全国の市民社会、使用済み核燃料の公論化に対し無効を宣言

使用済み核燃料「でたらめ公論化」を中断せよ! 慶州でデモ・ダイイン、7月18日

韓国の産業通商資源部(経産省にあたる)の「使用済み核燃料管理政策再検討委員会」が、月城(ウォルソン)原発の使用済み核燃料の一時貯蔵施設(マクスター、乾式)増設のための地域公論調査の最終結果を7月24日に発表した。「選ばれた慶州市民参加団145人の81.4%がマクスター増設に賛成した」とのことであるが、この公論調査は操作された疑いがある。月城原発に隣接する陽南面(ヤンナムミョン)住民の反対は、39名中たったの1人だった。6月にハンギルリサーチが陽南面住民891人を対象に調査した結果では、55.8%が反対していたので、意図的に賛成住民を中心に市民参加団を構成した疑いがあるのだ。また、市民参加団に韓国水力原子力の協力会社の従業員が数十人参加していたという状況も明らかになっている。

■ 「全国の市民社会、使用済み核燃料の公論化に対し無効を宣言」

ヨン・ソンロク (韓国・脱核新聞より)

全国の市民社会、宗教界、地域、専門家、政党などは、産業通商資源部が推進した「使用済み核燃料の管理政策に関する再検討」 全国公論化と地域公論化に対して無効を宣言した。彼らは、公論化を推進した再検討委員会が公正性と透明性などを喪失し、産業部が公論化を失敗に導いたと主張した。

文在寅政府は発足初期に国政課題の一つとして、「高レベル放射性廃棄物(使用済み核燃料)管理基本計画」の再検討を進めることを明らかにした。これは、朴槿恵政府が樹立した高レベル放廃物の管理政策が核産業界の立場を一方的に代弁したものであり、再公論化を通じた政策の見直しが必要だという市民社会の要求を現政権が受け入れた結果だった。

しかし、核産業界の主管部署である産業通商資源部は、公論化を推進するなかで、再検討委員会の人員構成に関して原発立地地域と市民社会の代表者などの利害当事者を排除した。市民社会は、文在寅政府のもとで行なわれる公論化も、スタートから中途半端な公論化となることを憂慮し、再検討委員会の人員の再構成などをくり返し要求してきた。しかし産業部は公論化を強行した。

産業部は、全国公論化を通じて、全国民とともに、国家的な難題である使用済み核燃料の処分案に対する話し合いを進めなければならないにもかかわらず、永久処分場が確保できないまま稼動されている核発電の問題点について国民に知らせるどころか、核発電所敷地内に「臨時貯蔵施設(乾式)」を建設することに問題の焦点を矮小化していった。

産業部が、市民社会の不参加のもと公論化を強行する中で、1 年以上再検討委員会を率いてきたチョン・チョンファ委員長をはじめ、委員 15名のうち、5人が辞任する事態となった。チョン・チョンファ委員長は、「慶州月城原子力発電所の使用済み核燃料貯蔵施設の増設可否を問う月城地域実行機構」が、再検討委員会と相談もしないで意見収斂の内容を一方的に変更したとし、公正性と透明性を担保できないと主張した。

「密室操作公論化 無効」

● 使用済み核燃料の問題の核心を国民に正確に示さないなら、対政府闘争は避けられない

7月30日、大統領府前で開かれた「使用済み核燃料でたらめ公論化の無効宣言」と題された記者会見では、「高レベル核廃棄物全国会議」のファン・デグォン代表が冒頭発言で、「ろうそく革命を通じて誕生した政府を前に、ろうそくを再び掲げる心情でこの場に立った」と吐露した。また、「脱原発を約束した大統領の下で、このようなでたらめな公論化を推進した産業部を到底理解できない」と批判した。彼は「もし、このすべての過程が産業部の過ちなら、大統領が産業部長官を解任しなければならない。また、もしこれが大統領の意思なら、対政府闘争をするしかない」と怒りをあらわにした。彼は「再検討委員会は、核廃棄物の臨時貯蔵施設の推進にしか目がない」「公論化は、韓水原の社内施設として勝手に管理することができる臨時貯蔵施設の建設を容認するためのものだ」と批判した。

緑色連合のチョ・ヒョンチョル代表は、「産業部の公論化過程を見る中で、この政権が暴力的になったと思った」と切り出した。彼は「産業部が、高レベル核廃棄物の中長期政策について全国の意見を汲み上げる前に、地域の公論化を終えたのは、産業部が公論化の目的を月城核発電所の敷地内に臨時貯蔵施設の建設を進めることに焦点を当てている証拠だ」と主張した。彼は「再検討委員会が、使用済み核燃料に関する全国的な議題はそっちのけにして、地域の議題だけにこだわり、とくにマクスター(使用済み核燃料貯蔵施設)の増設にのみ熱中した」と批判した。彼は合意を破って一方的に密室で推し進めた公論の過程は、真の公論化にふさわしくないと批判した。

環境運動連合のチェ・ジュンホ事務総長は、「こんなに重要な問題について市民たちはろくに知ることもできず、また、産業部はこれを伝えるための努力をしていない」と批判した。また、「核発電所の問題の本質について明らかにしないまま処分問題を論議し、核発電所の周辺地域の住民の被害と苦しみを無視しつづけている」と指摘した。

参与連帯のシン・ミジ選任監査は、「高レベル核廃棄物の問題は、市民の安全と直結する問題であり、一度や二度の議論で決定できるような問題ではなく、議論の対象を地域住民に縮小してはならない」と指摘した。また、「時間がかかっても文在寅政府は、まともな公論化の場を作り直さなければならない」と主張した。

● 国民参加のない一方的な発表では、気候危機と脱原発の大転換は難しい

宗教環境会議のヤン・ギソク共同代表は、気候危機と核発電問題について、「世界各国が苦境に直面する中で、数日前、韓国政府は『グリーン・ニューディールに160兆ウォンを投資し、韓国社会における大転換の契機にする』と断言したが、どれほど多くの費用を投資しても、アプローチしなければ気候危機と核発電問題において、韓国社会は変化せず、依然として危険である」と主張した。また、「核廃棄物問題も一時保存ではなく、核発電所存亡そのものについて国民が悩む時間を作るべきだ」とした上で、「それが行なわれるとき、韓国社会が持続可能な社会に進むための大転換となる」と話した。また、「政府が依然として民主的でない方式で少数の選別された人たちのなかで意図された結論を導き出そうとする行為は社会変化を引き出せない」と指摘した。

このほかにも進歩党のキム・ジェヨン代表や、緑の党のソン・ミソン運営委員長も記者会見に参加し、産業部の公論化の問題点を指摘し、でたらめな公論化は無効であることを宣言した。

「慶州月城原子力発電所使用済み核燃料貯蔵施設に関する地域公論化」の懸案地域から、「月城核廃棄場反対 蔚山(ウルサン)住民投票運動本部」のイ・ウンジョン共同代表が、産業部と再検討委員会の問題点を指摘した。イ・ウンジョン代表は、月城原発から半径7km~30km圏域に位置する蔚山市民の意見を収れんしないことに対して、文在寅大統領は産業部に責任を問い、まともに公論化を推進するよう働きかけなければならないと要求した。

「月城原発核廃棄場追加建設反対 慶州市民対策委員会」のイ・サンホン執行委員長は、「朴槿恵大統領のもとで行なわれた公論化よりもひどい公論化を、これ以上続ける意味があるでしょうか?」と疑問を投げかけ、「文在寅政府は、多くの市民たちの期待や熱望、努力と汗と信頼を裏切った公論化を中断しなければならない」と訴えた。彼は「2005年に行なわれた中・低レベル放射能物質廃棄場の誘致に関する慶州市住民投票で私を絶望させたのは、誘致が決まったことよりも、むしろ盧武鉉政府のもとで行なわれた広範な不正投票だった」と当時を回想した。加えて、「現在、生徒が学ぶ社会教科書には、中・低レベル放射能物質廃棄場の慶州市住民投票が、大韓民国初の住民投票で、民主的葛藤解決の模範事例として紹介されているのを見るたびに血が逆上する」と主張した。彼は「なぜ民主主義は、民主政府のもとでさらに蹂躙されなければならないのですか」と訴え、「でたらめな公論化によって再び核廃棄場が慶州に建設されるのを黙ってみているわけにはいかない」と切実な思いを伝えた。彼は、文在寅大統領が慶州地域での公論捏造の真相を明らかにし、公論捏造の犯罪者を厳罰することを要求した。

全国の市民社会、宗教界、地域、専門家、政党などは、市民宣言文を通じて、「今回の公論化は、民意を徹底的に無視して歪曲した」「慶州地域の公論過程で行なわれたハンギルリサーチの調査結果では、慶州市陽南面(ヤンナムミョン)の住民の過半数以上が核廃棄施設の増設に反対したにもかかわらず、産業部の地域公論化の過程では市民参加団の陽南面住民の反対が 39名中たったの1人だったことは『公論操作』である」という疑惑を提起した。

また、蔚山市の人口のうち約100万人が放射線非常計画区域内に属しているにもかかわらず、核廃棄場の増設の可否を問う意見収集対象から除外したことも、今回の公論化過程の大きな誤りだと指摘した。蔚山の場合、産業部と再検討委員会が蔚山市の意見を収れんしなかったため、民間主導で住民投票を実施し、5万人以上が投票に参加して94.8%が使用済み核燃料貯蔵施設の追加建設に反対したが、この住民投票の結果は全く反映されなかった。

全国の市民社会などは、熟議の過程の拙速性に加えて、公論操作の疑惑まで提起されている慶州地域の意見聴取の結果は無効であり、徹底した真相究明を通じて、産業部と再検討委員会および地域実行機構の責任者は処罰されなければならないと要求した。

全国市民宣言への参加者は、「核廃棄物に対する責任ある管理計画を掲げることよりも、慶州月城の核廃棄物臨時貯蔵施設の追加建設という目的を達成するための手段として公論化を利用した産業部を糾弾する」「私たちは、民意も熟議もなく、公正性と透明性、客観性と収容性など、どれ一つ満たしていない密室での公論化、使用済み核燃料管理政策を根本的に準備できない公論化は無効であることを宣言する」と叫んだ。

全国市民宣言への参加者は、朴槿恵政府に続き、再び破綻した公論化をくり返した政府に次のような要求事項の履行を促した。

「でたらめ公論化の無効宣言」

【全国市民宣言参加者の要求事項】
1. 慶州地域の意見聴取の結果は無効だ。 公正性検証委員会を構成し、慶州地域公論の操作疑惑の真相を調査せよ。
2. 慶州月城臨時貯蔵施設(マクスター)建設反対 94.8%、蔚山北区住民投票の結果を受け入れよ。
3. 文在寅政府の国政課題である「使用済み核燃料管理政策の再検討」を破綻させた産業部長官を解任せよ。
4. 核廃棄物の問題について全国民が熟考して共に討論する過程を通じて、解決策を見出せる形での公論化を再設計せよ。
5. 大統領直属の独立的な機構として、地域と市民社会などの利害当事者が参加するまともな公論化として再スタートせよ。
(訳/小原つなき)