トルコではアックユ原発の環境影響評価に関する裁判が3月に棄却され、4月にはエルドアン大統領とロシアのプーチン大統領が共に出席する原発建設の起工式が開催されるなど、原発建設に向けた動きが進んだ。原発への反対派はこうした動きに対して批判を強め、「チェルノブイリの日」に合わせて4月下旬に開催されるシノップ反原発集会への準備を進めている。
以下では3月以降の現地メディアの報道を紹介する。(森山拓也)
アックユ原発への訴えを行政裁判所が棄却
「Diken」3月7日、「Bianet」 3月26日
3月7日、国家評議会(行政最高裁判所)第14法廷は、アックユ原発の環境影響評価に対する市民団体らの訴訟を棄却した。環境団体などからなる原告団は、アックユ原発のために行なわれた環境影響評価の内容が不十分であるとして、その取り下げを求める訴訟を2014年末に申請していた。国家評議会は環境影響評価レポートの内容が不十分であることは認めたものの、レポートの有効性を損なうほどの不備ではなく、事業の実施を妨げるものではないとした。環境影響評価レポートの不備は、後にトルコ原子力庁に提出される事前安全審査レポートで補われるとして、環境影響評価の取り下げを求める訴えは棄却された。これに対し原告の市民団体らは、3月末に国家評議会行政裁判法廷へ上訴を申請した。
アックユ原発起工式 エルドアン、プーチン両大統領が出席
「Cumhuriyet」、「Evrensel」、「Yeşilgazete」など 4月3日
トルコ南部でロシアが建設するアックユ原発の起工式が4月3日に開催された。起工式にはトルコのエルドアン大統領とロシアのプーチン大統領が共に出席した。前日の4月2日にはトルコ原子力庁からアックユ原発1号炉の建設許可が発行された。
これに対してイスタンブール反原発プラットフォームは抗議声明を発表し、政治ショーとして原発が大急ぎで建設されていると批判した。首都アンカラの国会前でもシノップやメルスィンの人々が抗議の記者会見を行なった。イスタンブールでは抗議のため集まった環境活動家やジャーナリスト6名が一時身柄を拘束された。
アックユ原発のあるメルスィン県では県知事がデモや集会の禁止令を出した。抗議のためメルスィンからアックユへ向かおうとした活動家らの乗ったバスは警察に止められた。
アックユ原発の1号炉は2023年10月29日(トルコ共和国宣言100周年記念日)の稼働に向け工事が進められる。
「トルコには原子力が必要」「原発よりバナナの方が危険」
「Cumhuriyet」4月3日、「Sabah」 4月15日
アックユ原発の起工式に合わせ、テレビでは新たに原発を宣伝する広告が放送され始めた。CG効果も使って原子力の有用性を訴えるこのテレビ広告には、トルコ人ノーベル化学賞受賞者であるアズィズ・サンジャル(Aziz Sancar)も登場し、原発反対派の失望を招いた。
政権寄りの姿勢で知られる大手新聞社のサバ紙は、自然界にも放射線が存在していることを説明して、原発の危険性を否定する論考を掲載した。この論考は、たとえばバナナも放射能を帯びており、バナナを食べることは原発よりも危険であると述べている。