日
「高レベル核廃棄物管理基本計画と特別法案の撤回を促す全国行動」参加者一同
参加団体:脱核釜山市民連帯、脱核蔚山市民共同行動、脱核慶州市民共同行動、ハンビッ原発全羅道圏共同行動、宗教環境会議(キリスト教、仏教、円仏教、天道教、カトリック)、2022脱核大統領選連帯

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信174号
(2月20日発行、B5-28p)もくじ

・台湾廃核運動史(NNAFJ事務局)
https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2555

 21年12月18日に行われた「第四原発の稼働を問う公民投票(国民投票)」。結果は、426万人が原発反対票を投じ、380万の賛成票を上回った。
 事実上の日本の輸出原発(原子炉は日立・東芝、タービンは三菱)であり建設凍結されていた第四原発は稼働しないことが最終決定した。台湾は2025年に原発ゼロとなる。
 台湾がいかにして、アジア初となる脱原発 =「非核家園」という悲願へと着実に向かいつつあるのか、これまでの台湾の脱原発運動を、ふりかえりつつ、日本と台湾の脱原発運動のかかわり、そしてこれからの日本の脱原発運動に示唆されるものについて考える。

1.第四原発反対運動の始まり
2.1003事件の衝撃
3.放射能汚染マンション
4.第3回ノーニュークス・アジアフォーラム
5.ランユ島、核廃棄物と闘う先住民族
6.日本からの原子炉輸出
7.映画「こんにちは貢寮」
8.「地震と原発の危険」を伝え続ける
9.福島をくり返さないで
10.非暴力直接行動
11.台湾から私たちが学ぶこと
12.原発の歴史は終結へ
13.私たちはどんな道を行くのか
                    
・憐憫のない人たち(チャン・ヨンシク)                 
・高レベル核廃棄物管理基本計画と特別法案の撤回を促す全国行動・声明書

・南オーストラリア州の放射性廃棄物処分場予定地で洪水(ミシェル・マディガン)

・欧州委、原発をEUの「グリーン投資」に位置づけ
 ― 内外からあがる批判の声 ―(満田夏花)
              
・今度は加害者になるわけにはいかない(片岡輝美)
・11.13 海といのちを守るつどい アピール(これ以上海を汚すな!市民会議)
・日弁連が、汚染水「海洋放出に反対する意見書」
              

・水戸地裁判決の意義と限界 ― 住民運動による突破こそ本命(大石光伸)  

・急展開の島根原発再稼働の動き(土光均)                

・柏崎刈羽原発をめぐる新潟県の現状について(小木曾茂子)        

・311子ども甲状腺がん裁判弁護団、元首相5人の書簡への非難に対し抗議声明 

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月城原発、24年間にわたり放射能漏れ

蔚山(ウルサン)市の56の市民団体などで構成する脱核蔚山市民共同行動は、放射能漏れが明らかになった月城(ウォルソン)原発を直ちに廃止することを要求する脱原発大会と対市民宣伝行動を行った

ヨン・ソンロク (脱核新聞より)

韓国政府の原子力安全委員会が構成した「月城(ウォルソン)原発トリチウム民間調査団」(以下、調査団)と懸案疎通協議会は、9月 10日、月城原発 1~4 号機の放射性物質漏えい調査の1次結果と今後の計画を発表した。

調査では、土からガンマ核種であるセシウム137も検出され、構造物の安全性に対する憂慮が拡大した。ガンマ核種はトリチウムとは異なりコンクリートを透過できない。つまり月城原発内の施設物に損傷があることを意味する。

調査団は、韓国水力原子力(以下、韓水原)が月城 1号機の使用済み核燃料貯蔵プール(以下 SFB)遮水幕の補修工事のための掘削作業を行ったことにより、SFB 遮水幕などの構造物の健全性の検査を行い、周辺の土壌と水の試料を分析した。


調査団が発表した1回目の調査結果を以下のように整理した。


★月城1号機の1997年使用済み核燃料貯蔵プール補修工事前後の遮水幕構造

■使用済み核燃料貯蔵プール(SFB)構造物健全性調査の結果
●遮水幕と有孔管の損傷を確認
●遮水幕が切れて汚染水漏洩

調査団は、SFB 遮水幕などの構造物の健全性を確認した結果、2012年、月城 1号機の格納建屋の濾過排気設備設置工事の際に、地盤補強用の基礎ファイル 7つが遮水幕(床の部分)を損傷させたことを確認した。

調査団はまた、2010年、月城 1号機の SFB 遮水壁の補強工事と 2012年 濾過排気設備設置工事の際に有孔管が損傷し、「詰まり」が発生、漏洩水が集水槽に入る機能が低下したことを確認した。


そして、1997年のSFB 壁の亀裂補修工事の過程で、底のコンクリート上部の遮水幕が遮水壁まで連なっておらず壁の端の部分から切れていることを確認した。当時、補修した遮水幕はもともとの設計とは異なる構造で施工されており、漏洩水が集水槽に集まる南側の流入ルートが基本的に遮断されていることも確認した。

■使用済み核燃料貯蔵プール(SFB)健全性調査の結果
●貯蔵プール壁を通じて冷却水漏洩を確認
●底の方からの漏水量がはるかに多いと推定

調査団は、月城 1号機の SFB 南側の壁のエポキシ樹脂の防水性能の欠陥と、垂直の壁の施工ジョイントで、冷却水が漏洩していることを確認した。

韓水原の資料によると、21年 7月 30日から 9月 9日までに収集された漏洩水は 2.7L であるが、すべての漏洩水が収集されてはおらず雨水と混合した。調査団は、冷却水漏洩を SFB の壁 4面のうち南側の 1面だけで把握し、床の部分は今も内部エポキシ樹脂の補修工事をしていないので漏洩水の量は多いと推定した。

■周辺の土壌と水汚染調査の結果
●土でセシウム137、370 ベクレル/kg検出
●試料 25個のうち 14個からガンマ核種検出
●漏洩水より、周辺汚染濃度が高く検出

調査団が、月城1号機 SFB 周辺の土壌と水試料(深度 9m で採取)を分析した結果、土壌ではセシウム137が最大 370 Bq/kg 検出された。セシウム137の自主処分の許容濃度は 100 Bq/kg だ。調査団は今年7月 27日から 8月 25日まで 25個の試料を採取し、そのうち 14個の試料からセシウム137を検出した。

調査団は、水の試料も分析したが、ここではトリチウムが 最大 756,000Bq/L(最小1640)、セシウム137は最大 140 Bq/kg 検出した。


調査団は、月城1号機の SFB の壁と遮水構造物が 1997年に元の設計とは異なって施工されたことを確認した。その後、遮水機能が機能しなかったと判断した。


調査団は、SFBの漏洩水のトリチウムの濃度(15~45万 Bq/L)よりも、周辺の水試料の濃度が高く測定され、セシウム137まで検出されたため、追加の流出経路を調査している。

■敷地境界の外部環境への流出の有無
●現在は外部環境の流出有無の判断は難しい

調査団は、現在は放射性物質の外部環境流出の有無を判断することは難しく、今後 精密調査を行う予定だと明らかにした。なお、現在まで海岸近くの地下水観測穴(深度約20m)では、トリチウムとセシウム137の有意な濃度変化が観測されなかったと明らかにした。

調査団は、全般的な地下水流動は敷地から海の方向に流れるが、構造物の影響を受けている地下水は構造物方向に流れるとした。また、月城原発敷地の上流から下流方向に流れるナサン川のトリチウム濃度を1回分析した結果、16.9~19.9Bq/L となった。今後、月1回のペースで河川のトリチウムの分析を進めるとした。

●韓水原、調査中の遮水幕と遮水壁を除去
●韓水原の非協力的な態度により調査に支障

韓水原は、調査団との協議なしに、調査対象である月城 1号機の SFB の遮水壁と遮水幕を除去した。調査団は、韓水原のこのような行為によって SFB 遮水構造物の状態確認が難しい状況だとした。

また、放射性物質の環境流出の調査のため、追加のボーリング孔を通じた地下水分析が必要だが、ボーリング孔の施工が遅延し円滑な調査に支障が出ていると説明した。


なお、韓水原が提供した資料のうち鮮明でない図面があり構造把握が難しく、調査団が要求したことについて韓水原が答弁資料の提出を遅らせており、調査が困難であるとした。

●報道から 3ヶ月過ぎて調査団を構成
●調査から 5ヶ月過ぎて一次調査の発表

月城原発の遮水幕破損の事実は 2019年と 20年に脱核新聞がすでに報道したとおりだ。しかし、韓水原はこれを補修しなかった。こうしたなか、慶州環境運動連合は韓水原の「月城原発敷地内の地下水のトリチウムの管理現況および措置計画」(2020. 6. 23)内部文書を入手した。

慶州環境運動連合は、韓水原の内部文書を分析し、その結果、月城原発の使用済み核燃料貯蔵プール(SFB)と埋設配管の周辺でトリチウムが漏出したことを確認した。


脱核新聞の慶州市の通信員は、この事実を脱核新聞 20年 12月号で「月城1号機が漏れている」という題で最初に報道した。さらに、慶州市と蔚山市の脱原発団体は、韓水原の内部文書をマスコミに公開し、記者会見を行った。


以降、月城原発の放射性物質の漏洩をめぐって「原子力学界」の教授などは「バナナ、イワシ、コーヒーにもトリチウムは存在する」などの主張をくり返し、世論を騒がせた。


しかし、原子力安全委員会が「月城原発トリチウム民間調査団」を構成して発足したのは 3月 30日だ。 放射性物質の漏洩が発覚して 3ヶ月が過ぎてからだった。


調査団は調査を開始したが、これまで一度も中間調査の結果を発表せず、9月 10日に初めて一次調査結果を発表した。


調査団は調査期間を 2023年 3月までとしている。

●オム・ジェシク原子力安全委員長、「国民に謝罪する」
●貯蔵プール防水施設をステンレス製に交換することを検討
●「基準ない」、放射能の非計画的漏洩を認定

オム・ジェシク原子力安全委員会委員長が9月9日、国会科学技術情報放送通信委員会の全体会議に出席し、月城原発の放射性物質漏洩について議員たちの質問に答えた。

オム・ジェシク委員長は「月城原発使用済み核燃料貯蔵プール防水施設であるエポキシ樹脂に問題が生じて7回にわたって補修した事実を認識しており、調査結果が出れば、エポキシ樹脂をステンレスに転換することを含めて対策を樹立することになるだろう」と話した。


また、「放射性物質が『意図されない形』(非計画的漏洩)で漏れたことを深刻に見ている」「国民が感じている不安と懸念について、私がもう一度謝罪する」と話した。


(オム・ジェシク委員長は、今年2月18日には、国会の科学技術情報放送通信委員会の全体会議で、「4万ベクレル/リットル(㏃/ℓ)というトリチウムの排出管理基準はあるが、原発内のトリチウムの量に対する規制や管理体系にはいかなる基準もない」などと話していた)。


そして、トリチウムが人体に害を及ぼすかどうかを問う議員の質疑に、「トリチウムを含むすべての放射性物質は基本的に有害だ」「トリチウムは放射線を出す放射性物質であり、放射線が人体に利益があるとはいえない」と述べた。

●蔚山市民団体、早期閉鎖を促す
●労働者と住民の健康調査を要求
●貯蔵槽をステンレスに替えることも要求

月城原発の基準放射線非常計画区域に100万人以上が居住する蔚山市の 56の市民団体の連帯団体である脱核蔚山市民共同行動は、9月 10日に声明を発表し、「原子力安全委員会は、放射能がダダ漏れしている月城 2,3,4 号機の稼動を直ちに中止せよ」と促した。

また、放射性物質が敷地内で長期間にわたって漏洩したことが確認されたとし、原子力安全委員会と韓水原に対して、月城原発で働いた履歴があるすべての労働者の健康調査と健康影響疫学調査を実施するよう要求した。さらに、住民の健康調査や、住民健康影響疫学調査を要求し、原子力安全委員会がすべての行政力を動員して放射性物質漏れを遮断することを促した。


蔚山共同行動は、韓水原に対して、月城2,3,4 号機の早期閉鎖を決定し、直ちに使用済み核燃料貯蔵槽をステンレスに全面的に替えるよう促した。


脱核蔚山市民共同行動は、対策なしの政府と韓水原をだまって眺めているわけにはいかないとし、今年 3月から月城 2,3,4 号機の早期閉鎖を求める署名を集めている。

●全国の脱原発団体の連帯ネットワーク
「全国 24基の原発の SFBについて、調査が必要」

全国の脱原発団体の連帯ネットワークである「脱核市民行動」は、9月10日に声明を出し、放射性物質が外部に流出したかどうか、これによって住民に被害が発生したかについて調査しなければならないとした。さらに、月城 2~4 号機を含めた全国の 24基の原発の SFBに対する調査も必要だとした。

脱核市民行動は、今回の調査結果はこれまで国内の原発がどれほどずさんに管理されていたかを物語るとし、これは韓国水力原子力と原子力安全委員会の職務遺棄だと述べた。     (翻訳/小原つなき)

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信172号
(10月20日発行、B5-28p)もくじ

・月城原発、24年間にわたり放射能漏れ (ヨン・ソンロク)           

・1003事件から30年目の公民投票で、第四原発を終結させよう(台湾環境情報センター)

・オーストラリアの原子力潜水艦の契約は、未来の危険 (ジム・グリーン)
https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2506    

・原潜推進における南オーストラリア州の役割に大きな疑問(ケビン・ノートン)ほか

・トルコの人々は日本の原発輸出にどう向き合ったのか
     ―『原発と闘うトルコの人々』を出版 ― (森山拓也)

・CoP 26 市民社会の声明 (世界252団体)

・東電に核を扱う資格はない ― 柏崎刈羽原発再稼働反対 ― (竹内英子)    

・東北電力は、被災原発・女川原発2号機の再稼働をするな! (日野正美)   

・避難計画の実効性を地元同意の要件に ~島根原発再稼働反対~ (山中幸子)   

・伊方原発仮処分、なるか3度目の差止め (小倉正)              

・10月停止の老朽原発・美浜3号機をそのまま廃炉に追い込み、原発全廃に前進しよう! (木原壯林) 

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両国の「反日」と「嫌韓」フレームは悪循環 ー 脱原発に国境はない。韓日反核連帯が必要 ー 小原つなき

汚染水の海洋放出に対して国際的に懸念の声が集まっていますが、これに関して日本と韓国の間で起きている状況は非常に複雑です。日本と韓国の反原発運動を熟知する筆者によるこの論考は、韓国のネットメディア「レディアン」(5月25日付)と脱核新聞に掲載され、大きな反響を呼びました。問題のありかが明確に描き出されていますので、ぜひとも日本の方々にも読んでいただきたい内容です。筆者の小原つなきさんは光州在住で脱核新聞編集委員。(原文:韓国語)

日本政府は4月13日、福島第一原発で発生する放射能汚染水の海洋放出を閣議決定した。国内外の反対世論にもかかわらず、「汚染水は十分に浄化した後、基準値以下にまで希釈して放出するので安全だ」との詭弁をくり返している。海洋放出以外に方法はないとし、むしろ原発サイトから海洋に汚染水を放出することは昔からの国際的慣行であると強調している。

日本から最も近い韓国で抗議の声が高まるのはごく当然のことだ。発表と同時に、脱原発を主張する市民社会団体をはじめ、漁業組合や大学生組織など各界が強く反対し、各地で連日、記者会見やキャンペーンなどがくり広げられている。国民的関心も高い。

韓国では、福島原発の汚染水を海洋放出することは「核テロ」だと訴えている。本来、人類が「核」を扱うこと自体が「テロ」だと言えるかもしれない。核が開発されて以来、今日まで数多くの「核テロ」が全世界でくり返されてきた。米ソ冷戦のあいだには、核保有国によって2000回を超える核実験がくり返されてきた。再処理関連施設でも、大量の汚染水が海に放出されてきた。中・低レベル核廃棄物の海洋投棄も1993年に禁止されるまでくり返された。「軍事的」であれ、「平和的」であれ、人類が核を扱う以上、核テロは、「日常」であった。

このような背景をふまえ、日本政府は、今回の汚染水海洋放出の決定に関してIAEAと米国の強固な支持を取り付けて、海洋放出を公然と正当化する手段を備えた。日本国内ではマスコミが、日本政府や東京電力の主張をそのまま代弁し、海洋放出を正当化することに加担している。

日本の保守的なマスコミは、韓国で一部の運動団体が旭日旗を破ったり燃やしたりしながら、「汚染水は日本が飲め」のような刺激的なスローガンを叫んでいる様子を積極的に報道している。韓国の人たちが海洋放出に反対する声を、「反日」運動のフレームで日本の世論に紹介することによって、汚染水問題の本質をあいまいにする絶好の機会としているのだ。

国民的感情の対立を、先にそそのかしたのは日本の政治家たちだ。一部の政治家による、「汚染水は飲んでも大丈夫だ」とか、「中国や韓国なんかに言われたくない」などの妄言は、韓国の人たちの感情を刺激するのに十分だった。汚染水の本質的な問題点を後にしたまま、両国で、「反日」と「嫌韓」という感情の対立が作られたのだ。このような民族主義的な感情対立をあおるのは、かえって汚染水問題の核心がわかりにくくなるという逆効果として作用する恐れが大きい。

一方、韓国で一部の運動団体が、福島原発事故の放射能による被害に関して、奇形動植物の写真など、正確でない「にせ」の情報を利用して不安感を増幅させていることも憂慮すべき点だ。たとえば、よく登場する奇形の写真のなかで、頭が二つあるサメの写真は、福島事故が起きる前の2008年にナショナル・ジオグラフィックで公開された写真だ。奇形ひまわりの写真も肥料の過多摂取などが原因であることが明らかになっている。その他にも、日本の有名芸能人たちの突然死や癌による死亡などに関しても「放射能被ばくのせい」という根拠のはっきりとしないうわさが事実のごとく語られる場合がある。

このような「怪談」に一番大きな傷を受けるのは、実際に被ばくによる被害を被っている人たちだ。放射能による被ばくは様々な危険性を内包する一方、その因果関係を証明することは非常に難しい。因果関係が明らかでないということを口実に、加害者である東京電力と日本政府は様々な放射能被害に対する責任を回避してきた。今回の汚染水の海洋放出の決定は、放射能被害を無視してきたこれまで態度のくり返しだ。したがって、確認されていない「怪談」を真実のごとく話すことは、海洋放出を中止させるのに全く役に立たない。むしろ韓国内での海洋放出反対の主張を、「非常にレベルの低いもの」として歪曲するのに口実を与えるだけだ。

同じ脈絡から、「汚染水の海洋放出容認=親日」というレッテルを貼り付けることも、話をさらに複雑にする。韓国の原子力安全委員会は、すでに昨年10月、福島汚染水の海洋放出について、「意味のある影響は現れないだろう」いう見解を明らかにしている。さらに、原子力マフィアの一員である韓国原子力学会もまた、4月26日、「汚染水は日本の主張どおり処理水と呼ぶことが正しく、放出しても韓国に及ぼす影響は無視できる水準だ」と主張した。このような立場を打ち出すのは、彼らが決して「親日だから」ではない。日本政府が指摘したように韓国の原発からも、放射能汚染水が日常的に海洋に放出されているためだ。

日本の主張どおり、とくに重水を使用する月城(ウォルソン)原発では、他の原発よりもはるかに多くのトリチウムが液体と気体の状態で自然界に放出されているのは事実だ。これは、原発を運営するすべての国で日常的に起こることで、各国の原子力関連機関は一様にこのようなやり方を正当化している。だから、程度の差をもって、とくに韓日の市民たちの間で、その点について議論するのはあまり望ましくない。量がどれ程にせよ、核種が何にあるでせよ、「毒」は、「毒」だからだ。それによって、被害と苦しみを受け続けているのは、両国の市民すべてだ。

韓国政府が、今後どのような戦略で日本政府を圧迫することができるかも懸念すべき点だ。最近、韓国政府は問題の解決に向け、韓日両国が協議する場を構築することを日本政府に打診し、日本政府が受け入れる意向を明らかにした。しかし、韓国政府が協議を有利に運ぶというよりは、むしろ、海洋放出に太鼓判を押す機会として日本に利用されるのではと懸念する声が聞かれる。

もし、韓国政府がこの問題について引き続き生ぬるい態度を取ったとしても、これをもって現在の韓国政府が「親日的」と批判するのも間違っている。文在寅政府の問題点は、脱原発を宣言しながらも、国内の核問題についてずっと不徹底で中途半端な二重的態度をとり続けていることだ。

文在寅大統領は最近開かれた韓米首脳会談で、原発産業の推進と輸出に関しての協力を約束するなど、脱原発と原発推進の政策のあいだを行ったり来たりしている。

とにかく、福島の汚染水の海洋放出は決して容認できず、必ず阻止しなければならない。しかし、韓国内で日本政府の決定を覆す有効な方策を探すのも容易ではない。依然として、一番重要なのは、日本の市民自らが日本政府や東京電力の蛮行を阻止する力をつけていくことだ。

汚染水の海洋放出は、福島原発事故の収拾作業の一環として行われる過程の中の一部に過ぎない。汚染水の海洋放出を防ぐためには、根本的に日本政府が提示している「廃炉ロードマップ」を全面的に再考することから始めなければならない。廃炉ロードマップは30~40年以内に事故現場をすべてきれいさっぱりに取り除くという、現実的に不可能な構想を前提としている。これが、日本政府が汚染水処理を急ぐ一番大きな理由だ。

これに対して、日本の市民社会は包括的な観点から多様な代案を提示している。韓国でもすでに多く紹介された「陸上長期保管」や「モルタル固化」などだ。追加的な汚染水の発生を防ぐために、事故が起きた原子炉を水ではなく空気で冷却する案もまた、日本の市民社会の核工学専門家たちが積極的に提起している。

残念ながら日本の市民社会の力は強くない。汚染水の海洋放出に反対の世論が60%を超えるともいわれるが、具体的な反対の声は日常的によく聞こえてこない。社会の過ちに対して市民が積極的に声を上げ、社会を変えていく底力を持っている韓国市民社会との大きな違いだ。だから、韓国をはじめ全世界の人々が共に声を出し、日本の脱原発運動陣営と市民たちに力を貸してほしい。昨今、韓日関係が急速に悪化したことにより、市民レベルで良好に続いてきた様々な交流までも打撃を受けている。日本政府と保守的なマスコミが、連日、「嫌韓」感情を煽っていることも事実だ。悪循環だ。

過去の先輩たちが繋いできた韓日の反核連帯の歴史は長くて深い。アジア地域の反核運動の連帯のために作られた「ノーニュークス・アジアフォーラム」は1993年、韓国の提案で始まった。それ以降、ほぼ毎年アジア各国で開催されており持続的な信頼と絆が構築されてきた。

脱原発は長期戦だ。韓国と日本の慢性的な感情対立を乗り越えて、各国が真っ向から核マフィアと闘っていくために、お互いを激励して応援できればどれほどすばらしいだろうか。脱原発の道に、国境はない。

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信170号
(6月20日発行、B5-28p)もくじ

・汚染水を海に流すな! 6.2国際共同アクション
https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2178
               
・理解と合意のない汚染水の海洋放出処分を中止し、陸上保管とトリチウム分離技術の実用化を求める要請書 (脱原発福島ネットワークほか) 

・福島県農林水産業・消費者の協同組合の共同声明                

・原発処理水の海洋放出「人権にリスク」 国連特別報告者            

・両国の「反日」と「嫌韓」フレームは悪循環 (小原つなき)            

・9年目に、ヨンドク原発建設計画、白紙化 (イ・ホンソク)           

・新古里5・6号機は、建設地選定・耐震設計など違法性が明確だ (キム・ソクヨン)  

・寿都町長選挙で「地層処分にNO!」 (小野有五)              

・柏崎刈羽原発反対50年 (矢部忠夫)                    

・「柏崎刈羽原発の『設置許可取り消し』を求める署名」へのご協力を訴えます
(柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会) 

・関電株主代表訴訟第2回口頭弁論・陳述 (畑章夫)              

・若狭の老朽原発の危険性 (山本雅彦)                   

・「6.6老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」に1300人が結集 (橋田秀美)

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福島原発事故10年・韓日インターネット共同行動 ― 汚染水を海に流さないで! 原発もうやめよう!

日本政府が、福島第一原発汚染水の海への放出調整を進め、決定しようとしているなか、1月に韓国側からインターネット共同行動の提案がありました。韓国46団体(下記*)と、武藤類子、川井康郎、満田夏花、伴英幸、佐藤大介のよびかけで、1月20日にスタート集会、2月1日に国際署名開始、2月9日に韓日共同討論会を開催しました。


■ スタート集会 (1月20日、Zoom、韓日150名)

「韓日の参加者150人が、Zoomで同時接続して、脱核(脱原発)を念願する多様なプラカードを持つオンライン・パフォーマンスを進行した。また、韓日共同声明、福島汚染水海洋放出反対の国際署名、インターネット共同行動を提案した」(プサン日報 1.20)

「韓日インターネット共同行動を、全国紙のキョンヤン新聞、連合ニュースなどをはじめ、いくつかのメディアが報じた。ネットの画面を共有しながら同時にプラカードを掲げたり、スローガンを叫んだりといったアクションを自分も初めてやったが、まあ初めてだったこともあってか、なかなか新鮮で楽しかったし、それなりの連帯感も味わえた(下の録画の37~38分)。ネット空間と現実が融合した、ウィズコロナ時代の国際連帯社会運動の一つの形なのかもしれない」(高野聡/ソウル在住)

【録画45分】http://urx3.nu/0YoD

*福島原発事故10年・準備委員会(キリスト教環境運動連帯、労働者連帯、緑色党、緑色連合、大田脱核希望、仏教生態コンテンツ研究所、仏教環境連帯、社会変革労働者党、サムチョク核発電所反対闘争委員会、市民放射能監視センター、子供コープ生協 (강남, 강서, 도봉노원디딤돌, 서대문마포은평, 서울, 송파)、エネルギー気候政策研究所、エネルギー転換フォーラム、エネルギー正義行動、霊光核発電所安全性確保のための共同行動、円仏教環境連帯、ウォルソン原発隣接地域移住対策委員会、正義党、政治するオンマたち、済州脱核道民行動、参与連帯、天道教ハンウル連帯、天主教男子長上協議会正義平和環境委員会、天主教イエス会社会使徒職委員会、天主教議政府教区環境農村委員会、天主教創造保全連帯、緑を描く、脱核慶州市民共同行動、脱核プサン市民連帯、脱核新聞、脱核エネルギー教授会、脱核エネルギー転換全羅北道連帯、韓国YWCA連合会、韓国天主教女子修道会長上連合会 JPIC文科委員会、ハンサルリム連合、核のない社会のための大邱市民行動、核のない社会のための忠清北道行動、核のない世界のための高敞郡民行動、核のない世界・光州全南行動、環境運動連合、環境財団、環境正義)

■ 韓日共同討論会(2月9日、Zoom、同時通訳、韓日200名以上)

「有意義だった、継続的に開催してほしい」「内容が充実していた」「韓日それぞれ約100人が参加する集会というのは画期的」などの感想が寄せられました。

★内容
司会 : ファン・デグォン(霊光核発電所安全性確保のための共同行動)
○ 発表:「福島原発事故以降の日本の原発と脱原発運動の現状」伴英幸(原子力資料情報室)
「福島10年、韓国の原発政策と脱核運動の課題」イ・ヨンギョン(エネルギー正義行動)
○ ディスカッション:「トリチウム汚染水を海に流さないで」満田夏花(FoE Japan)
「福島原発事故は終わっていない」後藤政志(元東芝原子炉格納容器設計者)
「慶州ウォルソン原発のトリチウム漏れ」イ・サンホン(慶州環境運動連合)
「脱原発を早めるための法制度改善を中心に」ホン・ドクファ(忠北大学社会学科教授)
○ 自由討論(約40分)

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信168号
(2月20日発行、B5-24p) もくじ

・「福島原発事故10年、汚染水を海に流さないで! 原発もうやめよう!」国際署名
https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2046

 
・「福島原発事故10年・韓日インターネット共同行動
― 汚染水を海に流さないで! 原発もうやめよう!」
            
・慶州ウォルソン原発のトリチウム漏れ (イ・サンホン)
             
・2020年の脱核課題は 2021年に続く (韓国・脱核新聞編集委員会)
https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2019

        
・ロシアの反核運動:諸問題、抗議活動とそれに対する報復の数々(後編)
(ロシア社会エコロジー連合/地球の友ロシア)

・柏崎刈羽原発 再稼動問題の要点 (佐々木寛)
                 
・子どもたちに核のゴミのない寿都を (2) (本田英人)
             
・1.24 関電本店前大集会 (松原康彦)
                     
・宗教者が核燃料サイクル事業廃止を求める裁判(宗教者核燃裁判) (内藤新吾)                    

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韓国 2020年の脱核課題は 2021年に続く

韓国・脱核新聞編集委員会  (脱核新聞84号より)

1.使用済み核燃料管理政策の「密室」公論調査


2019年5月に市民・社会(団体)や利害当事者を排除して発足した産業通商資源部(経産省にあたる)の「使用済み核燃料管理政策再検討委員会」は、19年11月から専門家の意見収集を始めた。

また、使用済み核燃料中長期管理政策に関する全国からの意見収集は、2020年5月23日から8月2日まで実施され、「月城(ウォルソン)原発使用済み核燃料の乾式貯蔵施設」(以下、マクスター)建設の可否を問う慶州地域の意見収集は、6月27日から7月19日までの3週間行われた。

専門家で構成された検討グループの11名は20年1月に、「形式的な手続きとして行われる公論調査(公論化)を廃棄すること」を要求し、辞退の記者会見を開いた。

全国の市民・社会は5月23日、全国の意見収集のための説明会の開催に抗議し、14地域中、12地域でデモをした。慶州地域住民説明会は、住民と市民社会の抗議で白紙に戻された。

その過程でチョン・チョンファ再検討委員長は、6月26日、公論調査の公正性の担保が難しいとし、委員長職を辞任した。

産業部と再検討委は、キム・ソヨンを新任再検討委員長に任命し、「コロナ19」を言い訳に密室の中の公論調査を続けた。

全国脱原発陣営は、政府に抗議し、大統領府の前で「使用済み核燃料のでたらめな公論調査の無効を宣言」した。

再検討委は21年上半期に「使用済み核燃料管理政策意見収集の最終勧告報告書」を産業部に提出する予定だ。

2.5万人が参加した蔚山住民投票

蔚山(ウルサン)市は、月城(ウォルソン)原発の基準放射線非常計画区域内に属し、約100万人が暮している。しかし、産業部と再検討委は、マクスター建設賛否意見収拾の過程から蔚山を排除した。

蔚山市民社会と労働組合などはこれに抗議し、「月城原発の使用済み核燃料保存施設(マクスター)の追加建設賛否を問う蔚山北区住民投票」を実施した。住民投票は5月28日から6月6日まで、事前投票、オンライン投票、本投票と、3段階で行われた。蔚山北区有権者の17万5138人のうち、5万479人(28.82%)がこの投票に参加した。投票者のうち、94.8%に当たる4万7829人がマクスター建設に反対した。

住民投票運動本部は住民投票以後、大統領府が投票結果を受け入れるよう求め、7月27日から8月25日まで、大統領府前で座り込みをした。

蔚山北区住民投票では、本投票の投票所を34か所に設置した。また、選挙事務員とボランティアは合計1081名が参加した。延べ3千人を越えるスタッフで開催した自主住民投票であった。

3.マクスター建設反対のたたかいは現在進行形

産業部と再検討委員会は、7月24日、慶州地域の意見聴取の結果を発表した。「145人の市民参加団のうち、81.4%がマクスター建設に賛成した」と。

産業部はこれを首相に報告し、首相は計画通りにマクスター建設をすすめることを指示、韓水原は7月31日にマクスターの建設着工式を行った。

しかし、慶州(キョンジュ)市と陽南面(ヤンナムミョン)、蔚山市の住民と市民団体は、「市民参加団」に韓水原の利害当事者が20人以上参加した事実を証拠として提示した。募集団の分布を反映しない市民参加団の構成など、公論操作疑惑を提起した。陽南・慶州・蔚山住民と市民団体は、産業部と国会に「公開検証」を要求したが、行われなかった。

住民と市民団体は今でも、月城原発の前で「マクスター反対」毎週ピケットデモと、海上デモなどをしている。全国833人の市民は、原子力安全委員会を相手にマクスター建設許可の取り消し訴訟も行っている。

4.台風で止まった核発電所

9月4日の台風9号の影響で、古里(コリ)1~4号機と新古里1・2号機の外部電源を喪失し、非常ディーゼル発電機が起動した。このうち運転中だった4基が運転停止した。新古里3号機も、台風で屋根の一部が損傷し、大気補助変圧器が停電した。9月7日の台風10号の際には、月城2・3号機もタービン発電機が停止し、運転停止した。

原子力安全委員会は、古里1~4号機は機械用変圧器に塩分が吸着し「フラッシオーバ」現象が発生し、スイッチヤードにある遮断機が開放され、外部電源を喪失したと発表した。新古里1・2号機は、送電するジャンパー線が送電塔に近づいたことによってフラッシオーバが発生し、外部電源を喪失したとした。

市民社会は真相調査委員会の設置を求めたが、原安委は再稼働を容認した。

新古里3・4号機は、7月23日の集中豪雨の際にも、スイッチヤード管理棟と送電設備が浸水した。

5.大田、都心の河川に放射能が流れる

20年1月、大田(テジョン)市の都心に位置する韓国原子力研究院の周辺の雨水管と河川の土壌で、セシウム137、セシウム134、コバルト60などの放射性物質が検出された。研究院の裏手の雨水管の入口では、セシウム濃度が最高138ベクレル/kgまで検出されており、これは平均濃度の59倍に達する。

3月20日、原子力安全委員会は、原子力研究院でセシウム汚染水が毎年約400~500リットルずつ、30年で1万5千リットル、河川に流れたと発表した。原子力安全委員会は、放射性物質が原子力研究院の内部の廃棄物自然蒸発施設から流れたことを確認した。

6.古里原発1号機の解体計画の公聴会

韓国水力原子力㈱が、20年7月1日から60日間、「古里1号機の最終解体計画書」の供覧と説明会を行った。さらに、住民たちの要求によって11月20日から、釜山広域市、釜山機張(キジャン)郡、蔚山市蔚州(ウルチュ)郡、蔚山広域市を対象に公聴会を行った。

韓水原は、2022年に古里1号機の解体計画が承認されれば、2025年までに使用済み核燃料を搬出し、2031年には敷地の復元に着手、2032年12月に解体を終了するという計画だ。

古里1号機の解体計画に関する全ての説明会や公聴会では、住民たちが「使用済み核燃料を十分に処分できないなら、完璧な解体とは言えない」と反発した。これに対し韓水原は、使用済み核燃料を政府政策に則って処分すると述べた。使用済み核燃料の処分をめぐって今後の難航が予想される。

7.霊光ハンビッ原発3号機、再稼動

格納容器で空隙が多数発見された霊光(ヨングァン)のハンビッ3号機が、20年11月14日から再稼動した。

ハンビッ3号機は、2018年5月11日から始まった計画予防整備期間(919日)において、格納容器で空隙、グリス漏油、鉄板腐食などが確認された。韓水原は124か所の空隙と、184か所の鉄筋露出部を反映した構造健全性評価を通じて、格納容器の健全性に異常がないことを確認したと発表した。

しかし、脱核エネルギー転換全羅北道連帯と全羅北道民衆行動などは、「3号機の構造健全性評価は、拙速・不良・セルフ評価であり、グリス漏油による亀裂要素と空隙の進行性の有無が反映されなかった」と主張した。また、建設工事の欠陥の責任を問わなければならない韓国電力技術㈱に、構造健全性評価を任せた過ちを批判して、責任者処罰を要求した。

8.ハンビッ原発5号機、原子炉ヘッド不良溶接

ハンビッ5号機の原子炉ヘッドの貫通管の不良溶接が、20年7月25日に初めて確認された。当時、作業者は、溶接材質が作業指示書に書かれたインコネル690材質ではない、ステンレス材質であることを確認し、7月26日の真夜中にこれを報告した。原子力安全委員会は、2日後の7月29日になって、不良溶接部の削除および再溶接を許可した。

当時、原子力安全委員会と韓水原は、これを作業者のミスだとした。しかし、10月29日、情報提供者を通じて、原子炉ヘッド不良溶接が、すでに明らかになったもの以外にも存在するということが分かった。

以降、原子力安全委員会は、84の原子炉ヘッドの貫通管のうち、3つの不良溶接を確認した。また、25の貫通管は映像不良などで確認できていない。さらに、原子力安全委員会は、手抜き工事に関連して、12月1日、光州(クァンジュ)地検に捜査を依頼した。

市民社会は原子力安全委員会が、7月に不良溶接をきちんと検証せず、作業の再開を許容したことに対して批判し、真相調査や責任者処罰を要求している。

9.新古里原発5・6号機訴訟、新古里原発4号機訴訟

グリーンピースと全国の市民など合計560人が原子力安全委員会を相手に提起した新古里5・6号機建設許可処分取り消し訴訟の二審判決が、2021年1月8日、ソウル高等裁判所で行われる予定だ。

この訴訟は、2016年9月に始まっており2019年2月に行われた一審(ソウル行政裁判所)では、重大事故の場合の放射線影響に対する評価が正しく行われなかったことなど、原子力安全委員会の一部の違法を認めたが、建設を中断した場合の損失が大きく、公共福利のために建設許可を取り消すことができないという「事情判決」を下した。

これとは別に、新古里4号機の運転許可取り消し訴訟も進行中だ。この訴訟は蔚山、釜山、慶州などを中心に全国732人が共同訴訟に参加し、2019年5月1日、原子力安全委員会相手に起こした訴訟であり、現在、一審裁判が進められている。

10.甲状腺がん共同訴訟、一審の最終段階

甲状腺がん共同訴訟の一審裁判が詰めの段階にさしかかっている。20年10月14日、釜山地方裁判所で裁判が開かれて以後、未だ弁論期日は決まっていないが、裁判部は、弁論を終結する意向をちらつかせた。

核発電所地域対策委員会らは、11月3日、「甲状腺がん被害者国会証言大会『ここに人がいる』」を開催した。核発電所地域対策委と市民社会は一審の裁判終結に先立って989人の嘆願書を集めており、これを裁判部に提出する予定だ。

この訴訟を触発した「ギュンド家族の訴訟」は、一審では勝訴したが、二審で敗訴、最高裁に上告したが、最高裁は、「審理不続行」として上告を棄却した。ギュンド家族の訴訟の二審で裁判部は、原発の周辺地域の住民の甲状腺がんの発病について、原発が排出する放射性物質との因果関係を証明できないとし、韓国水力原子力の側の主張を認めた。

11.福島原発汚染水対応

日本政府は、20年10月末、福島原発汚染水の海への放流の決定を延期した。11月20日、在韓日本大使館当局者は韓国の記者たちとの懇親会で「断言はできないが、今年中に放流案を決定する可能性がある。2022年夏頃を放流の時点として想定している」と明らかにした。

汚染水海洋放出の計画に対して、日本をはじめ、国際的な反対の声が高まっている。環境運動連合は「福島汚染水の海洋放流反対キャンペーン」を進行中であり、グリーンピースも持続的な反対活動をしている。

日本の市民団体である原子力資料情報室は、汚染水貯蔵タンク増設、または汚染水固体化を代案として提示している。

福島汚染水の海への放出について、福島県内の基礎自治体の約70%が「反対」および「慎重な対応」を要求している。

12.「大韓民国の津々浦々まで持って行け、核廃棄物」

核廃棄物のドラム缶の模型をトラックにいっぱい積んだ「大韓民国の津々浦々まで持って行け、核廃棄物」キャンペーン団は、10月24日から9泊10日の日程で、釜山・蔚山・慶州・蔚珍・大邱・霊光・大田・ソウルを走り回った。

キャンペーン団は、「使用済み核燃料管理政策の再検討」の問題点と核廃棄物の実態を市民に知らせ、社会的責任を訴えた。

キャンペーン団は、各地域で脱原発団体と共同して、核廃棄物のドラム缶を押して街頭行進をくり返し、サイレンが鳴ると地面に倒れるというパフォーマンスを行った。

しかし11月2日、警察の制止のため、彼らは大統領府前の広場にはドラム缶を押して入ることができなかった。同日、全国の脱原発団体は、大統領府への進入路で「拙速・でたらめ・密室 公論調査(公論化)の無効を宣言」する記者会見を開いた。警察は同日、記者会見を集会法違反とし、環境運動連合の活動家に出頭要求書を送った。    (訳/小原つなき)

「大韓民国の津々浦々まで持って行け、核廃棄物」キャンペーン、9泊10日の旅

核廃棄物がなくなるその日まで
「大韓民国の津々浦々まで持って行け、核廃棄物」キャンペーン、9泊10日の旅

キム・ヒョンウク(釜山エネルギー正義行動)  脱核新聞83号より

 核廃棄物ドラム缶の模型をトラックに載せた「大韓民国の津々浦々まで持って行け、核廃棄物」キャンペーンが、10月24日に釜山(プサン)を出発し、ソウルまで10日間のキャンペーンをくり広げた。蔚山(ウルサン)、慶州(キョンジュ)、蔚珍(ウルチン)、大邱(テグ)、霊光(ヨングァン)、大田(テジョン)を経由し、核廃棄物の問題を全国の市民にアピールした。
 釜山で開催した出帆式には、コロナ禍にもかかわらず60人あまりが参加した。そのあと、20個の核廃棄物ドラム缶の模型を引きながら3kmほど離れた宋象賢広場まで行進し、「10万年の責任」である核廃棄物の問題点を釜山市民にアピールした。市民からは、「(コロナ禍の)こんな時期に集会を開くなんて」「道路まで占拠して」などという批判の視線も注がれたが、実物大の「核廃棄物ドラム缶の模型」は、釜山市民らの脳裏に焼き付いたはずだ。実は、前日の夜、ドラム缶を載せたトラックをマンションの駐車場に止めておいたところ、警察に通報されるというハプニングもあった。結局、深夜にトラックを他の場所に移さなければならなかった。翌25日、釜山の代表的な観光地である海雲台や広安里海水浴場で、ダイイング・パフォーマンス(死のパフォーマンス)をし、蔚山に向かった。

 蔚山市北区では、今年の6月に民間主導で行われた住民投票で、94.8%の住民がマクスター(使用済み核燃料の乾式貯蔵施設)の建設に反対するという結果がでた。しかし、マクスターの追加建設は決まってしまった。それでも蔚山市民たちは挫折せず今も熱烈にたたかっている。毎週月曜日には、慶州のナア里の住民たちと共にマクスター建設反対のスタンディングを行っている。
 蔚山では26日に記者会見を開き、蔚山市庁前の車道を30人あまりが行進した。道路全体の車線を占拠したときは、少々解放感のようなものも感じられた。

 次の慶州で、「月城(ウォルソン)原発隣接地域移住対策委員会」のファン・ブンヒさんは「キャンペーンを見た多くの慶州市民が、漠然としていた核廃棄物のイメージを現実のものとして感じることができたようです。心の奥底で回避し忘れようとしていた存在を自覚することになったと思います。今回のような「核廃棄物ドラム缶行進」を、今後も、月に一度でも実施できればと思います」と語った。ファン・ブンヒさんの切実な思いが伝わってきた。

●「私、知っているよ、これ核廃棄物でしょ」

 ドラム缶を載せたトラックは、また走り始めた。蔚珍に到着した晩、私たちは、明日の記者会見に出席する方が運営する宿舎に泊まった。蔚珍社会政策研究所の所長がわざわざ宿舎を訪ねてくれて、蔚珍の現在の状況を私たちに説明してくれた。蔚珍は、新ハンウル原発3・4号機の建設計画が撤回されて一安心していたが、先日、郡議会の原発特別委員会が文書を発表したという。「新ハンウル原発3・4号機の建設の再推進を要求」する内容だ。こうした中、私たちキャンペーン団が蔚珍に来てくれたのは大変ありがたいと彼は言った。そして、彼は「全国の脱原発活動家たちと連携し、核廃棄物の問題についてももっと深く地域社会で議論しなければならない」と語った。
 蔚珍では地域住民と密接に話をすることができ、最も記憶に残った。
 また、蔚珍市場では、露店商のおばあさんたちが予想以上に、キャンペーンに興味を示してくれた。「私、知っているよ、これ核廃棄物でしょ」といいながら、マッコリをくれた。喜んで一杯いただき、歌も一曲歌ったら、これまでの疲れがすっかり解消した。
 10月28日は、大邱に向かった。大邱では懇談会が設けられた。大邱は反核運動が「不毛の地」だと言われてきたが、2011年の福島事故以後から現在まで毎週「脱原発火曜デモ」をくり広げている。合計で264回に及ぶという。懇談会では、新規の原発建設と原発の寿命延長の禁止を法制化しなければならないという意見を交わした。「脱原発基本法」草案を作り、実際に法制定まで進めることができれば、核廃棄物の問題に全国のすべての市民が正しく責任を負うことになるのではと感じた。

● 投げつけたい核廃棄物

 29日、霊光を訪れた。キャンペーン団が釜山を出発し霊光に到着するまでのあいだに、霊光にあるハンビッ原発5号機がまた稼動停止した。180日間の整備期間中に数百億ウォンをかけて蒸気発生器を交換して、再稼働するやいなや数日後に問題が生じたのだ。全羅道では数年前から「『核廃棄物をソウルに持って行け』という運動が必要だ」と主張されてきた。原発で生産される多くの電気はソウルと首都圏のために作られているにもかかわらず、その責任は原発が立地する地域住民たちに押し付けられようとしているからである。しかし原発立地地域の活動家たちにとって、「核廃棄物をどこかに持っていけ」という言葉を簡単に発することはできない。核による危険と不平等を誰よりもよく知っているからだ。本当に核廃棄物を投げ出したくなってしまった。
 30日、大田に向かった。大田の韓国原子力研究院の前で、地域の政党や市民社会団体らとともに記者会見を行った。
 ソウルへと向かう途中の世宗市では、産業通商資源部(経産省にあたる)の核廃棄物処理再検討委員会(以下、再検討委員会)が行った全国民の意見収斂の結果を発表する説明会と討論会が行われた。私たちは、世宗市政府総合庁舎に向かった。私たちは、「止めろ!でたらめ公論調査」と、声を張り上げて叫び、各地域の声明書も朗読した。しかし、再検討委員会は、「公論調査で国民の60%が『原子力の持続的な発展が必要だ』という結論を出した」と発表した。我々は抑えられない憤りを胸に、終着地のソウルに向かった
 31日、終着地のソウル駅では多くの人たちが私たちを出迎えてくれた。核のドラム缶の模型を引っ張って駅舎の中に入った。国会議事堂前にも行った。

 11月1日には、朝から雨が降り始めるなか、ソウル大学正門を訪れた。光化門(クァンファムン)では、雨が激しく降っていたが、パフォーマンスを始めると、うそのように雨がやんでくれて、まるで我々を助けてくれているようだった。

● 大統領府前の噴水広場、公権力が私たちを阻止

 11月2日、ついに大統領府前に到着した。しかし大統領府に行く道は険しかった。警察に囲まれ、一歩も動くことができなかった。警察は「集会はだめ、道路占有もだめ」で、何もかもだめだと主張した。私たちも一歩も引くことはできなかった。これ以上怒りを我慢できなかった。この日は、「脱原発市民行動」や「高レベル核廃棄物全国会議」など全国の脱原発団体が産業部の推し進めた再検討委員会と公論調査の過程を糾弾する記者会見を行った。各地の原発地域の住民も集まった。大統領府前では、ダイイング・パフォーマンスをしなかった。警察の前で、通り過ぎる市民もない中、パフォーマンスを行う理由はなかった。
 原発40年間の歴史の苦痛と痛みをだれよりも知っているからこそ、簡単に口にしたくなかったその言葉、「持って行け、核廃棄物」。みんなが責任を負わなければならない核廃棄物をどうするのか、国民すべてが自分の問題として共に悩み、その責任について共に話し合おうと、釜山を出発し全国を回り、ついに大統領府前まで行ったのに、結局、「持って行け核廃棄物、大統領が責任を負え」はスローガンだけで終わった。大統領府の前の噴水台広場には、結局、進入できなかったのだ。
 「大韓民国の津々浦々まで持って行け、核廃棄物」キャンペーンの9泊10日の旅は、こうして終わった。私たちは、いつか再び、核廃棄物の問題を訴えるためにソウルに向かうはずだ。10万年の責任を真剣に議論するその日まで、これ以上核廃棄物が発生しないその日まで、私たちは止まらないだろう。キャンペーン団と各地域で出会った皆さんに心から感謝します。

― 解説 ―
 現政権は、前朴槿恵政府が作った「高レベル放射性廃棄物管理基本計画」の問題点を認識し、2017年に「公論調査を通じて使用済み核燃料政策を再検討する」とした。
 2018年、主管部署である産業通商資源部は、市民社会と原発地域をメンバーに迎えて「再検討準備団」を構成した。しかし、産業部は再検討準備団内で合意しなかった事案を残したまま、2019年5月、一方的に市民社会と原発地域を排除し、「使用済み核燃料管理政策再検討委員会」を発足させた。
 再検討委員会は、月城原発使用済み核燃料保存施設である「マクスター」追加建設について、「地域実行機構」を構成したが、放射線非常計画区域内に含まれる蔚山市を地域実行機構の構成から除外した。
 また、再検討委員会と慶州地域の実行機構が20年7月に「建設賛成が多数」という結果を発表した「月城原発使用済み核燃料保存施設の建設賛否を問う地域公論調査」では、慶州市民だけで構成した145名の市民参加団のうち、韓国水力原子力(株)の利害当事者が20名以上参加したという「公論操作」疑惑が浮上している。
 「大韓民国の津々浦々まで持って行け、核廃棄物」キャンペーンは、現政権が「国民と疎通し、核廃棄物管理政策を樹立する」と約束した計画が、拙速で不誠実に実施されていることを批判し、高レベル核廃棄物の危険と社会的責任を市民に知らせるという趣旨で企画された。 (訳/小原つなき)

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信167号
(12月20日発行、B5-32p) もくじ

・ロシアの反核運動:諸問題、抗議活動とそれに対する報復の数々<前編>
 (ロシア社会エコロジー連合/地球の友ロシア)

・「大韓民国の津々浦々まで持って行け、核廃棄物」キャンペーン
 (キム・ヒョンウク)
  
・光州で世界人権都市フォーラム「原子力発電所と人権」 (キム・ジョンピル)
    
・オーストラリア上院が放射性廃棄物処分場計画を拒否
       
・子どもたちに核のゴミのない寿都を! (本田英人)
                
・「県民は同意していない!」
― 村井宮城県知事の女川2号機再稼働の「同意」に抗議の嵐 ― (舘脇章宏)
       
・原発バックフィット・停止義務づけ訴訟 
(青木秀樹) 
              
・12月4日 大阪地裁判決
原告勝訴! 大飯原発3・4号の設置許可取り消しを国に命じる
(島田清子)     

・「老朽原発うごかすな!」10・11・12月連続闘争 
(木原壯林)            

・老朽原発再稼働の地元同意に当たって慎重な検討を求める申し入れ 
(関電の原発マネー不正還流を告発する会・関電株主代表訴訟原告団・脱原発弁護団全国連絡会)                                   

・第2次「黒い雨」広島地裁判決控訴に抗議し 取り下げを求める共同声明に賛同を   

・東日本大震災と福島原発事故を題材にした小説を語る(6) (宇野田陽子)    

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韓国 自然災害に無防備な原発 ― 台風により10基の原発で事件・事故 ―

ヨン・ソンロク (韓国・脱核新聞より)

コリ原発

自然災害により、原発はいともたやすく停止を余儀なくされた。至上最大規模といわれた今回の台風は、主に韓半島の東海岸に位置する原発の安全に大きな影響を及ぼした。台風や大雨、猛暑など、今後ますます頻繁になると考えられる異常気象に備え、原発の安全対策を強化し、早急な脱核が必要だという指摘がでている。

台風9号「メイサーク」によって、9月3日と4日、釜山の古里(コリ)原発1・2・3・4号機と新古里原発1・2号機で、外部電源を喪失する事故が発生した。発電所の外部電源が切れると同時に、これら6基の原発のすべての緊急ディーゼル発電機が起動した。このうち運転中だった4基は自動停止した。

新古里3・4号機は、稼動が中断することはなかったが、変圧器の停電が発生し、新古里3号機のタービン建屋の屋根の一部が破損した。

6基の発電所の外部電源が喪失した正確な原因は、9月14日まで発表されなかった。韓国水力原子力(韓水原)と原子力安全委員会は、送変電の設備異常、塩分流入などが原因だという一部の内容を発表した。

9月7日には、台風10号「ハイシェン」の影響で、慶州の月城(ウォルソン)原発2・3号機が稼働中断した。タービン発電機が停止したため、原子炉の出力を減少させ運転を停止した。

続いて7日午後、慶北の蔚珍(ウルチン)にあるハンウル原発1・2号機の液体放射性廃棄物の蒸発器で放射線警報が発生した。14日現在、ハンウル1・2号機は正常稼働中であり、韓水原と原子力安全委員会は、放射能の外部漏れはないことを明らかにした。

原発の外部電源の喪失事故は大きな事故につながる可能性がある。原子力安全委員会によると、現在、国内の原発は、外部電源の喪失に備えて、各号機ごとに緊急ディーゼル発電機2台と代替交流発電機、1MW級の小型移動型発電機を備えている。また、発電所ごとに3.2MW級の移動型発電車を備えている。緊急ディーゼル発電機は、自動起動が可能であり、代替交流発電機は、運転員が手動で操作しなければならない。

台風によって原発の事件・事故が多く発生したことで、専門家のあいだでは、事故原因の調査を事業者と規制当局のみに任せず、外部の調査委員会を構成する必要があると指摘している。韓水原が台風に備えて事前に原子炉を手動停止しなかったことも批判の対象となっている。

原発が台風で一時停止したのは今回が初めてではない。2014年には局地的集中豪雨により古里2号機の循環ポンプ室が浸水し原子炉が停止した。2003年9月の台風「メミ」の際には、古里1〜4号機と月城2号機が停止する事故があった。

■ 釜山と蔚山で原発の安全対策強化を要求
― 原発の早期閉鎖と脱原発を訴える ―

9月3日と7日に直撃した台風により、国内原発26基のうち10基で事件・事故が発生した。これにより、釜山と蔚山(ウルサン)をはじめ全国で、原発の安全対策の強化と、早期閉鎖など早急な脱原発と、透明な情報公開などを政府に求める声が高まっている。

脱核釜山市民連帯は、台風9号「メイサーク」により古里原発の稼動が中断される事故が起きるやいなや、緊急に声明を出した。続いて9日には釜山市役所で記者会見を開き、政府に早急な脱原発の推進を促した。記者会見では「台風の被害がでた日から悪夢のような日々を送っている」と訴え、釜山市に対しても対策を促した。「釜山市は、原子力安全条例を通じて、原発事故の危険から市民の安全を積極的に保護する任務を明文化したにもかかわらず、今回の件について釜山市民に何の情報も通知せず、現場調査や事態の把握にも積極的に動かなかった」と批判した。そして、これら原発の被害状況を市民が直接確認し、原因と後続措置の状況が正しく確認され履行されるように、官民合同の真相調査団を構成することを要求した。

脱核プサン市民連帯の記者会見

■ 原子力安全委員会に安全対策の強化を要求する公文書提出、
蔚山市には外部調査委員会の構成を要求

脱核蔚山市民共同行動は、9月3日、4日、7日と相次いで3回にわたって声明を発表した。そして10日には、原子力安全委員会に公文書を送り、公式懇談会の開催と安全対策の強化を要求した。また、原発の安全性を高めるために、▲外部電源喪失に備えた緊急発電設備の強化、▲集中的に立地する原発の安全性評価の実施、▲原発再稼働への自治体の同意権を明記する法改正、▲放射能漏れに対応した「行政機関の対応マニュアル」のほか、「市民行動マニュアル」の作成と配布の義務付け、▲気候危機による安全設備の強化と放射能漏れ事故対応マニュアルの強化、▲テロ防止のための原発の設備強化などを要求した。

脱核蔚山市民共同行動は、報道機関に配布した3日の声明で、気候危機と台風に対し原発は安全性を担保することができないとし、政府に対し、月城2・3・4号機と古里2・3・4号機の早期閉鎖の決断を促した(月城1号機と古里1号機は寿命によりすでに閉鎖されている)。4日には、古里3・4号機で外部電源の喪失が追加的に発生すると、「6基すべての外部電源を喪失するのは初めての事態」であり、原発の安全基準の強化を促し、市民の知る権利のために原発の事件・事故に関して携帯のメッセージ通知を行なうように促した。7日には、月城2・3号機でタービン発電機の異常が確認されたことにより、蔚州郡と蔚山市が先頭に立って外部調査委員会を構成しなければならないと促した。

また、環境運動連合とエネルギー正義行動、緑の党なども声明を出し、「気候危機の時代において、原発は危険を抱えているに過ぎず、決して代案とはならない」と主張し、政府に早急な脱原発を促した。

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信166号(10月20日発行、B5-20p)もくじ

・韓国 自然災害に無防備な原発
― 台風により10基の原発で事件・事故 ―  (ヨン・ソンロク)

・トルコ シノップ原発、肯定的な環境影響評価に市民が抗議 (森山拓也)

・フィリピン 「バターン住民は原発再開を断固拒否する」

・声明:日立製作所の英ウィルヴァ原発事業からの完全撤退を歓迎
(FoE Japan)

・核のごみ最終処分場の建設は許さない (佐藤英行)

・女川原発の再稼働を止めよう! 9.26宮城県民大集会の報告 (多々良哲)

・「老朽原発うごかすな!大集会in おおさか」に1600人が結集 (木原壯林)

・関電原発不正マネー 検察捜査で真相に迫れるか (末田一秀)

・「黒い雨」控訴に関する抗議声明 (ひだんれん他)

・東日本大震災と福島原発事故を題材にした小説を語る(5) (宇野田陽子)

・【声明】いまこそ日韓関係の改善を

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「民衆の長いたたかいの歴史のうちの、ほんの一部分」 佐藤大介(反核アジアフォーラム日本事務局)インタビュー

韓国・脱核新聞 19年12月号(聞き手・まとめ/ヨン・ソンロク編集委員、原文:韓国語)

第20回反核アジアフォーラム韓国開催準備のために、佐藤大介さんが11月に韓国を訪問した。彼は、ソウル、光州(クァンジュ)、蔚山(ウルサン)、プサンをまわり、韓国の脱核活動家たちに反核アジアフォーラムの歴史と目標、意義を説明した。
彼がどんな生活を送ってきたか知りたくて、個人史を含んだインタビューを行なった。

■ 韓国5・18光州抗争の「映像」に接して、朝鮮語学科ぐるみの断食闘争

佐藤さんは、金芝河の詩集を1976年に書店で偶然目にした。死刑囚の詩集だとしてその本を買ったが、韓国の政治状況は全く知らなかった。そして1977年に大阪外国語大学の朝鮮語学科に入る。

1980年6月、日本に5月光州抗争の映像が入ってきて、各地で上映会が行なわれた。そして彼は、死刑宣告された金大中らを救援する運動を始めた。朝鮮語学科の学生たち数十名で断食闘争をした。彼は、金大中が死刑になり、韓国に暗黒の時代がくれば、光州市民や学生たちを二回殺すことになると思った。彼は光州で死んでいった人々を大切にするならば何でもしなければならないという気がした。朝鮮語学科ぐるみの断食闘争は、めずらしい運動で、毎日新聞、雑誌「世界」などで紹介された。当時、全港湾労組も韓国民衆に連帯し1日ゼネストを行なった。

■ 被曝労働現場に日雇い労働者を紹介しない合意

佐藤さんは1981年に労働福祉センターに就職した。大阪の釜ヶ崎、2万人の日雇い労働者の街だ。彼は全港湾労組に所属した。全港湾労組は、建設業、日雇いなど色々な職種を組織していた。

彼は福祉センターで、仕事の紹介、労災相談、賃金未払い相談などの業務を行なった。原発の定期検査などでのずさんな被曝労働についての相談もたくさんあった。彼は労働組合として当局と交渉をくり返し、被曝する現場には日雇い労働者を紹介しないことで1982年に合意した。その合意は今でも維持されているという。

■ 日本で解雇撤回要求する韓国労働者闘争に連帯

日本の左派労働組合は、経済闘争だけでなく、反戦・反核・反原発、そして日韓連帯運動も行なってきた。佐藤さんは1980年代、全港湾労組として、反原発運動、日韓連帯運動を行なった。日本のアジアスワニーという会社が韓国の工場を撤収し、韓国労働者が日本まで行って解雇撤回を要求する闘争をしたとき、彼はこの闘争を支援した。

■ 1988年から反原発国際連帯

佐藤さんは1990年代以降、労働組合運動より反原発運動に集中したという。日本各地の原発現地で反対運動する住民たちから学ぶことが多かったという。

韓国反核運動との交流は1988年から始めた。当時、アジア各国で原発を推進するために、そして、日本がアジア各国に原発を輸出するために、日本原子力産業会議が主導して「アジア地域原子力協力国際会議」が行なわれていた。日本がパブリックアクセプタンス(住民受容)のノウハウなどを他国に教えていた。たとえば韓国や台湾の原発PR館は日本のPR館とそっくりだった。

そのころ韓国の反核活動家から反原発国際連帯をしようという提案を受けた。推進派が活発に国際連携しているので、反対派も国際連帯しなければなければならないと。それが反核アジアフォーラム出発点になった。

■ 韓国と日本が率先して反核アジアフォーラム開催

第1回反核アジアフォーラムは日本で、第2回反核アジアフォーラムは韓国で開催することにした。日本の多くの団体、人々が、反核アジアフォーラム実行委員会を作った。第1回反核アジアフォーラムは1993年、日本にアジア各国から30人を招いて、4人ずつチームを組んで7つのコースをまわり、全国28か所で集会を行なった。反核アジアフォーラムは、常に原発現地を重要視することとした。

第2回反核アジアフォーラムは1994年に韓国で開かれた。霊光(ヨングァン)、古里(コリ)、蔚珍(ウルチン)の原発現地や、核廃棄場建設に反対した固城(コソン)、清河(チョンハ)などで集会を行なった。

以後、反核アジアフォーラムはほとんど毎年、台湾、インドネシア、フィリピンなどの地で、今まで開催されている。

■ 運動的な哲学

佐藤さんは加害者になりたくなかったという。1965年の韓日協定以後に日本企業が韓国を搾取する状況があった。そのため日本が韓国の独裁政権を支えてきた。日本がアジア民衆を搾取する経済構造もあった。また、原発は貧しい労働者を被曝させ、貧しい地域に建設される。都市住民は加害者と言える。

彼は、放射能の被害者にも加害者にもなりたくないと、日本の多くの人たちとともに、1992年から2018年まで、インドネシア・台湾・ベトナム・インド・トルコへの原発輸出に反対するキャンペーンをした。署名運動、三菱・日立・東芝の不買運動、国会での質問、政府交渉、対象国から活動家を呼んで集会、対象国を訪問して集会などだった。

彼は「民衆の長いたたかいの歴史のうちの、ほんの一部分」「いつかは原発も核兵器もなくなる」という。

佐藤さんとイ・サンボム蔚山環境運動連合事務局長(写真左上)は、2000年に新古里(シンゴリ)3・4号機建設反対闘争で縁を結んだ間柄だ

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信165号(8月20日発行、B5-24p)もくじ

・韓国 全国の市民社会、使用済み核燃料の公論化に対し無効を宣言 (ヨン・ソンロク)

・「民衆の長いたたかいの歴史のうちの、ほんの一部分」
佐藤大介インタビュー (韓国・脱核新聞)

・アルメニアの原発に攻撃の脅し (山崎久隆)

・被災原発・女川原発2号機の再稼働をめぐって (篠原弘典)

・広島原爆「黒い雨」裁判:その全面勝訴と国の控訴を考える (湯浅正恵)

・コロナと原発事故 (石地優)

・関電株主代表訴訟へ ~ めちゃくちゃでっせ関電 ~ (滝沢厚子)

・東日本大震災と福島原発事故を題材にした小説を語る(4) (宇野田陽子)

・「老朽原発うごかすな大集会 in おおさか」(報告とお願い)

・老朽原発うごかすな (中野宏典、小熊ひと美、けしば誠一、木村雅英、
堀田美恵子、中沢浩二、瀧川順朗、柳田真)

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