(宮下正一・木戸惠子・中嶌哲演・藤本泰成・林広員・草地妙子・東山幸弘・井戸謙一・小橋かおる・末田一秀・滝沢あつこ・笠原一浩)
*ノーニュークス・アジアフォーラム通信・号外(2020年3月20日発行)より
■ 全国のみなさんの参加を心よりお願いします
宮下正一(原子力発電に反対する福井県民会議)
2019年9月27日に、関西電力の会長や社長など幹部役員20名に3億2000万円ものお金が工事請負会社から還流されていたことが明らかになった。
この報道にとてもビックリした。「原発マネー」は、原発を建設・運転するために自治体首長や地域の有力者あるいは国会議員などに使われているものと思っていたからだ。
わかっているだけでも3憶2000万円の巨額資金が、こともあろうに発注者である関電幹部役員に還流されているとは思いもよらなかった。
電力会社は私企業であるが、市民一人一人が電気料金として支払っていることから極めて公共性が高い。さらに、電力事業者は、決して赤字にならないように法律によって守られている。
そのような関電の幹部役員たちのなかで、私腹を肥やす行為が蔓延していたのだ。「こんなこと絶対許せない!」と全国から集まった3,371名により2019年12月13日(翌年の1月31日も含め)、大阪地方検察庁に「事実を明らかにして関係者を処罰してほしい」と告発した。
3月14日に行なわれた関電の第三者委員会の最終報告では、森山氏から関電役員たちに渡された金品により、吉田開発などに不正な工事発注がなされていたことを認めている。
告発状は受理されていないが、ここまで来たからには、大阪地検に対して「直ちに告発状を受理し、捜査を開始すべき」と要請を強めていく。私たちは、今回せっかく掴んだ巨悪の尻尾は絶対離さず、その正体を見るまで、闘い続けよう。
関西を中心とした反原発団体は、高浜1・2号機や美浜3号機など、運転から40年間を超える老朽原発の再稼働を絶対許さないと、昨年11月からリレーデモなどを行ない、運動を強めている。
そして、大阪市の中之島公園で、「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」を1万人以上の参加を求めて行ない、老朽原発再稼働反対のうねりを大きく広げていきます。全国のみなさんの参加を心よりお願いします。
■ いまこそ、老朽原発を止めるチャンス
木戸惠子(若狭の原発を考える会)
●若狭の老朽原発再稼働は、全原発の60年運転への道
福島原発事故は、人の営みを根こそぎ奪い去ることを、尊い犠牲の上に教えました。避難者は今でも故郷を追われて、苦悩の生活を強いられています。
それでも関電は、45年、44年、43年超え老朽原発、高浜1・2号機、美浜3号機の再稼働を画策しています。老朽原発では、取り替えることのできない圧力容器が大量の放射線に長期間曝されて脆化(固く脆くなり壊れやすくなる)し、配管の減肉(やせ細ること)や腐食が進み、事故の確率は格段に高くなります。全国に先駆けて関電が企てる老朽原発再稼働を許せば、全国の原発の60年稼働への道を拓くことになります。なんとしても止めねばなりません。
●40年超え運転は約束違反
「若狭の原発を考える会」では、原発立地・若狭の集落から集落へ反原発を訴えるチラシを配り歩く活動「アメーバデモ」を月2回、各回1泊2日で行なっています。アメーバデモが5年目になる昨年は主として老朽原発再稼働反対を訴えましたが、「関電は45年にもなる危険な高浜1号機を動かそうとしています」と言ってチラシを渡すと、地元の方から「約束違反やな」「若狭の原発は40年で廃炉になると聞いていた」「アカン、アカン、あんなもん動かしてどうするんや!」「政府も40年超え運転は“例外中の例外”と言っていたはず」など、老朽原発再稼働への怒りの声が数多く返ってきました。
昨年9月、私たちの電気料金で支払われた工事費が、関電幹部に還流され、福井県職員、小浜警察所幹部、元高浜町長などにも金品として贈与されていたことが明らかになりました。また、4月から電力会社の思いのままの原発稼働を可能にする「新」新検査制度が始まります。金にまみれ、企業倫理が地に落ちた関電に、危険な老朽原発をうごかせる能力も資格もありません。
●老朽原発を止めるのは、市民一人ひとりの行動
老朽原発うごかすな!の怒りの声は、昨年10月から11月の「老朽原発うごかすな!キャンペーン期間」に各地で行なわれた集会やデモ、11月23日から16日間の「高浜原発-関電本店リレーデモ」「12.8関電本店包囲全国集会」(161号参照)へと続きました。
「大飯原発運転差し止め」の仮処分を命じた樋口英明元裁判長は、「原発を止めるのは、首相や立地自治体の首長に原発を断念させること、裁判で原発を差し止めること」、そして「最も大切なのは市民一人ひとりの行動」と話されています。
安倍政権や関電の原発60年運転の野望を打ち砕くために、1万人を超える総結集で「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」を成功させましょう!
■ 第二のフクシマを未然に防ぐために
中嶌哲演(原子力発電に反対する福井県民会議)
関西圏の大量の電力消費のために若狭に集中した15基もの原発群のうち、7基の廃炉は決定しているが、まだ8基の再稼働・延命が強行、画策されている。8基中7基は関西電力のそれ、とくに40年超の老朽炉の美浜3号機と高浜1・2号機の延命は許しがたい。
4000億円近くの巨費を投じた「安全対策工事」も終盤にさしかかっており(私が昨春12日間の断食で訴えたのは、その工事中止だったのだが)、高浜1号が6月ごろ、美浜3号が8月ごろに再稼働を強行突破しようというもくろみのようだ。
原発マネーの関電への不正還流を大々的に報道したメディアのはたらきと、それを告発した広範な世論と運動が、ついに関電経営陣のトップを辞任にまで追い込んだ。
老朽原発の廃炉をめざす「老朽原発うごかすな!大集会in大阪」が開催される。その大結集へ向けて、あらゆる大中小の団体・グループ、個人有志がこれまでに地道にとりくみ続けてきた個別の課題とも結びつけながら、共同・協働の輪を一気に広げよう。
地震や火山爆発は止められなくても、原発や核燃料サイクルを止めることはできる!
第二のフクシマの惨禍を未然に防ぐために!
■ ここに、日本の悲劇がある
藤本泰成(原水爆禁止日本国民会議)
関西電力による会社ぐるみの収賄事件の第三者委員会の最終報告が出た。記者会見で但木敬一委員長は「刑事告訴は困難」と述べた。「不正の請託」が立証できないとの趣旨を述べているが、関電による「森山関連企業」への不正発注は事実であり、公共性の高い電気を独占的に販売してきたことを考えるならば、会社法による収賄罪や特別背任にあたるのは当然ではないか。明らかになった多くの事実があっても何らの処罰も受けないのは、電気を関電から買わされてきた市民にとっては納得がいかない。
電力業界は納得のいかないことばかりではないか。福島原発事故から来年は10年を迎える。巨大津波の可能性を指摘されていたにもかかわらず、何ら対策をとらずに事故を引き起こした経営陣は、無罪だという。フクイチは、未だに人を寄せつけない。事故収束の目処など全く立たない。周辺地域には住むこともできない。フレコンバックがあちこちに置かれている中に、一部住民は帰還を余儀なくされている。原発の危険性は明らかなのに、政府や電力会社は原発をあきらめない。
世間は原発などもってのほかと考えるから、どこにも新規原発はつくれない。つくれないとなると今度は、驚くことに、もっと危険な老朽原発を動かそうとする。しかも、40年を超えて60年超も認めようとの声が聞こえる。開いた口が塞がらない。
安倍政権に、将来を見据えた展望は全くない。原発などない方が良いし、石炭火力もない方が良い。そんなことは自明の理だ。であれば、10年、20年後のエネルギーをどう賄っていくのか誰しもが考えるが、考えない。あげくは、恥ずかしげもなく「日本の原発は世界一安全」を謳い文句に、売れないにもかかわらず、世界に原発を売り歩く。先を見る目が全くないのか見ないのか、今だけの政治がまかり通る。そこに、日本の悲劇がある。
■ 関西電力に原発を動かす資格なし
林広員(オール福井反原発連絡会)
「関電問題は福井の恥です」と福井県民に怒りが広がっています。この怒りは、原発マネーを基に関電と立地自治体と政界が「持ちつ持たれつ」で、私たちの税金や電気料金を食い物にしているところからです。
第三者委員会報告では、役員報酬カット分を後で補填していることが明らかになりました。国民には電気料金を上げて負担を増やし、自らは内々に報酬を戻している関電の姿に、一般の企業のモラルなどありません。このような金まみれの関西電力に原発を動かす資格などありません!
金品の流れは福井県にも広がり、顧問弁護士を委員長にする内部の「調査委員会」が結果を発表。県の幹部109人が金品を受領したことや、杉本知事、西川前知事は贈答品を含めて金品の授受はなく栗田元知事は中元や歳暮を受け取っていたと公表。
これでは身内が身内を調べたもので不十分と、私たちは第三者委員会を設置せよと迫りました。しかし福井県は内部調査の発表で打ち切りにしています。
「老朽原発動かすな!福井県実行委員会」が県内の各自治体議長あてに「関電の原発マネー還流問題の真相究明を求める」請願を行ない、高浜町、勝山市、越前市、鯖江市で採択され全県で問題となっています。
このような腐敗構造を生んだ根本には、安倍政権の原発推進政策があります。「国策」として「原発推進政策」を行なう安倍政権は、エネルギー基本計画で原発をベースロード電源と位置づけ、将来全電源の20~22%を原発が占めるように策定。その中心を担わせた関電の問題に対して、安倍総理は「関電は民間企業だから。第三者委員会の調査に委ねる」との態度に終始。国として真相究明に背を向けています。
大集会を成功させて、関電と国・規制委員会、立地自治体首長など「原発推進共同体」を包囲し、世論と運動を盛り上げ、追い詰めましょう!
■ 見過ごせない!老朽原発の杜撰な審査
草地妙子(老朽原発40年廃炉訴訟市民の会)
私たちは名古屋地裁で、関西電力の老朽原発3基に出された「運転期間延長認可」の取り消しを求めて裁判をしています。原子力規制委員会が杜撰な審査で認可していたことを明らかにし、当該原発を廃炉にすることをめざしています。
老朽原発が潜在的に危険なことはだれの目にも明らかです。それをあたかも「特別な審査」をしたかのように装い、お墨付きを与えているのが規制委員会です。老朽化最大の懸念事項である原子炉容器の劣化に関する審査においてさえ、試験の元データを見ることなく、関西電力の審査書の結果を鵜呑みにしていました。指摘されると、あろうことか「関西電力の品質保証体制を確認しており、信頼できるから問題ない」と開き直る始末です。関西電力の金銭不正受領事件で、企業としてのガバナンスやコンプライアンスの欠如が明らかにされた今、市民の納得はとうてい得られない本当に苦しい反論だと思います。
提訴からまもなく4年が経ちます。裁判が行なわれている間にも、関西電力は再稼働に向けた工事を進めてきました。進捗状況の詳細はわかりませんが、関西電力が再稼働するにあたっての障壁は少なくない状況に追い込まれてきていると思います。
あらゆる方面から様々な手段でさらに追い込んでいくために私たちの力を結集していきたいと思います。福井・関西の皆様をはじめとする全国的な運動に、名古屋からも参与できますことを大変意義あることと受け止めています。この輪をさらに大きく広げていくために共に頑張りたいと思います。
■ 危険な原発は廃炉に
東山幸弘(ふるさとを守る高浜・おおいの会)
1月6日に定期検査のため高浜3号機は停止しました。前回定検のときに見つかった蒸気発生器細管の傷を原因不明のまま運転していました。そして、昨年10月に定検に入った4号機でも3台ある蒸気発生器のすべてから計5つの損傷が見つかりました。これも傷付けた原因不明のまま、栓をすることで原子力規制委員会は「良し」と許可し、早々に1月30日に起動してしまいました。何よりも恐れたことは、再度3号機の蒸気発生器細管に傷が見つかると、もう4号機は運転できません。そのため起動を急いだのです。やはり、またもやというべきか、2月18日に2つの蒸気発生器で各1本、2カ所に損傷が見つかりました。安全など二の次で、一日でも多く動かすことしか頭にありません。許すことができません。
加圧水型原発の最大の弱点は「蒸気発生器」で、1器3千本以上ある細管が応力割れや支持金具部での磨耗損傷を起こしており、「栓をする」ことで切り抜けています。しかし、1本でも破断すれば、一斉に制御棒が挿入されて緊急停止するとともに、緊急冷却装置ECCSが働き、冷却水が補給されます。現に1991年2月9日、美浜2号機で細管破断(支持金具との接触摩耗が原因と発表あり)によってECCSが働くという日本で初めての経験をしています。核燃料棒が溶解するメルトダウン一歩手前の状況でした。
関電は老朽原発延命のため、取り替えられるものすべてを取り替えているから「安全」だと宣伝していますが、一番重要な「原子炉圧力容器」は取り替えられません。長年の運転による中性子照射のため脆性化しており、ECCSが作動すると、強固なはずの圧力容器が、あたかも熱せられたガラスコップに冷たい水を注げばパリッと割れることと同じ状況になります。
原子炉破壊の危険度ワーストテンを順に並べると、玄海1号(廃炉)、高浜1号(40年超)、大飯2号(廃炉)、美浜2号(廃炉)、美浜1号(廃炉)、川内1号、高浜4号、伊方1号(廃炉)、美浜3号(40年超)、高浜2号(40年超)となります。近々稼働予定の高浜1号は日本一、危険な原発です。何としても再稼働させない、廃炉にすることです。
■ 壮大なウソ
井戸謙一(福井原発訴訟<滋賀>弁護団)
福島地裁で行なわれている子供脱被ばく裁判、2020年2月14日には福島県立医大鈴木眞一教授の証人尋問が、3月4日には福島県健康管理アドバイザー山下俊一氏の証人尋問がそれぞれ行なわれました。
鈴木氏は、福島県民健康調査で発見された小児甲状腺がん患者の大部分の摘出手術を担当した医師ですが、すべては手術が必要な症例であったと証言し、過剰診断、過剰治療であるとの考え方を明確に否定しました。他方、福島県で小児甲状腺がんが多発しているとの見方を否定しましたが、「他の都道府県でも同じ割合で小児甲状腺がん患者が潜在しているとすれば、全国で1万人をこえる子どもたちが手術を待っていることになる、その子どもたちを救わなくてもいいのか」という質問に対しては、明確な回答はなされませんでした。
山下氏は、福島原発事故直後に行なわれた福島県内の講演会で、「100ミリシーベルト以下の被ばくでは健康被害がない」と言ったのは誤りで、正しくは「証明されていない」であること、「水道水からセシウムが出ない」と説明したのは誤りで、検出されること、「1ミリシーベルト被ばくをすると遺伝子が1か所傷つく」と説明したのは誤りで、「1ミリシーベルトの被ばくをすると遺伝子が37兆か所で傷つく」が正しいこと、すなわち37兆分の1の過小評価であったことを認めました。当時、未知の不安にさいなまれていた多くの人たちが、壮大なウソによって被ばく地に縛り付けられたことが明らかになった瞬間でした。
被ばく問題についてのウソ、それは今も大手を振ってまかり通っています。
■ 老朽原発を動かすな
小橋かおる(さよなら原発神戸アクション)
高浜原発1・2号機、美浜原発3号機は、それぞれ運転より45年、44年、43年を超える原発です。本来の原則では、運転から40年を超えた時点で、廃炉となっていなければならない老朽原発です。この原則を外して老朽化した原発を動かすことがいかに危険であるかは、東京電力福島第一原発1号機を見れば明らかでしょう。
福島第一原発1号機は、1971年3月26日より営業運転を始めました。2011年には運転より40年を迎えるため、本来は廃炉になる原子炉でした。しかし、2010年3月から定期点検・点検停止していた1号機は10月に再稼働。そして、経済産業省原子力安全保安院は2011年2月7日、さらに10年間運転を延長する保安規定の変更を東京電力に認可し、3月11日、東日本大震災発生。そしてあの3月12日の水素爆発が起きたのです。
2010年当時の私は、その数年前から六カ所村の再処理工場に関心を持ちだし、原発については少し知っている程度でしたが、福島第一原発1号機の40年超えを認める再稼働には、とても憤りを感じていました。そして、福島第一原発事故。あの再稼働さえなければ、40年超えさえなければ、1号機が事故を起こすこともなく、2号機、3号機という連鎖的な事故も起きなかったのではないかと、今でも悔やみます。
同じ後悔をするわけにはいきません。私が住む神戸からも90キロほどしか離れていない高浜原発、そして美浜原発。あの40年超えの老朽原発を動かしてはなりません。関西電力という企業の経営収支のために、なぜ私たちの故郷、暮らし、健康、人生、未来が危険にさらされなければならないのでしょう? いったん事故が起きれば、近畿だけでなく、周辺何百キロもの地域が放射能汚染されかねません。
東京電力福島第一原発事故という人類史上でも最悪の原発事故をくり返さないために、また自分の住む町を放射能汚染で失わないために、老朽原発を動かすな。この災害列島で、どの原発も動かすな。
原発のない、そして無用な被ばくのない日本を、皆で実現したいと強く思っています。
■ 関電第三者委員会の報告を受けて
末田一秀(はんげんぱつ新聞編集委員・関電の原発マネー不正還流を告発する会)
関電役員らが高浜町元助役森山氏らから金品を受領していた問題について調査していた第三者委員会が、3月14日に調査結果を公表した。関電の金品受領者は、当初の社内調査委員会が明らかにしていた20人から75人に変わり、総額も3億6千万円相当になった。森山氏の求めに応じて、関連会社に入札を経ずに工事発注をしていたことなど、様々な便宜行為や不正行為が認定されている。
関電が第三者委員会に提出した1994年の資料には、森山氏の10数件の関電への「貢献」が記されており、「公開ヒアリングを取り仕切って成功させた」「チェルノブイリ事故に際し、地元団体からの陳情書を町限りにとどめ公にしなかった」「原発内での業者の圧死事故に際し、警察・地元関係に対する無言の圧力により穏便に済ますことができた」などが挙げられている。関電が被害者でないことは明らかだ。
関電自体の企業統治が崩壊していたと断じざるをえず、関電に原発運転の資格はない。関係した役員や隠蔽に手を貸した監査役らの責任は極めて重く、関電は関係役員らの責任追及訴訟を提起すべきである。
関電は社外取締役を活用した会社形態「指名委員会等設置会社」への移行などの再発防止策を検討していると報じられているが、企業統治の強化は委員会など形を作ることだけでは達成できない。情報公開と説明責任の徹底を図り、市民の監視下に企業経営が置かれるべきである。
第三者委員会の報告書をもってしても、なお私たちの疑問には解消しない点がある。不当な金品により工作された全容は解明されたのか? 原発関連マネーが政治家へ流れていなかったのか? 寄付金名目で流されたお金は適正だったのか? などである。
これらの解明には、捜査権限を持つ検察が動く必要がある。12月13日に3000人を超える市民が行なった告発を、本稿執筆時点で大阪地検は受理すらしていない。直ちに受理して捜査を尽くし、実態を解明すべきである。
■ とことん腐敗している関電を許さない
滝沢あつこ(脱原発へ!関電株主行動の会)
昨年発覚した関電原発マネー不正還流は怒りが頂点に達するできごとでした。私たち株主は年1回の株主総会で、名前があがっている役員の顔を見、答弁を聞いています。寄付金や報酬額の質問には答えません。森山氏に国税庁が入った一昨年も、内部告発文書が取締役に届けられた昨年も、株主には何も公表されませんでした。今年厳しく追及する所存です。
いま関電の不正を糺すために株主だからできること、それは株主代表訴訟です。昨年11月27日、株主のメンバー5人で関電監査役に対して「取締役に対する責任追及訴訟提起請求書」を提出しました。これは 取締役が会社に損失を与えたので、監査役として取締役を提訴しなさいというものです。請求後60日以内に提訴しなければ、私たち株主が監査役に代わって株主代表訴訟を起こします。期限は今年1月末でしたが、監査役から代理人弁護士に「第三者委員会の報告を待ってから決定する」と返答がありました。
3月14日、関電原発マネー不正還流の調査にあたった第三者委員会の報告がありました。精査はこれから行なわれると思いますが、放漫な金の使い方が露わになりました。報告書によると関電は、福島事故後の赤字に際して行なわれた役員報酬カットの分を業績回復時には補填すると決定していました。また高額の金品を受け取っていた豊松、森中、鈴木、大塚の各氏の追加納税分を会社が肩代わりすると決定していました。実際、豊松氏に昨年6月から報酬補填分90万円、追加納税分30万円、報酬と合わせて毎月490万円が支払われています。責任を問われ退任した元副社長豊松氏はエグゼクティブフェローという肩書きで報酬を受けていたのです。
とことん腐敗しているとしか言いようがありません。取締役は会社の社会的信頼を失墜させました。会社が損なった利益を取締役に請求し、会社に返却させることができるのは株主代表訴訟です。これから提訴の準備をしていきます。
■ 関電は再エネ先進企業として再生を
笠原一浩(大飯原発差止訴訟・福井弁護団)
●歴史的な福井地裁判決
福井地方裁判所は、2014年5月21日、大飯原発3・4号機の運転差し止めを認める歴史的判決を言い渡しました。判決が言い渡された瞬間、弁護団や原告団事務局のメンバーが、それぞれ「差し止め認める」「司法は生きていた」という垂れ幕を掲げましたが、とくに後者について、深い共感を寄せた市民は多かったことでしょう。
この判決は、仮処分決定を別とすると、福島第一原発事故後初めての、原発裁判における司法判断です。福島第一原発事故の被害をふまえ、行政庁の判断を追認してきた裁判所の姿勢に変化が生じることが、多くの市民から期待されていましたが、この判決は、その期待に十二分に応えるものとなりました。
残念ながらこの判決は、4年後、名古屋高等裁判所金沢支部により覆されてしまいました。しかし、高裁判決も、福井地裁判決の事実認定そのものは否定していません。むしろ、地震に関する科学の限界について、福井地裁判決の指摘や島崎先生の知見を肯定しています。高裁判決は、私たちの訴えについて「立法論であって司法の役割ではない」と逃亡することによって、福井地裁判決の結論を覆してしまいましたが、両判決のいずれが正しかったのかは、翌年、歴史が証明することになりました。
●関電スキャンダルが意味すること
現在、関電スキャンダルが大問題となっていますが、この問題も結局のところ、原発という発電手段は、正常な方法では実現できないということを意味しています。
私たちが7年前に大飯原発差止訴訟を始めたのも、決して関西電力を倒すことをめざしたものではなく、より地域(関西一円)に愛される企業になっていただくことをめざしたものです。
私はこの裁判と無関係に一般業務で関西電力の関係者と接することも少なくありません。個々の従業員を見る限りでは、優秀で誠実な人が多いといえます。むしろ、今までのエネルギー政策では、この春に学校を出て関西電力に就職した人が、定年まで勤められないおそれが高いといえます。
再エネに舵を切ってこそ、関西電力にとっても今後50年、100年にわたって存続できるようになるといえますし、国のエネルギー政策に最も必要なことも、電力会社のそのような転換を応援することです。
私は刑事告発の弁護団にも加わりましたが、この事件を通じて、「再エネ先進企業としての新しい関西電力」の展望が開かれることを強く期待します。