南オーストラリア州は、世界の核のゴミ捨て場にはなりません

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2016年10月15日、「国際的な放射性廃棄物処分場」建設計画に反対する集会 。3000名が参加、南オーストラリア州議会前

激しい抗議行動が続いていた南オーストラリアでの国際的な放射性廃棄物処分場建設計画。州首相は20161114日に「州政府がこの計画を推進する条件は最初から、超党派の合意があることと、住民投票で市民が賛成することだった。野党が反対するならこの計画は死んだも同然だ」と表明。顧客として日本、韓国、台湾などの名前があげられていたこの処分場計画はついに反対派が勝利しました!

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南オーストラリア州の市民陪審が国際的な放射性廃棄物処分場を拒否

Adelaide Now  2016年11月6日

南オーストラリア州で116日に開催された市民陪審は、同州内に放射性廃棄物処分場を建設する計画を拒否する決定を下した。

南オーストラリア州核燃料サイクル王立委員会の報告書に盛り込まれた州政府の提言には、海外から138000トンの高レベル放射性廃棄物と、39万立方メートルの中レベル放射性廃棄物を輸入するということが含まれていた。この提案に市民の意見を取り入れるとして、ウェザリル州首相は市民陪審を招集した。

陪審者の大部分は「いかなる条件下であろうとも放射性廃棄物の処分場計画反対」に投票した。

これは、多様な立場のグループから無作為に選ばれた陪審者たちが、王立委員会の報告書を吟味して下した重要な判断です。陪審者たちが、アボリジニーの伝統的土地所有者の声を十分に聞くべきだということを認識してくれていてうれしいです」と、カリーナ・レスター(地元先住民族のヤンクンチャチャラの伝統的土地所有を管轄する組織の会長)は話す。

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レスター家4世代の女性たち。カリーナ・レスターさんの母ヤミ・レスターさんは1950年代の核実験で被害を受けて視力を失った。

市民陪審の議論では、州政府への不信感、そしてアボリジニーからの同意が得られていないことが、主要な二つの問題点とされた。

陪審者の中には「王立委員会の考えに同意させるための一つの手段としてこの市民陪審が開かれたのではないか」と疑念を呈する者もいた。州政府が指名した原子力推進派が王立委員会の座長となっていることからも、利害の衝突は明白だった。

ウェザリル州首相は、市民陪審による決定を尊重するかどうか本年末までに決断するとみられる。

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南オーストラリア州の人々は国際的な放射性廃棄物処分場を拒否する!

ジム・グリーン The Ecologist  2016年11月9日

公式に招集された350人の市民による陪審は、南オーストラリア州が50万トン以上の放射性廃棄物を長期貯蔵のために輸入する計画に対して、きっぱりと拒否の判断を下した。この結果は、州政府にとって癒しがたい打撃となった。

11月6日の日曜日に開催された南オーストラリア州政府主催の市民陪審で、350人の陪審者の3分の2が「いかなる条件下でも」放射性廃棄物の輸入を拒否するという決断を下した。

王立委員会はその成り立ちからして強力な原発推進のバイアスがかけられていた。しかしそれでも市民陪審は、提案されたほぼすべての項目(ウランの転換と濃縮、核燃料製造、原発建設、使用済み核燃料の再処理など)を否決した。

■推進派はあきらめない

推進派は、放射性廃棄物の輸入計画が進んで、南オーストラリア州で将来的に高速炉を開発する基礎が築かれることを期待していた。しかしいま廃棄物輸入計画は頓挫しかけており、彼らは悲嘆にくれている。

市民陪審の投票結果は、南オーストラリア州政府の処分場計画への強い圧力となった。地球の友オーストラリアで気候とエネルギー問題を担当するロマン・オルスザンスキーは次のように語る。

「10月15日には州議会の前で3000人が放射性廃棄物処分場反対の声をあげた。もし南オーストラリア州政府がこれ以上計画を推進しようとするなら、さらに大きな抗議行動が起きるだろう」

南オーストラリア州の労働組合議長のジョー・スザカックスは「ジェイ・ウェザリル州首相は今こそ南オーストラリア州のために立ち上がるべきだ。多国籍原子力企業に騙されて人身御供にされるべきではない。南オーストラリア州の人々は、世界の放射性廃棄物を貯蔵することはこの州にとってよくないことだと理解している。市民陪審での激しい反対意見は、この問題が州首相にどれだけ政治的打撃を与えるかをよく示している。どうしようもない取引は、誰が見てもわかるものだ。この問題がまさにそうであるように」

ウェザリル首相がもし、これほど明白な市民陪審の結論を無視するようなことをすれば、「州政府に対する信頼感に関する大きな問題」は、さらに拡大していくだろう。

南オーストラリア州で唯一大規模に流通している新聞であるThe Advertiser は、これまで全面的に廃棄物処分場計画を擁護する論陣を張ってきたが、市民陪審による処分場拒否の結論を短く報じるにとどめた。

同紙のダニエル・ウィルス記者は「処分場という大胆なアイデアは、巨大なきのこ雲のように膨れ上がったようだ。州首相が王立委員会の見解を検討するための市民陪審を招集したとき、彼は『十分に情報を提供して幅広い立場の人たちをメンバーにすれば賢明な判断が下されるだろう』と自信を持っていた。しかし先週の日曜日、計画に対して目を疑うような圧倒的な拒否の意が示された。この状況を乗り切ることは不可能なのではないか」と書いた。

■アボリジニーの伝統的土地所有者

地球の友オーストラリアは、「州首相はアボリジニーの伝統的土地所有者の意見を尊重すると言った。アボリジニーの人々の大部分がこの計画に反対していることはすでに明らかだ。市民陪審が伝統的土地所有者を尊重する議論をしたことは称賛されるべきことだ。州首相も計画を撤回することで同様にふるまわなければならない」とする。

市民陪審の報告書は述べる。「アボリジニーの人々の同意が欠落している。州政府はアボリジニーの人々がNOの声をあげ、自分たちの意見を無視するのをやめてほしいと訴えていることを受け止めなければならない。南オーストラリア州でも、オーストラリア全域でも、アボリジニーの人々は、尊重され平等に扱われるのではなく、あらゆる政治的なレベルにおいて放置され無視され続けている。多くのアボリジニーのコミュニティがこの計画に対して反対の声をあげている。その声を無視することは、道徳的に間違っている。ジェイ・ウェザリル首相は『伝統的土地所有者の同意がないなら、この計画は決して行なわれない』と言っていた。自分の発言に責任をもつべきだ」

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■明らかになったバイアス

市民陪審は、州政府への不信感が喚起されても無理もないような様々な証拠を白日の下にさらした。州政府は「バランスがとれて成熟した話し合いを望む」と口にしてきたが、州政府は王立委員会のトップに原子力推進派を指名した。そして王立委員会の委員長は、専門家による諮問委員会の4人の委員のうち3人を推進派でかためた。反対派は1人だけだった。

王立委員会は、原子力産業と深いつながりを持つコンサルタント会社、ヤコブズMCM社によって書かれたたった一つの経済性報告書に依拠していた。主な著者はチャールズ・マッコンビーとニール・チャップマン、どちらもARIUS社の人間だった。

ARIUS社は放射性廃棄物処分場(同社は多国籍施設と呼ぶ)や原発を推進する会社である。オーストラリアのテレビ局ABCは、ARIUS社のモットーは「世界は原子力を必要としている、原子力は多国籍施設を必要としている」だと報じている。

ARIUS社は、過去に秘密裏にオーストラリアでの国際的な高レベル放射性廃棄物処分場の建設計画を立てたことで悪名高いあのパンゲア・リソーシズ社の流れを汲んでいる。パンゲア社の存在は、1998年に同社のビデオが地球の友オーストラリアに対してリークされるまで知られていなかった。パンゲア社はオーストラリアに事務所を開設したが、2002年に撤退した。

ヤコブズMCM社の報告書の主著者の一人であるチャールズ・マッコンビーは、パンゲア・リソーシズ社にも深く関与していた人物だ。同様に、パンゲア社の社長だったジム・ヴォスも現在の南オーストラリア州での計画に深く関わっている。1990年代の末頃、ジム・ヴォスは中央政府の大臣らと面会したことを否定したが、実際には少なくとも一人の大臣と面会していた。ウィルソン・“アイアンバー”・タッキーだ。ウィルソン氏はかつて、アボリジニーの男性を鉄の棒(アイアンバー)で攻撃した前科のある人物だ。

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■「独立したコンサルタント」として推進派を雇用

物議をかもしているヤコブズMCM社による経済性報告書は「海外から大量の放射性廃棄物を輸入することに合意すれば、南オーストラリア州にはうなるほど金が入ってくる」と述べている。その不正直なたくらみは、ABCのジャーナリスト、スティーブン・ロングによって11月8日に化けの皮を剥がされた。

「王立委員会が唯一の根拠としている経済性報告書の共同著者が、国際的な放射性廃棄物処分場建設の会社の社長と副社長なのです。彼らは、50年以上にわたってありとあらゆる核関連事業に携わってきた世界的なエンジニアリングとコンサルティングの会社であるヤコブズMCM社と結託して報告書を準備したのです。

先週私が王立委員会の委員にインタビューしたとき、委員は『あの報告書は、専門家チームが検討して、放射性廃棄物の貯蔵に乗り出した場合のコストやリスクや利益に関して適切な見積もりがなされている』と言いました。しかし、その専門家チームというのが、そもそも最初にそのコンサルタントを推薦した人たちなのです」

■根拠なき仮定に基づいた経済的な見通し

市民陪審は、ヤコブズMCM社によってひねり出されて王立委員会と南オーストラリア州政府によって宣伝された経済に関するプロパガンダに感化されることはなかった。

市民陪審の報告書は「経済に関して、十分な情報に基づいた判断を下すことは不可能だ。王立委員会の報告書に書かれた論点はどれも根拠のない仮定に基づいたもので、経済的な見通しに関する予測も、きわめて不正確、楽観的、かつ非現実的なものになってしまっているからだ」と指摘している。

南オーストラリア州の経済学者リチャード・ブレンディは「市民陪審が放射性廃棄物処分場に反対すると決めた判断は素晴らしい。彼らは勇気と良識を見せてくれた。処分場がもたらすと言われている大金は、ほとんど何の理由もない仮定に基づいたものだということは、大多数の人がすぐに見抜くことができた」と語る。

「陪審者たちは、南オーストラリア州の経済がよくなっていくために進むべき真の道は、私たちの技術、技術革新の能力、懸命に働く力などに基づくものだと考えた。決して、推測に基づいた異様なギャンブルなどによるものではない、と。私は南オーストラリア州の市民として、陪審に加わった同胞たちを誇りに思っている。もちろん、このたびの陪審で処分場に賛成票を投じた少数派の人たちを含めてだ」

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地球の友オーストラリア;メディアリリース

ジェイ・ウェザリル州首相は、今こそ廃棄物処分場計画の断念を

2016年11月13日

南オーストラリア州で国際的な放射性廃棄物処分場を建設する計画について、地球の友オーストラリアは、本日発表された地域調査報告書の内容から、人々がこの計画に対して圧倒的に反対の意思を持っていることを指摘し、ジェイ・ウェザリル州首相に対して処分場計画を白紙撤回するよう求める。

地域調査報告書で明らかになった主要な論点は以下である。地域調査報告書は、この一週間の主要なできごとについて取り扱っている。

  • 市民陪審者の3分の2が「いかなる条件下でも」この計画が継続されるべきではないと結論付けた。
  • 南オーストラリア州のリベラルのリーダーであるスティーブン・マーシャルが、この計画への反対の意思を明確に表明し、「もしも州首相がこの計画を撤回しないなら、2018年の州議会選挙でこの計画が重要な争点となる」と指摘した。
  • 南オーストラリア州商工会議所のナイジェル・マクブライド所長が「この計画はもう死んでいる」と発言した。
  • 南オーストラリア州全域のアボリジニーのコミュニティが、この計画に対してくり返し強い反対の意思を表明しており、アボリジニーの人々の見解ははっきりと市民陪審の報告書や本日公開の地域調査報告書にも反映されている。

地球の友オーストラリアの核問題担当ジム・グリーンは語る。「この地域調査報告書は、市民陪審によって明らかになった深い疑念と反対の意思をさらに補強するものだ。放射性廃棄物処分場建設計画について議論を継続していくことに反対する人の数は、議論の継続を支持する人の2倍以上に上った。アボリジニーの人々の反対意見は圧倒的多数になる。放射性廃棄物が安全に貯蔵されると考えている人は20%にとどまる。大多数の人々は、南オーストラリア州政府が原子力産業の活動を十分に規制する能力を持ち合わせていないと考えている。66%の人々が、放射性廃棄物処分場建設は南オーストラリア州に経済的な恩恵をもたらさないと考えている」

「南オーストラリア州の市民はすでに声をあげた。アボリジニーの伝統的土地所有者たちも声をあげた。野党リーダーのスティーブン・マーシャルも声をあげた。市民陪審も声をあげた。ジェイ・ウェザリル州首相はその声を聞かなければならない。今こそ、廃棄物処分場計画を廃棄すべきときだ」

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台湾電力が、南オーストラリア州での放射性廃棄物処分場建設への支援を否定

The Advertiser  2016年12月14日

南オーストラリア州貿易投資大臣のマーティン・ハミルトン・スミスによる「台湾電力が南オーストラリア州での放射性廃棄物処分場建設を支援することを検討している」との発言に対して、台湾電力は「これは虚偽の情報だ」と書面ではっきりと否定した。

南オーストラリア州の市民陪審が11月6日に、放射性廃棄物処分場計画を大差で却下してから数日後、州政府への信頼が大きく揺らぐなか、スミス大臣は「私が面会した台湾の政府関係者は、処分場への投資に関心を持っているとの明確なメッセージを表明した」と主張した。そして「処分場への需要は明らかに存在する。近隣諸国は、何億ドル、あるいは何十億ドルを建設のインフラに投資し、その後は放射性廃棄物をそこに貯蔵することに投資するだろう」と言った。

しかし、国営の台湾電力の広報担当者および台湾原子力委員会の委員が、スミス大臣の主張を否定した。「11月10日にスミス大臣と面会した事実はあるが、3日後に彼がアデレードで発言した内容は虚偽だ」とした。

中国語で書かれた書簡の英訳は台湾のNGOによって行なわれ、地球の友オーストラリアによって本紙The Advertiserに提供された。それによると、台湾電力は新しく建設される放射性廃棄物処分場に投資する意図はないという。

「台湾電力にとって、海外で放射性廃棄物を処分することは選択肢の一つだ。しかし海外での処分は国際関係上非常にセンシティブな問題であり、慎重に検討されなければならない。台湾電力が顧客になることを検討するとしたら、それは自国内に処分場を建設した後になるだろう」

台湾の原子力委員会も、スミス大臣の発言は真実ではないとしている。「南オーストラリア州の市民陪審がこの計画を拒否したことは認識している。市民の理解と支持がないなら、放射性廃棄物処分場は建設できない」

南オーストラリア州での廃棄物処分場計画に対して野党や環境団体から提示されている批判の一つとして、将来の歳入の確実性がないのに納税者の血税をつぎ込んでいくことへのリスクがあげられている。

一方、核燃料サイクル王立委員会のケヴィン・スケアス・コミッショナーは「インフラ整備を可能にするために、諸外国が事前に資金を提供してくれるかもしれない」と書いている。スミス大臣は「地球の友は、放射性廃棄物貯蔵の市場を冷え込ませるような情報を拡散している」と非難している。

野党のロブ・ルーカス議員は「もし翻訳が正確だったのだとすれば、スミス大臣は人々を惑わせるような誤った情報を流したとして非難されても仕方がない」とした。

地球の友オーストラリアのジム・グリーン氏は「ウェザリル州首相は今こそ良識をもって、プライドにこだわるのをやめ、廃棄物処分場計画を撤回するべきだ」としている。

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2016年10月15日、「国際的な放射性廃棄物処分場」建設計画に反対する集会。 3000名が参加、南オーストラリア州議会前

(ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.144より)

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信144号(2月20日発行、B5-36p)もくじ

●「日印原子力協定の国会承認に反対します」(日印原子力協定国会承認反対キャンペーン)

●南オーストラリア州は、世界の核のゴミ捨て場にはなりません(ジム・グリーンほか)

●オーストラリア、核燃サイクルの上流と下流 ― アボリジニーの大地と日本の原発のかかわり― (細川弘明)

●4月に迫る国民投票とトルコの開発プロジェクト(森山拓也)

●台湾、2025年までに原発ゼロ社会?(陳威志)

●韓国:全国脱核活動家大会 開催、「2017年、脱核元年」を決意(小原つなき)

●もんじゅ廃炉を活かし、核燃料サイクル阻止、新たな闘いを!(池島芙紀子)

●嘘とまやかしの核燃料サイクルにとどめを!(佐原若子)

●高浜原発うごかすな!1000人が関電本店を包囲(木原壯林)

●伊方原発広島本訴訟3回公判・意見陳述(小倉正)

●ノーニュークス・アジアフォーラム通信 No.109~143 主要掲載記事一覧

●ノーニュークス・アジアフォーラム(1993~2016)全記録DVD

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sdaisukeアットマークrice.ocn.ne.jp

★NNAF通信・主要掲載記事(No.1~143) http://www.nonukesasiaforum.org/jp/keisaikiji.htm

★本『原発をとめるアジアの人々』推薦文:広瀬隆・斎藤貴男・小出裕章・海渡雄一・伴英幸・河合弘之・鎌仲ひとみ・ミサオ・レッドウルフ・鎌田慧・満田夏花http://www.nonukesasiaforum.org/jp/136f.htm

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