第20回ノーニュークス・アジアフォーラム in 韓国 ダイジェスト

韓国のスタッフ・通訳のみなさん、ソウル・釜山・蔚山・慶州・月城・蔚珍・三陟のみなさん、
ありがとうございました!

9月20日、プサン

日程

9月19日
ソウル会議:NNAF開会式
各国報告(台湾、フィリピン、インド、ベトナム、オーストラリア、韓国、タイ、トルコ、日本)
セミナー1. 福島原発汚染水問題
セミナー2. 核兵器と平和
セミナー3. 気候危機と原子力産業、原発輸出

9月20日
プサン記者会見 :「福島原発汚染水投棄反対」(日本領事館前)
プサン集会 : 1. 原子力と国家暴力・住民闘争(密陽ほか)、文化公演、

      2.老朽原発寿命延長(対馬報告も)

9月21日
古里(コリ)原発、セミナー :「コリ原発の歴史など」
蔚山(ウルサン)市庁で記者会見
蔚山集会 : 1. 使用済み核燃料処分問題 2. 各国の反原発運動の経験

9月22日
慶州(キョンジュ)集会 :「韓国の甲状腺がん訴訟」
月城(ウォルソン)原発前で集会 :「放射能被害住民の移転問題」
蔚珍(ウルチン/ハヌル)原発 :「住民との交流」
三陟(サムチョク)原発白紙化記念塔 :「三陟対策委と交流会」
「三陟の原発・核廃棄物処分場反対運動の歴史と石炭火力発電所新設反対運動」
宣言文と次回NNAFについて討論

9月23日
ソウル「9.23気候正義行進」
(3万人集会・デモ、脱原発を訴える!)
青年活動家交流会 


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主催:NNAF韓国組織委員会(エネルギー正義行動、グリーンコリア、正義党、脱核慶州市民共同行動、脱核釜山市民連帯、脱核新聞、脱核蔚山市民共同行動、YWCA連合会、環境運動連合など、43団体)

セウル1.2.3.4号 = 新古里3.4.5.6号
(日本経済新聞 23.7.19 より)

ソウル会議 「30年の活動を評価し、新しい30年を築くきっかけに」

設立から30年目を迎えた今年、NNAF は9月19日、ソウルの中心地、明洞にあるカトリック会館で開幕した。コロナ禍を経て4年ぶりの再会となり、各国の脱原発活動家や韓国の市民らは開催の喜びを実感するとともに、アジア各国の脱原発の最新情報と課題を共有。引き続きNNAFのネットワークの連帯を強め、よりアクティブにアジアの原発ゼロをめざすことも再確認した。

会議はイ・ホンソクさん(エネルギー正義行動)の司会で始まった。パク・ミギョンNNAF韓国組織委員会・共同委員長は、「現在のユン政権は、反対する住民の意見を無視して、原発の運転を60年まで延長しようとするなど、原発ルネッサンスを進めている。福島原発が私たちに警告したように、原発事故では危険が予測できず、コントロールもできない。原発を廃止することこそが、事故を防ぐ唯一の道だ。原発や核なきアジア、生命を守り平和を築くアジアの実現に共にとりくもう」とあいさつした。

佐藤大介NNAF日本事務局長は、NNAFの30年間の活動を振り返り、「アジアの各国で原発を進めようとする支配者たちに対する人々の闘いの歴史の1ページであり、民主主義を求める闘いだ」と語った。そして「都市の住民は原発近くの住民に対して加害者の立場であり、原発輸出国の住民は輸出先国の住民に対して加害者の立場にある。汚染水を海洋投棄する日本は加害国になった」「すでに世界中どこでも原発は産業として成り立たなくなってきた。私たちアジアの人々は闘い続け、最後は必ず勝利する。それが歴史の必然だ。素晴らしい仲間たちと、お互いに学び合い、励まし合って頑張ろう」と述べた。

続いて、ヤン・ギソクNNAF韓国組織委員会・共同委員長が基調講演に立った。「この30年間、皆さんの精力的な活動がなければ、韓国をはじめ、アジア各国には、より多くの原発が建っていた。米国スリーマイルやソ連のチェルノブイリ、日本の福島で甚大な原発事故が起きたにも関わらず、原発を推進する各国政府や産業界は、『原発は安全で安価だ』『気候危機の代案だ』という話をくり返している。しかし『核なき世界』の実現にとりくむNNAFの皆さんの献身的な努力のおかげで、原発は安全ではないということに人々は気づくようになり、新規原発の数は減少している」とNNAFの活動を称えた。

そして「原発を増やそうとする一部の国の動きがあり、その代表格が韓国だ。25基の原発が稼働し、18基の寿命延長だけでなく、小型原子炉(SMR)の研究開発や、トルコやフィリピンなどへの輸出の動きが出ている。韓国で稼働する原発周辺では、甲状腺がん、健康上の問題が起き、『我が体が証拠だ』と脱原発の訴えが出たが、政府と原発産業側は因果関係を認めず、裁判所も被害を認めなかった。しかし、明らかに被害があり、今でも大勢の人たちが放射性物質にさらされている。福島原発から海洋放出された汚染水の問題も一緒。福島の漁民と、日本の国民、周辺国の我々の心配、憂慮にも関わらず、汚染水放流が強行された。生物蓄積、生態系や未来世代に悪影響を及ぼすだろう。原発は、健康被害や処理できない廃棄物問題で、差別と不平等を絶えず作り出す。戦争でも攻撃の標的になる。安全な原発など存在しない。これまでの30年の活動を評価し、新しい30年を築くきっかけになったらと思う。核なきアジアの実現に向け、共に頑張ろう」と話した。


この後は、各国報告。
台湾のリン・チェンイェンさん(緑色公民行動連盟)、リン・シュエユアンさん(環境保護連盟)は、日本が輸出した第四原発の廃止を含め2025年5月に原発ゼロが実現することになった脱原発運動の状況と、福島の汚染水海洋放出に対する反対運動について報告した。
また、エミリー・ファハルドさん(フィリピン)、ヴァイシャリ・パティルさん(インド)、エイドリアン・グラモーガンさん(オーストラリア)、吉井美知子さん(ベトナム報告)、プラソン・パンスリさん(タイ)、プナール・デミルジャンさん(トルコ)、藤本泰成さん(日本)らが報告。

そして、福島原発汚染水問題、核兵器と平和、気候危機と原子力産業・原発輸出について、それぞれ報告とディスカッションが行われた。菅波完さん、湯浅正恵さん、川瀬俊治さん、豊田直巳さんらも登壇、意見を交わした。

(藍原寛子) 

プサン記者会見(汚染水投棄反対)、プサン集会(原子力と国家暴力、老朽原発寿命延長、対馬)

20日朝、KTXに乗り、2時間半かけてソウルからプサンへ移動しました。駅構内の食堂へ。キムチやスンドゥブなど何種類かメニューが置いてあり、自分で好きなだけ取るビュッフェスタイル。個人的にはおかゆがとても美味しく、お代わりしました。

その後記者会見現場に徒歩で移動。大きな交差点に、大きな銅像。誰だろう? 聞くと、秀吉の朝鮮侵略時に活躍した鄭撥(チョン・バル)将軍だそうです。その銅像の前が会見場所です。現地に到着すると韓国の警察らしき男性が何十人も待機しています。さっきの緩やかさから一変、物々しい雰囲気に包まれますが、こういった市民活動をされている皆さんは慣れた様子。


大きなプラカードを後ろで若い子たちが持ってくれています。その前に、私たちは3列に並びました。道行く人、路線バスで行き交う乗客、様々な視線を浴びながらマイクが次々に変わり、それぞれの国の参加者が思いを語ります。日本からは菅波さんがアピール。福島原発の汚染水投棄に抗議する声明が次々と出され、我々もシュプレヒコールを挟みます。


アジアから大勢の人が集まって、違う言語で同じテーマで主張をする、このことがとても印象に残っています。


記者会見会場から次の集会場所に向かう途中で「草梁」という地名を通りました。この地名に、自分は覚えがありました。江戸時代の対馬藩は、幕府から朝鮮との外交権を委託されていましたが、その外交するための日本人居留地を「草梁倭館」と呼び、常時対馬藩士が500名、草梁倭館に居住していました。現在、草梁に日本領事館があります。領事館のすぐ前には、大きな話題になっている「少女像」が、今も凛として前を向いていました。

集会では、「原子力と国家暴力」のテーマで、密陽の送電塔建設反対住民闘争や、各国の住民の闘争が語られ、「老朽原発寿命延長」問題では、プサンの方々がコリ原発、小原つなきさんがヨングァン原発(ハンビッ原発)、杣谷健太さんが川内原発、それぞれ寿命延長反対運動を報告しました。


会場で渡された分厚い冊子(予稿集)と、同時通訳を聞きながら何時間も座っているのは、皆さん相当に気力体力を消耗するものですが、会場では常にそれを続けるだけの栄養と甘いお菓子が用意されています。


私も10分ほどスピーチして、核ゴミ誘致に揺れる対馬の現状を伝えました。自分から見える対馬の現状ということで、自分なりに一生懸命考えたものが、これで良いのかも正直わからなかったのですが、スピーチが終わった後、とても大きな拍手をいただきました。

集会の合間に、韓国の小さな女の子たちがスルスルとステージに上がり、ギターに合わせて歌を歌ってくれました。それも、核のない世界を望む歌! ステージから女の子たちが降り、「これで終わりかな?」と思ったのもつかの間、女の子たちが会場にいる全員に対して音楽の中やさしいハグをしてくれました。これには私たちも大感激。自分も感動のあまり涙が出ました。


今回、初参加で右も左もわからない状況の中、周りの方々に助けられながらもやっとフォーラムについてこられました。フォーラムに参加されている方はみなさん、意思と意見をしっかり持ち、優しさと体力を兼ね備えた方ばかりでした。


核のない世界に切り替わるまで、世代を超えて私たちは主張を続けるでしょう。貴重な機会を経験させていただき、ありがとうございました。

(諸松瀬里奈/対馬の未来を考える会)

コリ原発(コリ原発の歴史など)

「原子炉から住宅街まで700メートルしか離れていません」。古里(コリ)原発1~4号機の敷地と住宅地を区切るフェンス沿いの道をバスで通過する際、現地スタッフから説明があった。「東海村と似ているな」。頭には原発敷地を出るとすぐに住宅地が広がる東海村の様子が思い浮かんだ。

現地視察当日の21日は、あいにくの小雨。コリ原発1~4号機が見えるカフェに向かう。カフェの目の前は海で、何艘もの小さな船が波に揺られている。昔から港だと思っていたが、以前は砂浜だったという。説明してくれた女性チョン・スヒさんは言う。「この集落には、鉄道も、外国船が来る港もあり、豊かだった。しかし、原発が建設されて釜山で一番貧しい地域になった」

川内原発(鹿児島県薩摩川内市)と同じだ。川内原発から一番近い滄浪(そうろう)小学校は廃校に。市中心部の商店街も活気を失っている。「地域振興のために原発を」。その掛け声が虚しく響く。


川内原発と同じ状況にあるのは、地域の姿だけではない。川内原発を運営する九州電力は20年の延長運転を申請し、現在、原子力規制委員会で審査中。コリ2・3号機でも事業者が運転延長を申請している。運転延長に対する闘いは韓国でも展開されており、川内原発の運転延長の是非を問う県民投票を求める県民投票の会メンバーの一人として、心強く感じた。


コリ原発1~4号機と新コリ原発1・2号機は釜山市、新コリ原発3~6号機(セウル1~4号機、22年11月に名称変更)は蔚山市だが、河川を一つ挟んだだけで、実質的には同じ敷地。現在、新コリ原発5・6号機が建設中である。コリ原発、新コリ原発の「放射線非常計画区域」には約380万人が居住。世界最大の人口密集地だ。日本では、東海第二原発の94万人(30キロ圏内)が最大で、桁が違う。


福島第一原発事故を受け、韓国でも「放射線非常計画区域」を8キロから20~30キロに拡大。蔚山市は計画区域を30キロとした。釜山市は30キロまで拡大すると人口が多すぎ、「実効性がない」との理由で、20キロとしたが、住民側の強い働きかけの結果、2022年末に30キロにまで拡大した。


古里集落は原発建設のために、集団移住させられた。避難計画を立てなければならないこと自体、その土地を追われる=集団移住のリスクを抱えているということに他ならない。川内原発が再稼働する際、避難計画の妥当性も議論されたが、国が「妥当」とする避難計画は、少々被曝しても人体に影響はないということが前提だ。韓国でも時間内に避難できるかどうかが懸念されているという。韓国でも、原発を推進する者にとっては、住民の多少の被曝は我慢しろということなのだろう。


集団移住、避難──。原発は一人ひとりの人生や尊厳を踏みにじる発電方法であることを改めて痛感させられた。人権を守るためにも、原発は一刻も早くこの世界からなくさなければならない。


(杣谷健太/川内原発20年延長を問う県民投票の会)

蔚山(ウルサン)記者会見、蔚山集会(使用済み核燃料処分問題ほか)

21日、釜山市のホテルからバスに乗り、約1時間半で機張(キジャン)郡にある古里(コリ)原発に到着した。古里原発が見えるカフェで、釜山エネルギー正義行動のチョン・スヒさんから古里原発近隣地域の歴史の変遷について話を聞いた。古里原発がある村一帯は、以前は美しい海水浴場が広がり、列車も走り、第一級の港の指定を受けた町として栄えた。しかし原発が建てられてからは、海水浴場は消え、温排水の影響で特産品のワカメの生産量も減少し、釜山で最も貧しい村に様変わりしてしまった。原発事業者の韓国水力原子力は、漁業権を買い取ったり、支援金制度を導入し、地域のインフラを整えるなどして住民懐柔を行い、原発に対する不満の声を抑圧し続けた。現在は、原発反対よりも、新規原発を誘致し原発と共生する道を選ぶ住民が増え、中には原発を誘致することで得られる補助金で移住を求める住民もいるという。

チョン・スヒさんの話を聞いた後、バスは蔚山(ウルサン)へと向かった。途中で韓国の最新型原発である新コリ原発3,4号機と完成が近づく5,6号機が見えた。この地域が世界で最大の原発密集地域であることを実感するとともに、原発建設に翻弄され続けた地域の名もなき住民の人生を思うと、心が重たくなった。

蔚山に到着すると、まず市役所で蔚山脱核市民共同行動が主催した記者会見が開かれた。蔚山脱核市民共同行動からは「ウルサンを核の墓場にしようとしている政府の試みと老朽原発の寿命延長などの原発推進政策に強く反対する」「原発は持続可能な地球環境を脅かす最も深刻な足かせとなる」といった発言があった。続いてノーニュークス・アジアフォーラム日本事務局からとーちさんが連帯のあいさつをした。とーちさんは、過去に日本が韓国に対して行った蛮行を考えると韓国に行けなかったが、阪神淡路大震災の時に、韓国からチョコレートの援助が届いたことに感銘を受け、それ以来、韓国製のチョコの包み紙が自分にとっての韓国行きビザになったというエピソードを涙ながらに語った。さらに「汚染水を海に捨てることは全世界に向けたテロだ」と述べ、「ノ~ニュ~クス!」と連呼し発言を終えた。

次に、会議場に場所を移し、韓日の高レベル核廃棄物問題を扱うシンポジウムが開催された。韓国からは蔚山脱核市民共同行動のヨン・ソンロクさんが発表した。文在寅政権は「使用済み核燃料管理政策再検討委員会」を設置し、社会的議論を促したものの、その内容は慶州(キョンジュ)市にある月城(ウォルソン)原発サイト内に乾式貯蔵施設を建設するという結果ありきの議論だった。さらに月城原発から蔚山北区は近いにもかかわらず、行政区が違うという理由で議論に参加すらできなかったことに反発した蔚山北区住民は、2020年に民間主導で住民投票を実施した。投票者数は有権者の約29%に相当する5万人で、4万7800人余りが反対した。ボランティアは3000人を超え、連帯の力を見せたが、政府は法的拘束力はないとしてこれを無視し、月城原発内での乾式貯蔵建設を決定してしまった。

一方、日本からは私が発表をした。原発推進と一体化した処分場探しのおかしさ、交付金をエサにした不透明な調査応募の方法などを批判した。また、処分場建設の第一段階である文献調査の応募により地域の分断に苦しむ北海道・寿都町の状況を説明した。岸田政権は文献調査実地拡大を目論んでおり、それを跳ね返す運動の強化を訴えた。

その後、各国の運動の経験が報告された。日本からは「原発さよなら四国ネットワーク」の大野恭子さんが発言した。障がい者支援施設で働く自らの経験を語り、原発事故が起きたら、障がい者を長期間引き取ってくれる施設を探すのは困難で、大混乱の中、被ばくし続ける状況になるだろうと警告した。「核と人類は共存できず、子孫に禍根を残さない」というメッセージで発表をしめくくった。


(高野聡/原子力資料情報室)

慶州(キョンジュ)集会
(韓国の甲状腺がん訴訟)

22日、私たちはウルサンから慶州にバスで移動し、月城(ウォルソン)原発周辺住民の健康被害と甲状腺がん訴訟について、移住対策委との懇談会をもち、 慶州環境運動連合のイ・サンホン局長と法務法人「民心」のソ・ウンギョン弁護士から話を聞いた。

月城原発団地には、月城1・2・3・4号機(カナダ型の重水炉)、新月城1・2号機(軽水炉)、中低レベルの核廃棄場、さらに使用済み核燃料乾式貯蔵施設が設置されている。月城原発の30km圏内には130万人が生活し、とくに原発から1kmの集落の住民は2014年から、原発敷地入り口にテントを張り、移住を求めて座り込みを続けている。この移住要求の背景には、正常運転中の原発から排出される放射性物質による健康被害があった。


2021年11月から22年12月まで、原発から5km以内の960人の住民を対象とし、ソウル大学医学部が環境省の委託により調査を行なった。その結果77.1%の住民の尿からトリチウムが検出された。またトリチウム濃度が高いほど、尿中のヨウ素値は上昇し、トリチウム値100Bq/l以上の住民は、大幅に正常値を超えていた。また月城原発から半径10km以内の住民と10〜20kmの住民のがん発生率を比較すると10km以内の住民のがん発症率は44%高く、胃がんでは82%、甲状腺がんでは73%高くなったとされる。


韓国各地の原発周辺地域の住民らは、現在、韓国水力原子力を相手に「甲状腺がん共同訴訟」を行なっている。原発から半径10km以内に5年以上居住していた住民もしくは原発労働者のうち、甲状腺がんを発症した618人(家族含む2855人)が2015年に提訴して、この損害賠償訴訟は始まった。第一審は2022年6月に敗訴、控訴審は今年8月に棄却されている。


原告らをこの困難な「共同訴訟」に動機づけたのは、2014年のキュンド家族訴訟の一部勝訴の判決だった。家族は30年以上、コリ原発から7.7kmで生活しており、パク原告の甲状腺がんと原発との因果関係が2014年に一審で認められた。しかし2019年の控訴審判決ではパク原告を含めて、他の家族の先天性自閉症や直腸がんも認められず完全敗訴となり、第三審では棄却され控訴審判決が確定した。


ソ・ウンギョン弁護士はこのパク原告の一審勝訴の要因として、ソウル大学のアン・ユンオク教授チームの原発周辺住民の疫学調査を挙げている。1991年から2011年まで19年2ヶ月にわたる36,176名を対象とする調査では、原発から半径30kmを超える地域の住民に対し、半径5〜30kmの近距離地域の住民の甲状腺がん発症の相対危険度は1.8倍であり、原発から半径5km以内の周辺住民の相対危険度は2.5倍とされている。この調査結果をもとに、パク原告の甲状腺がんは原発由来の放射線被曝が原因である可能性を認めた大韓職業環境医学会の診療記録鑑定が提出され、勝訴が導かれたとの分析だった。


しかし第二審においては、広島原爆やチェルノブイリ事故などの放射線事故以外では甲状腺がんの発症原因は不明であり、100mSv以下の低線量被曝については国内外で一致した見解がないことから、医療被曝を含む他の原因による発症も排除できないとして、原告完全敗訴の判決となった。


これらのキュンド家族訴訟の第二審の判決をなぞる形で「共同訴訟」の第一審判決は出された。キュンド家族訴訟の第一審でパク原告の勝訴要因となったアン・ユンオク教授の研究結果は全く異なった解釈をされ、「過剰診断」仮説をもとに、がんと原発との因果関係を否定している。また原告が主張した米国原子力規制委員会の原発の線量制約値については、ガイドラインに過ぎず放射線防護基準として解釈してはならず、韓国の法令違反でないことから、被告側の主張を受け入れ韓水原の責任を不問とした。


月城原発の居住制限区域は直線距離でわずか原発から半径914mであり、原発設計段階でより広範な地域住民の移住対策をとっていれば、健康被害は防ぐことができたとして、今後も移住の権利を求めて闘っていくとソ・ウンギョン弁護士は報告を結んだ。


原告敗訴要因となった100mSv以下のがんと放射線の因果関係を否定する言説は、広島・長崎の被爆者データーをもとに70年にもわたり国際的に構築された政治的「科学」言説である。「過剰診断」言説も併せて、日本でも極めて馴染みのあるナンセンスに暗澹たる気持ちとなった。


たとえば、環境省の資金が公益法人原子力安全研究協会を通り、WHO(世界保健機関)のがん専門機関であるIARC(国際がん研究機関)の「国際研究」に注ぎ込まれ、低線量被曝を否定する「過剰診断」を正当化する研究成果(IARCテクニカル・レポート第46号)に結実している。そしてそれが、まことしやかに日本や韓国の原発裁判で被害者住民を打ちのめす。


原子力安全研究協会は、原子力発電を持つ電力会社とその関連の企業からの出資で運営されている日本の組織であるが、そのHPに列挙される委託研究報告書には、2004年からは「原子力に関するアジア協力推進活動-報告書」(文科省委託事業)、そして2008年からは名前を変えて「アジア地域原子力協力に関する調査業務報告書」(内閣府委託事業)が毎年掲載されており、いかに原発推進活動が国境をこえた協力体制のもと、緊密に進められているかがわかる。その中で、原発「安全研究」も裁判情報とともに共有されているだろう。


こうした原発推進勢力の税金を使った緊密な連携に対抗するには、原発反対勢力の国境を超えた正義と真理を力とする連帯が必須と改めて感じた。


(湯浅正恵/広島市立大学)

月城原発の籠城テント前で

月城(ウォルソン)原発

月城原発前の座り込みテントの前で、放射能被害住民のファン・ブンヒさんたちから話を聞いた。

「月城原発から放出される放射能(トリチウム)によって被曝をしている。とくに子どもの被曝は切実な問題だ。そのため、移住対策を求め、座り込みや、毎週月曜日にはデモ行進を10年間続けている。デモ行進では、葬式の再現をするための『棺』や、廃棄物を象徴するドラム缶を引きながら、原発職員の出勤する時間帯に行っている。


政府は技術をアピールするだけで、私たちの言うことを聞いてくれない。事業者は原発の安全性をアピールするためにPR施設を建て、観光をかねたり、招待したりして見学をさせている。


どうして、このように原発の近くに居住できるというのか。放射能が自分の体の中に入っている。息子や孫、未来の人たちには、私のように体の中に放射能が入ることを認めてはいけない。甲状腺癌にさせるわけにはいかない。世界の国々の人々が同じように立ち向かうべき。たとえ生活が多少不便になったとしても危険な原発はなくすべきだ」。


(稲垣美穂子)

とーち撮影

蔚珍(ウルチン/ハヌル)原発

蔚珍原発の近くの砂浜で、「核から安全に暮らしたい蔚珍の人々」の代表イ・キュボンさんの話を聞いた。

「韓国国内ではもちろん、世界でもこれほど大型原子炉が密集しているサイトはないほどの原発団地が蔚珍原発だ。


1988年、蔚珍原発1号機が商業運転を開始。その運転開始から今日まで、蔚珍には8つの原発が建てられた。イさんは、卒業後すぐに反核運動をするために戻ってきて、30年が経つ。当時は故郷を守るため、多くの人々が反対運動に参加していたが、今はほんのわずかになってしまった。一方で、蔚珍原発を巡る課題は山積みだ。


・増設問題:文在寅前大統領の時には増設はしないとしていたが、原発を強力に推し進める現在の尹錫悦大統領は、9・10号機を増設することを発表した。丁寧に行うべき環境アセスメントなどの手順を経ずに、早々に進めている。


・寿命延長問題:蔚珍1・2号機は95万kW、3~6号機は100万kW、7・8号機は140万kWで、尹錫悦大統領はこれらの原発の寿命を延長させると言っている。今後新設される9・10号機は設計段階から60年運転を想定している。しかし、活断層が存在することが分かっており、住民たちは不安に感じている。


・被曝と補償の問題:政府と韓水原が専門機関に依頼したところ、海藻から放射能が検出されたことが分かった。しかし、政府は許容量以下の数値だとした。補償金が支払われているが、そうした金は共同体を破壊する。30年前に闘っていた反原発だった団体が原発賛成に回り、地域支援金を受け取っている。


・昨年、蔚珍全体の3分の1が焼失するほどの、韓国史上もっとも長い時間(213時間)消せなかった山火事が発生した。原発の1キロ前まで迫った。地元住民ら約4000人が公民館などに避難した。その際、大統領が「原発を死んでも守れ」という特別命令を出し、全国から消防隊が集結した。


・使用済み核燃料臨時貯蔵施設建設問題:2031年には原発立地4地域で、それぞれの原発敷地内に、使用済み核燃料の乾式の臨時貯蔵施設を建てるという。


・避難訓練をやったことがない


・地元には野党所属議員が一人もいない。小さい地域では、すべての社会団体が今の与党側についていることも悲しい現実だ。反原発運動の末に当選させることのできた議員でさえ、今や与党に所属している。


(稲垣美穂子)

とーち撮影

三陟の朝
(サムチョク原発白紙化記念塔)

眠りの微睡の中に一筋の糸が下りてきた。いつもなら再び落ちていくのだが今日は起きようと決めていた。外に出る。まだ陽は出ていない。河沿いを東に抜け長い砂浜にでる。東の水平線と雲の間からやがて光の矢が放たれた。 私の住む街では水平線から陽を見ることはない。そのせいか光はいっそう輝いて見えた。

半島の東海岸、三陟。日の出の名所として近年観光客が増えているという。何人もの人が東を見つめている。キャンピングカーも多数止まっている。そしてそこは核電白紙化記念塔がある場所だった。


昨日三陟に着いた私たちはまず8・29記念公園に降り立ち核電白紙化記念塔に向かった。8名の方が出迎えてくれ、闘いの歴史を悠久の勲のごとく語ってくれた。

1982年全斗煥政権下に核電予定地に選定されたのだが、当時は住民に知らされることはなかった。盧泰愚政権下の1991年に国会で議員が質問したことで、驚きの中で住民たちは知ることとなった。

しかし住民たちの動きは早く、核電反対闘争委員会が作られたが、どのように反対したらいいか模索の中の始まりとなった。とにかくできることを血のにじむ努力をして続けていった。1993年には38の集落の代表が集まって計画し、7000人の大集会を行った。歩ける人はすべて集まったとまでいわれている。当時の運動は苛烈で警察との軋轢も激しかった。刑事がまるで秘書のようにくっついて尾行していたという。その後も大規模な集会を何度も行い、1998年にはバス50台貸し切りにして電力会社本社へも出かけて行った。そうした運動の成果で、金大中政権下の1998年に白紙撤回を勝ち取った。


ほっとしたのもつかの間、その後、核廃棄物処分場候補地になったが、それも2005年に撤回させた。


しかし2010年になって今度は当時の市長が政府に核電誘致申請をした。核電に賛成する署名を集めたが、それは偽の署名、別人の署名を寄せ集めたものだった。


2014年には住民投票を行うこととなり、85%が反対に票を投じた


2015年には市役所の前で1万人が参加する集会、デモを行った。


そして長く続けてきた水曜ロウソクデモが352回を数えた2019年に、核電建設計画白紙撤回をようやく勝ち取った。


しかし核電を推進する側はまた狙ってくるだろうから、反核はこれからも続けていかなくてはならない、と三陟の人々は言う。


そして今度は、遠くに排気塔が見える石炭火力発電所の建設工事が行われてしまっているが、それに対しても8か月も工事を中断させるなど闘いを続けている。


私は次第に強くなってくる光を浴びながら昨日聞いた言葉を思い出していた。


ー この美しい海辺を守るために沈黙していることはできない ー


続ける理由をそう語った気持ちに、少し近づけた気がした。


(とーち)

次回NNAFは台湾で開催

22日夜、キム・ヒョヌさん(脱核新聞)の司会で、宣言文と次回NNAFについて討論を行った。

今回、台湾環境保護連盟2名と台湾緑色連盟3名が参加していた。次回のNNAFは、台湾で、「原発ゼロ」が実現する2025年5月に開催することが決定した。

ソウル「9.23気候正義行進」
(3万人集会・デモ、脱原発を訴える!)

ソウルの市庁舎前、車道の4車線を封鎖して長い会場ができていた。歩道側に連なる多数のテント。それぞれのブースでチラシを配っている。水飲み場もある。私たちは韓国NNAFスタッフの人たちにもらったお揃いの「Don’t Nuke the Climate」Tシャツを着た。子供達も歩き回っていて、お祭り騒ぎだ。多くの旗と横断幕。動物の帽子をかぶった若者たちもいる。

集会は大規模で参加者数は約3万人だ。労働、農民、女性、障害者、環境、宗教など各界の500以上の団体が参加したという。

遠くにステージがあり、スピーチが始まった。それを写す大型スクリーンがあり、話す声もはっきり聞こえ、話す人の姿も良く見える。NNAFスタッフで韓国YWCAのユ・エスダーさんが司会だ。開会のあいさつでは「気候危機の不平等に抵抗するために、私たちはここに集まりました」「ソウルで水害の被害がここ1~2年に起こっています。これには貧困層の住宅問題があるのです」。


9.23気候正義行進の「5つの要求」の中に、「原子力と化石燃料から再生可能エネルギーへの移行」がある。

*영상映像(4分)
https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=pfbid0KaurFAqYh9jcR6iYL7tBToDSCXzFkMJRfsyCRYervM965xy43rq7zh5mVRZFAMdFl&id=100000477953354&mibextid=CDWPTG

佐藤大介さんと小原つなきさんが登壇した。「ノーニュークス・アジアフォーラムが始まって今年で30年です。アジアの各地(日本・台湾・タイ・インド・フィリピン・ベトナム・トルコ・オーストラリア)から29名が参加しています。アジア各地の人々は、原発を推進する勢力と闘ってきました。原発は気候危機の代案ではありません。原発は、むしろ再生エネルギーの拡大を阻みます。気候危機を口実にした『老朽原発の寿命延長と新規原発建設』に反対する脱原発運動に連帯してください。台湾は2025年に脱原発が実現します。私たちも台湾に続きましょう。一緒に脱原発を実現しましょう」。

石炭火力発電所の労働者の話があった。「水・ガス・電気は商品ではない」「大地・風・太陽は商品ではない」「私たち火力発電所の労働者は、気候と環境の危機に対応するためにカーボンニュートラルの必要性を共有しています。しかし、発電所の廃止で失業する労働者の命を守り、適切な措置を講じることは政府の義務です」。


次々に人々が話し、1時間で集会は終わり、約2キロの行進が始まった。普通に歩けば30分だが、ゆっくり歩くので、1時間はかかるとのことである。


先頭は、5つの宗教団体。(韓国の宗教者は平和活動・社会活動に積極的にかかわるそうだ)。そこには、3つの頭を持つ鷹の巨大な作り物をかかげて歩く人々がいる。(伝説の鳥で、飢えと病気を防ぐ)。その後は、太鼓をたたく農楽隊の集団。

2番目に出発したのは、全国から集まった脱原発を訴える大集団。NNAFの参加者や、韓国緑の党の人々もここだ。私たちは後ろの方に座っていたつもりだったが、回れ右をした後では先頭に近くなった。

40分くらい行進した後、全員でダイ・インをした。災害警報が鳴り響き、全員が地面に寝た。寝転んで空を見上げると、美しい青空に秋のうろこ雲が浮かんでいた。その後、足の痛みをこらえて最後まで歩き切ることができ満足だった。


緑の党の会員である私は、今年の6月に開催されたグローバルグリーンズ大会in韓国にも参加した。持続可能な社会、平和な社会、脱原発を求めている。今回のノーニュークス・アジアフォーラムで韓国グリーンズの方々とも再会し、思いを共にし、幸せだった。人類は核と共存できない。それぞれの国の事情は似ている部分と違う部分があるが、核の無い世界で生きる権利を求めることは同じだ。2年後の台湾で、またアジアの人々に会いたい。


(伊形順子/緑の党)

青年活動家交流会

最終日の夜、各国の若者たちの座談会があった。NNAFスタッフの女性たち(コン・ヘウォン、ピョン・イニ、ユ・エスダー、ハバラさん他)を中心に韓国の若者たちが多かった。日本からは稲垣さんと私が参加。

韓国の参加者の中には、自然豊かな地元から都市に出てきて体調を崩したことから環境団体に入り反原発運動に関わる人もいれば、緑色連合でボランティアしたことがきっかけの人もいた。


私は、福島第一原発事故で原発に関心を持ち、現在は川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の運転延長の是非を問う県民投票を求める市民団体に関わっている。座談会では、どうやって若者を巻き込めばいいか意見を求めた。すると、韓国の一人から「私たちも若い人がどうすれば一緒に運動できるか関心を持っている」との答えが返ってきた。意外だった。


9月23日の気候正義行進には多くの若者の姿があった。それだけでなく、道端の人々の視線には温かいものが感じられた。韓国でも若い人をどう運動に巻き込むかが課題というが、私には、若い人が参加しているように映る。鹿児島などで私が取材、参加したデモはまったく異なる。道ゆく人の表情からは「邪魔だ」「うるさい」という雰囲気を感じる。


私は39歳。若者とは言えないが、私が参加している団体では最も若い。2014年の記者時代から今の団体を見ているが、顔ぶれは変わらず、若手が入っていないのが実情だ。


韓国の参加者の一人は「脱原発、脱石炭セミナーを開催し、いろんな人に声をかけている」と話した。私は本屋を経営している。お客さんに声をかけて、少しずつでも運動への参加者を増やしていかないといけないと強く感じた。


(杣谷健太)

*各国参加者について

台湾からの5人の参加者は互いにしっかりと結束しつつ、若者がプレゼンテーションを行い、年配者が韓国の若者たちと親しく語り合って脱核への道を伝えるなど、それぞれが持ち味を生かして「アジア初の脱原発」を実現する台湾の今を届けてくれた。

フィリピンのエミリーは、活動家が暗殺されるような厳しい状況の中でも、いかにして人々がひるむことなく原発に反対する運動を展開しているかを熱く語ってくれた。


インドのヴァイシャリは、詩を朗読するかのような優しい語り口から激しいアジテーションへと連なる素晴らしいスピーチで聴衆の心を揺さぶる。原発に反対することが国家反逆罪に問われる現状の中で、民衆が非暴力でどのように闘い続けているのかを鮮明に伝えてくれた。


トルコのプナールは、韓国各地で運動を担う人々の発表を食い入るように聞いては納得いくまで質問を続けていた。着工してしまったアックユ原発、黒海をはさんで戦闘が続くウクライナの状況に加えて、多くの人命が失われた今年2月のトルコ・シリア大地震の被害に直面して涙が止まらない時期があったと話してくれた。


タイのプラソンは、研究炉建設計画がくすぶり続けるタイの状況をユーモラスに語り、笑顔を絶やさない。環境活動家が命を奪われる事件はタイでも起きているからこそ、彼の姿には胸に迫るものがあった。


アジアのあちこちに仲間がいる。なんと心強いことだろうか。日本が汚染水を海洋放出して世界の人々の尊厳を踏みにじろうとしていることの愚を痛感する。まだまだやることがあると勇気を得た5日間だった。


(宇野田陽子)

右2人目から、エミリー、プラソン、ヴァイシャリ、プナール

「9.23気候正義行進」 3万人集会でのアピール

私たち日本人は、汚染水の海洋投棄を防ぐことができませんでした。 日本はアジア諸国を侵略、植民地支配しましたが、今度は放射能の加害者になってしまいました。 日本人の一人としてお詫び申し上げます。 汚染水の海洋投棄を止めるために、今後も日本でも、反対し続けます。

1993年に発足した反核アジアフォーラムは、今年で30年目です。今回のフォーラムは、5日間の日程で、ソウルで会議を開いた後、釜山、古里、蔚山、慶州、蔚珍、三陟に行ってきました。 韓国以外では、日本、台湾、フィリピン、タイ、インド、トルコ、オーストラリアから、29人が参加しました。

過去 30 年以上、アジア各地の人びとは、原発を推進する勢力と闘ってきました。 脱原発運動は民主主義を求める闘いでもあります。

今、世界中で気候正義と脱原発を求める声が高まっています。原発は気候危機の解決策ではありません。 事故の危険性と核廃棄物問題を抱えている原発は、差別と不平等を深め、むしろ再生エネルギーの拡大を阻みます。 気候危機を口実にした「老朽原発の寿命延長と新規原発建設」に反対するアジア各国の脱原発運動に共に連帯してください。

私たちは、原発に対抗し続け、最終的には勝利するでしょう。 それが歴史の必然です。しかし、できるだけ早く勝利しなければなりません。 チェルノブイリや福島のような大事故が繰り返される前に、原発を終わらせなければなりません。 台湾は2025年に脱原発が実現します。私たちも台湾に続きましょう。 私たちの子孫のために、一緒に脱原発を実現しましょう。脱核!  

佐藤大介・小原つなき

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信184号
(23年10月20日発行、B5-28p)もくじ

<第20回ノーニュークス・アジアフォーラム 報告>
・日程など
・ソウル会議「30年の活動を評価し、新しい30年を築くきっかけに」 (藍原寛子)
・プサン記者会見「福島原発汚染水投棄反対」、プサン集会「原子力と国家暴力、老朽原発寿命延長、対馬」  (諸松瀬里奈)
・古里(コリ)原発「コリ原発の歴史など」 (杣谷健太)
・蔚山(ウルサン)記者会見、蔚山集会「使用済み核燃料処分問題ほか」 (高野聡)
・慶州(キョンジュ)集会「韓国の甲状腺がん訴訟」 (湯浅正恵)
・月城(ウォルソン)原発  (稲垣美穂子)
・蔚珍(ウルチン/ハヌル)原発
  (稲垣美穂子)
・三陟の朝(サムチョク原発白紙化記念塔) (とーち)
・次回NNAFは台湾で開催                         
・ソウル「9.23気候正義行進」(3万人集会・デモ、脱原発を訴える!) (伊形順子)
・青年活動家交流会  (杣谷健太)
・NNAF in 韓国 に参加して (エミリー・ファハルド、プナール・デミルジャン、宇野田陽子、大野恭子、吉井美知子、渡辺美奈、川瀬俊治、菅波完、谷雅志、豊田直巳)
・上関町に関電と中電が中間貯蔵施設を計画、その後  (三浦みどり)
・柏崎刈羽原発の検証、県(知事)のていたらく  (石山謙一郎)
・12.3「とめよう!原発依存社会への暴走 1万人集会
  -うごかすな老朽原発-」に総結集を (木原壯林)
・「ストップ!女川原発再稼働」紙面デモ(意見広告)

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「海は、私の生業であり、人生そのもの」 キム・ヨンチョル 全国漁民会総連盟 執行委員長 インタビュー

脱核新聞 23年5月号 (聞き手・まとめ/小原つなき編集委員)

キム・ヨンチョル氏は、全羅南道麗水市の「ヨジャ湾」の真ん中に位置するヨジャ島で生まれ育った。幼い頃から家族が漁業で生計を立てるのを見ながら海と共に生きてきた。若い頃はソウルで生活したこともあるが、15年前に故郷に戻り、ハイガイの養殖業を営んでいる。漁業が生業だが、漁民が直面する様々な問題を解決するために活動する、自称「漁民活動家1号」だ。

(インタビューの後に、キム・ヨンチョル氏が「6.20 汚染水を海に流すな!福島行動」に寄せたメッセージを掲載)

― 汚染水の放流計画に関して韓国の漁民たちはどう思っているか

初めて知らせを聞いたとき、本当に呆れた。日本政府や国際原子力機関(IAEA)などは安全だと主張しているが、そんなに安全なら、なぜすぐに海に放流せずこれまでタンクに保管してきたのか聞きたい。放っておいてはいけない問題であり、政府や政界が先頭に立って阻止しなければならないと思う。


韓国の漁民の立場としては、水産物の消費萎縮や減少について心配せざるをえない。汚染水が放流される瞬間、韓国の水産業と漁業は滅びると思う。ほとんどの漁民は、その点について深く心配している。


― 汚染水の放流を防ぐために、どのような具体的な行動をしているか


漁民の特性上、行動を一致させることは非常に難しいことだ。社会構成員の中で一番組織化が難しい職業群が漁民だと言っても過言ではない。何日も海に出て荒々しい波と闘い魚を捕る漁民もいれば、私のようにいろいろな養殖業を営む漁民もいる。同じ水産業でも業種によって生活パターンが非常に多様だ。しかし、海で生計を立てる漁民として共同で対抗しなければならない課題に向かって力を合わせる必要がある。


私は昨年、全国漁民会総連盟を結成した。「包括的・漸進的環太平洋経済連携協定(CPTPP)に対して、漁民の声をあつめて対応するためだった。福島の汚染水への対応も同様だ。漁民の生計がかかっている問題なので、漁民自らが乗り出すべきだと思う。全国漁民会総連盟は汚染水の海洋放出に反対するために、これまで海上デモや集会を行ってきた。今後も、ソウルの国会や光化門、龍山(ヨンサン)大統領室前で大規模な漁民集会を開くことを計画している。


― 漁民は政府や自治体の対応をどう見ているか


韓国政府の対応は弱すぎると思う。このようなやり方なら、汚染水の海洋放出を既成事実と認め、日本政府に免罪符を与えるのと同じだ。政府は漁民の生存権だけでなく、国民の食と生命、安全な未来を守る義務がある。汚染水の海洋放出がひとたび始まれば、あとで後悔しても取り返しがつかない。韓国政府は海洋放出されれば、海水と水産物に対する放射能検査を強化し、水産物の消費のための広報に重点を置くと話しているが、後の祭りだ。汚染水の海洋放出を実質的に防ぐために、韓国政府ができることはすべてしなければならないと思う。そして自治体と市民社会、国民が皆一丸となって対応してほしい。


― 汚染水の海洋放出に関する市民団体の反対行動を見たことがあるか


市民社会団体が先頭に立って問題解決に努めているのを見て、漁民の一人として感謝している。最近、私が住んでいる光州・全羅南道地域でも、「放射能汚染水海洋投棄阻止・光州全南行動」が結成されて私も参加している。惜しい点があるとしたら、与・野党の政治グループがこの問題を政争に利用する傾向があるということだ。客観的な根拠と人類共通の常識でこの問題を見つめ、阻止のために立ち向かうべきだと思う。また、一般市民がよく理解し、関心を持つように大衆的な広報がもっと必要だと思う。


― 2011福島原発事故当時に受けた打撃は


福島原発事故が発生し、放射性物質を含む海水が韓国にも流れてくるという報道が出た時、国内の水産物の消費が40%減少した。


今回の福島原発汚染水の海洋放出が現実になれば、再び水産物の消費を忌避する現象が起きるだろう。アンケート調査によると、回答した国民の80%以上が、福島の汚染水が海洋放出されれば水産物の消費を控えると回答したという。ため息が出るばかりだ。


一部の漁民は、韓国政府が汚染水の海洋放出を防げないのならば、むしろ、知らんぷりして静かにした方が得策なのではないかという。また、海はすでに核保有国の核実験で十分に放射能で汚染されているため、福島の汚染水について騒がないほうがいいという人もいる。しかし、私はそうは思わない。放射能が私たちの体に有害だということは変わらない真実だ。だから、当然多くの人がこの問題について知らなければならず、反対しなければならないと思う。


― 漁民にとって海はどんな存在だと表現できるだろうか


海は、私の生業であり、人生であり、母の懐のような暖かい場所だ。私たちが海を捨てれば海も私たちを捨てると思う。だから私は海を大切にして、いつまでも守りたい。海を含めて、地球というものは、どの国に所属するものでもなく個人の所有物ではない。


地球を病ませ、人間の生命に危害を加える放射能汚染水の海洋放出は、必ず防がなければならない。言葉だけでなく行動で実践できるよう市民社会が共に力を合わせなければならないと思う。


― 最後に言いたいことは


汚染水の問題だけでなく気候危機など、多様な要因で海がますます病んでいる。海で生計を立てている漁民にとって深刻な現実だ。政府をはじめとする行政は「魚類資源保全」という名前の下に、漁民に各種規制を加えているが、海を誰よりも理解し大切にしているのは他でもない漁民だ。だから規制だけするのではなく、漁民が自ら海を守る自由、主体性と自律性が認められることを願う。


日本でも汚染水の海洋放出を望む漁民は一人もいないと思う。日本政府と東京電力は、何よりもまず、彼らの声をきちんと聞かなければならない。そうすれば答えは自然に出てくるだろう。

韓国・全国漁民会総連盟の執行委員長、キム・ヨンチョルさんからのメッセージ

(6月20日福島市での「汚染水を海に流すな!福島行動」で代読されました。以下、抜粋です)

 福島第一原発事故で発生した汚染水の海洋放出を阻止するために、日々奮闘されている日本の市民の皆さん、福島の漁民の皆さん、こんにちは。私は、漁業を生業とするキム・ヨンチョルと申します。


 海は私たち漁民にとって生活の基盤です。生涯、海だけを見つめながら暮してきました。海は、住み慣れた我が家であり、仕事場であり、家族・友人のような人生の同伴者でもあります。海にいつも感謝の気持ちを捧げながら生きてきました。


 それなのに、隣国の日本が原発事故で発生した放射能汚染水を海に捨てるというとんでもない計画を立ててしまいました。この知らせをはじめて聞いたとき、私はたいへん驚き、慌てずにはいられませんでした。汚染水の海洋放出は、私たちのような漁民の暮らしだけでなく、この大切な海を滅ぼすということです。


 完全に安全だと検証されるまで、汚染水を一滴も海に流させないようにする道だけが、いま私たち漁民が全力でとりくまなければならないことだと思います。私たちが沈黙すれば、日本政府は私たち漁民が海洋放出に同意したと理解するでしょう。


 韓国で汚染水の海洋放出に不安を感じる人たちは、すでに海産物の消費を控えるようになっています。すでに被害が出始めています。海洋放出が現実になれば、私たち漁民の生計は完全に破綻するでしょう。私たち漁民は生きていけなくなります。


 ひとたび汚染水が海に捨てられると、再び拾い集めることはできません。子供たちに核汚染のない海を譲り渡すために最善をつくしましょう。尊敬する日本の市民の皆さま、漁民の皆さま、韓国と日本という国境を越え、「汚染水の海洋放出を阻止する」というたった一つの目標に向けて、最後まであきらめず、共に頑張って闘い抜きましょう!

*関連【 放射能汚染水海洋投棄反対、全国漁民大会 】
― 全国漁民2000人、第2回全国行動の日(6月12日)に参加 ―
https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2692

「放射能汚染水海洋投棄反対、全国漁民大会」ー 全国漁民2000人、第2回全国行動の日に参加 ー

ミンギ(環境運動連合) 

国会前で6月12日、放射能汚染水海洋投棄阻止行動が主催した「第2回全国行動の日」に、全国の漁民2000人が集まった。まさにこの日、日本政府が汚染水海洋放流の2週間試運転を開始した。

日本政府は汚染水問題をめぐって嘘をくり返している。とくに「福島漁民および関係者の理解と同意なしに汚染水放流はしない」という約束も破った。最近、福島近隣3県の漁民が明らかにした「汚染水放流に断固反対する」という立場と、太平洋を巡る世界市民の反対にもかかわらず、今夏の海洋放流を固守している。

チュ・ヘグン全国漁民会総連盟会長は「この集会は全国漁民の声を集めて放流を防ぐための場」とし、「韓国政府と政界は何の対策もない。国民が感じる恐怖と脅威を解決してほしい」と訴えた。

連帯発言をした公共給食協同組合のキム・ウンジュ理事長は「汚染水海洋投棄は、水産業従事者にも、水産物を消費する国民にも、青天の霹靂のようなことだ。現在と未来の生存と健康の問題であり、政府と国民が共に対応して、必ず防がなければならない」と述べた。

キム・ジョンシク全国漁民会総連盟副会長は「国が私たちを守ってくれなければ誰が守ってくれるだろうか。私たちを守ってほしいとソウルに集まった」「私たちの生活の基盤である海を奪われることはできない。漁民が団結して力を集めよう」と強調した。

続いて集会参加者たちはプラカードを掲げてウェーブを行った。

日本福島の小野春雄漁民のメッセージが読まれた。「海は漁師の仕事場だ。ところが汚染水海洋放出によって、再び福島原発事故直後のような悪夢をくり返すことになりそうだ」「海洋放出以外の方法はいくらでもある」。

釜山、全羅南道、慶尚南道各地の漁民発言が続いた。

釜山から来たヤン・ジョンモ漁民は「私たちが、食べていける、生きていけるよう、国を導いていく方々がきちんと政策を展開してほしい」と訴えた。

全羅南道から来たパク・ジョンヒ漁民は「汚染水投棄が始まれば、消費減少で、漁民が荒波とたたかって獲ってきた魚、昼夜を問わず養殖場で育てる海苔など、水産物は売れなくなるだろう。政府と国会議員は、汚染水を絶対に防いでほしい」と求めた。

慶尚南道から来たナム・ナムテ漁民は「政府は汚染水放流を積極的に阻止せよ。水産物消費不振と価格下落にともなう漁民の苦痛に共感し、被害を補償せよ」と強調した。  

「放射能汚染水海洋投棄阻止・第2次全国行動の日」「全国漁民大会」共同決議文

福島原発汚染水海洋投棄を阻止せよ! 漁民みんな死ぬ!

日本政府が公言した放射能汚染水の海洋投棄が目前に迫っている。放射能汚染水の海洋投棄を控え、漁民が感じる恐怖は大きくならざるをえない。一生、海だけを見つめ、海を通じて暮らし続けてきた韓国漁民たちは、生活の基盤である海が汚染され、水産物が売れなくなるという恐れと絶望感を感じている。

5月に、環境運動連合が行った汚染水放流に対する国民アンケート調査で、85%の国民が「放射能汚染水海洋放流に反対する」と答えた。また、72%の国民が「汚染水が捨てられれば水産物の消費を減らす」と答えた。汚染水が海に捨てられれば韓国漁民の憂慮が現実になることを示した世論調査の結果だ。

福島原発の汚染水による被害は、果たして誰が責任を負わなければならないのか? 海で生計を立てている漁民たちなのか?


政府は、日本政府の汚染水海洋投棄を容認する態度を捨て、汚染水海洋投棄を阻止せよ!


私たちは、地球と生態系を破壊する放射能汚染水投棄計画に反対する。私たちは放射能汚染水の海洋投棄を防ぐために、最後まで連帯して闘争する。


一 私たちは、日本の放射能汚染水海洋投棄に強く反対する!
一 日本政府は、地球と海を滅ぼす放射能汚染水投棄計画を中止せよ!
一 日本政府は、陸上での長期保管などの解決策を講じろ!
一 韓国政府は、汚染水海洋投棄を防ぐため、国際海洋法裁判所に直ちに提訴せよ!


2023年6月12日
全国漁民会総連盟、放射能汚染水海洋投棄阻止共同行動           <抜粋>

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信182号
(23年6月20日発行、B5-28p)もくじ

・汚染水を海に流すな!5.16東京行動に、のべ1,200人
  「流すな!」の声を大きく広げよう (佐藤和良)

             
・東京で響き渡る「原発汚染水を海洋放出するな」 (チェ・ギョンスク) 

   
・「海洋放出するな!」「海を汚すな!」福島県民たちが東電前や国会前で抗議行動 
  韓国の女性たちも「陸上保管続けろ」と連帯のアピール(民の声新聞より)

 
・放射能汚染水海洋投棄阻止「全国行動の日」に1万人 (ミンギ)

        
・「福島原発汚染水海洋投棄反対国際書簡」発表

                
・「放射能汚染水海洋投棄反対、全国漁民大会」
  ― 全国漁民2000人、第2回全国行動の日に参加 ― (ミンギ)


・「海は、私の生業であり、人生そのもの」 (キム・ヨンチョル) 

      
・トルコ・アックユ原発に核燃料を搬入:「チェルノブイリの日」に市民が抗議
 (森山拓也)
  
・高レベル核廃棄物・最終処分場の候補地になって50年の対馬 (鍵本妙子)

  
・被爆地が軍拡にお墨付きを与えてはならない (木原省治)

         
・川内原発の寿命延長に反対する (小川みさ子)

              
・東京電力に原発の運転資格なし、運転禁止命令の継続は当然だ (菅井益郎)

 
・どうする?原発のごみ全国交流集会で政策転換の提言 (末田一秀)

     
・老朽原発延長の審査で安全性は担保されない (草地妙子)

         
・原発再稼働で電気代が下がるという宣伝にだまされないで (佐藤みえ)

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ハンビッ原発3・4号機の格納容器の空隙問題、根本的な安全性確保できぬまま再稼働

小原つなき(韓国・脱核新聞編集委員)

ハンビッ原発の門の前で抗議、22年3月10日

尹錫悦(ユン・ソギョル)政権は、文在寅(ムン・ジェイン)前政権の「形だけ脱原発」政策を完全に廃棄し、原発大国への道を歩み出そうとしている。新規原発の建設や老朽原発の寿命延長などに積極的な意欲を示し、原発の割合を32.8%まで拡大することを打ち出している。

こうしたなか、格納容器の空隙問題で5年以上運転を停止しているハンビッ原発4号機にも拍車がかかり、再稼働は今や秒読み状態となっている。

■ ハンビッ原発3・4号機の格納容器の空隙問題

全羅南道・霊光(ヨングァン)郡にあるハンビッ原発4号機は、2017年の定期検査中に深刻な欠陥が相次いで明らかになった。格納容器の内部鉄板(ライナープレート、厚さ6㎜)の腐食やコンクリートの空隙が多数見つかったのだ。とくに、格納容器の最上段と上部ドームへの連結部位には約20cm幅の空隙が格納容器全体を一周(137m)する形で見つかった。また、蒸気発生器からは20年間放置されたと推定されるハンマーが見つかった。

その後の調査で18年には、主蒸気系配管の貫通部の下部コンクリート(厚さ167.6cm)に、わずか10cmを残した形で深さ157cm(縦90cm、横330cm)にも及ぶ大型の空隙が追加で見つかった。4号機の格納容器の欠陥は、コンクリートの空隙だけにとどまらず、コンクリートの鉄筋露出やグリス漏れにも及んだ。同様の欠陥は、4号機と共に建設された3号機でも見つかった。

韓国の原発において、格納容器の欠陥問題のはじまりは、2016年6月に遡る。ハンビッ2号機で格納容器の内部鉄板に腐食による穴(1~2mm)が見つかった。その後、ハンビッ1号機でも50ヶ所で内部鉄板の腐食が見つかった。

当初、原子力安全委員会と韓国水力原子力は「内部鉄板の腐食は、ウェスティングハウス社が韓国で建設した初期の原子炉のみに限られ、韓国型の原発であるハンビッ3・4号機以降に建設された原発には及ばないであろう」という見解を示していた。しかしその後、腐食はハンビッ4号機でも大量に見つかった。しかも、問題は、上記のようにコンクリートの空隙へと深刻に発展していった。

これに対し、17年11月「ハンビッ原発安全性確保のための民官共同調査団が構成され、全面的な調査(18年4月~19年6月)が始まった。同時に、韓国のすべての原発を対象に格納容器の健全性調査が行われた。

こうした調査の結果、ハンビッ原発3・4号機の格納容器の欠陥は、韓国のその他の原発に比べて圧倒的に多いことが明らかになった。とくに、コンクリート空隙は全国で発見された数の75%以上がハンビッ原発3・4号機に集中していることがわかった。

           鉄板 腐食空隙鉄筋 露出グリス 漏れ
3号27212418440
4号2981402315
合計57026420755

■ 空隙の最大の原因は、建設当時の手抜き工事

ハンビッ原発3・4号機(各100万kW)は、1989年12月に建設が始まり、95年3月と96年6月にそれぞれ稼働した。それまでの原発とは違い、韓国内の企業が主導して建設される「韓国型原子炉」として注目された。しかし、技術も経験も不足するなか無理な建設が進められた。

格納容器の欠陥の根本原因は当時の建設の過程にあるといえる。たとえば、工事期間を短縮するため24時間の連続作業が行われるなか、無許可でコンクリート工場の運営が行われたり、禁止されている冬場でのコンクリート打設が平然と行われた。そのほかにも、図面を無視し現場で即席で設計を変更したり、資材などの品質に対する管理監督を省略したりするなどの不正行為が当たり前のようにくり返された。

当時、工事に従事する作業者や地元住民らは、デモ、籠城、国会請願など、ありとあらゆる方法でくり返し抗議を続けた。しかし、事業者である韓国電力は、住民の声に耳を傾けるどころか、逆に住民を脅迫して反発を鎮静し強引に工事を進めたという。ハンビッ原発3・4号機に欠陥が生じることは、建設当時から目に見えたことだった。

そして、韓水原の社長は、2018年の国政監査の際、当時指摘されていた手抜き工事が事実であることをついに認めた。

■ 地域住民と環境団体、「安全性は確認されていない」

しかし、その後、韓水原と原安委は、拙速な安全性審査と補修工事を経てハンビッ3・4号機を再稼働させることを急いだ。そして、3号機は20年11月に再稼働した。その際、霊光地域の住民は、4号機のドーム部分に対する精密な調査の実施や手抜き工事に対する真相究明などを柱とする7つの要求事項を提示し、3号機の再稼働に条件を付けた。しかし、7つの約束はほとんど守られないまま、拙速でうわべだけの調査が行われた上で、4号機の再稼働への手続きが進められてしまった。

地域住民と環境団体等は、格納容器の欠陥など、手抜き工事で建設されたハンビッ3・4号機の安全性は立証されていないと主張し、こうした状況では4号機の再稼働を容認することはできないという立場を表明している。

韓水原は、ユン政権の原発推進政策にも後押しされ、原安委の最終承認を経て遅くとも11月中には4号機を再稼働する方針を明らかにしている。

ハンビッ原発1・2号寿命延長反対、光州市で

■ 老朽原発の寿命延長にも

それ以外にも、ハンビッ原発を抱える霊光では、ユン政権下で押し進められる原発推進政策によって老朽原発の寿命延長にも今後対応を迫られることになる見通しだ。

ユン政権は、任期内に18基の原発の寿命を延長することを掲げている。現行では、設計寿命40年を越えて稼動させる場合には、原発事業者は設計寿命満了日の5~2年前に原子力安全委員会に「安全性評価報告書」を提出しなければならない。しかし、9月15日の原子力安全委員会で、「安全性評価報告書」の提出期間を10~5年前に前倒しする原子力安全法施行令改定案が議決された。

ユン政権の任期内にできるだけ多くの原発の寿命延長を確定することがねらいで、こうなると18基の原発が寿命延長の手続きに入ることになる。ハンビッ原発も例外ではなく、ハンビッ1・2号機も近く寿命延長の手続きに入ると見られている。

これに対して、霊光をはじめとする全羅南道各地や霊光から約35kmの光州広域市の市民社会団体で作る「核のない世界・光州全南行動」は、今年6月から、「霊光ハンビッ原発寿命延長反対のための光州・全南1万人署名運動」を行っている。

福島原発事故の記憶も薄れ、ユン政権下での「原発必要悪論」が世論を占め始めるなか、署名運動を通じて、少しでも多くの人が原発の問題に関心を持ち、脱原発の世論が再び広まることを願っている。

*<小原つなき> 2000年に大学の交換学生として全羅南道・光州の全南大学社会学科に在籍後、韓国に移住。光州環境運動連合に勤務し、福島原発事故以降は地域の脱原発活動に参加。現在は、2012年に発刊した脱核新聞の編集に参加している。

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信178号(10月20日発行、B5-24p)もくじ

・ハンビッ原発3・4号機の格納容器の空隙問題、
  根本的な安全性確保できぬまま再稼働 (小原つなき)

・地域住民をいけにえにする核廃棄物敷地内貯蔵基本計画と
  特別法案を廃棄せよ (脱核ウルサン市民共同行動)

・オーストラリア・放射性廃棄物処分場建設計画に反対し、
  ポートオーガスタで一丸となって抗議デモ (ベサニー・アルダーソン)

・バターン原発の復活を許さない (Nukes Coal-Free Bataan)        

・フランス・ビュールより、寿都町の住民の皆さんへの連帯メッセージ      

・KKのKKについて (桑原三恵)                 
・GX 実行会議における柏崎刈羽原発6,7号機再稼働方針確認への抗議と撤回の要請
 

・東海第二原発事故がおきれば被害地元の再稼働反対運動 (佐藤英一)    

・元原発作業員の訴えに反響 ― 京都・大阪・福岡講演ツアー報告 ― (池田実)

・原発事故12年目 ― 汚染水問題の向こうに私がみる希望 (宇野朗子)   

・川内原発の運転延長申請に強く抗議する (ストップ川内原発! 3.11鹿児島実行委員会)

・日本弁護士会連合会シンポジウムでのスピーチ
  (子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会/三木信香)

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「コリ2号機閉鎖! 老朽原発寿命延長反対! 6.18全国脱核行動 宣言文」「脱核新聞・創刊100号へのメッセージ」

      40年稼働した核発電所 「もうやめたい、休みたい」
    コリ2号 (点滴)ユン・ソギョル政府  脱核新聞100号より 

韓国では、2023年コリ2号、24年コリ3号、25年コリ4号、ハンビッ1号、26年ハンビッ2号、ウォルソン2号、27年ハヌル1号、ウォルソン3号、28年ハヌル2号、29年ウォルソン4号、計10基が設計寿命を迎えるが、新大統領は寿命延長するとしている。

6月18日、釜山駅前広場で、「コリ2号機閉鎖! 老朽原発寿命延長反対! 6.18全国脱核行動」が開催された。コロナウイルスまん延のなか、400人が参加した。集会を終えた参加者たちは釜山駅から光復路までデモ行進した。

コリ2号機閉鎖! 老朽原発寿命延長反対! 6.18全国脱核行動 宣言文40年間、お疲れさま。さようなら、コリ2号機!

17年6月18日、5年前の今日は、韓国初の原発であるコリ1号機が永久停止した日だ。40年間稼動してきたコリ1号機の永久停止は、脱核社会と安全な世の中を念願する釜山(プサン)、蔚山(ウルサン)、慶尚南道(キョンサンナムド)の800万市民がともに成し遂げた成果だった。そして5年前の今日、釜山で文在寅前大統領は「安全なエネルギーへの転換を通じて、脱原発時代に進む」と約束した。あれほど熱望してきた核のない安全な世の中に向かって一歩進むかのようだった。

しかし、5年が経った今、尹錫烈(ユン・ソギョル)政府は、「原発強国」という政策を推進している。尹錫烈大統領は候補時代から、原子力産業界の利益だけを代弁し、国民の安全と生命の声には耳を傾けてこなかった。その上、まるで原発が気候危機の解決策であるかのように主張し、経済成長だけを掲げ、気候危機を正義的な方法で解決する意志がないことを端的に表わしている。

その中でも、2030年以前に設計寿命が満了する老朽原発10基の寿命延長は、国民の不安と安全を全く考えない計画だ。釜山のコリ2号機は、ユン政府が推進する老朽原発寿命延長の最初の対象だが、寿命延長ではなく永久停止して廃炉を進めなければならない。40年の寿命を守って稼動を停止し、来年4月には安全に廃炉するのが当然だ。今日、全国から集まった私たちは、老朽原発の寿命延長に反対し、コリ2号機の閉鎖を促そうと思う。

4月4日、韓国水力原子力(以下、韓水原)はコリ2号機の定期的安全性評価書を原子力安全委員会に提出し、本格的なコリ2号機の寿命延長手続きに突入した。しかし、その始まりから手続き上の違法性が明らかになった。本来は、設計寿命が満了する2年前に定期的安全性評価書を提出しなければならないが、韓水原は期限に1年も遅れて提出したのだ。

それだけでなく、コリ2号機の寿命延長は、安全性も経済性も担保できない。

コリ2号機は、1983年に稼動が始まって以来、計29件の故障が発生し、台風や豪雨のような自然災害によって原子炉停止などの事故が発生した。さる6月3日には、コリ2号機の内部遮断器で火災が発生し、自動停止した。

このように老朽化した原発の安全性を確保するためには、最新技術基準を適用し、設備を改善しなければならない。これには莫大な費用がかかるため、原発が他のエネルギー源より経済性があるという主張は事実とは異なる。

また、原発の寿命を延長すれば、使用済み核燃料すなわち高レベル核廃棄物もさらに増える。現在、コリ原発の使用済み核燃料はすでに約85%が飽和し、2031年には完全に飽和する見通しだ。全国24基の原発で毎年750トンの高レベル核廃棄物が発生しているが、これをどこでどのように処理すればいいのか対策も立っていない。

政府は、高レベル核廃棄物(使用済み核燃料)を原発敷地内に(乾式)貯蔵し、原発最大密集地域であるこの地域を核廃棄場にするという計画を持っているだけだ。これさえも市民社会と地域住民を排除したまま非民主的に決定され、進められている。原発最大密集地域である釜山、蔚山、慶尚道だけでなく霊光(ヨングァン)、蔚珍(ウルチン)のような原発立地地域を永久的な核廃棄場にするというユン政府の試みを決して容認してはならない。

原発現地の住民たちは数十年間、原発事故の危険の中で暮らしながら、放射能による健康被害を受けている。危なかしく密集している大規模原発で電気を生産し、他の地域、とくに首都圏に送電するために、超高圧送電塔が立てられ、村と共同体を破壊した。今後は、原発地域が高レベル核廃棄物の貯蔵場になるかも知れないという不安の中で闘っていかなければならない。さらに台風や洪水や山火事のような気候災害は原発の安全も脅かしている。

このように危険で不平等で非民主的なエネルギー生産の構造を変えていかなければならない。老朽原発の寿命延長ではなく、再生エネルギーの拡大と、安全で正義の転換を始めなければならない。40年間稼動した古い原発を再利用するという政策ではなく、高レベル核廃棄物に対するきちんとした対策づくりを進めなければならない。

コリ1号機が永久停止した5年前の今日のように、来年4月8日は、コリ2号機が稼動を停止する日にならなければならない。

今日この場に集まった私たちは、コリ2号機の閉鎖と老朽原発の寿命延長禁止、そして正義のエネルギー転換に向けて、共に力を合わせて連帯していく。

ユン・ソギョル政府は

老朽化した原発の寿命延長を禁止せよ!

コリ2号機の閉鎖を決めろ!

原発振興政策を直ちに廃棄せよ!

安全と正義のエネルギー転換を約束せよ!

2022年6月18日
コリ2号機閉鎖を促す釜山市民行動、脱核市民行動、気候危機非常行動、宗教環境会議、脱核慶南市民行動、脱核釜山市民連帯、脱核蔚山市民共同行動、韓日反核平和連帯


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【脱核新聞・創刊100号へのメッセージ】 「韓日脱核連帯しよう、原発寿命延長をとめよう」 反核アジアフォーラム日本事務局・佐藤大介 (脱核新聞22年6月号より)

2012年から脱核新聞を毎号読んでいます。韓国各地の運動状況を知ることができます。 毎月編集して発行するのは大変ですが、脱核新聞は脱核勝利の必要条件の一つだと思います。

反核アジアフォーラム通信(隔月)に、いつも脱核新聞の記事から、日本語訳を掲載しています。

女性たちが立ち上がると運動は広がるし、強くなります。チェルノブイリ事故以後、世界中がそうでした。韓国公害追放運動連合の女性たちが1988年に訪日して私たちと交流したときから、韓国と日本の脱核運動の「行ったり来たり」が始まりました。翌89年、日本でもヨングァン3・4号機建設反対署名を集めて韓国に届けました。

「推進派は活発に国際連帯をしているので、反対派も国際連帯しなければならない」と、韓国側から提案を受け、1993年に第1回反核アジアフォーラムを日本で開催しました。8カ国30人が九州・四国など7コースに分かれ、原発現地など全国28カ所で集会を開きました。翌94年の第2回フォーラムは韓国で開催され、日本からは36人が参加しました。ヨングァン、コリ、ウルチンなどで住民たちとともに集会とデモを行いました。第9回フォーラム(2001年)ではウルサンなどでデモ、第15回(2012年)ではサムチョクとヨンドクでデモをしました。第20回は2020年に韓国で行われる予定でしたが、コロナウイルスにより延期となりました。反核アジアフォーラムは各国持ち回りで、台湾、インドネシア、フィリピン、タイ、インドでも行われてきました。

フォーラムのとき以外にも、これまで多くの韓日の人々が交流してきました。クロプ島・トクチョク島核廃棄場建設反対闘争(95年)、ヨングァン5・6号機建設反対闘争(96年)などに、日本から多くの活動家が応援参加してきました。プアン核廃棄場反対闘争(2003~04年)のときには新潟県の仲間も参加し、「巻原発建設反対・自主住民投票」の経験を伝えました。プアン闘争は「みんなが主人公」のすばらしい闘争でした。学ぶところが実に多いです。日本の多くの学者も韓国で講演しました。「核発電と日本(日本と原発)」などの映画も韓国で上映されました。

韓国からも、とくに福島事故以後、現地をふくめ多くの活動家が来日して交流してきました。

21年1月と2月、福島汚染水海洋放出反対「韓日ズーム集会」に、それぞれ150人、200人が参加し、韓日共同声明を発表しました。その後、汚染水海洋放出反対の国際署名(110ヵ国8万人)を集め、国際同時行動が行われました。

第2回フォーラム以来のキム・ボンニョさんや、小原つなきさんほか、これまで通訳してくれた方々に本当に感謝します。

日本で2030年までに40年の寿命を迎える原発は計11基です。そのうち4機は現在稼働中で、7機は10年以上稼働を停止しています。それぞれの現地住民と都市の人々が連携して、集会、デモ、署名、裁判などで、「老朽原発うごかすな」「再稼働反対」の運動を展開しています。

老朽化した原発の寿命延長は、日本と韓国をはじめ世界各国で2020年代の最大の課題です。これを止めなければ、どこかで必ずチェルノブイリや福島のような事故がくり返されるでしょう。

原発の寿命延長は、日本と韓国で連動しています。互いに影響し合います。韓日の原子力マフィアは連携しています。

私たち韓日の脱核運動は、互いに学びあい、励ましあいましょう。新規原発を稼動させず6基の原発の寿命延長をせず2025年に原発ゼロを実現する台湾に続きましょう。少しでも早く「原発」時代を終わらせましょう。

원문 原文:https://www.nonukesnews.kr/news/articleView.html?idxno=10079

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信176号(6月20日発行、B5-24p)もくじ

・韓国:コリ2号機閉鎖! 老朽原発寿命延長反対! 6.18全国脱核行動 宣言文

・脱核新聞・創刊100号へのメッセージ(佐藤大介)

・フィリピン:私たちは、二度、バカにされるのか?(Nukes Coal-Free Bataan)

・バターン原発は電力危機を解決しない(AGHAM)

・タイ:地元団体はオンカラック研究炉建設に反対(バンコクポスト)

・ロスアトムとの協力をやめよう -ロシアへの制裁のなかでの原子力-(エコ・ディフェンス)
https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2616

・理解と合意なき汚染水海洋放出設備工事の中止を!(大河原さき)

・「311子ども甲状腺がん裁判」第1回口頭弁論・原告意見陳述(原告2さん)

・311子ども甲状腺がん訴訟第1回期日(中野宏典)

・泊原発に差し止め判決、すみやかに廃炉を(川原茂雄)

・川内原発20年延長阻止へ、意見広告運動に協力を(向原祥隆)

・老朽美浜3号機の再稼働を許すな(宮下正一)

・5.29「原発のない明日を -老朽原発このまま廃炉!大集会 in おおさか-」に 2100 人、美浜3号機再稼働阻止に向けてさらに前進を(木原壯林) 

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「憐憫のない人たち」(チャン・ヨンシク)「高レベル核廃棄物管理基本計画と特別法案の撤回を促す全国行動・声明書」

共に民主党の党本部前で、1月25日(撮影:チャン・ヨンシク)

「憐憫のない人たち」 チャン・ヨンシク(写真作家)

久しぶりにソウルに行ってきました。 汝矣島(ヨイド)にある共に民主党の本部前で、「高レベル核廃棄物管理基本計画と特別法案の撤回を促す全国行動」が行われれたためです。 釜山からバスを借りて夜明け道を走り、ソウルに向かいました。

大統領選挙を控えた国会前の風景は混雑していました。 様々なスローガンを書き込んだ垂れ幕が掲げられ、一人デモをしている人もいました。共に民主党の本部前は、警察が陣を張っていました。原発がある釜山(プサン)と霊光(ヨングァン)、そして、蔚山(ウルサン)と慶州(キョンジュ)から、地域を代表する市民たちが集まりました。 ソウルからも宗教環境会議代表や緑の党の党員たちが参加しました。

文在寅(ムン・ジェイン)政府が無責任に高レベル核廃棄物(使用済み核燃料)を原発立地地域に保管するという基本計画を立て、国会もまた特別法案を成立させようとしています。

文在寅政府の主要公約である「脱原発政策」は雑巾になりました。核マフィア(原子力ムラ)の執拗な攻勢に積極的に対処できなかった結果です。文在寅政府が、新古里5・6号機の建設の公論化過程を経て、「脱原発政策」に手をこまねいていた結果です。 政府の主要政策が攻撃を受けても、一途に対応できなかった政権与党の無能と無責任の結果です。

これまで原発立地地域の住民らは、一方的な犠牲を強要されてきました。 原発を稼働すれば「核種」という放射性物質が排出されることは当然のことです。気体と液体 の放射性物質は住民の健康権と生命権を脅かしました。

原発を建てる際にも、原発の危険性について住民たちに話しませんでした。むしろ原発があれば、地域が発展すると宣伝しました。 住民たちはその宣伝にだまされたのが唯一の過ちでした。古里(コリ)で初めて原発を建てるときも、「小さい電気工場一つが建設される」と嘘をつきました。「電気工場ができると地域が発展する」と懐柔しました。村の住民たちは、「その小さい電気工場が原発であると知っていたなら、命をかけて反対したはずだ」と言います。

この50年間、一方的な犠牲を強要されてきた地域と住民たちに、再び犠牲を強要しています。全国の原発があるところに「敷地内貯蔵施設」という名で、高レベル核廃棄物の「乾式」貯蔵施設を建設しようとしています。 これは原発がある地域と住民たちに無限の犠牲を強要することです。原発立地地域を核の墓にしようということです。

政府は、このような重要な問題を決定する過程で、意見の収れんを経ずに一方的に進めました。 意見聴取期間に提出された意見も無視しました。25の原発立地地域と近隣地域の自治体、議会、市民団体が送った意見書を黙殺したのです。 全国の市民団体と環境団体も、政府の基本計画に対して審議の中断を要求しましたが、黙殺しました。

これに先立ち21年9月15日、共に民主党の国会議員24人が、「高レベル放射性廃棄物管理に関する特別法案」を国会に発議しました。この特別法案は、政府の基本計画と一脈相通じていて、高レベル核廃棄物の「敷地内貯蔵施設」建設を法制化する内容を含んでいます。

高レベル核廃棄物特別法案を代表発議した金星煥(キム・ソンファン)議員はソウル蘆原区地域選出の国会議員です。 彼が蘆原区長だった2012年、蘆原区の月渓洞の道路から基準値以上の放射能が検出されました。放射能に汚染されたアスファルトを全面撤去し、廃アスファルトは、蘆原区庁の裏にある公営駐車場とマドゥル水泳場にそれぞれ235トンと94トンずつ臨時保管された後、保管容器に密封され、慶州の中低レベル放射性廃棄物処分場で永久に保管されることになりました。そうしたことを先頭に立って推し進めた人物です。

自分の地域区では、放射性物質は保管できないと否定しておいて、廃アスファルトとは比較もできないほどの高レベル核廃棄物は、原発がある地域と住民たちに押しつけるという特別法案を代表発議し、取り消す意向はないと述べています。 厚顔無恥なことです。

5年前の大統領選挙では脱原発が主要テーマでした。 大半の大統領選候補らが原発の危険性に同意しました。 文在寅候補と安哲秀候補は、これ以上の原発を建設しないことに同意しました。5年が過ぎた今、5年前の時間で止まっているのではなく、むしろはるかに後退しています。欧州では、原発は気候危機の代案にならないとし、原発を廃炉にしているにもかかわらず、韓国の現在の大統領選候補らは原発をさらに建設すると述べています。

電気を最も多く使用している所が、原発と核のゴミ捨て場の負担を負わなければいけません。そんなにクリーンで経済的だというならば原発をなぜ首都圏に建設しないのでしょう。 首都圏から最も遠く離れた孤立した地域に建設し、そこに核廃棄場も建てるというのは原発が安全ではないということに対する同意であり、逆説です。

原発と核のゴミ捨て場を首都圏から最も遠く離れた所に建てるというのは差別です。地域と地域住民を差別することです。 地域と地域住民たちを排除することです。

50年前、原発を初めて建てる時も、住民たちの意向をろくに聞こうとしませんでした。50年が過ぎた後も同じです。原発があるところに、10万年以上も保管しなければならない核廃棄物の貯蔵施設を建設することについて、誰にも問わずにいます。それは民主主義に対する暴挙であり、暴力です。 国家暴力です。

灰色の空の下、怪物のようだった汝矣島の国会議事堂を眺めながら、釜山に帰る道で、国民の力のユン・ソギョル候補が、「PM2.5の発生を減らすため、脱原発を白紙化して、原発最強国を建設する」という公約を発表したというニュースを聞きました。ユン・ソギョル候補には、放射能の被害によってがん闘病する地域住民に対する愛民と憐憫の心はどこにもありませんでした。(カトリックニュース「今ここ」より)

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【高レベル核廃棄物管理基本計画と特別法案の撤回を促す全国行動・声明書】

政府は、原発立地地域に無限の犠牲を強要する「高レベル基本計画」を撤回せよ

国会は、原発立地地域を核の墓にする「高レベル特別法案」を撤回せよ

全国の原発立地地域と、ソウルを含めた全国の市民・環境団体、宗教界などは、コロナの懸念にもかかわらず今日この場に集まった。政府が、無責任に、高レベル核廃棄物(使用済み核燃料)を原発立地地域に保管しろという基本計画を立て、国会が、特別法案を通過させようとしているからだ。

政府と政界が、国民の安全と生命と人権を踏みにじり、未来世代に不平等を強要する現状況をこのまま見過ごすわけにはいかない。私たちは、政府と政界に、生命と平和、平等と人権のために良心をかけて国家政策を正すことを要求する。

韓国は1978年の古里1号機の商業運転を皮切りに44年の間に原発建設を拡大し、現在、合計26基の原発から出た高レベル核廃棄物を各原発に保管している。政府と原発事業者は、この44年間、高レベル核廃棄物の中間貯蔵施設や永久処分施設の建設場所を選定することもできないまま、原発を維持し続けてきた。

これまでの間、原発の近隣に住む住民たちは、原発を稼動することによって必須的に放出される気体と液体の放射性物質に露出されてきた。彼らは日常的に健康上の被害を受け、原発の様々な事故や、地震・台風などによる事故の脅威の中で暮らしている。

ところが今回、政府が樹立した「高レベル放射性廃棄物管理基本計画」と、国会に係留中の「高レベル放射性廃棄物特別法案」は、26基の原発から出た高レベル核廃棄物を敷地内に保管するようにする内容を盛り込んだ。これまでの「臨時貯蔵施設」と呼ばれる使用済み核燃料プールが飽和となれば、「敷地内貯蔵施設」という名で、高レベル核廃棄物の「乾式」貯蔵施設を全国の原発サイトごとに新たに建設せよという内容だ。

これは、原発立地地域に無限の犠牲を強要することであり、原発立地地域を核の墓にしようとするものだ。 私たちは、無責任な政府と政界の核エネルギー政策に対し、憤りを超えて惨憺たる心境だ。

政府は12月27日、原子力振興委員会(委員長、キム・ブギョム首相)を開き、産業通商資源部(以下、産業部。日本の経産省にあたる)が拙速に用意した、「第2次高レベル放射性廃棄物管理基本計画」を議決した。

この基本計画は、産業部が行政予告した後、わずか20日で確定したもので、産業部は基本計画の樹立過程において原発立地地域と全国の意見収集を経ておらず、意見聴取期間に提出された意見も無視した。25の原発立地自治体と近隣地域自治体、議会、市民団体が送った意見書を黙殺したのだ。それだけでなく、全国の市民・環境団体も政府に基本計画の審議の中断を要求したが受け入れられなかった。

これに先立ち昨年9月15日、共に民主党所属の24人の国会議員が、「高レベル放射性廃棄物管理に関する特別法案」を国会に発議し、11月23日、産業資源委員会の全体会議に上程した。現在この法案は、産業資源委員会の法案審査小委、与野党の幹事協議と案件上程を控えている。 この特別法案は、政府の基本計画と脈を共にし、高レベル核廃棄物の「敷地内貯蔵施設」建設を法制化する内容を含んでいる。

この「高レベル特別法案」を代表発議した金星煥(キム・ソンファン)議員は、昨年9月2日、この法案が産業部と協議を終えた法案だと明らかにした。そして産業部は12月7日、高レベル基本計画を行政予告し、政府は12月27日、基本計画を議決した。つまり、高レベル核廃棄物の「敷地内貯蔵」は、金盛煥議員をはじめとする共に民主党の国会議員たちと政府が積極的に推し進めたのだ。

我々は、共に民主党を強く糾弾し、政府の高レベル基本計画と国会の特別法案の撤回を要求する。

現政府をはじめ、国民の力、国民党、正義党などの政界は、高レベル核廃棄物の発生を最小限に食い止めるために脱原発の時期を明確にする「脱原発基本法」を制定し、全国民と真に疎通し、高レベル核廃棄物の処分対策を打ち出さなければならない。 そのために、我々は次のように要求する。

第一、政府は、「高レベル基本計画」を撤回し再樹立せよ。
第二、国会の金星煥議員らは、「高レベル特別法案」を、ただちに撤回せよ。
第三、政府は全国民参画を通じた高レベル核廃棄物管理政策を樹立せよ。
第四、与野党と政府は、脱原発基本法を制定し、核廃棄物の発生を最小化せよ。

2022年 1月 25日
「高レベル核廃棄物管理基本計画と特別法案の撤回を促す全国行動」参加者一同
参加団体:脱核釜山市民連帯、脱核蔚山市民共同行動、脱核慶州市民共同行動、ハンビッ原発全羅道圏共同行動、宗教環境会議(キリスト教、仏教、円仏教、天道教、カトリック)、2022脱核大統領選連帯

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信174号
(2月20日発行、B5-28p)もくじ

・台湾廃核運動史(NNAFJ事務局)
https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2555

 21年12月18日に行われた「第四原発の稼働を問う公民投票(国民投票)」。結果は、426万人が原発反対票を投じ、380万の賛成票を上回った。
 事実上の日本の輸出原発(原子炉は日立・東芝、タービンは三菱)であり建設凍結されていた第四原発は稼働しないことが最終決定した。台湾は2025年に原発ゼロとなる。
 台湾がいかにして、アジア初となる脱原発 =「非核家園」という悲願へと着実に向かいつつあるのか、これまでの台湾の脱原発運動を、ふりかえりつつ、日本と台湾の脱原発運動のかかわり、そしてこれからの日本の脱原発運動に示唆されるものについて考える。

1.第四原発反対運動の始まり
2.1003事件の衝撃
3.放射能汚染マンション
4.第3回ノーニュークス・アジアフォーラム
5.ランユ島、核廃棄物と闘う先住民族
6.日本からの原子炉輸出
7.映画「こんにちは貢寮」
8.「地震と原発の危険」を伝え続ける
9.福島をくり返さないで
10.非暴力直接行動
11.台湾から私たちが学ぶこと
12.原発の歴史は終結へ
13.私たちはどんな道を行くのか
                    
・憐憫のない人たち(チャン・ヨンシク)                 
・高レベル核廃棄物管理基本計画と特別法案の撤回を促す全国行動・声明書

・南オーストラリア州の放射性廃棄物処分場予定地で洪水(ミシェル・マディガン)

・欧州委、原発をEUの「グリーン投資」に位置づけ
 ― 内外からあがる批判の声 ―(満田夏花)
              
・今度は加害者になるわけにはいかない(片岡輝美)
・11.13 海といのちを守るつどい アピール(これ以上海を汚すな!市民会議)
・日弁連が、汚染水「海洋放出に反対する意見書」
              

・水戸地裁判決の意義と限界 ― 住民運動による突破こそ本命(大石光伸)  

・急展開の島根原発再稼働の動き(土光均)                

・柏崎刈羽原発をめぐる新潟県の現状について(小木曾茂子)        

・311子ども甲状腺がん裁判弁護団、元首相5人の書簡への非難に対し抗議声明 

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月城原発、24年間にわたり放射能漏れ

蔚山(ウルサン)市の56の市民団体などで構成する脱核蔚山市民共同行動は、放射能漏れが明らかになった月城(ウォルソン)原発を直ちに廃止することを要求する脱原発大会と対市民宣伝行動を行った

ヨン・ソンロク (脱核新聞より)

韓国政府の原子力安全委員会が構成した「月城(ウォルソン)原発トリチウム民間調査団」(以下、調査団)と懸案疎通協議会は、9月 10日、月城原発 1~4 号機の放射性物質漏えい調査の1次結果と今後の計画を発表した。

調査では、土からガンマ核種であるセシウム137も検出され、構造物の安全性に対する憂慮が拡大した。ガンマ核種はトリチウムとは異なりコンクリートを透過できない。つまり月城原発内の施設物に損傷があることを意味する。

調査団は、韓国水力原子力(以下、韓水原)が月城 1号機の使用済み核燃料貯蔵プール(以下 SFB)遮水幕の補修工事のための掘削作業を行ったことにより、SFB 遮水幕などの構造物の健全性の検査を行い、周辺の土壌と水の試料を分析した。


調査団が発表した1回目の調査結果を以下のように整理した。


★月城1号機の1997年使用済み核燃料貯蔵プール補修工事前後の遮水幕構造

■使用済み核燃料貯蔵プール(SFB)構造物健全性調査の結果
●遮水幕と有孔管の損傷を確認
●遮水幕が切れて汚染水漏洩

調査団は、SFB 遮水幕などの構造物の健全性を確認した結果、2012年、月城 1号機の格納建屋の濾過排気設備設置工事の際に、地盤補強用の基礎ファイル 7つが遮水幕(床の部分)を損傷させたことを確認した。

調査団はまた、2010年、月城 1号機の SFB 遮水壁の補強工事と 2012年 濾過排気設備設置工事の際に有孔管が損傷し、「詰まり」が発生、漏洩水が集水槽に入る機能が低下したことを確認した。


そして、1997年のSFB 壁の亀裂補修工事の過程で、底のコンクリート上部の遮水幕が遮水壁まで連なっておらず壁の端の部分から切れていることを確認した。当時、補修した遮水幕はもともとの設計とは異なる構造で施工されており、漏洩水が集水槽に集まる南側の流入ルートが基本的に遮断されていることも確認した。

■使用済み核燃料貯蔵プール(SFB)健全性調査の結果
●貯蔵プール壁を通じて冷却水漏洩を確認
●底の方からの漏水量がはるかに多いと推定

調査団は、月城 1号機の SFB 南側の壁のエポキシ樹脂の防水性能の欠陥と、垂直の壁の施工ジョイントで、冷却水が漏洩していることを確認した。

韓水原の資料によると、21年 7月 30日から 9月 9日までに収集された漏洩水は 2.7L であるが、すべての漏洩水が収集されてはおらず雨水と混合した。調査団は、冷却水漏洩を SFB の壁 4面のうち南側の 1面だけで把握し、床の部分は今も内部エポキシ樹脂の補修工事をしていないので漏洩水の量は多いと推定した。

■周辺の土壌と水汚染調査の結果
●土でセシウム137、370 ベクレル/kg検出
●試料 25個のうち 14個からガンマ核種検出
●漏洩水より、周辺汚染濃度が高く検出

調査団が、月城1号機 SFB 周辺の土壌と水試料(深度 9m で採取)を分析した結果、土壌ではセシウム137が最大 370 Bq/kg 検出された。セシウム137の自主処分の許容濃度は 100 Bq/kg だ。調査団は今年7月 27日から 8月 25日まで 25個の試料を採取し、そのうち 14個の試料からセシウム137を検出した。

調査団は、水の試料も分析したが、ここではトリチウムが 最大 756,000Bq/L(最小1640)、セシウム137は最大 140 Bq/kg 検出した。


調査団は、月城1号機の SFB の壁と遮水構造物が 1997年に元の設計とは異なって施工されたことを確認した。その後、遮水機能が機能しなかったと判断した。


調査団は、SFBの漏洩水のトリチウムの濃度(15~45万 Bq/L)よりも、周辺の水試料の濃度が高く測定され、セシウム137まで検出されたため、追加の流出経路を調査している。

■敷地境界の外部環境への流出の有無
●現在は外部環境の流出有無の判断は難しい

調査団は、現在は放射性物質の外部環境流出の有無を判断することは難しく、今後 精密調査を行う予定だと明らかにした。なお、現在まで海岸近くの地下水観測穴(深度約20m)では、トリチウムとセシウム137の有意な濃度変化が観測されなかったと明らかにした。

調査団は、全般的な地下水流動は敷地から海の方向に流れるが、構造物の影響を受けている地下水は構造物方向に流れるとした。また、月城原発敷地の上流から下流方向に流れるナサン川のトリチウム濃度を1回分析した結果、16.9~19.9Bq/L となった。今後、月1回のペースで河川のトリチウムの分析を進めるとした。

●韓水原、調査中の遮水幕と遮水壁を除去
●韓水原の非協力的な態度により調査に支障

韓水原は、調査団との協議なしに、調査対象である月城 1号機の SFB の遮水壁と遮水幕を除去した。調査団は、韓水原のこのような行為によって SFB 遮水構造物の状態確認が難しい状況だとした。

また、放射性物質の環境流出の調査のため、追加のボーリング孔を通じた地下水分析が必要だが、ボーリング孔の施工が遅延し円滑な調査に支障が出ていると説明した。


なお、韓水原が提供した資料のうち鮮明でない図面があり構造把握が難しく、調査団が要求したことについて韓水原が答弁資料の提出を遅らせており、調査が困難であるとした。

●報道から 3ヶ月過ぎて調査団を構成
●調査から 5ヶ月過ぎて一次調査の発表

月城原発の遮水幕破損の事実は 2019年と 20年に脱核新聞がすでに報道したとおりだ。しかし、韓水原はこれを補修しなかった。こうしたなか、慶州環境運動連合は韓水原の「月城原発敷地内の地下水のトリチウムの管理現況および措置計画」(2020. 6. 23)内部文書を入手した。

慶州環境運動連合は、韓水原の内部文書を分析し、その結果、月城原発の使用済み核燃料貯蔵プール(SFB)と埋設配管の周辺でトリチウムが漏出したことを確認した。


脱核新聞の慶州市の通信員は、この事実を脱核新聞 20年 12月号で「月城1号機が漏れている」という題で最初に報道した。さらに、慶州市と蔚山市の脱原発団体は、韓水原の内部文書をマスコミに公開し、記者会見を行った。


以降、月城原発の放射性物質の漏洩をめぐって「原子力学界」の教授などは「バナナ、イワシ、コーヒーにもトリチウムは存在する」などの主張をくり返し、世論を騒がせた。


しかし、原子力安全委員会が「月城原発トリチウム民間調査団」を構成して発足したのは 3月 30日だ。 放射性物質の漏洩が発覚して 3ヶ月が過ぎてからだった。


調査団は調査を開始したが、これまで一度も中間調査の結果を発表せず、9月 10日に初めて一次調査結果を発表した。


調査団は調査期間を 2023年 3月までとしている。

●オム・ジェシク原子力安全委員長、「国民に謝罪する」
●貯蔵プール防水施設をステンレス製に交換することを検討
●「基準ない」、放射能の非計画的漏洩を認定

オム・ジェシク原子力安全委員会委員長が9月9日、国会科学技術情報放送通信委員会の全体会議に出席し、月城原発の放射性物質漏洩について議員たちの質問に答えた。

オム・ジェシク委員長は「月城原発使用済み核燃料貯蔵プール防水施設であるエポキシ樹脂に問題が生じて7回にわたって補修した事実を認識しており、調査結果が出れば、エポキシ樹脂をステンレスに転換することを含めて対策を樹立することになるだろう」と話した。


また、「放射性物質が『意図されない形』(非計画的漏洩)で漏れたことを深刻に見ている」「国民が感じている不安と懸念について、私がもう一度謝罪する」と話した。


(オム・ジェシク委員長は、今年2月18日には、国会の科学技術情報放送通信委員会の全体会議で、「4万ベクレル/リットル(㏃/ℓ)というトリチウムの排出管理基準はあるが、原発内のトリチウムの量に対する規制や管理体系にはいかなる基準もない」などと話していた)。


そして、トリチウムが人体に害を及ぼすかどうかを問う議員の質疑に、「トリチウムを含むすべての放射性物質は基本的に有害だ」「トリチウムは放射線を出す放射性物質であり、放射線が人体に利益があるとはいえない」と述べた。

●蔚山市民団体、早期閉鎖を促す
●労働者と住民の健康調査を要求
●貯蔵槽をステンレスに替えることも要求

月城原発の基準放射線非常計画区域に100万人以上が居住する蔚山市の 56の市民団体の連帯団体である脱核蔚山市民共同行動は、9月 10日に声明を発表し、「原子力安全委員会は、放射能がダダ漏れしている月城 2,3,4 号機の稼動を直ちに中止せよ」と促した。

また、放射性物質が敷地内で長期間にわたって漏洩したことが確認されたとし、原子力安全委員会と韓水原に対して、月城原発で働いた履歴があるすべての労働者の健康調査と健康影響疫学調査を実施するよう要求した。さらに、住民の健康調査や、住民健康影響疫学調査を要求し、原子力安全委員会がすべての行政力を動員して放射性物質漏れを遮断することを促した。


蔚山共同行動は、韓水原に対して、月城2,3,4 号機の早期閉鎖を決定し、直ちに使用済み核燃料貯蔵槽をステンレスに全面的に替えるよう促した。


脱核蔚山市民共同行動は、対策なしの政府と韓水原をだまって眺めているわけにはいかないとし、今年 3月から月城 2,3,4 号機の早期閉鎖を求める署名を集めている。

●全国の脱原発団体の連帯ネットワーク
「全国 24基の原発の SFBについて、調査が必要」

全国の脱原発団体の連帯ネットワークである「脱核市民行動」は、9月10日に声明を出し、放射性物質が外部に流出したかどうか、これによって住民に被害が発生したかについて調査しなければならないとした。さらに、月城 2~4 号機を含めた全国の 24基の原発の SFBに対する調査も必要だとした。

脱核市民行動は、今回の調査結果はこれまで国内の原発がどれほどずさんに管理されていたかを物語るとし、これは韓国水力原子力と原子力安全委員会の職務遺棄だと述べた。     (翻訳/小原つなき)

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信172号
(10月20日発行、B5-28p)もくじ

・月城原発、24年間にわたり放射能漏れ (ヨン・ソンロク)           

・1003事件から30年目の公民投票で、第四原発を終結させよう(台湾環境情報センター)

・オーストラリアの原子力潜水艦の契約は、未来の危険 (ジム・グリーン)
https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2506    

・原潜推進における南オーストラリア州の役割に大きな疑問(ケビン・ノートン)ほか

・トルコの人々は日本の原発輸出にどう向き合ったのか
     ―『原発と闘うトルコの人々』を出版 ― (森山拓也)

・CoP 26 市民社会の声明 (世界252団体)

・東電に核を扱う資格はない ― 柏崎刈羽原発再稼働反対 ― (竹内英子)    

・東北電力は、被災原発・女川原発2号機の再稼働をするな! (日野正美)   

・避難計画の実効性を地元同意の要件に ~島根原発再稼働反対~ (山中幸子)   

・伊方原発仮処分、なるか3度目の差止め (小倉正)              

・10月停止の老朽原発・美浜3号機をそのまま廃炉に追い込み、原発全廃に前進しよう! (木原壯林) 

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両国の「反日」と「嫌韓」フレームは悪循環 ー 脱原発に国境はない。韓日反核連帯が必要 ー 小原つなき

汚染水の海洋放出に対して国際的に懸念の声が集まっていますが、これに関して日本と韓国の間で起きている状況は非常に複雑です。日本と韓国の反原発運動を熟知する筆者によるこの論考は、韓国のネットメディア「レディアン」(5月25日付)と脱核新聞に掲載され、大きな反響を呼びました。問題のありかが明確に描き出されていますので、ぜひとも日本の方々にも読んでいただきたい内容です。筆者の小原つなきさんは光州在住で脱核新聞編集委員。(原文:韓国語)

日本政府は4月13日、福島第一原発で発生する放射能汚染水の海洋放出を閣議決定した。国内外の反対世論にもかかわらず、「汚染水は十分に浄化した後、基準値以下にまで希釈して放出するので安全だ」との詭弁をくり返している。海洋放出以外に方法はないとし、むしろ原発サイトから海洋に汚染水を放出することは昔からの国際的慣行であると強調している。

日本から最も近い韓国で抗議の声が高まるのはごく当然のことだ。発表と同時に、脱原発を主張する市民社会団体をはじめ、漁業組合や大学生組織など各界が強く反対し、各地で連日、記者会見やキャンペーンなどがくり広げられている。国民的関心も高い。

韓国では、福島原発の汚染水を海洋放出することは「核テロ」だと訴えている。本来、人類が「核」を扱うこと自体が「テロ」だと言えるかもしれない。核が開発されて以来、今日まで数多くの「核テロ」が全世界でくり返されてきた。米ソ冷戦のあいだには、核保有国によって2000回を超える核実験がくり返されてきた。再処理関連施設でも、大量の汚染水が海に放出されてきた。中・低レベル核廃棄物の海洋投棄も1993年に禁止されるまでくり返された。「軍事的」であれ、「平和的」であれ、人類が核を扱う以上、核テロは、「日常」であった。

このような背景をふまえ、日本政府は、今回の汚染水海洋放出の決定に関してIAEAと米国の強固な支持を取り付けて、海洋放出を公然と正当化する手段を備えた。日本国内ではマスコミが、日本政府や東京電力の主張をそのまま代弁し、海洋放出を正当化することに加担している。

日本の保守的なマスコミは、韓国で一部の運動団体が旭日旗を破ったり燃やしたりしながら、「汚染水は日本が飲め」のような刺激的なスローガンを叫んでいる様子を積極的に報道している。韓国の人たちが海洋放出に反対する声を、「反日」運動のフレームで日本の世論に紹介することによって、汚染水問題の本質をあいまいにする絶好の機会としているのだ。

国民的感情の対立を、先にそそのかしたのは日本の政治家たちだ。一部の政治家による、「汚染水は飲んでも大丈夫だ」とか、「中国や韓国なんかに言われたくない」などの妄言は、韓国の人たちの感情を刺激するのに十分だった。汚染水の本質的な問題点を後にしたまま、両国で、「反日」と「嫌韓」という感情の対立が作られたのだ。このような民族主義的な感情対立をあおるのは、かえって汚染水問題の核心がわかりにくくなるという逆効果として作用する恐れが大きい。

一方、韓国で一部の運動団体が、福島原発事故の放射能による被害に関して、奇形動植物の写真など、正確でない「にせ」の情報を利用して不安感を増幅させていることも憂慮すべき点だ。たとえば、よく登場する奇形の写真のなかで、頭が二つあるサメの写真は、福島事故が起きる前の2008年にナショナル・ジオグラフィックで公開された写真だ。奇形ひまわりの写真も肥料の過多摂取などが原因であることが明らかになっている。その他にも、日本の有名芸能人たちの突然死や癌による死亡などに関しても「放射能被ばくのせい」という根拠のはっきりとしないうわさが事実のごとく語られる場合がある。

このような「怪談」に一番大きな傷を受けるのは、実際に被ばくによる被害を被っている人たちだ。放射能による被ばくは様々な危険性を内包する一方、その因果関係を証明することは非常に難しい。因果関係が明らかでないということを口実に、加害者である東京電力と日本政府は様々な放射能被害に対する責任を回避してきた。今回の汚染水の海洋放出の決定は、放射能被害を無視してきたこれまで態度のくり返しだ。したがって、確認されていない「怪談」を真実のごとく話すことは、海洋放出を中止させるのに全く役に立たない。むしろ韓国内での海洋放出反対の主張を、「非常にレベルの低いもの」として歪曲するのに口実を与えるだけだ。

同じ脈絡から、「汚染水の海洋放出容認=親日」というレッテルを貼り付けることも、話をさらに複雑にする。韓国の原子力安全委員会は、すでに昨年10月、福島汚染水の海洋放出について、「意味のある影響は現れないだろう」いう見解を明らかにしている。さらに、原子力マフィアの一員である韓国原子力学会もまた、4月26日、「汚染水は日本の主張どおり処理水と呼ぶことが正しく、放出しても韓国に及ぼす影響は無視できる水準だ」と主張した。このような立場を打ち出すのは、彼らが決して「親日だから」ではない。日本政府が指摘したように韓国の原発からも、放射能汚染水が日常的に海洋に放出されているためだ。

日本の主張どおり、とくに重水を使用する月城(ウォルソン)原発では、他の原発よりもはるかに多くのトリチウムが液体と気体の状態で自然界に放出されているのは事実だ。これは、原発を運営するすべての国で日常的に起こることで、各国の原子力関連機関は一様にこのようなやり方を正当化している。だから、程度の差をもって、とくに韓日の市民たちの間で、その点について議論するのはあまり望ましくない。量がどれ程にせよ、核種が何にあるでせよ、「毒」は、「毒」だからだ。それによって、被害と苦しみを受け続けているのは、両国の市民すべてだ。

韓国政府が、今後どのような戦略で日本政府を圧迫することができるかも懸念すべき点だ。最近、韓国政府は問題の解決に向け、韓日両国が協議する場を構築することを日本政府に打診し、日本政府が受け入れる意向を明らかにした。しかし、韓国政府が協議を有利に運ぶというよりは、むしろ、海洋放出に太鼓判を押す機会として日本に利用されるのではと懸念する声が聞かれる。

もし、韓国政府がこの問題について引き続き生ぬるい態度を取ったとしても、これをもって現在の韓国政府が「親日的」と批判するのも間違っている。文在寅政府の問題点は、脱原発を宣言しながらも、国内の核問題についてずっと不徹底で中途半端な二重的態度をとり続けていることだ。

文在寅大統領は最近開かれた韓米首脳会談で、原発産業の推進と輸出に関しての協力を約束するなど、脱原発と原発推進の政策のあいだを行ったり来たりしている。

とにかく、福島の汚染水の海洋放出は決して容認できず、必ず阻止しなければならない。しかし、韓国内で日本政府の決定を覆す有効な方策を探すのも容易ではない。依然として、一番重要なのは、日本の市民自らが日本政府や東京電力の蛮行を阻止する力をつけていくことだ。

汚染水の海洋放出は、福島原発事故の収拾作業の一環として行われる過程の中の一部に過ぎない。汚染水の海洋放出を防ぐためには、根本的に日本政府が提示している「廃炉ロードマップ」を全面的に再考することから始めなければならない。廃炉ロードマップは30~40年以内に事故現場をすべてきれいさっぱりに取り除くという、現実的に不可能な構想を前提としている。これが、日本政府が汚染水処理を急ぐ一番大きな理由だ。

これに対して、日本の市民社会は包括的な観点から多様な代案を提示している。韓国でもすでに多く紹介された「陸上長期保管」や「モルタル固化」などだ。追加的な汚染水の発生を防ぐために、事故が起きた原子炉を水ではなく空気で冷却する案もまた、日本の市民社会の核工学専門家たちが積極的に提起している。

残念ながら日本の市民社会の力は強くない。汚染水の海洋放出に反対の世論が60%を超えるともいわれるが、具体的な反対の声は日常的によく聞こえてこない。社会の過ちに対して市民が積極的に声を上げ、社会を変えていく底力を持っている韓国市民社会との大きな違いだ。だから、韓国をはじめ全世界の人々が共に声を出し、日本の脱原発運動陣営と市民たちに力を貸してほしい。昨今、韓日関係が急速に悪化したことにより、市民レベルで良好に続いてきた様々な交流までも打撃を受けている。日本政府と保守的なマスコミが、連日、「嫌韓」感情を煽っていることも事実だ。悪循環だ。

過去の先輩たちが繋いできた韓日の反核連帯の歴史は長くて深い。アジア地域の反核運動の連帯のために作られた「ノーニュークス・アジアフォーラム」は1993年、韓国の提案で始まった。それ以降、ほぼ毎年アジア各国で開催されており持続的な信頼と絆が構築されてきた。

脱原発は長期戦だ。韓国と日本の慢性的な感情対立を乗り越えて、各国が真っ向から核マフィアと闘っていくために、お互いを激励して応援できればどれほどすばらしいだろうか。脱原発の道に、国境はない。

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信170号
(6月20日発行、B5-28p)もくじ

・汚染水を海に流すな! 6.2国際共同アクション
https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2178
               
・理解と合意のない汚染水の海洋放出処分を中止し、陸上保管とトリチウム分離技術の実用化を求める要請書 (脱原発福島ネットワークほか) 

・福島県農林水産業・消費者の協同組合の共同声明                

・原発処理水の海洋放出「人権にリスク」 国連特別報告者            

・両国の「反日」と「嫌韓」フレームは悪循環 (小原つなき)            

・9年目に、ヨンドク原発建設計画、白紙化 (イ・ホンソク)           

・新古里5・6号機は、建設地選定・耐震設計など違法性が明確だ (キム・ソクヨン)  

・寿都町長選挙で「地層処分にNO!」 (小野有五)              

・柏崎刈羽原発反対50年 (矢部忠夫)                    

・「柏崎刈羽原発の『設置許可取り消し』を求める署名」へのご協力を訴えます
(柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会) 

・関電株主代表訴訟第2回口頭弁論・陳述 (畑章夫)              

・若狭の老朽原発の危険性 (山本雅彦)                   

・「6.6老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」に1300人が結集 (橋田秀美)

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福島原発事故10年・韓日インターネット共同行動 ― 汚染水を海に流さないで! 原発もうやめよう!

日本政府が、福島第一原発汚染水の海への放出調整を進め、決定しようとしているなか、1月に韓国側からインターネット共同行動の提案がありました。韓国46団体(下記*)と、武藤類子、川井康郎、満田夏花、伴英幸、佐藤大介のよびかけで、1月20日にスタート集会、2月1日に国際署名開始、2月9日に韓日共同討論会を開催しました。


■ スタート集会 (1月20日、Zoom、韓日150名)

「韓日の参加者150人が、Zoomで同時接続して、脱核(脱原発)を念願する多様なプラカードを持つオンライン・パフォーマンスを進行した。また、韓日共同声明、福島汚染水海洋放出反対の国際署名、インターネット共同行動を提案した」(プサン日報 1.20)

「韓日インターネット共同行動を、全国紙のキョンヤン新聞、連合ニュースなどをはじめ、いくつかのメディアが報じた。ネットの画面を共有しながら同時にプラカードを掲げたり、スローガンを叫んだりといったアクションを自分も初めてやったが、まあ初めてだったこともあってか、なかなか新鮮で楽しかったし、それなりの連帯感も味わえた(下の録画の37~38分)。ネット空間と現実が融合した、ウィズコロナ時代の国際連帯社会運動の一つの形なのかもしれない」(高野聡/ソウル在住)

【録画45分】http://urx3.nu/0YoD

*福島原発事故10年・準備委員会(キリスト教環境運動連帯、労働者連帯、緑色党、緑色連合、大田脱核希望、仏教生態コンテンツ研究所、仏教環境連帯、社会変革労働者党、サムチョク核発電所反対闘争委員会、市民放射能監視センター、子供コープ生協 (강남, 강서, 도봉노원디딤돌, 서대문마포은평, 서울, 송파)、エネルギー気候政策研究所、エネルギー転換フォーラム、エネルギー正義行動、霊光核発電所安全性確保のための共同行動、円仏教環境連帯、ウォルソン原発隣接地域移住対策委員会、正義党、政治するオンマたち、済州脱核道民行動、参与連帯、天道教ハンウル連帯、天主教男子長上協議会正義平和環境委員会、天主教イエス会社会使徒職委員会、天主教議政府教区環境農村委員会、天主教創造保全連帯、緑を描く、脱核慶州市民共同行動、脱核プサン市民連帯、脱核新聞、脱核エネルギー教授会、脱核エネルギー転換全羅北道連帯、韓国YWCA連合会、韓国天主教女子修道会長上連合会 JPIC文科委員会、ハンサルリム連合、核のない社会のための大邱市民行動、核のない社会のための忠清北道行動、核のない世界のための高敞郡民行動、核のない世界・光州全南行動、環境運動連合、環境財団、環境正義)

■ 韓日共同討論会(2月9日、Zoom、同時通訳、韓日200名以上)

「有意義だった、継続的に開催してほしい」「内容が充実していた」「韓日それぞれ約100人が参加する集会というのは画期的」などの感想が寄せられました。

★内容
司会 : ファン・デグォン(霊光核発電所安全性確保のための共同行動)
○ 発表:「福島原発事故以降の日本の原発と脱原発運動の現状」伴英幸(原子力資料情報室)
「福島10年、韓国の原発政策と脱核運動の課題」イ・ヨンギョン(エネルギー正義行動)
○ ディスカッション:「トリチウム汚染水を海に流さないで」満田夏花(FoE Japan)
「福島原発事故は終わっていない」後藤政志(元東芝原子炉格納容器設計者)
「慶州ウォルソン原発のトリチウム漏れ」イ・サンホン(慶州環境運動連合)
「脱原発を早めるための法制度改善を中心に」ホン・ドクファ(忠北大学社会学科教授)
○ 自由討論(約40分)

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信168号
(2月20日発行、B5-24p) もくじ

・「福島原発事故10年、汚染水を海に流さないで! 原発もうやめよう!」国際署名
https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2046

 
・「福島原発事故10年・韓日インターネット共同行動
― 汚染水を海に流さないで! 原発もうやめよう!」
            
・慶州ウォルソン原発のトリチウム漏れ (イ・サンホン)
             
・2020年の脱核課題は 2021年に続く (韓国・脱核新聞編集委員会)
https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2019

        
・ロシアの反核運動:諸問題、抗議活動とそれに対する報復の数々(後編)
(ロシア社会エコロジー連合/地球の友ロシア)

・柏崎刈羽原発 再稼動問題の要点 (佐々木寛)
                 
・子どもたちに核のゴミのない寿都を (2) (本田英人)
             
・1.24 関電本店前大集会 (松原康彦)
                     
・宗教者が核燃料サイクル事業廃止を求める裁判(宗教者核燃裁判) (内藤新吾)                    

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韓国 2020年の脱核課題は 2021年に続く

韓国・脱核新聞編集委員会  (脱核新聞84号より)

1.使用済み核燃料管理政策の「密室」公論調査


2019年5月に市民・社会(団体)や利害当事者を排除して発足した産業通商資源部(経産省にあたる)の「使用済み核燃料管理政策再検討委員会」は、19年11月から専門家の意見収集を始めた。

また、使用済み核燃料中長期管理政策に関する全国からの意見収集は、2020年5月23日から8月2日まで実施され、「月城(ウォルソン)原発使用済み核燃料の乾式貯蔵施設」(以下、マクスター)建設の可否を問う慶州地域の意見収集は、6月27日から7月19日までの3週間行われた。

専門家で構成された検討グループの11名は20年1月に、「形式的な手続きとして行われる公論調査(公論化)を廃棄すること」を要求し、辞退の記者会見を開いた。

全国の市民・社会は5月23日、全国の意見収集のための説明会の開催に抗議し、14地域中、12地域でデモをした。慶州地域住民説明会は、住民と市民社会の抗議で白紙に戻された。

その過程でチョン・チョンファ再検討委員長は、6月26日、公論調査の公正性の担保が難しいとし、委員長職を辞任した。

産業部と再検討委は、キム・ソヨンを新任再検討委員長に任命し、「コロナ19」を言い訳に密室の中の公論調査を続けた。

全国脱原発陣営は、政府に抗議し、大統領府の前で「使用済み核燃料のでたらめな公論調査の無効を宣言」した。

再検討委は21年上半期に「使用済み核燃料管理政策意見収集の最終勧告報告書」を産業部に提出する予定だ。

2.5万人が参加した蔚山住民投票

蔚山(ウルサン)市は、月城(ウォルソン)原発の基準放射線非常計画区域内に属し、約100万人が暮している。しかし、産業部と再検討委は、マクスター建設賛否意見収拾の過程から蔚山を排除した。

蔚山市民社会と労働組合などはこれに抗議し、「月城原発の使用済み核燃料保存施設(マクスター)の追加建設賛否を問う蔚山北区住民投票」を実施した。住民投票は5月28日から6月6日まで、事前投票、オンライン投票、本投票と、3段階で行われた。蔚山北区有権者の17万5138人のうち、5万479人(28.82%)がこの投票に参加した。投票者のうち、94.8%に当たる4万7829人がマクスター建設に反対した。

住民投票運動本部は住民投票以後、大統領府が投票結果を受け入れるよう求め、7月27日から8月25日まで、大統領府前で座り込みをした。

蔚山北区住民投票では、本投票の投票所を34か所に設置した。また、選挙事務員とボランティアは合計1081名が参加した。延べ3千人を越えるスタッフで開催した自主住民投票であった。

3.マクスター建設反対のたたかいは現在進行形

産業部と再検討委員会は、7月24日、慶州地域の意見聴取の結果を発表した。「145人の市民参加団のうち、81.4%がマクスター建設に賛成した」と。

産業部はこれを首相に報告し、首相は計画通りにマクスター建設をすすめることを指示、韓水原は7月31日にマクスターの建設着工式を行った。

しかし、慶州(キョンジュ)市と陽南面(ヤンナムミョン)、蔚山市の住民と市民団体は、「市民参加団」に韓水原の利害当事者が20人以上参加した事実を証拠として提示した。募集団の分布を反映しない市民参加団の構成など、公論操作疑惑を提起した。陽南・慶州・蔚山住民と市民団体は、産業部と国会に「公開検証」を要求したが、行われなかった。

住民と市民団体は今でも、月城原発の前で「マクスター反対」毎週ピケットデモと、海上デモなどをしている。全国833人の市民は、原子力安全委員会を相手にマクスター建設許可の取り消し訴訟も行っている。

4.台風で止まった核発電所

9月4日の台風9号の影響で、古里(コリ)1~4号機と新古里1・2号機の外部電源を喪失し、非常ディーゼル発電機が起動した。このうち運転中だった4基が運転停止した。新古里3号機も、台風で屋根の一部が損傷し、大気補助変圧器が停電した。9月7日の台風10号の際には、月城2・3号機もタービン発電機が停止し、運転停止した。

原子力安全委員会は、古里1~4号機は機械用変圧器に塩分が吸着し「フラッシオーバ」現象が発生し、スイッチヤードにある遮断機が開放され、外部電源を喪失したと発表した。新古里1・2号機は、送電するジャンパー線が送電塔に近づいたことによってフラッシオーバが発生し、外部電源を喪失したとした。

市民社会は真相調査委員会の設置を求めたが、原安委は再稼働を容認した。

新古里3・4号機は、7月23日の集中豪雨の際にも、スイッチヤード管理棟と送電設備が浸水した。

5.大田、都心の河川に放射能が流れる

20年1月、大田(テジョン)市の都心に位置する韓国原子力研究院の周辺の雨水管と河川の土壌で、セシウム137、セシウム134、コバルト60などの放射性物質が検出された。研究院の裏手の雨水管の入口では、セシウム濃度が最高138ベクレル/kgまで検出されており、これは平均濃度の59倍に達する。

3月20日、原子力安全委員会は、原子力研究院でセシウム汚染水が毎年約400~500リットルずつ、30年で1万5千リットル、河川に流れたと発表した。原子力安全委員会は、放射性物質が原子力研究院の内部の廃棄物自然蒸発施設から流れたことを確認した。

6.古里原発1号機の解体計画の公聴会

韓国水力原子力㈱が、20年7月1日から60日間、「古里1号機の最終解体計画書」の供覧と説明会を行った。さらに、住民たちの要求によって11月20日から、釜山広域市、釜山機張(キジャン)郡、蔚山市蔚州(ウルチュ)郡、蔚山広域市を対象に公聴会を行った。

韓水原は、2022年に古里1号機の解体計画が承認されれば、2025年までに使用済み核燃料を搬出し、2031年には敷地の復元に着手、2032年12月に解体を終了するという計画だ。

古里1号機の解体計画に関する全ての説明会や公聴会では、住民たちが「使用済み核燃料を十分に処分できないなら、完璧な解体とは言えない」と反発した。これに対し韓水原は、使用済み核燃料を政府政策に則って処分すると述べた。使用済み核燃料の処分をめぐって今後の難航が予想される。

7.霊光ハンビッ原発3号機、再稼動

格納容器で空隙が多数発見された霊光(ヨングァン)のハンビッ3号機が、20年11月14日から再稼動した。

ハンビッ3号機は、2018年5月11日から始まった計画予防整備期間(919日)において、格納容器で空隙、グリス漏油、鉄板腐食などが確認された。韓水原は124か所の空隙と、184か所の鉄筋露出部を反映した構造健全性評価を通じて、格納容器の健全性に異常がないことを確認したと発表した。

しかし、脱核エネルギー転換全羅北道連帯と全羅北道民衆行動などは、「3号機の構造健全性評価は、拙速・不良・セルフ評価であり、グリス漏油による亀裂要素と空隙の進行性の有無が反映されなかった」と主張した。また、建設工事の欠陥の責任を問わなければならない韓国電力技術㈱に、構造健全性評価を任せた過ちを批判して、責任者処罰を要求した。

8.ハンビッ原発5号機、原子炉ヘッド不良溶接

ハンビッ5号機の原子炉ヘッドの貫通管の不良溶接が、20年7月25日に初めて確認された。当時、作業者は、溶接材質が作業指示書に書かれたインコネル690材質ではない、ステンレス材質であることを確認し、7月26日の真夜中にこれを報告した。原子力安全委員会は、2日後の7月29日になって、不良溶接部の削除および再溶接を許可した。

当時、原子力安全委員会と韓水原は、これを作業者のミスだとした。しかし、10月29日、情報提供者を通じて、原子炉ヘッド不良溶接が、すでに明らかになったもの以外にも存在するということが分かった。

以降、原子力安全委員会は、84の原子炉ヘッドの貫通管のうち、3つの不良溶接を確認した。また、25の貫通管は映像不良などで確認できていない。さらに、原子力安全委員会は、手抜き工事に関連して、12月1日、光州(クァンジュ)地検に捜査を依頼した。

市民社会は原子力安全委員会が、7月に不良溶接をきちんと検証せず、作業の再開を許容したことに対して批判し、真相調査や責任者処罰を要求している。

9.新古里原発5・6号機訴訟、新古里原発4号機訴訟

グリーンピースと全国の市民など合計560人が原子力安全委員会を相手に提起した新古里5・6号機建設許可処分取り消し訴訟の二審判決が、2021年1月8日、ソウル高等裁判所で行われる予定だ。

この訴訟は、2016年9月に始まっており2019年2月に行われた一審(ソウル行政裁判所)では、重大事故の場合の放射線影響に対する評価が正しく行われなかったことなど、原子力安全委員会の一部の違法を認めたが、建設を中断した場合の損失が大きく、公共福利のために建設許可を取り消すことができないという「事情判決」を下した。

これとは別に、新古里4号機の運転許可取り消し訴訟も進行中だ。この訴訟は蔚山、釜山、慶州などを中心に全国732人が共同訴訟に参加し、2019年5月1日、原子力安全委員会相手に起こした訴訟であり、現在、一審裁判が進められている。

10.甲状腺がん共同訴訟、一審の最終段階

甲状腺がん共同訴訟の一審裁判が詰めの段階にさしかかっている。20年10月14日、釜山地方裁判所で裁判が開かれて以後、未だ弁論期日は決まっていないが、裁判部は、弁論を終結する意向をちらつかせた。

核発電所地域対策委員会らは、11月3日、「甲状腺がん被害者国会証言大会『ここに人がいる』」を開催した。核発電所地域対策委と市民社会は一審の裁判終結に先立って989人の嘆願書を集めており、これを裁判部に提出する予定だ。

この訴訟を触発した「ギュンド家族の訴訟」は、一審では勝訴したが、二審で敗訴、最高裁に上告したが、最高裁は、「審理不続行」として上告を棄却した。ギュンド家族の訴訟の二審で裁判部は、原発の周辺地域の住民の甲状腺がんの発病について、原発が排出する放射性物質との因果関係を証明できないとし、韓国水力原子力の側の主張を認めた。

11.福島原発汚染水対応

日本政府は、20年10月末、福島原発汚染水の海への放流の決定を延期した。11月20日、在韓日本大使館当局者は韓国の記者たちとの懇親会で「断言はできないが、今年中に放流案を決定する可能性がある。2022年夏頃を放流の時点として想定している」と明らかにした。

汚染水海洋放出の計画に対して、日本をはじめ、国際的な反対の声が高まっている。環境運動連合は「福島汚染水の海洋放流反対キャンペーン」を進行中であり、グリーンピースも持続的な反対活動をしている。

日本の市民団体である原子力資料情報室は、汚染水貯蔵タンク増設、または汚染水固体化を代案として提示している。

福島汚染水の海への放出について、福島県内の基礎自治体の約70%が「反対」および「慎重な対応」を要求している。

12.「大韓民国の津々浦々まで持って行け、核廃棄物」

核廃棄物のドラム缶の模型をトラックにいっぱい積んだ「大韓民国の津々浦々まで持って行け、核廃棄物」キャンペーン団は、10月24日から9泊10日の日程で、釜山・蔚山・慶州・蔚珍・大邱・霊光・大田・ソウルを走り回った。

キャンペーン団は、「使用済み核燃料管理政策の再検討」の問題点と核廃棄物の実態を市民に知らせ、社会的責任を訴えた。

キャンペーン団は、各地域で脱原発団体と共同して、核廃棄物のドラム缶を押して街頭行進をくり返し、サイレンが鳴ると地面に倒れるというパフォーマンスを行った。

しかし11月2日、警察の制止のため、彼らは大統領府前の広場にはドラム缶を押して入ることができなかった。同日、全国の脱原発団体は、大統領府への進入路で「拙速・でたらめ・密室 公論調査(公論化)の無効を宣言」する記者会見を開いた。警察は同日、記者会見を集会法違反とし、環境運動連合の活動家に出頭要求書を送った。    (訳/小原つなき)