「オーストラリアの原子力潜水艦の契約は、未来の危険」「原潜推進における南オーストラリア州の役割に大きな疑問」

「オーストラリアの原子力潜水艦の契約は、未来の危険」

ジム・グリーン(FoE オーストラリア)  RenewEconomy 9月17日

2019年、国会の環境エネルギー常任委員会は「Not without your approval」と題した原子力に関する報告書を発表した。この報告書では、国民の支持なしに原子力を推進することはないと強調していた。

にもかかわらず今月、国民の承認なしに、政府は原子力潜水艦を米英の技術供与により取得することを決定した。


しかし、原子力潜水艦の計画は、経済的理由 ― 原子力潜水艦8隻で1000億豪ドル(約8兆円)以上の費用がかかり、廃炉や廃棄物処理にも同じくらいの費用がかかる可能性がある ― や、他の選択肢があること、国民や政治家の反対など、さまざまな理由で破綻する可能性がある。


■ 代替案


政府内での議論や国際交渉が秘密にされてきたため、代替案が適切に検討されたかどうかを知るすべはない。


原子力が自然エネルギーとバックアップの蓄電よりもはるかに高価であるにもかかわらず、与党の国会議員の多くが、原子力を禁止する連邦法の撤廃を支持している。


ピーター・ダットン国防相の頭の中には、「原子力は良いもの。バッテリーは悪いもの、リベラリストのもの」という単純化されたイデオロギー的な思考があるのだ。


■ 原発へ


原子力潜水艦を運用している国は、5つの核兵器国とインドであり、原発と核兵器の双方を保有している。


原子力潜水艦を支える国内の原子力産業を構築するには、天文学的なコストがかかり、他の面でも問題がある。


スコット・モリソン首相は、原子力潜水艦の提案がオーストラリアでの原子力発電所の推進につながることはないと主張していた。しかし、AUKUSの発表から数時間後、オーストラリア鉱物評議会(MCA)は、オーストラリアでの原子力発電を禁止する法律を廃止するよう求めた。


石炭推進・原発推進・再生可能エネルギー反対のMCAは「オーストラリアが小型原子炉を使用する原子力潜水艦を保有しようとする今、民生用のSMR(小型モジュール原子炉)を検討しない理由はない」と述べ、SMRは「24時間365日、最も安価なゼロエミッションの電力を提供する」と付け加えた。


SMRによる電力は、従来型の原発よりも高価であり、自然エネルギーとは比べものにならないほど高い。


■ 核兵器について


政府は密かに、原子力潜水艦プログラムを通じて、オーストラリアを核兵器保有国に近づけようとしているのだろうか。


モリソン政権が国連の核兵器禁止条約への署名を拒否し、あらゆる段階で積極的に条約を弱体化させてきた理由の一端がそれで説明できるだろうか。


過去にも1960年代後半、ジョン・ゴートン政権が原発・核兵器開発を検討し、オーストラリアが国連の核拡散防止条約(NPT)に署名することに反対したことがある。


原子力潜水艦は、それが計画に含まれているかどうかにかかわらず、オーストラリアを核兵器保有国に近づけることは確かである。原子力潜水艦計画のために訓練を受けたスタッフが、後に核兵器計画に携わることになるかもしれない。


原子力潜水艦を建造することになる南オーストラリア州の州都アデレードの北郊外は、シドニーの南のルーカスハイツにあるオーストラリア原子力科学技術機構の研究用原子炉施設と並ぶ、オーストラリアの第2の核専門家の拠点となるだろう。(オーストラリア原子力科学技術機構の前身であるオーストラリア原子力委員会は、1960年代に核兵器開発に大きく関与していた)。


モリソン政権は、潜水艦交渉の一環として、オーストラリアが原子炉製造能力を身につけるために、米英に対してある程度の技術移転を要求するだろうか。それが政府の真意を問うことになるが、もちろん交渉は秘密裏に行われるので、他の人々は推測するしかない。


オーストラリアが原子力潜水艦を追求すると、他の国が同じことをするのではないか? たとえば、インドネシアは核兵器の保有に近づくため、原子力潜水艦か原発、あるいは、その両方を手に入れようとするだろう。


■ ウランの濃縮


原子力潜水艦の多くは、高濃縮ウラン(HEU)燃料を使用している。原子力潜水艦におけるHEU燃料の使用は大きな問題であり、HEUの非兵器使用の大部分を占めている。


では、オーストラリアは低濃縮ウラン(LEU)燃料の使用を主張するのだろうか。LEUも濃縮工場の存在と稼働を前提としているため問題はあるが、核兵器に直接使用できない点では望ましい。その場合、潜水艦の性能、原子炉の寿命、燃料補給の必要性などにどのような影響があるのか。


オーストラリアでもウラン濃縮を推進する動きが出てくるだろう。


ウラン濃縮の研究開発にオーストラリアが関わったのは、1965年にルーカスハイツの研究用原子炉施設の21号棟の地下で行われた「口笛プロジェクト」である。関係者は21号棟の前を通るときに口笛を吹き、濃縮作業については何も言わないことになっていた。


政府は、原子力潜水艦の追求は国連の核拡散防止条約(NPT)を損なうものではないと主張している。しかし、10年前、オーストラリアは米国と共謀し、NPT非加盟国との核取引を禁止するNPT原則に違反して、インドとの核取引(およびインドへのウラン販売)を認めた。


原子力潜水艦、高濃縮ウランの拡散はNPTのさらなる弱体化につながるだろう。


■ 核廃棄物


原子力潜水艦から発生する高レベル放射性廃棄物と中レベル放射性廃棄物の処分について、政府は沈黙を守っている。


世界のどの国も高レベル放射性廃棄物の処分場を持っていない。


原子力潜水艦から出る放射性廃棄物は、アボリジニの土地に投棄されることになるのではないか。現在、政府はオーストラリアの放射性廃棄物を南オーストラリア州のキンバに投棄する計画を進めようとしている。バンガラの伝統的土地所有者が満場一致で反対しているにもかかわらず。


核廃棄物の投棄に対するアボリジニの満場一致の反対を無視しようとしているのは、連邦政府と南オーストラリア州政府の粗野な人種差別主義を物語っている。連邦政府は、いわゆる「地域社会調査」から伝統的土地所有者を除外するために争ったこともあった。南オーストラリア州労働党は、核廃棄物処分場を含むいかなる原子力施設の計画に対しても、伝統的土地所有者は拒否権を持つべきだという方針を掲げている。


原子力潜水艦から発生する高レベル放射性廃棄物と長寿命の中レベル放射性廃棄物は、海外のコスト試算によると、処分に何百億ドルもかかると言われている。


南オーストラリア州の核燃料サイクル王立委員会は、高レベル放射性廃棄物処分場の建設、運営、廃炉にかかる費用を120年間で1,450億豪ドルと見積もっている。


政府がこのような巨額の長期コストを検討した可能性は極めて低い。潜水艦の廃炉もまた、将来の世代が直面する高価で危険な悪夢となる可能性が高い。

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「原潜推進における南オーストラリア州の役割に大きな疑問」

ケビン・ノートン InDaily 9.28


オーストラリアの原子力潜水艦の推進については、未知のことが多い。


将来、原子力潜水艦に搭載される原子炉と1隻あたり220トン以上の核廃棄物をどうするのか? 潜水艦が退役した後、解体が必要な潜水艦の部品は何か、オーストラリアにその能力はあるのか。退役した潜水艦からは3段階の放射性物質(熱を発し続ける核燃料、原子炉圧力容器ほか、さまざまな中低レベル放射性廃棄物)が発生するため、取り扱い、輸送、処分方法に課題がある。


オーストラリアには、放射性廃棄物を処分するための施設がなく、現在は国内100カ所以上の場所に保管されている。過去には、南オーストラリア州のウーメラ付近やノーザンテリトリー(北部準州)のマカティ付近などに、放射性廃棄物処分場を建設しようとしたが、地域住民の懸念や州政府の抵抗により、失敗に終わった。


2015年、南オーストラリア州のジェイ・ウェザリル首相(当時)が「核燃料サイクル王立委員会」を設置した。同委員会は2016年に次のような報告を行った。


「南オーストラリア州には、国際的な使用済み核燃料を安全に管理・処分する属性と能力があり、それは地域社会に大きな世代間利益をもたらすだろう。この活動を進めるためには、社会と地域の同意が基本となる」。そして報告書では、使用済み核燃料の処分施設の建設を追求するため、法律上の制約を取り除くよう提言している。


しかし、この報告書を検討するために設置された市民陪審は、提案に反対した。当時の野党党首であったスティーブン・マーシャルは、核廃棄物処分施設の推進は「もはや死んだも同然」と述べた。


今年、再び、南オーストラリア州のキンバでの低レベル放射性廃棄物処分場建設計画が提案されている。


オーストラリア政府は、南オーストラリア州のアデレードで潜水艦を建造するという意向をもっている。

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信172号
(10月20日発行、B5-28p)もくじ

・月城原発、24年間にわたり放射能漏れ (ヨン・ソンロク)
http://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2489           

・1003事件から30年目の公民投票で、第四原発を終結させよう(台湾環境情報センター)

・オーストラリアの原子力潜水艦の契約は、未来の危険 (ジム・グリーン)     

・原潜推進における南オーストラリア州の役割に大きな疑問(ケビン・ノートン)ほか

・トルコの人々は日本の原発輸出にどう向き合ったのか
     ―『原発と闘うトルコの人々』を出版 ― (森山拓也)

・CoP 26 市民社会の声明 (世界252団体)

 ・東電に核を扱う資格はない ― 柏崎刈羽原発再稼働反対 ― (竹内英子)    

・東北電力は、被災原発・女川原発2号機の再稼働をするな! (日野正美)   

・避難計画の実効性を地元同意の要件に ~島根原発再稼働反対~ (山中幸子)   

・伊方原発仮処分、なるか3度目の差止め (小倉正)              

・10月停止の老朽原発・美浜3号機をそのまま廃炉に追い込み、原発全廃に前進しよう! (木原壯林) 

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福島で燃やされたオーストラリアのウラン

ジム・グリーン & デービッド・ヌーナン

福島原発の事故では、オーストラリアのウランが燃やされました。しかし、その教訓は生かされず、オーストラリアのウラン産業は、その無責任なウラン輸出政策によって、世界の核に対する不安をあおり続けています。

福島原発事故は、オーストラリアのウラン産業と日本の原子力産業が、規制当局や官僚と結託して、傲慢になり、利益を得ようとしたために起きたと言えます。

日本の国会に設置された事故調査委員会は、2012年の報告書で、「事故は、予見できたし、防ぐことができたはずの深刻な人災」であり、「福島原発が、3月11日のような出来事に対して何の準備もしていなかったことを示す、多くの誤りと故意の過失」があるとしました。

そして事故は「政府、規制当局、東京電力の癒着」の結果であると結論づけました。

■ ウラン採掘

しかし、海外の関係者たちは、日本で起きた、このとても許容することができない原子力のリスクを見て見ぬふりしてきました。そうした態度について、きちんとした調査がされたこともないし、また非難も受けていない。オーストラリアのウラン産業はその一例です。

広島平和研究所の田中利幸氏は「今回の原発事故の責任は、日本だけにあるわけではない。GEによる原子炉の製造から、カナダやオーストラリアなどによるウランの提供まで、多くの国が関与している」と述べています。

オーストラリアのウランが福島原発で使用されたことは、はっきりとしています。しかしながら、「商業上の機密性」や「安全性」を理由に、鉱山会社はその事実を認めようとしません。

しかし、オーストラリア連邦政府の「保障措置および核不拡散局」は、2011年10月に次のように認めています。「オーストラリアから送られた核物質が福島第一原発の敷地内およびそれぞれの原子炉にあったことを確認している。それは6基の原子炉のちの5基において、もしくは、そのすべての原子炉においてである」

世界最大級の鉱山会社であるBHP社とリオティント社は、オーストラリアのウランを東京電力に供給し、そのウランが福島原発の燃料として使用されていたのです。

■ 津波

それら鉱山会社は、管理や規制が不十分な福島原発で自社のウランを使用した結果、日本社会に壊滅的な影響を与えたことについて、一切の責任を取っていません。

さらに言えば、鉱山会社は知らなかったとは言えないし、すでに警告のサインは、はっきりしていたのです。つまり、オーストラリアのウラン産業は、東京電力をはじめとする日本の原子力企業で、スキャンダルが続き、また事故が続いている間、何もしなかったのです。

たとえば、2002年に東京電力が25年以上にわたって組織的、日常的に安全データを改ざんし、安全規則に違反していたことが明らかになったとき、オーストラリアのウラン産業は何もしませんでした。

2007年には、日本で300件以上の「不正行為」が明らかになり、そのうち104件が原発関連であったときにも何もしなかったのです。

日本の原発が地震や津波に耐えられるかどうかについて、業界関係者や独立した専門家からの批判が高まっていたにもかかわらず、何もしなかったのです。

■ 悪循環

オーストラリアのウラン産業は日本の原子力規制当局との間にある複数の利害関係についても、何もしていません。

オーストラリア北部準州にあるリオティント社のレンジャー鉱山の土地は、アボリジニであるミラル氏族が所有しています。そのリーダー、イボンヌ・マルガルラ氏は、レンジャー鉱山のウランが東京電力を含む日本の原子力企業に輸出されていたことを「深く悲しんでいる」と述べています。

イボンヌさん(ジャビルカ・ウラン鉱山開発を止めたイボンヌさんたちの闘いは、映画『ジャビルカ』で詳しく描かれている)

ウラン鉱山会社からはそのような謙虚な姿勢は一切感じられません。オーストラリア・ウラン協会は、そうした謙虚さを「人類が悲劇に直面した際の単なる日和見主義」「全くのナンセンス」と表現しています。

しかしながら、オーストラリアは、原発の管理改善と規制強化をウラン輸出の条件とすることで、日本の原子力産業の管理不行き届きの悪循環を断ち切る役割を果たすことができたはずであると、私たちは考えています。

懸念を示す強い声が日本の電力会社の耳に届いたとしても、多くの人が関心を示さなければ、日本のメディアに取り上げられることもないのです。

■ 安全性

しかし、ウラン産業は自身の責任を否定し、批判は何も聞かないという態度をとり続けています。福島原発事故の原因となったことを否定しているのだから、今後、何らかの責任ある行動をとるとは思えません。

歴代のオーストラリア政府は、日本の原子力産業の到底許容できないような基準について、これまで何もしてきませんでした。福島原発事故当時の首相であるジュリア・ギラード氏は、福島原発事故は「ウラン輸出についての私の考えに何の影響も与えない」と述べています。

電力会社、規制当局、政治家、政府機関からなる日本の腐敗した「原子力ムラ」が、福島原発事故からわずか数年後には元通りになってしまいました。原子力発電の規制には依然として問題があるのです。

老朽化した原子炉に加え、深刻な経済的ストレスと厳しい競争に直面している企業など、日本の原子力安全に対する懸念は尽きません。

九州大学の吉岡斉教授は、2011年から12年にかけて、政府の「福島原発事故調査委員会」の委員を務めました。

■ 規制

その委員会は2015年10月にこう言いました。「残念ながら、新しい規制体制は日本の原子力施設の安全性を確保するには不十分です。第一の問題は、施設の審査・検査の根拠となる新しい安全基準が、単純に甘すぎることです」

「新ルールが国際基準に基づいているのは事実ですが、国際基準自体が現状維持を前提としています。この基準は、すでに稼働している原子炉のほとんどが達成できるように設定されています。つまり、規制当局は日本のすべての既存の原子炉が手頃な価格で断片的な改造をすれば新基準を満たすことができるようにしたのです」

福島原発事故の後、国連の潘基文事務総長が、ウラン取引に関する独立した費用対効果の調査を求めたにもかかわらず、オーストラリア連邦政府は何もしませんでした。

不適切な規制が福島原発事故の根本原因であるにもかかわらず、オーストラリアは、中国、インド、ロシア、米国、日本、韓国、ウクライナなど、原子力規制が明らかに不十分な数多くの国とウラン供給契約を結んでいます。

■ 政府の暴走

同様に、オーストラリアのウラン産業と政府は、韓国、インド、ロシア、ウクライナなど、ウラン供給契約を結んでいる国での原発の汚職スキャンダルを見て見ぬふりをしています。

実際、オーストラリアはウラン取引を拡大して、治安の悪い地域に販売する契約を結んでいます。

2011年、福島原発事故が起きた年に、オーストラリア連邦政府はインドへのウラン輸出を許可しています。インドの原子力規制が不十分であるにもかかわらず、また、インドが核兵器とその運搬能力を拡大し続けているにもかかわらず、許可したのです。

アラブ首長国連邦とのウラン供給契約は、政治的にも軍事的にも不安定な地域にウランを販売することのリスクが明らかであるにもかかわらず、2013年に締結されました。この地域の核施設は、秘密裏に行われている核兵器開発を阻止しようとする敵対勢力によって何度も標的にされています。オーストラリアは、1979年にイランのシャー(パーレビ国王)が失脚する数ヶ月前に、シャーへのウラン販売を計画していました。

■ 強制労働

ウクライナとのウラン供給協定は、安全性やセキュリティ面で多くの懸念があり、ロシアに併合された地域で国際原子力機関(IAEA)が保障措置検査を実施できない状況にもかかわらず、2016年に締結されました。

2014年、オーストラリアはロシアへのウラン販売を禁止し、当時のトニー・アボット首相は次のように述べています。「オーストラリアは、現在のロシアのように明らかに国際法に違反している国に、ウランを販売するつもりはない」

2006年に締結されたオーストラリアと中国とのウラン供給協定は、不十分な原子力安全基準、不十分な規制、透明性の欠如、内部告発者の弾圧、世界最悪の保険と責任の取り決め、セキュリティリスク、広範な汚職など、多くの証拠があるにもかかわらず、見直されていません。

市民社会やNGOは、中国へのウラン販売に重点を置いて、ウラン取引による核拡散をくい止めるためのキャンペーンを行っています。

中国の人権侵害やさまざまな戦略的安全性の問題は、ウラン販売の中止を正当化するものです。中国が現在行っているチベットでの人権侵害や、新疆ウイグル自治区でのウイグル人に対する大量拘束や強制労働は、国際人道法や国連条約に対する重大な違反があります。

■ 武器

中国は、核兵器製造のノウハウをパキスタンに拡散させ、オーストラリアをサイバー攻撃の標的とし、インド国境、香港、台湾、太平洋で地域不安を引き起こしています。

BHP社のオリンピック・ダム鉱山は、現在もオーストラリアのウランを中国に販売している唯一の企業です。私たちオーストラリアの良心が求めるのは、ウラン販売を完全にやめ、中国へのウラン販売を終了する責任を担うことです。

オーストラリア連邦議会の査問委員会が、中国での強制労働と、それに対するオーストラリアの対応策を検討しています。この委員会は、中国をオーストラリアのウラン販売の対象から外すことを求めています。

オーストラリアは、核の安全リスクを軽視してウランを供給しています。同様に、核の拡散リスクも軽視していると言えます。

オーストラリアは、米国、英国、中国、フランス、ロシアといった「申告済み」の核兵器国すべてとウラン輸出協定を結んでいますが、これらの国はいずれも、核不拡散条約の下での軍縮を誠実に追求する義務を真剣に受け止めていないと言えます。

■ 白紙委任状

オーストラリアは、核爆弾の材料となる核分裂性物質の生産を阻止するために活動していると主張していますが、それにもかかわらず、兵器用核分裂性物質生産禁止条約(カットオフ条約)の締結を妨げる国にウランを輸出しています。

またオーストラリアは、日本の再処理とプルトニウム備蓄を無期限に許可していますが、日本のプルトニウム備蓄は地域的な核拡散リスクと北東アジアの緊張をもたらしています。

しかし、自由な輸出政策にもかかわらず、オーストラリアのウラン販売量は長期的に減少しており、現在では世界のウラン使用量の8.9%を占めるにすぎません。

レンジャー鉱山が閉鎖されたため、いまオーストラリアで稼働しているウラン鉱山は、BHP社のオリンピック・ダム鉱山と、ゼネラル・アトミック社のビバリー鉱山、フォーマイル鉱山だけです。

ウランは、オーストラリアの輸出収入の0.3%以下、オーストラリアの全雇用の0.1%以下しか占めていません。

それなのに、こんなに小さな産業が、なぜ政府から好き勝手にやらせてもらえるのか、私たちは不思議でならないのです。

*著者、ジム・グリーン博士はFoE オーストラリアの反核運動家。デービッド・ヌーナンは環境運動家。  (翻訳/小川晃弘)

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信169号
(4月20日発行、B5-28p)もくじ

・汚染水の海洋放出決定に抗議する ― 国際署名を提出 (満田夏花)      

・世界の市民、日本政府に「放射能汚染水の放出やめよ」訴え (ハンギョレ新聞より)

・福島で燃やされたオーストラリアのウラン (ジム・グリーン & デービッド・ヌーナン)

・福島原発事故10年 「脱原発、宣言を超えて行動へ」 (脱核釜山市民連帯)  

・トルコ・アックユが「世界最大」の原発建設地に (森山拓也)            

・福島原発事故10年、インドの反核団体の声明 (反核運動全国連合ほか)    

・「老朽原発うごかすな!」今が正念場 (木原壯林)             

・関電原発不正マネー全容糾明 ― 株主代表訴訟が始まった (畑章夫)    

・東京電力の“オウンゴール”― 柏崎刈羽原発を運転する資格はない (菅井益郎)

・不当判決は私たちに火を付けた! (片岡輝美)               

・「2021年も福島はオリンピックどごでねぇ」 集会アピール           

・「原発のない社会へ・2021びわこ集会」基調報告 (井戸謙一)         

・東海第二原発差し止め訴訟、勝訴 (海渡雄一)            

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オーストラリア、核燃サイクルの上流と下流 ― アボリジニーの大地と日本の原発のかかわり ―

(NNAFJ集会での講演より)

細川弘明(京都精華大学)

私は、オーストラリアの先住民族の文化を研究しています。初めてオーストラリアに長期滞在して調査を行なった当時は、ほとんど原発問題に知識はありませんでした。しかし、滞在中にチェルノブイリ事故が発生し、東欧などから人々がオーストラリアに避難・移住して来られたのです。そうした人々から話を聞き、原発事故がどのようなものかを知って認識が大きく変わりました。

オーストラリアでの調査を進めていくうちに、各地でウラン鉱山開発が行なわれていることを知りました。また、アボリジニーの人々をはじめとして多くの人々がそれに反対していることもわかってきました。

当時は日本の政府機関である「動燃」(動力炉・核燃料開発事業団、その後、統合再編を経て現在は、日本原子力研究開発機構)がさかんにオーストラリア各地でのウラン探査に関わっていたので、日本国民の税金によってこのような活動が行なわれている実態を目の当たりにして、自分の責任も感じるようになり、原発問題を深く考えるようになりました。

■ アボリジニーの人々

ある男性は、植民地時代に「野蛮人の見本」としてイギリスなどに持ち帰られて博物館や医大の倉庫などに収蔵されているアボリジニーの遺骨や遺髪などを丹念に調査しています。交渉を行ない、返還に応じたところについては現地に赴いて引き取り、出身地がわかればその土地まで持ち帰って埋葬するという活動を20年間続けています。

ある女性は、最近自伝を出版しました。西オーストラリアの沙漠地帯の人です。人類学者が話を聞いて一緒にまとめたものです。南オーストラリア州でイギリスが核実験をしたときに、その地域のアボリジニーの人々を強制移住させた先の地域にもともと住んでいた人々の一人です。自分たちの地域に、いきなり核実験難民がたくさん移住してきて、様々なトラブルがあったという歴史が描かれています。

オーストラリアでは、英国流の議会政治の慣例で、新人議員に初議会で一人20分ほどの個人演説の機会が与えられます。2016年7月に上院議員になったアボリジニー女性のマランディリ・マカーシーさんは、北部準州の戦後のアボリジニーの労働運動史を活き活きと描くスピーチをしました。同じく2016年に当選したリンダ・バーニーさんの初議会演説のときには、傍聴席に並んだ家族が彼女を議場に迎え入れるためにアボリジニーの歌を歌いました。これまでアボリジニーの国会議員は比例代表制をとる上院で当選することが多かったのですが、リンダさんは小選挙区制をとる下院でアボリジニー女性として初めて当選した人です。

アボリジニーのあいだでも、フェイスブックやツイッター、ブログなどを使いこなす人がどんどん増えてきています。アボリジニーや先住民族と言ったときに、皆さんがもつイメージは、かなり「シンプル」なものだと思いますが、実はアボリジニーの人々と言っても実に多様性があって、いろいろな分野で活躍をしている人がたくさんいることを知ってほしいと思います。

■ 核実験とウラン鉱山と植民地支配

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星印が、核実験が行なわれたところ。地図をご覧ください。イギリスはオーストラリアで核実験をやりました。フランスは、最初はアルジェリアで、その後はタヒチで行ないました。ソ連はカザフスタンで。中国の核実験も漢民族ではなくウイグル民族の居住地域で行なわれました。アメリカの核実験もアメリカインディアンの土地やマーシャル諸島でやりました。核実験というのは、帝国主義的なものです。自分のところではやらない。少数民族が住んでいるところ、または植民地で行なっています。南アフリカも、ナミビアでやっています。インド核実験も少数民族地域です。

ウラン鉱山はどうでしょうか。ニジェールにウラン鉱山地帯があります。東京電力が購入していた産出地で、ベルベル系のトゥアレグ人の地域です。彼らは遊牧民で、国境をまたいで行き来していますが、そのアルジェリア側のサハラ砂漠で核実験が行なわれましたし、核廃棄物の処分場も計画されています。

世界のウラン鉱山の分布を見ると、核実験場のある国や地域、そして核廃棄物の処分場や不法投棄が大規模に行なわれてきたところにぐっと寄り集まっています。先住民族の地域に集中しています。

中国も、チベットでウランを掘って、ウイグルで核実験をして、廃棄物はチベットに捨てようとしています。非常に露骨です。

ちなみに北朝鮮は、ウランを自国で掘っています。もともと日本軍が開発したウラン鉱山です。戦前に日本も核兵器を作ろうと研究して、そのときに使われたウランです。日本が撤退した後に、北朝鮮が再開発をして、ウランを自給しています。

一つひとつ話していくと、この問題だけでも一晩かかってしまいます。先住民族の地域には、ウラン採掘だけではなく核開発のいろいろな段階が凝縮されているのです。

■ 南オーストラリアの核実験場

南オーストラリアの核実験場は、汚染のため長らく閉鎖されていました。もともとそこに住んでいたアボリジニーは、南と西に移住させられました。南に移住した人はコミュニティを作りました。もとの実験場がマラリンガという地名(意味は「雷鳴の響くところ」)でしたが、海岸沿いに新たに作ったコミュニティもマラリンガと命名されました。元の土地に帰りたい人たちはたくさんいますが、まだ除染が完了していませんし、移住先で長年生活してきたので、子どもたちの世代ではもう帰らないという人も多いです。西に移動させられた人たちはもっと悲惨でした。移った先でもウラン鉱山開発の話が持ち上がり、再び移動させられたケースもありました。同じ人たちが、核開発のしわ寄せをくり返し受けるということが起きています。

■ あらゆる段階で生み出される放射性廃棄物

原発を巡るサイクル図の中で、一般的に発電所に至るまでを上流といい、発電所から後を下流と言います。電事連(電気事業連合会)のコマーシャルなどでは、上流と下流がきれいに循環しているような図がよく使われます。こうした図の問題点はいろいろありますが、大きな問題は、廃棄物が出る段階が二つしかないかのように描かれていることです。原発が運転したあとに低レベルの核廃棄物が出て、そして、再処理をしたあとに高レベル廃棄物が出る、と。

実際はそんな単純なものではありません。同じことを違うレイアウトで描くと、各段階で核のゴミが出てきます。事故が起きていない場合ですよ。各段階で、違った性質の核のごみが出て、それらをすべて何らかの方法で処理しなければならない。ウラン採掘の段階でも、製錬の段階でもそうです。さっきの電事連の図では、そのことが省かれています。描かれていないと、私たちはなかなか考えません。核のごみが自分たちの身近に置かれないからです。どこか知らないところに持って行かれると、こちらの意識の外になってしまいます。

ウラン鉱山はウラン鉱石の純度(品位)が高いところから先に開発されて採掘されます。オーストラリアのウラン開発には日本からも三菱や住友や丸紅が関わっています。将来、ウランが足りなくなって値段が上がって、それでも原発をやる、核兵器を作るという国があればウランは売れるので、今すぐは掘らない鉱脈も、鉱山会社は押さえています。

普通なら鉱石を掘り出して地上で粉砕して硝酸や硫酸など強い酸で洗ってウランを抽出するのですが、南オーストラリア州のオリンピックダム鉱山に近いハネムーン鉱山では、ウラン純度が低いのに無理やり採掘するので、地下に直接、酸を注入して溶かして吸い上げるという方法をとっています。コストが安く抑えられるのですが、地下水を激しく汚染するので大問題です。

■ 狙われるキンタイヤ鉱山

私が一番気にしているのは、西オーストラリア州のキンタイヤです。潜在的な資源量としては、世界一ともいわれるウラン鉱床が存在します。ここには三菱も関わっています。この地域にもアボリジニーの人々が暮らしていました。

南オーストラリア州には、核実験場の他に、大陸間弾道ミサイルの実験場がありました。イギリスの核兵器を載せるためのミサイルの実験場です。そこから3000キロくらい離れたところ、ミサイルを飛ばして落とす地点がキンタイヤだという計画になったので、人々は海沿いのポート・ヘットランドという町に強制移住させられていました。

ミサイルを飛ばす元の場所でもアボリジニーを強制的に移住させるし、ミサイルを落とす先でもアボリジニーを移住させたわけです。人々を立ち退かせて空っぽになったところに、ミサイルを撃ち込むという実験でした。

ミサイル実験のために移住を余儀なくされていたアボリジニーがやっと自分たちの土地キンタイヤに戻れることになり、戻ろうとしたら今度はウラン鉱山開発の問題が持ち上がったのです。本当に踏んだり蹴ったりです。

■ 先住民族の声に耳を傾けない社会

核実験、ウラン採掘などにアボリジニーが巻き込まれて、同じ人たちがくり返し強制移住をさせられたり、汚染地域に住まわせられたりしているということをお話ししてきました。オーストラリアの場合は詳細がある程度わかりますが、世界の他の地域で研究している人たちの話を聞くと、世界各地でも同じようなことが起きているようです。

これはたまたまそうだというよりも、世界の核開発を進める構造の中で、先住民族が文句を言っても聞いてもらえないという世界の構造があるからまかり通ることなのです。先住民族の声にわれわれがちゃんと耳を傾ける社会なのであれば、そうそうまかり通るはずのない事態です。そのことを理解することが重要だと思います。

■ アボリジニーの神話について

ウラン鉱山は、水を大量に消費します。南オーストラリアでは、あちこちに点々と存在しているマウンドスプリングスと呼ばれる多数の泉が次々と枯れはじめています。ウラン鉱山操業のために地下水を大量にくみ上げてパイプラインで送り出すためです。観光資源としても大切だった泉が枯れてきて大きな問題となっていますが、地下水脈でつながりあう多くの泉が枯れてきていることをアボリジニーの人たちは非常に深刻に受け止めています。

オーストラリア大陸の東部の山脈に降る雨が地形の関係で南オーストラリアの大きな地下水源に流れ込んでいるのです。地上はからからに乾燥しているのに、掘れば水が出てきます。入植したヨーロッパ人が乾燥地で牧羊産業を展開できたのは、この地下水を利用したからでした。しかし、その地下水が枯れるほど、ウラン鉱山操業で水が使われているのです。

アボリジニーの人たちは、景色を見るとその意味を考えます。この泉はどうしてできたのだろうか。この泉と隣の泉はどのような関係なのだろうか、と。それぞれの泉に責任を持っている家族がいて、その泉の歌を代々伝えます。そしてその歌をつなげていくと一つ長い物語になるのです。転々と連なる泉が、アボリジニーの神話とつながっているのです。アボリジニーの神話は、出てくる地名がすべて実在のものです。泉にはすべて名前がついていて、神話に歌い込まれています。

アボリジニーの神話は、一か所で何かがあったというものではなく、ここでこれがあって、次にそこに進んで、と移動しながら事件が続いていくのが特徴です。するとあるところから別の民族になるので、別の言語になりますが、そのストーリーは続いていきます。神話を守るためにはとなりあった民族が仲よくしなければなりません。喧嘩をしたり戦争をしたりしてしまうと、神話の継承が途切れてしまいます。神話が途切れると泉が枯れたりすると考えられています。アボリジニーの神話というのは、ある種の安全保障装置というか、平和構築の媒体であるといえます。

彼ら自身はお互いに喧嘩もしていないのに、ウラン鉱山開発によって泉が枯れてしまっています。

■ 福島事故の衝撃

2011年4月、レンジャー鉱区とジャビルカ鉱区の地元のアボリジニーであるミラル人が、福島原発事故を受けて声明を出しました。「自分たちの土地で掘り出されたウランでできた核燃料によって日本で大事故が起きたことに非常に心を痛めている。ウランの採掘を中止してほしい」と求める内容です。この声明は国連のバン・ギムン事務総長(当時)にもレターとして提出されました。

実際にはレンジャー鉱山のウランは主に関西電力に来ていて、東電はオリンピックダム鉱山からのウランを購入しているので、まさにミラル人の土地で掘られたウランが福島で、ということではないのですが、彼女たちにとっては、アボリジニーの土地で掘り出されたウランが日本で多くの人々を追いやり、苦しめる事故を起こしたということで、外交辞令ではなく本当に心を痛めておられます。病気で寝込む人も出てしまうほど、彼らにとっても大きなインパクトをもった事故でした。

■ アボリジニーの人々から学ぶこと

アボリジニーの人々から私たちが最も学ばなければならないことは、ある景色を見たときに、その景色のもつ意味を考えることです。即物的に考えたら景色に意味はありません。しかし、なぜそこに泉があるのか、なぜそこに川があるのか、それを考えずにはいられないのがアボリジニーの人々です。その土地で長く暮らし、口伝えしてきた出来事を彼らなりに再構成して、ストーリーを紡いで、それを神話として共有します。ここから先がアボリジニーの非常に独特なところですが、その神話をパーツに分けて、みんなで分担して責任を持ちます。責任を分担した人たちがそれぞれ責任を果たして初めて、神話がまとまった全体として伝えられます。だれかがさぼって途切れると、景色が壊れてしまう、という発想をします。

この文化は、私たちにもじゅうぶん共有可能だと思います。もちろんアボリジニーの人たちほど突き詰めて考えるのは難しいかもしれません。写真にとってしまうと固定した一つの景色にすぎなくなります。でもその背景にいろいろな動きがあり、その地域の環境や一年の季節があります。なぜ雨季になるとそこに水がたくさんあるかは、アボリジニーの人々にとっては神話的な理由があります。そういうストーリーを共有していると、同じ景色を見ても違って見えてくるものです。

ここに上関原発予定地の写真があります。これを見て、こんなきれいな湾が埋め立てられて原発がたってしまうなんて、と想像することも大事です。でもこの写真を見て、浅くて暖かい水をたたえたこの海で稚魚が生まれ、そこではぐくまれて大きな魚になること。祝島の人たちから見たら、埋め立てられる方向から朝日が昇るので、毎朝そちらに向かって拝んでいること。話を聞いて、そういういろんな営みを知っていると、一枚の写真からいろいろな意味が語りかけられてくるようになります。景色を見ながら、その背後にある意味を想像する、地元の人たちから話を聞いて想像できるようになるという機会をもつことが非常に大事だと思います。

阿武隈川の写真を見て、「ここは汚染されています」と言うことはできます。しかし、もともとそこは汚染されてなくて、周囲の人たちにとっては、小さな子どもを連れていく憩いの場所で、子どもたちが転げまわれるよい場所だったし、季節によって違う景色を見せる吾妻連峰を眺められる場所だったのです。

そういういろいろな地元の人たちの語りがあります。それを私たちが共有していくことがとても大事だなあと思います。

アボリジニーの人たちが景色からさまざまなことを読み取るので、私もそういう癖がついてしまいました。知らないところから勝手に読み取ろうと思っても、とんちんかんなことしか読み取れません。地元の人の話を聞くということがとても大事だと思います

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2016年10月15日、「国際的な放射性廃棄物処分場」建設計画に反対する集会。3000名が参加、南オーストラリア州議会前

(ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.144より)

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信144号(2月20日発行、B5-36p)もくじ

●「日印原子力協定の国会承認に反対します」(日印原子力協定国会承認反対キャンペーン)

●南オーストラリア州は、世界の核のゴミ捨て場にはなりません(ジム・グリーンほか)

●オーストラリア、核燃サイクルの上流と下流 ― アボリジニーの大地と日本の原発のかかわり― (細川弘明)

●4月に迫る国民投票とトルコの開発プロジェクト(森山拓也)

●台湾、2025年までに原発ゼロ社会?(陳威志)

●韓国:全国脱核活動家大会 開催、「2017年、脱核元年」を決意(小原つなき)

●もんじゅ廃炉を活かし、核燃料サイクル阻止、新たな闘いを!(池島芙紀子)

●嘘とまやかしの核燃料サイクルにとどめを!(佐原若子)

●高浜原発うごかすな!1000人が関電本店を包囲(木原壯林)

●伊方原発広島本訴訟3回公判・意見陳述(小倉正)

●ノーニュークス・アジアフォーラム通信 No.109~143 主要掲載記事一覧

●ノーニュークス・アジアフォーラム(1993~2016)全記録DVD

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南オーストラリア州は、世界の核のゴミ捨て場にはなりません

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2016年10月15日、「国際的な放射性廃棄物処分場」建設計画に反対する集会 。3000名が参加、南オーストラリア州議会前

激しい抗議行動が続いていた南オーストラリアでの国際的な放射性廃棄物処分場建設計画。州首相は20161114日に「州政府がこの計画を推進する条件は最初から、超党派の合意があることと、住民投票で市民が賛成することだった。野党が反対するならこの計画は死んだも同然だ」と表明。顧客として日本、韓国、台湾などの名前があげられていたこの処分場計画はついに反対派が勝利しました!

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南オーストラリア州の市民陪審が国際的な放射性廃棄物処分場を拒否

Adelaide Now  2016年11月6日

南オーストラリア州で116日に開催された市民陪審は、同州内に放射性廃棄物処分場を建設する計画を拒否する決定を下した。

南オーストラリア州核燃料サイクル王立委員会の報告書に盛り込まれた州政府の提言には、海外から138000トンの高レベル放射性廃棄物と、39万立方メートルの中レベル放射性廃棄物を輸入するということが含まれていた。この提案に市民の意見を取り入れるとして、ウェザリル州首相は市民陪審を招集した。

陪審者の大部分は「いかなる条件下であろうとも放射性廃棄物の処分場計画反対」に投票した。

これは、多様な立場のグループから無作為に選ばれた陪審者たちが、王立委員会の報告書を吟味して下した重要な判断です。陪審者たちが、アボリジニーの伝統的土地所有者の声を十分に聞くべきだということを認識してくれていてうれしいです」と、カリーナ・レスター(地元先住民族のヤンクンチャチャラの伝統的土地所有を管轄する組織の会長)は話す。

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レスター家4世代の女性たち。カリーナ・レスターさんの母ヤミ・レスターさんは1950年代の核実験で被害を受けて視力を失った。

市民陪審の議論では、州政府への不信感、そしてアボリジニーからの同意が得られていないことが、主要な二つの問題点とされた。

陪審者の中には「王立委員会の考えに同意させるための一つの手段としてこの市民陪審が開かれたのではないか」と疑念を呈する者もいた。州政府が指名した原子力推進派が王立委員会の座長となっていることからも、利害の衝突は明白だった。

ウェザリル州首相は、市民陪審による決定を尊重するかどうか本年末までに決断するとみられる。

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南オーストラリア州の人々は国際的な放射性廃棄物処分場を拒否する!

ジム・グリーン The Ecologist  2016年11月9日

公式に招集された350人の市民による陪審は、南オーストラリア州が50万トン以上の放射性廃棄物を長期貯蔵のために輸入する計画に対して、きっぱりと拒否の判断を下した。この結果は、州政府にとって癒しがたい打撃となった。

11月6日の日曜日に開催された南オーストラリア州政府主催の市民陪審で、350人の陪審者の3分の2が「いかなる条件下でも」放射性廃棄物の輸入を拒否するという決断を下した。

王立委員会はその成り立ちからして強力な原発推進のバイアスがかけられていた。しかしそれでも市民陪審は、提案されたほぼすべての項目(ウランの転換と濃縮、核燃料製造、原発建設、使用済み核燃料の再処理など)を否決した。

■推進派はあきらめない

推進派は、放射性廃棄物の輸入計画が進んで、南オーストラリア州で将来的に高速炉を開発する基礎が築かれることを期待していた。しかしいま廃棄物輸入計画は頓挫しかけており、彼らは悲嘆にくれている。

市民陪審の投票結果は、南オーストラリア州政府の処分場計画への強い圧力となった。地球の友オーストラリアで気候とエネルギー問題を担当するロマン・オルスザンスキーは次のように語る。

「10月15日には州議会の前で3000人が放射性廃棄物処分場反対の声をあげた。もし南オーストラリア州政府がこれ以上計画を推進しようとするなら、さらに大きな抗議行動が起きるだろう」

南オーストラリア州の労働組合議長のジョー・スザカックスは「ジェイ・ウェザリル州首相は今こそ南オーストラリア州のために立ち上がるべきだ。多国籍原子力企業に騙されて人身御供にされるべきではない。南オーストラリア州の人々は、世界の放射性廃棄物を貯蔵することはこの州にとってよくないことだと理解している。市民陪審での激しい反対意見は、この問題が州首相にどれだけ政治的打撃を与えるかをよく示している。どうしようもない取引は、誰が見てもわかるものだ。この問題がまさにそうであるように」

ウェザリル首相がもし、これほど明白な市民陪審の結論を無視するようなことをすれば、「州政府に対する信頼感に関する大きな問題」は、さらに拡大していくだろう。

南オーストラリア州で唯一大規模に流通している新聞であるThe Advertiser は、これまで全面的に廃棄物処分場計画を擁護する論陣を張ってきたが、市民陪審による処分場拒否の結論を短く報じるにとどめた。

同紙のダニエル・ウィルス記者は「処分場という大胆なアイデアは、巨大なきのこ雲のように膨れ上がったようだ。州首相が王立委員会の見解を検討するための市民陪審を招集したとき、彼は『十分に情報を提供して幅広い立場の人たちをメンバーにすれば賢明な判断が下されるだろう』と自信を持っていた。しかし先週の日曜日、計画に対して目を疑うような圧倒的な拒否の意が示された。この状況を乗り切ることは不可能なのではないか」と書いた。

■アボリジニーの伝統的土地所有者

地球の友オーストラリアは、「州首相はアボリジニーの伝統的土地所有者の意見を尊重すると言った。アボリジニーの人々の大部分がこの計画に反対していることはすでに明らかだ。市民陪審が伝統的土地所有者を尊重する議論をしたことは称賛されるべきことだ。州首相も計画を撤回することで同様にふるまわなければならない」とする。

市民陪審の報告書は述べる。「アボリジニーの人々の同意が欠落している。州政府はアボリジニーの人々がNOの声をあげ、自分たちの意見を無視するのをやめてほしいと訴えていることを受け止めなければならない。南オーストラリア州でも、オーストラリア全域でも、アボリジニーの人々は、尊重され平等に扱われるのではなく、あらゆる政治的なレベルにおいて放置され無視され続けている。多くのアボリジニーのコミュニティがこの計画に対して反対の声をあげている。その声を無視することは、道徳的に間違っている。ジェイ・ウェザリル首相は『伝統的土地所有者の同意がないなら、この計画は決して行なわれない』と言っていた。自分の発言に責任をもつべきだ」

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■明らかになったバイアス

市民陪審は、州政府への不信感が喚起されても無理もないような様々な証拠を白日の下にさらした。州政府は「バランスがとれて成熟した話し合いを望む」と口にしてきたが、州政府は王立委員会のトップに原子力推進派を指名した。そして王立委員会の委員長は、専門家による諮問委員会の4人の委員のうち3人を推進派でかためた。反対派は1人だけだった。

王立委員会は、原子力産業と深いつながりを持つコンサルタント会社、ヤコブズMCM社によって書かれたたった一つの経済性報告書に依拠していた。主な著者はチャールズ・マッコンビーとニール・チャップマン、どちらもARIUS社の人間だった。

ARIUS社は放射性廃棄物処分場(同社は多国籍施設と呼ぶ)や原発を推進する会社である。オーストラリアのテレビ局ABCは、ARIUS社のモットーは「世界は原子力を必要としている、原子力は多国籍施設を必要としている」だと報じている。

ARIUS社は、過去に秘密裏にオーストラリアでの国際的な高レベル放射性廃棄物処分場の建設計画を立てたことで悪名高いあのパンゲア・リソーシズ社の流れを汲んでいる。パンゲア社の存在は、1998年に同社のビデオが地球の友オーストラリアに対してリークされるまで知られていなかった。パンゲア社はオーストラリアに事務所を開設したが、2002年に撤退した。

ヤコブズMCM社の報告書の主著者の一人であるチャールズ・マッコンビーは、パンゲア・リソーシズ社にも深く関与していた人物だ。同様に、パンゲア社の社長だったジム・ヴォスも現在の南オーストラリア州での計画に深く関わっている。1990年代の末頃、ジム・ヴォスは中央政府の大臣らと面会したことを否定したが、実際には少なくとも一人の大臣と面会していた。ウィルソン・“アイアンバー”・タッキーだ。ウィルソン氏はかつて、アボリジニーの男性を鉄の棒(アイアンバー)で攻撃した前科のある人物だ。

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■「独立したコンサルタント」として推進派を雇用

物議をかもしているヤコブズMCM社による経済性報告書は「海外から大量の放射性廃棄物を輸入することに合意すれば、南オーストラリア州にはうなるほど金が入ってくる」と述べている。その不正直なたくらみは、ABCのジャーナリスト、スティーブン・ロングによって11月8日に化けの皮を剥がされた。

「王立委員会が唯一の根拠としている経済性報告書の共同著者が、国際的な放射性廃棄物処分場建設の会社の社長と副社長なのです。彼らは、50年以上にわたってありとあらゆる核関連事業に携わってきた世界的なエンジニアリングとコンサルティングの会社であるヤコブズMCM社と結託して報告書を準備したのです。

先週私が王立委員会の委員にインタビューしたとき、委員は『あの報告書は、専門家チームが検討して、放射性廃棄物の貯蔵に乗り出した場合のコストやリスクや利益に関して適切な見積もりがなされている』と言いました。しかし、その専門家チームというのが、そもそも最初にそのコンサルタントを推薦した人たちなのです」

■根拠なき仮定に基づいた経済的な見通し

市民陪審は、ヤコブズMCM社によってひねり出されて王立委員会と南オーストラリア州政府によって宣伝された経済に関するプロパガンダに感化されることはなかった。

市民陪審の報告書は「経済に関して、十分な情報に基づいた判断を下すことは不可能だ。王立委員会の報告書に書かれた論点はどれも根拠のない仮定に基づいたもので、経済的な見通しに関する予測も、きわめて不正確、楽観的、かつ非現実的なものになってしまっているからだ」と指摘している。

南オーストラリア州の経済学者リチャード・ブレンディは「市民陪審が放射性廃棄物処分場に反対すると決めた判断は素晴らしい。彼らは勇気と良識を見せてくれた。処分場がもたらすと言われている大金は、ほとんど何の理由もない仮定に基づいたものだということは、大多数の人がすぐに見抜くことができた」と語る。

「陪審者たちは、南オーストラリア州の経済がよくなっていくために進むべき真の道は、私たちの技術、技術革新の能力、懸命に働く力などに基づくものだと考えた。決して、推測に基づいた異様なギャンブルなどによるものではない、と。私は南オーストラリア州の市民として、陪審に加わった同胞たちを誇りに思っている。もちろん、このたびの陪審で処分場に賛成票を投じた少数派の人たちを含めてだ」

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地球の友オーストラリア;メディアリリース

ジェイ・ウェザリル州首相は、今こそ廃棄物処分場計画の断念を

2016年11月13日

南オーストラリア州で国際的な放射性廃棄物処分場を建設する計画について、地球の友オーストラリアは、本日発表された地域調査報告書の内容から、人々がこの計画に対して圧倒的に反対の意思を持っていることを指摘し、ジェイ・ウェザリル州首相に対して処分場計画を白紙撤回するよう求める。

地域調査報告書で明らかになった主要な論点は以下である。地域調査報告書は、この一週間の主要なできごとについて取り扱っている。

  • 市民陪審者の3分の2が「いかなる条件下でも」この計画が継続されるべきではないと結論付けた。
  • 南オーストラリア州のリベラルのリーダーであるスティーブン・マーシャルが、この計画への反対の意思を明確に表明し、「もしも州首相がこの計画を撤回しないなら、2018年の州議会選挙でこの計画が重要な争点となる」と指摘した。
  • 南オーストラリア州商工会議所のナイジェル・マクブライド所長が「この計画はもう死んでいる」と発言した。
  • 南オーストラリア州全域のアボリジニーのコミュニティが、この計画に対してくり返し強い反対の意思を表明しており、アボリジニーの人々の見解ははっきりと市民陪審の報告書や本日公開の地域調査報告書にも反映されている。

地球の友オーストラリアの核問題担当ジム・グリーンは語る。「この地域調査報告書は、市民陪審によって明らかになった深い疑念と反対の意思をさらに補強するものだ。放射性廃棄物処分場建設計画について議論を継続していくことに反対する人の数は、議論の継続を支持する人の2倍以上に上った。アボリジニーの人々の反対意見は圧倒的多数になる。放射性廃棄物が安全に貯蔵されると考えている人は20%にとどまる。大多数の人々は、南オーストラリア州政府が原子力産業の活動を十分に規制する能力を持ち合わせていないと考えている。66%の人々が、放射性廃棄物処分場建設は南オーストラリア州に経済的な恩恵をもたらさないと考えている」

「南オーストラリア州の市民はすでに声をあげた。アボリジニーの伝統的土地所有者たちも声をあげた。野党リーダーのスティーブン・マーシャルも声をあげた。市民陪審も声をあげた。ジェイ・ウェザリル州首相はその声を聞かなければならない。今こそ、廃棄物処分場計画を廃棄すべきときだ」

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台湾電力が、南オーストラリア州での放射性廃棄物処分場建設への支援を否定

The Advertiser  2016年12月14日

南オーストラリア州貿易投資大臣のマーティン・ハミルトン・スミスによる「台湾電力が南オーストラリア州での放射性廃棄物処分場建設を支援することを検討している」との発言に対して、台湾電力は「これは虚偽の情報だ」と書面ではっきりと否定した。

南オーストラリア州の市民陪審が11月6日に、放射性廃棄物処分場計画を大差で却下してから数日後、州政府への信頼が大きく揺らぐなか、スミス大臣は「私が面会した台湾の政府関係者は、処分場への投資に関心を持っているとの明確なメッセージを表明した」と主張した。そして「処分場への需要は明らかに存在する。近隣諸国は、何億ドル、あるいは何十億ドルを建設のインフラに投資し、その後は放射性廃棄物をそこに貯蔵することに投資するだろう」と言った。

しかし、国営の台湾電力の広報担当者および台湾原子力委員会の委員が、スミス大臣の主張を否定した。「11月10日にスミス大臣と面会した事実はあるが、3日後に彼がアデレードで発言した内容は虚偽だ」とした。

中国語で書かれた書簡の英訳は台湾のNGOによって行なわれ、地球の友オーストラリアによって本紙The Advertiserに提供された。それによると、台湾電力は新しく建設される放射性廃棄物処分場に投資する意図はないという。

「台湾電力にとって、海外で放射性廃棄物を処分することは選択肢の一つだ。しかし海外での処分は国際関係上非常にセンシティブな問題であり、慎重に検討されなければならない。台湾電力が顧客になることを検討するとしたら、それは自国内に処分場を建設した後になるだろう」

台湾の原子力委員会も、スミス大臣の発言は真実ではないとしている。「南オーストラリア州の市民陪審がこの計画を拒否したことは認識している。市民の理解と支持がないなら、放射性廃棄物処分場は建設できない」

南オーストラリア州での廃棄物処分場計画に対して野党や環境団体から提示されている批判の一つとして、将来の歳入の確実性がないのに納税者の血税をつぎ込んでいくことへのリスクがあげられている。

一方、核燃料サイクル王立委員会のケヴィン・スケアス・コミッショナーは「インフラ整備を可能にするために、諸外国が事前に資金を提供してくれるかもしれない」と書いている。スミス大臣は「地球の友は、放射性廃棄物貯蔵の市場を冷え込ませるような情報を拡散している」と非難している。

野党のロブ・ルーカス議員は「もし翻訳が正確だったのだとすれば、スミス大臣は人々を惑わせるような誤った情報を流したとして非難されても仕方がない」とした。

地球の友オーストラリアのジム・グリーン氏は「ウェザリル州首相は今こそ良識をもって、プライドにこだわるのをやめ、廃棄物処分場計画を撤回するべきだ」としている。

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2016年10月15日、「国際的な放射性廃棄物処分場」建設計画に反対する集会。 3000名が参加、南オーストラリア州議会前

(ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.144より)

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●4月に迫る国民投票とトルコの開発プロジェクト(森山拓也)

●台湾、2025年までに原発ゼロ社会?(陳威志)

●韓国:全国脱核活動家大会 開催、「2017年、脱核元年」を決意(小原つなき)

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★本『原発をとめるアジアの人々』推薦文:広瀬隆・斎藤貴男・小出裕章・海渡雄一・伴英幸・河合弘之・鎌仲ひとみ・ミサオ・レッドウルフ・鎌田慧・満田夏花http://www.nonukesasiaforum.org/jp/136f.htm

南オーストラリア州を世界の核のゴミ捨て場にするな!★署名してください

南オーストラリア州では、日本、台湾、韓国などからの放射性廃棄物の処分場を建設するという計画があります

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Say No to Nuclear – Conservation Council SA
(南オーストラリア州環境保全協会)

今こそ行動を!
5月、南オーストラリア州・核燃料サイクル王立委員会は、外国から高レベル放射性廃棄物を持ち込んで永遠に管理するという計画について、南オーストラリア州が直ちにこれを進めるべきだと提言した。

それに呼応して南オーストラリア州政府は、地域での大々的な推進キャンペーンに着手した。この計画に賛成する世論を形成するために、州のあちこちで100か所におよぶ説明会を行なっている。

南オーストラリアの人々の多くは、大金をかけて行なわれているこのキャンペーンが、市民への「相談」ではなく「説得」であると懸念している。

地域の人々には、この計画の全体像が示されていない。とりわけ私たちが背負い込まなければならないリスクについては、何も知らされていない。

だからこそ、私たちは新しい請願キャンペーンを展開することにした。この請願は、処分場計画に不安を感じている南オーストラリア市民の懸念が、政府の広報部員らのフィルターに邪魔されることなく州首相に直接届くようにするためのものだ。

いま声を挙げなければ、手遅れになってしまうかもしれない。
11月には、この計画を推進するか撤回するかについて、州首相が南オーストラリア議会に意見を聞くことになっている。

州首相は「広範なコミュニティの支持がないならこの計画を推進することはない」と語っている。もしあなたがこの計画に反対ならば、それを知らせなければならない。黙っているなら、同意したとみなされてしまう。

下記にあなたの署名を!

2014年6月、マカティーでの勝利を祝うマーリン・ヌンガライ・ベネットとナタリー・ワズリー

南オーストラリア州首相殿

私は、高レベル放射性廃棄物を海外から輸入して10万年にわたって管理をすることで、南オーストラリア州を世界の核のゴミ捨て場にしてしまう計画に反対します。

この提案では、最終処分場が決定するまでの間、高レベル放射性廃棄物を私たちの土地に貯蔵するとしていますが、これはとうてい受け入れられるものではありません。

南オーストラリアのコミュニティが受け入れなければならなくなるのは以下の施設です。
● 放射性廃棄物の荷揚げしたり保管したりする港湾;ここでは70年間にわたって毎月のように放射性廃棄物が運び込まれることになる。
● 放射性廃棄物の貯蔵容器を保管しておくための地上の保管場所;100年間にわたる。
● 放射性廃棄物を輸送する専用の鉄道。
● 2か所の新たな放射性廃棄物処分場:低レベルおよび中レベルの廃棄物を貯蔵する。
● 放射性廃棄物を永久に貯蔵するための地下の処分場サイト

これによって、南オーストラリアの人々と環境は到底受け入れることのできないレベルのリスクを押し付けられることとなります。

伝統的土地所有者(アボリジニ)たちは、明確にこれらの計画に反対しています。しかし彼らの声は無視されたままです。

高レベル放射性廃棄物を輸入するという決断をすれは、永遠に終わりはきません。一度それに手を染めたら、引き返す道はないのです。だから私たちは、私たちのことだけを考えて決断してはなりません。未来に生まれ来る何千世代もの南オーストラリア人たちのために、深く考えて決断しなければならないのです。

南オーストラリアは、多くの可能性を秘め、優れた人々が暮らし、文化的にも豊かで、想像力に富んでおり、目を見張るようなすばらしい自然に恵まれた土地です。

南オーストラリアは、世界の放射性廃棄物のゴミ捨て場となるよりも、ほかにもっと達成できる多くの素晴らしいことがあります。

南オーストラリアはあまりにも素晴らしい場所であり、放射性廃棄物でそれを無にしてしまうことなど考えられません。
リスクを引き受けてまで放射性廃棄物の処分場を受け入れる必要はどこにもありません。
私たちの素晴らしい州にふさわしいのは、放射性廃棄物などではないのです。

*署名の仕方
http://www.conservationsa.org.au/say_no_to_nuclear?recruiter_id=21250
のサイトから
SIGN THE PETITIONの下にある空欄に
First name(下の名前)、last name(名字)、メールアドレス、ローマ字表記の住所(都道府県のみでもOKです。たとえばOSAKAなど)を入力します。最後にリストの中から国名を選び、ADD YOUR SIGNATUREをクリックして終了です。電話番号は入力しなくても署名できます。

オーストラリアのアボリジニの人々が立ち向かう、放射性廃棄物をめぐる戦争

本誌140号で掲載した、南オーストラリア州・核燃料サイクル王立委員会の中間報告では、同州が、日本、台湾、韓国などから輸入した放射性廃棄物の処分場を建設することを検討すべきとの内容が含まれていて衝撃が走りました。5月9日には最終報告書が発表され、南オーストラリア州のウェザリル首相(労働党)は、放射性廃棄物の地下貯蔵施設の建設案について、年内に「明確な政治的判断」を下す考えを明らかにしました。予定地とされた土地のアボリジニの人々とその支援者らは、この計画に激しく反対しています。これまでオーストラリアからウランを大量に買いつけて核燃料として原発で使用してきた日本ですが、今度は放射性廃棄物ビジネスの顧客として名指しされており、私たちにとっても看過できない問題です。

オーストラリアのアボリジニの人々が立ち向かう、放射性廃棄物をめぐる戦争

ジム・グリーン(地球の友オーストラリア・核問題キャンペーナー)

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観光地としても名高いフリンダース・レンジは、処分場予定地のすぐ近くにある

1998年から2004年にかけて、オーストラリアの連邦政府は、国内の放射性廃棄物を、南オーストラリアのアボリジニに押しつけて彼らの土地に廃棄物処分場を建設することを画策したが、失敗した。

それから政府は、北部準州のアボリジニの人々の土地に放射性廃棄物処分場を押しつけようと試みたが、これも失敗に終った。

そしていま、政府は三度目の試みに乗り出している。政府は、またしてもアボリジニの人々の土地に放射性廃棄物処分場を建設しようとしている。伝統的土地所有者たちから、明確な反対が表明されているにもかかわらず、である。

この最新の提案は、南オーストラリア州のアデレードから北へ400キロに位置し、壮大な景観を誇るフリンダース・レンジに放射性廃棄物の処分場を建設するというものだ。

政府は「いかなる団体にも拒否権を発動する権利はない」と主張している。つまり政府は「調査をしたほぼすべての先住民コミュニティの構成員たちが、その地点での処分場建設に反対している」と認識しているにもかかわらず、この処分場計画を推進していくということだ。

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アズニャマッタナ民族の伝統的土地所有者の女性たち

■「まるで誰かが私の心をえぐったかのように感じました」

この予定地は、ヤッパラ先住民保護区域に隣接している。「先住民保護区域は、フェンスのすぐ向こうです。そこには共有されている泉があります」とヤッパラステーションの住民でありアズニャマッタナ民族の伝統的土地所有者であるレジーナ・マッケンジーは語る。

その泉は、先住民の女性たちが大切にしている癒しの場所でもあるが、この地域に数多く存在する地質学的にも文化的にも価値の高い地点の一つである。これらの地点は、伝統的土地所有者たちによって、南オーストラリア州政府に登録されている。

アズニャマッタナ民族の人々は、いくつかの他の団体と共同で2015年に次のような声明を発表した。

「フリンダース・レンジにあるアズニャマッタナ民族の土地は、国内の放射性廃棄物処分場の候補地とされた。この土地を共同所有する前自由党議員のグラント・チャップマンによって推薦されたのだ。

アズニャマッタナ民族の伝統的土地所有者は、全く相談を受けなかった。伝統的土地所有者で、予定地に隣接した地域であるヤッパラステーションに暮らすものたちにすら、何の相談もなかった。

これは、暴力だ。予定地はすべて、アズニャマッタナ民族の土地である。そこはスピリチュアルな土地なのだ。予定地にはいくつもの泉がある。古代からの古墳の泉もある。アボリジニの手による何千という数え切れないほどのさまざまな造形物もある。私たちの祖先もそこに眠っている。

予定地に沿って流れているフーキナクリークは、女性たちにとって非常に重要な場所である。遺産として登録された場所であり、保全され、保護されなければならない。私たちは、この地域、この土地、そこで暮らす生き物たちへの責任を負っている。

私たちの土地に放射性廃棄物の処分場が作られることを望まない。それらの廃棄物がここに来たら、この土地の環境、私たちアボリジニが受け継いできた知識、私たちが生み出したもの、私たちのすべてが脅かされるのではないかと懸念している。政府が、この土地を予定地のリストから外し、今後はわれわれを尊重する態度をとることを求める」

レジーナ・マッケンジーは、候補地として挙げられていたオーストラリア各地の計6ヶ所の中から、フリンダース・レンジが選定されたというニュースを受けたときに「私たちは打ちのめされました。突然の電話で、誰かの訃報を知らされたときのようでした。私のめいが泣きながら電話をしてきて、私の心が誰かにえぐり出されたように感じました」

マッケンジーはABCテレビの取材に応じて「ほぼすべての廃棄物処分場がアボリジニのコミュニティの近くにあります。まるで、ははん、どうせ彼らは黒い人たちじゃないか、たかがアボリジニじゃないか、だから処分場はそこに作っておこう、といわれているようなものです。そんなことがいつも自分たちに降りかかり続けるというのでは、それを受け入れるわけにはいかないと思いませんか?なんで私たちをほうっておいてくれないのでしょうか」

アズニャマッタナ民族の伝統的土地所有者のジリアン・マーシュは2016年4月の声明の中でこう述べている。「オーストラリアにもともと暮らしていた人々が侵害され、あちこち追い立てられ、自分たちの家族や土地から強制的に引き剥がされ、自分たちの土地に入ることを禁じられ、土地を大切に守る権利を奪われてきた。200年以上にわたってだ。私たちの健康や福祉は第三世界のそれと同じような状態であり、刑務所は私たちの同胞でいっぱいだ。誰だって、自分の家の裏庭に有毒な廃棄物を保管したいはずがない。世界中、どこでもそうだ。私たちは、コミュニティの持続可能な未来を求めるオーストラリア中の人々、そして世界中の人々と連帯して立ち上がる。私たちは揺るがない」

フリンダース・レンジでの放射性廃棄物処分場計画を巡る闘いは、今後12ヶ月で何らかの結末を迎えるだろう。もし政府がアボリジニの人々の願いを踏みにじって廃棄物処分場を押しつけるというこの3回目の試みに失敗するならば、私たちが推測するのは、過去の形式にのっとった政府による4回目の試みが起きるだろうということだ。

■ 南オーストラリアでの廃棄物処分 1998年~2004年

南オーストラリアのアボリジニの人々が国内の放射性廃棄物処分と直面するのは、これが初めてではない。1998年、連邦政府はロケットとミサイルの試験場にほど近いウーメラに放射性廃棄物処分場を建設する計画を明らかにした。

その計画が州内で激しい議論を巻き起こしたのを見るや、連邦政府はPR会社を雇い入れた。そのPR会社と政府の間でのやり取りが「情報の自由に関する法律」の下で開示された。

あるやり取りの中では、政府職員がPR会社に対して、パンフレットで使用する写真から砂丘の部分を消してほしいと要求している。政府職員による説明は「砂丘は、アボリジニの人々の遺産へのリスペクトという観点から、デリケートな問題を引き起こす」というものだった。写真からは砂丘が削除された。政府職員が、砂丘を地平線に置き換えるよう求めたというだけの理由でだ。

アボリジニの諸団体は、廃棄物処分場として名前が挙げられた地点での試掘に同意するという遺産使用許可協定への署名を強要された。連邦政府は、もし同意が得られなくても、どちらにしても掘削は行なわれると明言した。

アボリジニの団体は、袋小路に追い込まれた。彼らが政府との話し合いに応じて協定に署名することで、特定の文化遺産を保全しようと試みることもできた。しかしそうすることは、放射性廃棄物処分場計画に同意したと強弁されてしまうリスクもはらんでいた。あるいは、彼らはこのプロセスそのものを拒否することもできたが、そうすれば文化的な遺産を守る機会を失ってしまうことになる。

アボリジニの諸団体はついに遺産使用許可協定に参加した。そして懸念されていたとおり、このプロセスへ参加したことで、連邦政府によってくり返し「アボリジニの人々が処分場建設に合意した」とい恣意的な読み替えが行なわれた。

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南オーストラリア州北部のアボリジニ女性たち

■ いくらお金を積まれても、私たちは土地を売り渡さない

2002年になると、連邦政府はアボリジニの処分場への反対の意思を金で懐柔しようとした。コカタ民族、クヤニ民族、バンガラ民族という「ネイティブ・タイトル権」(訳注:オーストラリアのアボリジニおよびトレス海峡諸島民の伝統的な慣習法に基づく土地に関する権利)をもつ3つの民族は、彼らのネイティブ・タイトル権を90000ドルで放棄しないかと持ちかけられた。しかし3つの民族がすべて合意するなら、という条件の下であった。

政府の提案は拒否された。コカタ民族の伝統的土地所有者であるロジャー・トーマスは「あまりにも暴力的だった。私は連邦政府の役人に対して、90000ドルで私たちの土地と文化を売り渡せというような提案を持ちかけるなどという、私たちへの侮蔑的で無礼な態度を止めるように言った」

同じくコカタ民族のアンドリュー・スターキーは、「あまりにも恥知らずなやり方だった。彼らははした金をちらつかせて、私たちに文化的な遺産への権利を放棄させようとしたんだ。金をどれだけ積まれようとも、私たちはそんなことはしない」

2003年になると、連邦政府は1989年の土地収用法を行使して、処分場のための土地を獲得しようとした。アボリジニの人々への事前の通告や相談をまったく行なわずに、このようなことが行なわれた。

■ 次に起きたこと:いかさまの協議

処分場に反対する闘いを先頭に立って引っ張ってきたのが、「クバピディ・クンガジュタ」(南オーストラリア北部のアボリジニ女性たちの反核住民組織)だった。クンガ民族の人々の多くは、1950年代にマラリンガとエミューフィールドで行なわれたイギリスの核実験の影響に苦しんでいた。

政府がアボリジニの人々との協議と称して行なったアプローチは、2002年に漏洩した文書の中で明らかになった。その文書では「先住民の聴衆の心を動かす戦術は、現在大規模に行なわれている先住民グループとの協議によって十分な情報が得られるだろう」。言い換えれば、そのいかさまの協議は、政府による処分場推進プロパガンダに照準を合わせるために使われたのだ。

こうした政府による冷笑的で侮蔑的な戦術は、先住民族の権利に関する国連宣言の29条に相いれないものだ。そこには「先住民族の土地や領地においては、先住民の自由かつ事前に十分な情報を得た上での同意がなければ、有害な物質の貯蔵あるいは処分は決して行なわれない」と書かれている。

このいかさまの協議の問題は、これまで何度もくり返し起きている。最近では、王立委員会(後述)による「放射性廃棄物処分の安全性に関する信頼関係の構築」に関する議論がそのよい例である。南オーストラリア州西部のセドゥナを代表するアボリジニと非アボリジニの代表たちからなる「西マレー保全グループ」は、このひどい攻撃にこう応答している。

「私たちは、この問題が皮相的で攻撃的なものだととらえている。多くの人々が自分たちの時間とエネルギーをつぎ込んで放射性廃棄物について調査したり考えたりしてきた。「クバピディ・クンガジュタ」を構成してきた女性たちも、ウーメラでの低レベル放射性廃棄物処分場建設計画に対して立ち上がって何年も闘ってきた。

彼らがなぜ放射性廃棄物処分場を受け入れなかったのか。それは、事前に信頼関係を構築するために行なわれた「プロセス」が不十分であったからだけではない。

A)一人ひとりの個人が、長年にわたって継承されてきた文化的な叡知が汚されるような毒から土地を大切に守るために深く関わっているのであり、

B)アボリジニの人々やその家族は、まずもってエミューフィールドとマラリンガでの核実験、そしてオリンピックダムでのウラン採掘によって、すでに放射能の影響を直接的に経験し、また経験しつつあるからであり、

C)彼らは「未来の世代のために生命を持続可能なものとすることが何よりも重要なことだ」という世界観のもとで暮らしているのであり、あらゆる側面において危険かつ長期間に及ぶ汚染をもたらす原子力産業の特徴とは相容れない。

「クバピディ・クンガジュタ」の女性たちは、連邦政府に対して「ポケットから耳を取り出してこちらの言うことを聞く」ことを要求し続けた。そして、6年たって、やっと政府はそうした。2004年の総選挙を前にして、廃棄物処分場の問題が政治的にも大きな焦点となってきていた。そして、「政府は土地収用法の緊急条項を違法に行使した」との判断が連邦裁判所で出されたことを受けて、政府はこの処分場計画を放棄した。

クンガ民族の人々は公開書簡の中でこう書いている「だれもが、たった数名の女性たちだけで政府に勝つことなんかできないといいました。私たちはただ彼らに、ポケットにしまいこんでいる耳をとりだして私たちの話を聞きなさいと訴え続けたのです。私たちは、あきらめるとは決して言いませんでした。政府の側には、金の力で道筋をつけるだけの力があったのでしょうが、私たちはあきらめませんでした」

■ マラリンガ核実験場での、ずさんきわまりない除染の実態

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マラリンガでかつて働いていた内部告発者のエイボン・ハドソン。1957年10月9日に27キロトンのイギリスのプルトニウム爆弾がさく裂したタラナキにて

1998年から2004年にかけて南オーストラリアで行なわれた廃棄物処分場に関する議論は、同じ州の中で起きていたマラリンガ核実験場でのずさんきわまりない除染の問題に関する論争とオーバーラップすることとなった。

イギリスは1950年代にオーストラリアで核実験を12回実施し、そのほとんどがマラリンガで行なわれた。1985年の王立委員会は「核実験が行なわれていた頃のアボリジニの安全を守るための対策は『無知、無能、冷笑的』なものであった」とした。

オーストラリア政府による1990年代後半のマラリンガでの除染作業は、ひどいものだった。できるだけ安く上げることを念頭に行なわれ、プルトニウムによって汚染された廃棄物は、地質学的に不安定な場所の浅くてコンクリートで裏打ちされていない穴に埋められた。

原子力技術者であり内部告発者でもあるアラン・パーキンソンはこの除染について「マラリンガで行なわれたことは、白人の土地であれば絶対に行なわれないような安っぽくて始末におえないものだった」と。

原子力規制機関である「放射線防護および原子力安全庁」のゴフ・ウイリアムス博士は、流出した電子メールの中で、マラリンガの除染を「無分別とやっつけ仕事と隠蔽の連続」だったと表現している。

核物理学者のピーター・ジョンストン教授は「プロジェクトのマネジメントが不備であったために、経費の大幅な増大や重篤な被害があった」としている。

ジョンストン教授らは、学会で発表した論文の中で、除染に関する意思決定から伝統的土地所有者が排除されてきたことを指摘した。伝統的土地所有者は協議の場に代表を送っていたが、重要な決定は協議委員会やそのほかのあらゆる伝統的土地所有者との個別的な議論もないままに行なわれた。重要な決定とは、たとえばガラス固化したプルトニウム汚染廃棄物をコンクリートで固めない穴に浅く埋設することなどである。

連邦政府の閣僚であるニック・ミンチン議員は2000年5月にマスコミに対して「マラリンガ・ジャルジャ民族の伝統的土地所有者は、プルトニウムを地下深くに埋設することはこの廃棄物を安全に取り扱うためにふさわしい方法だと合意した」と話しているが、プルトニウム汚染廃棄物は地中深くには埋設されなかったし、ジャルジャ民族の伝統的土地所有者らはコンクリートで固めない穴への廃棄物埋設に合意していない。実際のところ、彼らは大臣に書簡を送って、自分たちとその決定は無関係だと明確に指摘している。

マラリンガの除染から10年程たってから、汚染廃棄物が埋設された85ヶ所のピットのうち19ヶ所において、土地の侵食や地盤沈下が認められたとの調査結果が発表された。

放射能汚染が残されたにもかかわらず、オーストラリア政府は、汚染された土地への責任を放棄して、マラリンガのジャルジャ民族の伝統的土地所有者らにそれを丸投げしてしまった。政府としては、この土地の移譲を「和解の行動」だといっている。

しかし、それは和解などではなかった。それは、相手を見下す行為だった。真の問題は1996年に明らかになった政府文書の中に書かれていた。「除染の目的は、残された汚染から発生する英連邦の損害賠償額を減らすことだった」

■ 北部準州における放射能の身代金? 賠償金?

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マカティーの伝統的土地所有者、カイリー・サンボ

2004年に南オーストラリアの人々が勝利した後、連邦政府は北部準州のテナントクリークから110キロ北に位置するマカティーでの廃棄物処分場計画を実現するためにおおかた10年を費やした。生活の基本的なサービスと引き換えに放射性廃棄物の処分を受け入れさせるという悪意に満ちた取引が、当初から行なわれていた。

マカティーが処分場の候補地としてノミネートされるにあたっては、道路や住居の整備や奨学金などを含む1200万ドルの補償パッケージと共に提示された。

マカティーの伝統的土地所有者であるカイリー・サンボはこの放射能の身代金に異を唱えた。「よりよい教育や奨学金を得るために自分たちの土地を売り渡すなどというのは、あまりにも愚かなことだと思います。それらは、オーストラリアの国民であれば誰でも享受すべきものなのですから」

アボリジニの伝統的土地所有者グループの中には処分場を支持するものもいたが、大多数は処分場に反対しており、その中の何人かが連邦裁判所で訴訟を起こして、連邦政府と北部土地評議会によるマカティーの予定地指名の問題点を法廷で争うことにした。

保守連合政権は「2005年放射性廃棄物管理法」を制定した。この法律は、アボリジニ遺産法に優先するもので、アボリジニ土地権法を弱体化させ、アボリジニへの相談や合意形成なしに放射性廃棄物処分場を押しつけることを可能にするものであった。

労働党はこの放射性廃棄物管理法に反対した。労働党の議員はこの法律を、極端、傲慢、強権的、哀れ、浅ましい、あまりにも破廉恥、などと評して批判した。2007年の党全国大会において、労働党は全会一致でこの法律に反対することを決めた。

しかし2007年の総選挙で勝利したあと、労働党政府は結局「2010年放射性廃棄物管理法」を制定した。この法律は、前の法律と同じくらい強権的なもので、処分場の建設にあたってアボリジニへの相談や合意は必要ないという内容を含むものだった。より正確に表現すれば「予定地の指名は、アボリジニへの相談や合意がないからといって無効にはならない」という文面であった。

オーストラリアにおける放射能のレイシズムは、2党に共通するものである。労働党も野党自由党もこの法律に賛成した。恥知らずなことに、北部土地評議会もこの法律に賛成し、本来なら代表であるはずの国民の力を奪うことに貢献した。

2008年2月13日、労働党のケビン・ラッド首相は議会において、政府として初めて公式にアボリジニの人々に謝罪した。「盗まれた世代」(訳注:1869年から少なくとも1969年まで行なわれた、アボリジニの子どもが親元から引き離されて白人家庭や寄宿舎で養育されるという政策)の一人であるローナ・フェジョの生涯の物語を大きくとりあげた。しかし同じときに、ラッド首相の政権は彼女の土地を放射性廃棄物処分場のために取り上げていたのだ。

フェジョは「私は、本当に心の底からがっかりし、この法律が成立したことに心を痛めました。本当に悲しく思いました。私たちはいったい何時になったら公平なスタートラインに立つのでしょう。オーストラリアは平等な国のはずではありませんか? 私は母親から引き離されて育ち、いまは土地を奪われようとしているのです」

■「あまりの喜びに心が躍りました」

2014年6月、マカティーでの勝利を祝うマーリン・ヌンガライ・ベネットとナタリー・ワズリー
2014年6月、マカティーでの勝利を祝うマーリン・ヌンガライ・ベネットとナタリー・ワズリー

連邦裁判所での裁判は、とうとう2014年に始まった。2週間にわたる法廷での証言の後、北部土地評議会はこの裁判を闘うことをあきらめ、マカティーを処分場として指名することから撤退した。マカティーで闘ってきた人々の大勝利だった!

この発表は、北部土地評議会と政府関係者が法廷で反対尋問に立つことになっていた日の数日前になされた。彼らが撤退したことによって、北部土地評議会や政府は、裁判の最初の2週間で明らかにされた数え切れないほどのさまざまな不正(たとえば、北部土地評議会が文化人類学者の報告書を書き換えたことなど)についての反対尋問を受けなくてもよいこととなった。

カイリー・サンボは言う。「北部土地評議会は、自分たちが本当は何をしたのかについて屈辱的な尋問を受けたくなかったのではないでしょうか。でも、彼らがあきらめたのはよいことです。私たちにとってはとてもよかった」

ローナ・フェジョは「嬉しくてうっとりします。私たちの土地を守るためのあまりにも長い闘いが終わったのですから、とても自由になった気がします」

マーリン・ヌンガライ・ベネットは、マカティーでの勝利をこれまでに達成された有名なアボリジニの人々の闘いの勝利の記憶と比べてこういった。「今日のこの勝利は、オーストラリアの先住民の歴史の本の中で特筆されているいくつものできごとと並ぶものとして描かれるでしょう。私たちはこの土地のために一歩も引かずに立ち上がると示しました。北部土地評議会は私たちを分裂させて征服しようとしましたが、うまくいかなかったのです」

ダイアン・ストークスは「勝利したことで、みんなが喜んでいます。私たちは、勝利にたどり着くために本当に長い間闘ってきました。オーストラリアのどこかで誰かが放射性廃棄物処分場と闘うために助けを必要としているなら、私たちはそこへとんでいって処分場との闘いを助けます。私たちは自分たちの闘いの中で本当に多くの支援を受けたので、もし誰かが助けを呼んだら、私たちはすぐにそこへ行きます」

■ オーストラリアが世界の放射性廃棄物処分場に

いま、南オーストラリア州のアボリジニの人々は、国内の放射性廃棄物処分場の押しつけに直面していると同時に、13万8000トンの高レベル放射性廃棄物と39万立方メートルの中レベル放射性廃棄物を輸入して貯蔵、処分するという計画にも直面している。

この計画は、南オーストラリア州政府によって推進されている。州政府は昨年、王立委員会を設立した。「独立した肯定的な助言」を取り繕いとして得るためのものである。この王立委員会の委員は原子力推進であり、専門家による諮問委員会のほぼ大部分のメンバーが、金切り声を上げて推進を叫ぶような人たちばかりだった。

ある人物は、原発は太陽光発電より安全だと主張しているし、もう一人は、原発と核拡散のリスクに関連性はないといっているし、もう一人は、あれほどのメルトダウンが起きたにもかかわらず福島原発事故ではそれほど深刻な問題が起きなかったといっている人物だ。

2015年3月に王立委員会の設立を宣言した際に、南オーストラリアのジェイ・ウェザリル州首相は「私たちはアボリジニのコミュニティと話し合わなければならないという規則を持っており、非常に慎重にすべき問題だ。これまで私たちは、マラリンガのジャルジャ民族の人々の土地を、イギリスの核実験の際に不当に取得して汚染させてしまったのです」と言った。

しかし、南オーストラリア州政府は、王立委員会の仕事の進め方を組織的に操作して、アボリジニの人々の市民権を剥奪している。委託事項の原案にフィードバックを行なうための時間的猶予が、非常に短い時間しか準備されなかったことで、遠隔地に住んでいる人々、電子メールやインターネットが使えないか使いにくい人々、そして英語が母語ではない人々にとっては大きな不利があった。委託事項の原案は英語のみで書かれており翻訳は行なわれなかったし、地域でのコミュニケーションも行なわれなかった。

アボリジニの人々は、王立委員会によることの進め方にくり返し不満を表明していた。いろいろな問題がある中の一つを挙げよう。

「王立委員会のやり方になぜ私たちは不満を持っているのだろうか。Yaiinidlha Udnyu ngawarla wanggaanggu, wanhanga Yura Ngawarla wanggaanggu? 英語、英語、いつも英語ばかり。いったい私たちの言語(ユラ・ンガワルラ)はどこに行ったんだ?」

委員会と市民との相互理解を深める取り組みも不十分だった。それは、あまりにも白人的なやり方で、人々を当惑させるものだった。プログラムはごく短いものだったし、情報へのアクセスも困難で、通訳・翻訳のサービスも準備されなかった。会合についてもほとんどまともに告知がされなかった。

閉鎖的で秘密主義的な方法が取られたので、平均的な一般の市民にとっても参加が困難だったのだから、アボリジニの人々にとっては、ほぼ参加は不可能な状況だった。

南オーストラリア州を世界の放射性廃棄物のゴミ捨て場にするというこの計画は、ほぼ全員一致の様相でアボリジニの人々から反対の声が上がっている。南オーストラリア州全域から多くのアボリジニ団体が結集して構成されている「南オーストラリア・アボリジニ会議」は、2015年8月のミーティングで次のような決議を行なった。

「土地や水のネイティブ・タイトル権の代表として私たちは、私たちの土地でのウラン採掘の拡大、原発の建設、放射性廃棄物の処分場建設などの原子力開発に対して断固として反対する。今日まで、私たちの多くは原子力産業による破壊的な影響に苦しみ続けているし、私たちの土地におけるウラン鉱山の展開を通して大切な土地を汚染されてしまっている。私たちは、原子力産業のさらなる拡大は、私たちの土地、人々、環境、文化、歴史に対する暴力的な破壊だと考えている。また、この国の建国の原則を含むさまざまな法制度の下での私たちの権利に対する大胆な侵害だとも考えている」

王立委員会は最終報告書の中で「アボリジニの人々から放射性廃棄物処分場への激烈な反対の意見があることを認識している」と言及している。しかし、委員会はアボリジニの人々からの激しい反対を、計画への赤信号ではなく、なんとかしてやりすごすべき障壁として取り扱っている。

■ 原発に賛成する「環境主義者」たちによるレイシズム

オーストラリアで原発に賛成する「環境主義者」を自称する人たち、たとえば王立委員会の専門家諮問委員会のメンバーであるバリー・ブルック、ウラン産業や原子力産業のコンサルタントであるベン・ハードらは、反対するアボリジニの人々の土地に放射性廃棄物処分場を押しつけようとすることについて、一言の懸念も表明したことがない。彼らが黙っているということは、自分たちが見境なく支持している原子力産業のレイシズムに関して何も気にしていないということではないか。

連邦政府が伝統的土地所有者への相談も合意形成もなしに北部準州で放射性廃棄物処分場を押しつけることを可能にする法律を通過させた際も、この二人は黙っていた。

右翼的な自由党の意見を反映させてか、ブルックとハードは北部準州の処分場予定地とされたマカティーについて「荒地のど真ん中」と表現した。彼らから見ればそうなのだろう。しかし、マカティーの伝統的土地所有者たちにとって、マカティーは自分たちのホームランドのど真ん中なのであり、それを何もない荒地の真ん中だと評することはあまりにも暴力的なことだ。

ハードが、現在処分場予定地とされている南オーストラリアのアズニャマッタナ民族の土地について話しているコメントもあまりにも暴力的だ。「この場所ではアボリジニの文化的な遺産の問題があるとは聞いていない」と。その言葉を、処分場予定地の真横にある先住民保護地区にあるヤッパラ・ステーションで暮らすアズニャマッタナ民族の伝統的土地所有者たちに伝えてみるがいい。

現在の予定地ではアボリジニの文化的な遺産の問題が存在しないなどと、いったいハードはどこからそのような考えを仕入れたのだろうか。現地を訪問したわけでもなければ、伝統的土地所有者たちに話を聞いたわけでもない。彼はただ、意味もわからずに連邦政府のレイシストたちが言うウソをまねしているだけなのだ。

ブルックとハードは、南オーストラリア州に対して、国際的な高レベル廃棄物処分場計画すら提案している。まるで、そこが自分たちの所有地であるかのように。彼らは、伝統的土地所有者たちがこの計画に対して燃え盛るような激烈な反対の意思を表明していることにも、たったの一言も触れていない。

■ 組織ぐるみのレイシズム

ビル・ショーテン労働党党首は最近、「オーストラリアにおいては、組織ぐるみのレイシズムはまだ流行からは程遠い」と発言した。しかし彼は知るべきだ。労働党も、アボリジニのコミュニティの意思に反して放射性廃棄物処分場を押しつけようとする試みを2党派がかりで推し進めたり支持したりしてきたのだ。

そして労働党も保守連合も、ウラン採掘はアボリジニの権利より重要だと信じている。アボリジニの土地権と遺産保護は、最も良い状態のときでも脆弱なものだ。その法的な権利と保護すらも、ことが原子力やウラン採掘の利害と関係する場合にはくり返し反故にされてきた。

オリンピックダム鉱山は、南オーストラリアのアボリジニ遺産法から大部分除外されてきた。

「アボリジニ土地権法」の款40(6)において、北部準州でレンジャー鉱山を除外しており、これによってミラル民族の人々が享受できるはずだった拒否権を取り上げられてしまった。

ニューサウスウエールズ州の法律では、同州のアボリジニ土地権法の条文からウラン鉱山を除外している。

西オーストラリア州政府は、「西オーストラリア州1972年アボリジニ遺産法」を、ウラン産業の利益のために骨抜きにしようとするプロセスの只中にいる。

そして、

■ 「ネイティブ・タイトル権」(土地に関する権利)は、南オーストラリアの放射性廃棄物処分場のために軽視され

■ アボリジニ遺産法と土地権は、北部準州に放射性廃棄物を処分するための圧力の中でくり返し踏みにじられ

■ そして南オーストラリアのフリンダース・レンジにおける放射性廃棄物処分場計画に、アボリジニによるほぼ全会一致とも言える規模での反対の意思が突きつけられていることを、どの政治政党も無視している。

オーストラリアのアボリジニの人々に対する、決して終わることのない原子力の戦争は、文化的なジェノサイドだといっても、過言ではないはずだ。実際、事実はそのとおりなのだから。

(訳:宇野田陽子)

ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.141より

南オーストラリアを世界の核のゴミ捨て場にすることに反対して集まった人びと。2015年5月、ポート・オーガスタにて
南オーストラリアを世界の核のゴミ捨て場にすることに反対して集まった人びと。2015年5月、ポート・オーガスタにて

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信141号(8月20日発行、B5-32p)もくじ

● オーストラリアのアボリジニの人々が立ち向かう、放射性廃棄物をめぐる戦争
(ジム・グリーン)
● 台湾「第四原発凍結予算」5億元削除!(原発廃止全国プラットフォーム)
● トルコ、2つの裁判闘争とアックユ原発プロジェクトの再開
● クダンクラム原発の引き渡しとインド政府の「感謝」(PMANE)
● 中国・連雲港で使用済み核燃料処理施設の建設に市民らが抗議
● 平岡敬元広島市長のハプチョン・テグ訪問記(高野聡)
● 核、次世代に渡せぬ 原爆投下71年 伊方原発(大分合同新聞)
● 伊方原発運転差し止め広島裁判について(堀江壮)
● 原発をとめるための2つの方法(小坂正則)
● 大間原発反対現地集会と大MAGROCK(中道雅史)
● 原発メーカー訴訟・第一審判決を受けて(島昭宏)

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★NNAF通信・主要掲載記事(No.1~141) http://www.nonukesasiaforum.org/jp/keisaikiji.htm

★本『原発をとめるアジアの人々』推薦文:広瀬隆・斎藤貴男・小出裕章・海渡雄一・伴英幸・河合弘之・鎌仲ひとみ・ミサオ・レッドウルフ・鎌田慧・満田夏花http://www.nonukesasiaforum.org/jp/136f.htm