星埜 恵
西オーストラリア州のマルガロックという場所でウラニウム採掘をする計画に先住民コミュニティと支援者による反対運動が行われていることを、日本に住む人はどれだけ知っているだろうか?
11月25日に西オーストラリア州の反核団体、Nuclear Free WAが主催する抗議行動が州都パースで行われ、地域先住民がスピーチを行い、支援者たちがプラカードを掲げて採掘計画への反対を表明した。
抗議バナーには「オーストラリアのウランが福島で使われた」と書いてある。

原発を容認するということは、先住民の土地を汚すこと、コミュニティを破壊することにも加担することだ。「Resist Nuclear Colonialism(核植民地主義に抵抗しよう)」というバナーの言葉にもうなずかされる。

現在西オーストラリア州に住む筆者が、今マルガロックで何が起きているのかを現地の記事などを参考にしながらまとめてみた。
原発のないオーストラリアは、その裏側でウランの推定埋蔵量が世界最大、生産量も世界屈指のウラン鉱床大国だ。
日本も長年ウランを調達してきた北部準州のレンジャー鉱山は、2021年に約40年にわたる操業を終了した。
現在操業中のウラン鉱山は、南オーストラリア州のオリンピックダム鉱山とフォーマイル鉱山で、操業停止中の同州ハネムーン鉱山も2023年に操業再開が計画されている。
西オーストラリア州では、未だウラン鉱山が操業したことはないが、前州政権が四つのウラン鉱山開発を認可している。そのうち三つは認可期限切れとなったが、残るマルガロック鉱山は2025年の操業をめざして開発が進められている。
西オーストラリアのカルグーリー市から東230kmにあるマルガロックのウラン鉱山は、1977年より日本の動力炉・核燃料開発事業団(動燃)が調査探鉱した際に発見されたもので、「エンペラー」「ショーグン」「アンバサダー」からなる鉱化帯から構成されている。
日本の原発にオーストラリアからのウランが使われていたことは知っていたけれども、わざわざ先住民の地にずけずけと入り込みウランの探鉱にすら関わっていたことは知らず、驚いた。抗議活動で掲げられていたバナーに書かれていた「核植民地主義」に、日本は長年がっつり関わってきたということだ。
マルガロック鉱山計画は、元々ヴィミー・リソーシズ社が着手していたが、今年になってナミビアのウラン鉱山開発を進めるディープイエロー社と合併した。
西オーストラリア州の環境保全団体CCWAの記事によれば、ディープイエロー社の取締役会議長に就任したクリス・サリスベリー氏は、資源大手リオ・ティント社出身で、2020年に先住民の文化遺産であるジュウカン渓谷(西オーストラリア)を爆破・破壊し世界的な批判を浴びたときの責任者として引責辞任した人物。
さらにディープイエロー社のCEOは、ナミビア・マラウイでのウラン採掘事業を行うパラディン社の社長を長年務めた人物。パラディン社のウラン採掘事業は、労働者の死亡、ウラン濃縮物の流出、労働者のハンガーストライキ、地域河川への排水、地元警察の労働者への催涙スプレー使用事件などを引き起こしている。
あまりにも人権感覚も環境意識も0どころかマイナスすぎるこういった人物がマルガロックのウラン事業にかかわっているという時点で、同じようなことがここで起こってしまうのではないかと地域住民や環境団体が不安を持つのは当たり前だろう。
この地域は絶滅危惧種のサンドヒルダナートという小動物の生息地域であり、その生態系が破壊される懸念があるのはもちろんのこと、周辺地域の人々の生活環境、水や空気にどのような影響を与えるかは未知数で、大きな懸念事項だ。
また、この地域の伝統的所有者であるUprli Uprli Nguratjaの人々は、1953年から63年にかけてのイギリスによる原爆実験中に南オーストラリアを逃れてマルガロックの近くに定住した、オーストラリア最初と思われる環境難民の子孫である。
ウラン採掘によって破壊されるかもしれないマルガロック周辺は、核産業によって影響を受けた人々との歴史的つながりのある地域なのだ。そんな場所を、その人々を、また核の汚染にさらすことは絶対に許してはいけないことだと思う。
日本の原発を稼働させることは、先住民の土地を奪い、そこに住む人々や動物の環境を破壊することにつながっている。
さらなる核植民地主義に加担しないために、私たちはオーストラリアの地で声を上げる人たちとともに、原発の廃炉とウラン採掘の反対を一緒に手をつないで求めていくことで、状況をともに変えていきたい。変えていきましょう。
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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信179号
(12月20日発行、B5-24p)もくじ
韓国政府は2023年以降、コリ原発2号機を皮切りに、老朽原発18基の寿命延長と、使用済み核燃料の原発敷地内乾式貯蔵を、セットで進めようとしています。
・韓国、地域の無限犠牲を強要する高レベル放廃物法の議論を中止せよ
(エネルギー正義行動)
・韓水原が住民に謝罪、コリ2号機の寿命延長、蔚州郡公聴会延期
(ヨン・ソンロク)
・コリ2号機の寿命延長、声が聞こえなくても強行した 「偽公聴会」
(同上)
・全国民を対象に「核発電所閉鎖署名運動本部」発足
・韓国、甲状腺がん共同訴訟控訴審・記者会見文
(甲状腺がん共同訴訟市民支援団)
・西オーストラリア・マルガロックのウラン採掘反対 (星埜恵)
・タイ、オンカラックでの研究炉建設計画に反対する理由
(ナコンナヨック市民協会)
https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2651
・トルコ、アックユ原発1号機の工事は最終段階へ、
シノップでもロシアが原発建設を計画 (森山拓也)
・900人が怒りの「老朽原発うごかすな!関電包囲全国集会」、御堂筋デモ
(木原壯林)
・九電、川内原発20年延長を申請-意見広告運動に協力を-
(向原祥隆)
・第36回伊方集会、未来を守らぬ原発政策に抗議と「避難」体験
(大野恭子)
・多くの核施設と軍事施設をかかえる青森県の戦慄 (中道雅史)
・東電幹部の刑事処罰こそが脱原発への一里塚 (水戸喜世子)
・福島原発事故を起こした東京電力に
世界一の原発を動かす資格があるのか (小木曽茂子)
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