ノーニュークス・アジアフォーラム2019 in台湾 共同声明

2019年9月21日から25日、私たちは第19回ノーニュークス・アジアフォーラムを台湾で開催した。5日間にわたって討論や現地訪問を行ない、私たちは下記の声明をとりまとめた。

1.私たちは、長い経験とこのフォーラムでの議論を通して次のような現状認識に至った。

● 原発は人道において賢明な選択肢ではない。原発は大地と、今の世代のみならず子々孫々の健康をも破壊する。可及的速やかに再生可能エネルギーへと転換を行なうことは、気候変動の緊急事態に対する唯一の信頼できる対応である。この転換は、その土地に暮らすコミュニティにいかなる被害をももたらさずに実現されなければならない。

● 原発はクリーンでもなく、安全でもなく、巨額の費用なしには存在できず、ましてや再生可能エネルギーではない。化石燃料による発電よりも発電段階での排出二酸化炭素が少ないという理由だけで、気候変動への解決策として受けとめられてはならない。ウラン採掘に始まり使用済み核燃料の再処理や貯蔵まで、さらには原発の建設や核燃料製造などでの二酸化炭素排出も含めて、核のサイクル全体として計算されなければならない。さらに、原発からは放射性物質や排熱も放出されるし、放射性廃棄物も生成される。

● 原発、核兵器、化学兵器は密接に絡み合っている。それらは環境と世界平和に対する重大な脅威である。

● 先住民や少数民族、とくに辺境地域に暮らして政治的な力や声を持つことができない人々が、放射能汚染の被害者となる事態が連綿と続いてきた。それはウラン採掘、核実験、原発の運転、放射性廃棄物の処分におよび、そうした事例はオーストラリア、台湾、中国、インド、アメリカ、南太平洋諸国などでみられる。「経済発展」などという神話で、少数者に破壊や死を強いることを道徳的に正当化することはできない。彼らの土地を強制的に収用したり汚染したりする行為は、文化的そして物理的な大量虐殺として認識されるべきである。そしてその過ちを正すためには、金銭的な補償だけではなく、彼らの土地権を復活させること、線量のモニタリングを改善すること、健康を守るためのサービスを活用できるようにすること、土地の包括的な回復などが行なわれなければならない。

● 多くの原発が運転期間の終わりに近づきつつある。廃炉、敷地の除染、線量のモニタリング、放射性廃棄物の管理(いわゆる中間貯蔵施設も含めて)などの難しいとりくみが、すべて厳格で持続的な独立性のある監視の下で行なわれなければならない。

● 原発はいわゆる先進国では減少しつつあるが、中国やインドなどの発展途上国では新規原発の計画や建設が行なわれている。それらは多くの場合、技術的な問題点を隠すような強権的な政府の下で行なわれている。福島での経験にもかかわらず、原発の再稼働や、棚上げにされていた原発の建設を再開しようとする国もある。古い原発を運転延長することは、さらに危険を高めることになる。

● 私たちは、エネルギーの民主主義を求める。これは、メディア、政府、産業界の透明性を高めること、社会でのコミュニケーションを促進すること、政策に関する教育とディベートに十分な時間と場所を確保することなどによって構築できる。市民による選挙と投票のプロセスの中で、利害対立を含めて完全な情報開示がなされなければならない。

2.こうした状況に直面し、私たちはお互いに学び合い、協力し合い、密に情報交換を行ない、あらゆる国での反原発運動をサポートするために共同行動を続けなければならない。これからとりくむべきことは、核も原発もないアジア、世界を究極的な目標として、自然エネルギーを開発し活用するよう市民や地域社会に働きかけることだ。この時点でとるべき具体的な行動は以下である。

● アジアのすべての国々に対して、核兵器禁止国際条約を支持、署名、批准することを求める。

● 原発や核技術の輸出を行なう原子力産業や国家に反対していく。それらは、この惑星やそこで暮らす人々を傷つけることで利益を得ようとする行為である。

● 地震の危険性が高い国々が原発計画を断念するよう指導し決断させる責任を果たすことを、IAEAに要請していく。それは、インドや台湾やトルコなどとくに断層の活動が知られている国々に対して、福島原発震災の教訓から学ぶことによってなされることが重要である。

● オーストラリア、インド、南太平洋諸国、中国、モンゴル、ロシア、台湾、日本を含む国々において、ウラン採掘、放射性廃棄物処分、核実験などによる放射能汚染の被害者が認定され、支援を受け、補償されるようすべての機関や政府に促す。

● 台湾の人々に対して、「原発廃止、再生エネルギー推進」国民投票のための請願署名に参加するよう促す。建設中の台湾第四原発は、まだ放射能で汚染されていないのだから、このまま完全に閉鎖し、自然エネルギーの発電所にするか、地域のニーズによって転換すべきだ。近い将来廃炉にしなければならない原発は、責任をもって対処されなければならない。低レベル廃棄物の焼却は中止すべきだ。蘭嶼島から放射性廃棄物処分場は撤去されるべきだ。

● 私たちは、放射線防護に関する新しいICRP勧告案を拒否する。改定される被曝線量のレベルは、原発事故の後にその場所にとどまってもリスクは低いということを示唆するものとなっている。

● 私たちは、福島原発事故の責任を問う刑事裁判の東京地裁判決を非難する。判決では、3人の東京電力幹部が無罪とされた。私たちは、福島原発事故の被害者を支持することを宣言する。

● 私たちは2020年が、東京での夏季オリンピック開催と、広島・長崎への原爆投下から75周年という、日本にとって非常に意味のある年になることを認識している。オリンピック精神の真の理念が、福島原発事故がもたらす終わりのない、解決されない人的影響及び環境的影響から耳目をそらさせるためのプロパガンダとして利用されてはならない。

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信160号(10月20日発行、B5-28p)もくじ

・2019 NNAF 非核亞洲論壇 議程
・第19回ノーニュークス・アジアフォーラム in 台湾 ダイジェスト
(片岡遼平、吉野太郎、白井聡子、渡田正弘、大野恭子)
・陳建仁副総統 あいさつ
・ノーニュークス・アジアフォーラム2019 in台湾 共同声明
・NNAF in 台湾 に参加して
(青木一政、明日香壽川、伊藤延由、宇野田陽子、大野恭子、片岡遼平、後藤政志、佐藤大介、里見喜生、白井聡子、とーち、トニー・ボーイズ、吉井美知子、吉野太郎、渡田正弘)
・東電刑事裁判の「判決」に思う (武藤類子)
・隠される原発事故被害と「見える化」プロジェクト (満田夏花)
・関電の原発マネー還流事件を徹底究明し、原子力からの撤退を求める集会決議
・その後のシノップ (小川晃弘)

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