ロスアトムとの協力をやめよう ーロシアへの制裁のなかでの原子力ー

エコ・ディフェンス  5月27日

 エコ・ディフェンスはロシアの環境保護団体。2014年にロシア政府によって「外国エージェント(代理人)」のレッテルをはられ、以降、政府の攻撃の標的となり、多額の罰金を科されるなど圧迫を受けてきました。今回、勇気ある文章を発表しました。抜粋を掲載します(原文では、スウェーデン、チェコ、ドイツ、フィンランド、フランス、ハンガリー、スロバキア、ブルガリア、エジプトなどの状況の記述もあります)。

ロスアトムはロシア国営原子力企業だが、2月24日のロシアのウクライナ侵攻後、直接的には制裁の対象になっていない。約350社の複合企業であるロスアトムは、原発等を輸出して毎年数十億ドルを稼いでいる。諸国は、ロシアのガス、石油、石炭の輸入に対して課している制裁措置と同様に、ロスアトムとの契約を解消すべきである。

ロスアトムは、海外で受注した35の原発を建設(または計画)しているが、そのほとんどが、ロシア国家からの極めて手厚い資金援助がなければ、建設が不可能な国々である。ロスアトムの役割は、政治的な道具のようなものである。

ベンダー(製造元)固有の技術は、ベンダー固有の燃料とメンテナンスへの依存を生み出し、ガス配送と同じように、ロシアはこの依存関係を政治的影響力の武器として行使している。国庫を自由に使い、ロシア大統領自身が外国の指導者との会談で交渉することで、ロスアトムは、エジプトやバングラデシュのような貧しい顧客のために安いローンを提供する。これが、西側諸国の主要なライバルに対するロスアトムの競争力である。

欧州では今のところ、ハンガリー、スロバキア、チェコ、フィンランド、ウクライナで稼働しているVVER(ロシア型加圧水型炉)に、ロスアトム傘下の核燃料製造会社TVELが核燃料を供給している。

トルコでは、ロスアトムがアックユにVVER1200(加圧水型、120万kW)を、4基同時に建設中である。ロスアトムが、建設資金を提供し、完成したプラントを所有し、生産されたエネルギーを固定価格で販売する、いわゆるBOO(Build Operate and Own)方式で実施されている。コスト試算は200億ドルから最大250億ドルである。

1号機の運転開始は2023年に予定されている。しかし今、アックユ原発建設の資金調達が問題視されている。

インドのクダンクラム原発では、すでに1・2号機が稼働中で、3~6号機、4基のVVER1000の建設が進行中である。2022年4月現在、3号機では原子炉圧力容器が設置され、昨年12月には6号機の原子炉建屋の最初のコンクリート打設が行われた。

他の国のプロジェクトと同様、建設はロシアの融資で支援されている。2019年時点で、3号機と4号機の総工費64億ドルの見積もりのうち34億ドル、および、5号機と6号機の50億ドル超の費用の大部分をカバーする42億ドルが信用供与されることになっている。

ロシアのウクライナ侵攻が始まってから3ヶ月の間に、ロスアトムとの提携がいくつか解消された。

ロスアトムはフィンランドのハンヒキビ原発の建設契約を失い、スウェーデンの電力会社バッテンフォールはロシアからの核燃料の追加納入を拒否、チェコも同様で、多国籍企業ウレンコとフランスのオラノ(旧称アレヴァ)も協力を解消した。

欧州委員会の後押しを受けて、多くの欧州諸国が、ロスアトム傘下の核燃料製造会社TVELと決別し、ウェスチングハウス社の核燃料に切り替える道を進んでおり、これが実現すれば、TVELの欧州核燃料市場での存在感はほぼ消滅することになる。

ロスアトムの主要プロジェクト、つまり海外で原発建設を請け負っているプロジェクトは、長期的には苦境に立たされる可能性が高い。その理由の一つは、ロシアの銀行に対する制裁措置により、ロスアトムが建設資金を調達したり、ロシアが原子炉購入の顧客に約束した融資を継続する能力が著しく損なわれる可能性があることである。もうひとつは、同じ制裁措置によって、建設に参加する協力事業者への支払い能力が損なわれる可能性があることだ。トルコ、インド、エジプトはいずれ、こうした混乱が、自国内で建設中のロシアの原発の進捗に影響を与えることになるかもしれない。

原発の建設や核燃料の取引を通じてロスアトムに関与している企業(ゼネラルエレクトリック、EDF、シーメンス、韓国水力原子力など)は、すでにロスアトムとの関係を絶った企業に加わらなければならない。

戦争は毎日多くの人命を奪っている。

世界はこれ以上、原子力を必要としていないのだ。

着色:ロスアトムが何らかのプロジェクトを実施している国。19年末までで74か国と政府間協定を締結。うち20か国は、原子力施設建設のための協定。

original : https://ecdru.files.wordpress.com/2022/05/shunningrosatom-v1.pdf

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信176号(6月20日発行、B5-24p)もくじ

・韓国:コリ2号機閉鎖! 老朽原発寿命延長反対! 6.18全国脱核行動 宣言文
https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2621

・脱核新聞・創刊100号へのメッセージ(佐藤大介)
https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2621

・フィリピン:私たちは、二度、バカにされるのか?(Nukes Coal-Free Bataan)

・バターン原発は電力危機を解決しない(AGHAM)

・タイ:地元団体はオンカラック研究炉建設に反対(バンコクポスト)

・ロスアトムとの協力をやめよう -ロシアへの制裁のなかでの原子力-(エコ・ディフェンス)

・理解と合意なき汚染水海洋放出設備工事の中止を!(大河原さき)

・「311子ども甲状腺がん裁判」第1回口頭弁論・原告意見陳述(原告2さん)

・311子ども甲状腺がん訴訟第1回期日(中野宏典)

・泊原発に差し止め判決、すみやかに廃炉を(川原茂雄)

・川内原発20年延長阻止へ、意見広告運動に協力を(向原祥隆)

・老朽美浜3号機の再稼働を許すな(宮下正一)

・5.29「原発のない明日を -老朽原発このまま廃炉!大集会 in おおさか-」に 2100 人、美浜3号機再稼働阻止に向けてさらに前進を(木原壯林) 

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