YouTube『アジアの原発と反原発運動』 佐藤大介

さよなら原発神戸アクションが、録画を公開
http://sayogenkobe.blog.fc2.com/blog-entry-226.html
または https://www.youtube.com/watch?v=DJ4W3tXiaro&t=5610s

タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インド、トルコ、
韓国、台湾で、原発をとめる人びと、200枚の写真。約90分
(最初の50秒は、とばしてください)

 
■ アジアの原発どうなっているの?@ZOOM茶話会 2021年9月4日
『アジアの原発と反原発運動』
お話:佐藤大介(ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン事務局)
主催:さよなら原発神戸アクション

http://sayogenkobe.blog.fc2.com/blog-entry-223.html

チェルノブイリ事故のあと、ドイツをはじめとするヨーロッパの人びとが広範な反原発運動を展開したように、福島原発事故のあと、アジアの人びとも大きく立ち上がり、デモなどを繰り返しました。結果、台湾では、日立・東芝が原子炉を輸出した第四原発の建設を凍結し、2025年原発ゼロ、アジア初の脱原発に向かっています。韓国政府も脱原発宣言し、新規原発建設と老朽原発の寿命延長をしないとしました。ベトナム・トルコへの、日本からの原発輸出計画は中止となり、フィリピン、タイ、インドネシアの原発計画はとん挫しています。インドや中国では依然として原発が建設されていますが、エネルギー転換は時代の趨勢です。日本ではあまり知られていないアジアの反原発運動を伝えます。

★ノーニュークス・アジアフォーラムとは:
 韓国の反原発活動家から「原発推進派が活発に国際連携しているので、反対派も国際連帯しなければなければならない」と提案され、1993年に第1回ノーニュークス・アジアフォーラムを日本で開催、全国28か所で集会を行ないました。以後、フォーラムは持ち回りで、韓国、台湾、インドネシア、フィリピン、タイ、インドで、19回開催されています。フォーラムは、常に原発現地を重要視することとしています。

 また、インドネシア・台湾・ベトナム・インド・トルコへの原発輸出に反対するキャンペーンも行ってきました。

震災翌年の1996年には、神戸での「環太平洋原子力会議」(原発推進の国際会議)に対抗し、「さよなら原発・神戸ネットワーク」のみなさんとともに「環太平洋反原子力会議」を開催しました。
★ 『市民による環太平洋[反]原子力会議』報告/記録
http://japan.nonukesasiaforum.org/japanese/pbnc/index.htm

「第四原発とお別れしよう!」台湾第四原発稼働の是非を問う12.18公民投票(国民投票)

台湾廃核行動平台(プラットフォーム

第4原発の2号機は建設が終了しておらず、1号機は原子力委員会の安全認証テスト(使用前検査)を通過しておらず、封印をして7年がたった。当時、なんとか1号機の安全認証テストが行えるよう、2号機から1700点もの部品を1号機に流用した。現在一部の部品はすでに生産中止。オリジナルのプロジェクトチームはすでに解散。

第4原発の建設過程で幾度となく工事の不正行為、スキャンダルおよび重大設計ミスが起き、安全が危ぶまれる。

台湾電力によれば第4原発の建設継続は以下の困難に直面し、少なくともあと10年が必要:
● 第4原発の安全メーターコントロールシステムの設計は、世界でも唯一であり、20年が過ぎ、取り換える必要がある。しかしそのサプライヤーはすでに生産中止、備品の入手困難という問題がある。第4原発はABWR(改良型沸騰水型炉)。
● 建設再開前にGEと煩雑な契約変更の交渉プロセスが必要、工期や経費などの項目について内容は煩雑で、時期については予測が難しい。
● 予算編成や国会での承認が必要。
● 原子力委員会に封印解除の申請を提出し、同意が必要。
● 継続する工事の施工、福島原子力災害のあと安全強化改善工程、燃料装填後のウォーミングアップテストなどのプロセスを完了しなければならず、前述の各項工程実務の予測では6~7年の時間が必要。
● 時期の予測ができない2項目;設計元のGEとの交渉および安全デジタルメーターコントロール設備の取り換えにかかる時間。

最新の地質調査報告によれば、第4原発敷地真下に長さ2kmのS断層が走っており、近隣する海域にも連続すると40km以上の活断層があり、さらに過去に記されていなかった断層帯も見つかっている。

20年前の第4原発建設時の耐震設計(400ガル)では、もはや安全基準を満たさない。


福島原子力災害後、国際的にも原発の耐震基準が引き上げられ、時代遅れの第4原発の設計ではもはや安全に運転することを保証できない。

第4原発は施工始まって以来スキャンダル続出、手抜き工事、違法に設計変更、施工不良、設備浸水、火事など、規定違反事件が計512件。合計で2290万元の罰金が科せられ、さらに監察院による糾弾6回、弾劾2回。第4原発の工程品質が危ぶまれる。

断層と工程品質の2点から、第4原発は、先天的に不良(欠陥)、後天的に失調の、システム的、根本的問題があり。これ以上時間と金銭をかけても安全に運転する保証が得られない。

第4原発を使わなくても、空気汚染を減らすことができる。原発が占める割合が減り続けているここ数年、空気汚染物質の排出量も同時に減り続けている。これは空気品質を改善するのに原発に頼らなくてもよい証拠である。

また、政府および学者の統計によれば、電力部門が国内のpm2.5排出に占める割合は4.5%から16%の間で、さらに高い割合を占める交通汚染源や産業排出も同じように重視されるべきである。それでこそ、台湾の空気汚染を本当に改善することができよう。

第4原発は1980年4月に行政院(政府)が敷地を確定してから、与野党の論争を経て、1992年6月に立法院(国会)が予算支出を承認、総額は1697億元(6669億円)。

2004年から原子炉容量増加、建設停止・継続による工期の延長、経済的変数の変動、契約変更および福島事故後の強化、5度の予算追加により総額が2838億元(1兆1153億円)となった。

台湾電力の最新の試算によると、第4原発の建設継続には、元の投資以外に、少なくともさらに800億元(3144億円)の予算追加が必要である。これは第4原発が完成がままならない底なし沼であることを示している。

国際的な電力平均コストは、この10年間で、太陽光発電コストは89%減少、風力発電コストは70%減少し、原発を新設するコストは26%増加した。原発は価格競争力を持たない。

核廃棄物の処置決定時期の延期により、将来、原発コストの継続的増加は必然である。台湾電力の予測では、廃炉および核廃棄物の最終処理の経費が、3353億元から6200億元に増加するが、原発の後期運営総費用は4729億元しかなく、巨額な不足を抱え、さらに原発運転の安全基準は高まっていき、将来原発はますます高くなる。

台湾の低レベル核廃棄物は少なくとも300年の保管が必要であり、原発と蘭嶼島の貯蔵場に一時保管している。そして、高レベル核廃棄物は少なくとも10万年の保管が必要であり、現在第1、第2、第3原発ともに高レベル核廃棄物(使用済み核燃料)を満タンの冷却プールの中で一時保管している。

核廃棄物は高熱、そして高い強度の放射線を1万年以上持続的に放出し、他のどの発電方式の廃棄物よりも処理が難しく、ゆえに世界各国いまだに安全に保管できる方法を見いだせていない。

台湾は国土が狭く、人口が密集し、地震帯の上に位置し、核廃棄物の行き先について社会的コンセンサスが形成していない。2019年の世論調査では、7割の民意が核廃棄物を自分の住んでいる自治体に保管することに反対している。

原発を使い続ける限り、処理できない難題を作り出し続け、無責任に世紀の劇毒を将来の子孫へなすりつけることに等しい。

みなさんのすべてのお友達にこのスライドをシェアしてほしい、より多くの人が第4原発の真実を知る手助けとなってほしい。第4原発によって台湾のエネルギー転換の貴重な時間を無駄にしないでほしい。

第4原発とお別れしよう。
― 私たちは第4原発はいらない ―

第4原発公民投票17案は「不同意」

(翻訳/張建元)

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信171号
(8月20日発行、B5-24p)もくじ

・第四原発とお別れしよう! ― 12.18公民投票 (全国廃核行動平台)       

・脱原発アジェンダを確定し、大統領選挙に対応しよう (ヨン・ソンロク)     

・中国・台山原発の「放射能の脅威」が、なぜ、インドで懸念されるのか
 (ソナリ・フリア) 
https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2253 

・ライナス社レアアース製錬工場の現状報告 (和田喜彦)
https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2240            

・「第二の原発」リニア中央新幹線にも関心を (石橋克彦)            

・広島原爆「黒い雨」訴訟の成果 (湯浅正恵)                 

・美浜原発3号機の運転禁止仮処分について (中野宏典)            

・伊方原発廃炉のために (名出真一)                     

・柏崎刈羽原発反対50年 (後編) (矢部忠夫)

ノーニュークス・アジアフォーラム通信は、年6回発行。購読料:年2000円。
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中国・台山原発の「放射能の脅威」が、なぜインドで懸念されるのか

ソナリ・フリア (The Leaflet 6月28日)
 
インドのテレビの議論では中国の台山原発が非難されているが、インド自身の大規模な原子力エネルギー拡張計画や、マハラシュトラ州ラトナギリ地区で世界最大級となるジャイタプール原発建設計画を堂々と推進していることへの言及は都合よく避けられている。

ジャイタプールの「グラム・サバ(住民総会)」は、生活問題、放射能による漁業、健康、生物多様性への悪影響、核廃棄物、設計と安全性に欠陥のあるEPR(欧州加圧水型炉)技術そのものを理由に、原発建設計画に反対する全会一致の決議を日常的に行ってきた。

歴代の政府は、環境、健康、人権への配慮や民主主義のプロセスを踏みにじってきたと、ソナリ・フリアは書いている。

インドのテレビでは、中国南部沿岸の広東省の台山原発で発生した「放射能漏れ事故」をめぐって激しい議論が展開された。

中国を「ならず者国家」と断定するかのような議論から、中国の驚異的な数の原発建設を許した国際社会の無関心さを問うような議論へと発展した。NATOのような国際機関が、暴走する中国を抑制し、際限のない原発建設の野望を阻止できるのではないかという「専門家」の意見も出た。

このようにインドのメディアは、台山原発のEPR(欧州加圧水型炉)の安全性の問題や、マハラシュトラ州でのジャイタプール原発建設計画への影響に議論を広げることなく、中国の失敗にひたすらこだわっている。

■ 台山で何が起こったのか?

こうした議論のきっかけとなったのは、CNNが報じた台山原発での「放射能漏れ」である。台山原発のEPRを設計し、現在も運転に携わっているフランスのフラマトム社は、「性能上の問題」と「差し迫った放射能の脅威」の可能性を警告した。

当然のことながら、中国外務省の最初の対応は、こうした報道を否定し、サイトの放射線レベルは「正常」であり、心配する必要はないと主張するものだった。

しかし、その後、中国政府は1号機の一次系冷却水で放射線量の上昇が見られたことを認め、一部の燃料棒(5本前後?)が損傷したことによる、希ガスの蓄積が原因であると発表した。

台山の2基の原発は、中国広核集団とフランス電力公社(EDF)の合弁企業である広東台山核電合営有限公司が運営している。

この原発は、最も先進的でエネルギー効率が高いとされる第3世代EPR技術を採用し、安全性も強化されているという。

インドのジャイタプール、英国のヒンクリーポイントC、フランスのフラマンビル、フィンランドのオルキルオトなどの同様のEPRプロジェクトでは、建設上の問題や機器の欠陥に起因する数年に及ぶ大幅な遅延や大幅なコスト増が続いているが、現在、台山はEPRが稼働している唯一のサイトとなっている。

■ EPR(欧州加圧水型炉)の問題点

EPR技術には、設計上の問題点などが指摘されている。

2005年にオルキルオトで初のEPRが建設開始されてからわずか2年後、フィンランドの原子力安全当局は、「EPRの安全性と品質に関する1,500の問題」を挙げ、中には「重大な問題」も含まれていた。


フランスの原子力規制機関である原子力安全局も、フラマンビルのEPRの設計における深刻な安全上の欠陥を容赦なく告発している。設計上の脆弱性に関する再三の警告を受けて、2019年にはフラマンビル原発を安全監視対象としたほどだ。


台山原発での詳細は、まだ明らかにされていないが、フランスの原子力産業にとって取り返しのつかないトラブルが続いているのではないか?


台山原発の2018年の商業運転開始は、他のEPRプロジェクトが頓挫している中での「数少ない朗報」であった。

■ インドへの影響

マハラシュトラ州の生態系が多様なラトナギリ海岸沿いのジャイタプールに、台山原発と同じ設計のEPR原子炉を備えた巨大な原発が建設されようとしている。

21年5月、フランス電力公社(EDF)は、ジャイタプール原発建設計画の詳細案をインドに提示した。現在、交渉の最終段階に入っている。


ジャイタプール原発は、160万kW級のEPR、6基で構成され、完工すれば世界最大のプロジェクトとなる。
2008年に最初の合意がなされて以来、独立した専門家、原子力規制当局の元職員、環境保護活動家や民主主義活動家から、安全性、コスト、関連する多くの深刻な問題が指摘されている。


ニュースキャスターやスタジオの「専門家」たちが台山に焦点を当てていたため、不都合なジャイタプールの詳細は、テレビの討論会では目立たないままだった。


このように台山に焦点を当てた議論では、インドの大規模な原子力エネルギー拡張計画や、歴代政府が環境、健康、人権に関する懸念や民主主義のプロセスを無視して進めてきたジャイタプールEPR建設計画への言及が都合よく避けられていた。


インド原子力発電公社(NPCIL)は、ジャイタプールの敷地は「地震が起きやすい場所ではない」と一貫して主張してきたが、独立した調査や専門家の意見では、この敷地は「地震による時限爆弾の可能性がある」とされている。


また、ジャイタプールの「グラム・サバ(住民総会)」は、生活問題、放射能による漁業、健康、生物多様性への悪影響、核廃棄物、設計と安全性に欠陥のあるEPR技術などを理由に、原発建設計画に反対する決議を全会一致で行っている。

■ 懸念の無視

このように草の根レベルでの抵抗や、重要な問題が提起されているにもかかわらず、ラトナギリ地区のマドバン、ニヴェリ、カレル、ミスガヴァネ、ヴァルリワダの各村の農民たちは、すでに立ち退きを命じられている。また、土地取得法の緊急条項(第17条)に基づいて土地が収用され、なんの説明会、公聴会もないまま、怪しげな環境影響評価が行われている。生活、海洋生物、生物多様性、放射性物質の放出による影響など、重要な問題もあっさりと片付けられてしまった。

ジャイタプール原発建設計画の原子炉調達の不透明さ、サイト固有の安全性を含む安全性の懸念、EPR設計とその増大し続けるコストについて疑問を呈した独立した専門家は、無視されるか、抑圧されている。


さらに、ラトナギリのような生態系が多様な地域でEPRの大規模原発建設を行うに際して、環境や健康への影響が懸念されることや、地域の何千もの農民や漁師などの生活の問題について、コミュニティとの信頼できる対話は行われていない。また、ジャイタプール原発建設計画を推進する上で、透明性や説明責任を全く欠き、平和的な反対意見を封じ込めており、刑法第144条やボンベイ警察法の「不法集会」禁止条項が日常的に発布され、日常的に逮捕され、「殺人未遂」などの容疑をかけられ、地元の抗議集会も監視されている。

■ 沈黙の中で

台山原発の状況は非常に憂慮すべきものである。アナリストは、台山原発の問題は昨年10月から蓄積されてきたと指摘しているが、中国とフランスの事業者はこれについて沈黙を守っている。さらに、中国の国家核安全局が、「台山原発の運転を継続するために、原発の外での放射線検出の許容限界を引き上げる」ことを承認したとされる報道もある。

しかし、台山原発をめぐるインドの主要メディアの論調は大きく歪んでいる。今回の台山原発の件で中国を悪者扱いするのは、インドの原子力拡張計画や、ジャイタプールでの説明会・公聴会の欠如、原子力安全規制機関の独立性の強化が急務であることなど、差し迫った懸念事項を回避して、国民の視線を逸らそうとしているのではないかと疑ってしまう。


台山原発問題は中国問題ではなくEPR問題だ。地域住民や独立した専門家が10年以上前から提起してきたジャイタプールEPR原発建設計画に関する懸念について、より多くの情報を得たうえで議論を行うべきである。

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信171号
(8月20日発行、B5-24p)もくじ

・第四原発とお別れしよう! ― 12.18公民投票 (全国廃核行動平台)
https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2260       

・脱原発アジェンダを確定し、大統領選挙に対応しよう (ヨン・ソンロク)     

・中国・台山原発の「放射能の脅威」が、なぜ、インドで懸念されるのか

 (ソナリ・フリア)  

・ライナス社レアアース製錬工場の現状報告 (和田喜彦)
https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2240            

・「第二の原発」リニア中央新幹線にも関心を (石橋克彦)            

・広島原爆「黒い雨」訴訟の成果 (湯浅正恵)                 

・美浜原発3号機の運転禁止仮処分について (中野宏典)            

・伊方原発廃炉のために (名出真一)                     

・柏崎刈羽原発反対50年 (後編) (矢部忠夫)

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ライナス社レアアース製錬工場の現状報告 

和田喜彦(同志社大学)

はじめに

『ノーニュークス・アジアフォーラム通信』 No.120(2013年2月20日発行)にて、マレーシア・ライナス社レアアース製錬工場の状況を報告したが、本稿では、それ以後の動向についてお伝えしたい。ただ、2015年12月以降現地入りができておらず、文献調査に多くを依拠している。自ずと限界があることをご了承いただきたい。

1.ライナス社レアアース製錬工場とは
     
ライナス社(Lynas Corporation Limited)はオーストラリアの鉱山会社である。西オーストラリア州のマウント・ウェルド(Mt. Weld)にはレアアース鉱床が存在しているが、ライナス社はこの鉱山にて鉱石を採掘し、選鉱の後、鉱石をマレーシア・マレー半島東海岸パハン州クアンタン近郊のゲベン工業団地の製錬工場に輸送し、レアアース製品を製造する工程を2012年12月から稼働させている。

製錬工場は、Lynas Advanced Materials Plant(LAMP)と命名されている。1970年代後半~1990年代前半に三菱化成工業㈱の子会社「エイジアン・レアアース社(ARE)」が西部イポー近郊のブキメラで引き起こした深刻な放射能汚染事件「ARE事件」とは一緒にしないでほしい、先進的な施設で適正な管理を行っていることを知ってほしいという意図が込められている。マレーシア国民の多くが、三菱系列の企業が引き起こした「ARE事件」の悲劇を記憶しているからである。


なぜライナス社はオーストラリアの鉱石をマレーシアにて製錬することにしたのか。その理由は単純である。マグマ由来のレアアース鉱床には放射性物質のトリウムやウランが含まれており、レアアース抽出過程で放射性廃棄物が大量に発生する。マウント・ウェルドの鉱床もマグマ由来であるため例外ではない。オーストラリア政府の放射性廃棄物に対する環境規制は厳しく、また国民の環境意識も高いため、政治的にも収益的にも困難さが伴う。一方、マレーシアは環境規制がオーストラリアより緩いので環境対策の支出を低く抑えることができるという短絡的・利己的・非倫理的な経営判断がなされたのである。


実際、LAMPは環境に十分配慮された工場とは言えない。2011年の東京電力福島第一原子力発電所の過酷事故をきっかけとして、工場建設に携わっていた複数のエンジニアが、工事の杜撰さを内部告発し、ニューヨークタイムズ紙がその証言を暴露した。それが契機となり、周辺住民の反対運動が活発化した。国際原子力機関(IAEA)や複数の海外の研究機関から放射性廃棄物保管施設等の欠陥が指摘され,環境汚染の発生が懸念され続けている。数々の問題点が指摘されつつも操業は続けられており,マレーシア国内では推進側と反対派住民との間で訴訟を伴う激しい対立が現在も続いている。


反対派住民の批判は、日本にも向けられている。日本政府は、(独立行政法人)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を通じ,2011年に約 200 億円の出融資を行っており,深く関与している。双日㈱も関わっており総額の6%が双日によるコーポレートファイナンスである。年間8500トンの軽レアアース(日本のレアアース需要の約3割に相当する)を10年間にわたり日本に供給する契約が結ばれている(和田2015)。

2.ライナス社レアアース製錬工場の収益状況

LAMPが稼働を始めたのは2012年12月であるが、図1にあるように、収益が黒字になったのは、2018年と2019年の2年間のみである。2020年はCOVID-19パンデミックの世界的な広がりによる影響を受けて再び赤字に転落してしまった。2021年は黒字になる見込みである。いずれにせよ、工場建設段階の2010年から2020年までの11年間の純利益・損失の年平均額は、マイナス7,050万豪ドル(仮に1豪ドル80円のレートで計算すると56億7千万円)であり、おおむね赤字経営となっている。日本政府と双日が出融資した約200億円が無事返済されるのか懸念される。

図1ライナス社レアアース製錬工場LAMPの純利益/損失

ただし、ライナス社の直近の第4四半期(2021年4月~6月)の売上高は前年同期の5倍近くに増え、過去最高を記録した(1億8590万豪ドル、約145億7千万円)。ライナスの株価は9%上昇し、8年ぶりの高値を付けた(ロイター 2021)。このように経営的な改善の兆しは見える。電気自動車(EV)の世界的需要が2021年には2020年と比較して40%伸びるという予想もあり、市場は楽観視しているようである。実際、後述するように、ライナス社は、オーストラリアに1か所、アメリカに1か所、レアアース製錬工場を新設する計画を実施に移しつつあり、強気の経営方針を表明している。

3.ライナス社レアアース製錬工場の環境汚染

経営上の改善の兆しが見え始めた一方で、環境問題は深刻さを増しているようだ。筆者が現地の研究者や地元住民の助けを借りて、工場排水口から約5㎞下流の河口付近の泥サンプルを採取し、大阪大学の福本敬夫氏に分析してもらった。その結果を図2に示す。稼働開始3年後の2015年12月には、トリウム濃度が環境基準を超える値を示している。その他、猛毒のヒ素が操業前の55倍に増加していることが判明した。廃棄物保管場から汚染物質が漏洩していることが懸念される。詳細な本格的な調査が急務である。

図2 ライナス社工場排水口から約5km下流の河口付近の漁村の泥の分析結果
(出典:福本敬夫氏と筆者の分析による)

4.放射性廃棄物の国外搬出命令を反故にしたマハティール首相

2018年5月9日に発足したマハティール新政権は、選挙公約通り同年10月に上級審査委員会を設置しLAMPの安全性に対し科学的検討を加えた(筆者も委員会に拙論を提出した)。マハティール政権は12月にライナス社に対し、稼働許可を更新する条件として、45万トンの放射性廃棄物をマレーシアから国外に搬出することを命じた。

ところが、翌2019年5月末、マハティール首相が来日し安倍首相に面会して間もなく、条件を緩和してしまった。事実上、国外への搬出義務は白紙撤回となった。反対派住民や、反対派の与党議員も途中で梯子を外されてしまった。結局、放射性物質を大量に含むゴミはマレーシアに押し付けられる構図となったのである。これは先進国から途上国への「公害輸出」の典型事例であり、環境正義の観点から問題である。この決定を受け、放射性廃棄物永久処分地がマレーシア国内に設置されることとなった。

5.マレーシア国内に建設されることと なった永久処分施設

ライナス社は放射性廃棄物の永久処分施設(Permanent Disposal Facility, PDF)をクアンタン市から30km北方向にあるBukit Ketam地区に建設しようと計画した(面積:12ヘクタール)。マレーシア原子力発電認可局(Atomic Energy Licensing Board: AELB)が、2019年にこの計画を承認したため、この地が最終決定地となる可能性が高まった。しかし、図3にあるように、人口約60万人のクアンタン市の上水道の集水域に位置するため、批判が噴出した。2021年4月28日、マレーシア環境省は、環境影響評価の結果から、この計画を却下した。

図3 放射性廃棄物永久処分施設建設予定地とされた場所 Bukit Ketam
(出典:The Stringer 紙2021年2月20日 https://thestringernews.com/2021/02/20/eia-contradicts-lynas-and-mb-multiple-risks-to-kuantan/ 2021年8月15日閲覧)

ライナス社は、永久処分施設建設計画の提出期限(2021年8月15日)の直前である7月25日に、別の場所に建設すると発表した。それはLAMP製錬工場に隣接する空き地である。しかし、当初計画の半分程度の容量しか確保できないとのことである。

6.ライナス社、西オーストラリア州カルグーリーに製錬工場設置計画

ライナス社は西オーストラリア、マウント・ウェルド鉱山から陸路で370km離れているカルグーリー(Kalgoorlie)に新たなレアアース製錬工場を新設する計画を打ち出した。ライナス社が自国で製錬を行おうと考えた理由を推測すると、マレーシア住民や国際的な環境保護派からの批判と反対運動に対峙し続けるよりは、環境基準が厳しくとも自国で製錬するほうが長期的にメリットが大きいという判断があったのではないかと思われる。その意味で、反対派住民団体と市民科学者の地道な反対運動、法廷闘争、啓発活動、国際的な連帯が一定の成果を勝ち取ったと考えて良いのではないか。

図4 ライナス社カルグーリー・レアアース製錬工場のイメージ図
(出典:Lynas Corporation Ltd. 2021. “Kalgoorlie Rare Earths Processing Facility: Project Fact Sheet – July 2021. https://lynasrareearths.com/wp-content/uploads/2021/07/Fact-Sheet_Lynas-Kalgoorlie-RE-Processing-Facility-July-2021.pdf 2021年8月15日閲覧)

7.アメリカ国防総省がテキサス州でのライナス社製錬工場建設に資金供与を約束

アメリカ国防総省は、先進兵器や電子機器に欠かせないレアアース市場の中国による独占を阻止するため、レアアース製錬工場をテキサス州ホンドに建設することを2021年1月22日に発表した。ライナス社が事業者で、軽レアアースの生産に特化するという。国防総省は約3,000万ドルを上限として拠出する予定である。ライナス社はほぼ同額の支出を予定している(Reuters 2021)。
 
おわりに

筆者はライナス社が引き起している可能性が高い被曝問題を日本のジャーナリスト、メディア、研究者に情報提供したが、それを深堀りしようとする人は残念ながらほとんど現れていない。もともと筆者自身の発信能力の拙さに起因するものではあるが、それぞれが核兵器の問題、福島原発事故の問題など各自の専門領域の殻に閉じこもってしまい、同じ被曝問題であるレアアース問題に向き合ってくれないことは残念なことである。日本の豊かさのためにマレーシア人の生活の質を犠牲にしている蓋然性が高いライナス社レアアース製錬工場問題について、放射線被曝防護という点で大同団結し、共に実態の解明に尽力していきたい。特に日本人は、先の世界大戦でマレーシアに侵攻し、戦後はARE事件で大迷惑をかけたのである。ライナス社問題で過ちを繰り返すのか、それとも名誉挽回となるか、日本のジャーナリストと研究者、市民社会の真価が問われている。

参考文献
ロイター。2021年7月26日。「豪レアアース大手ライナス、4-6月売上高が過去最高 株価8年ぶり高値」https://jp.reuters.com/article/idJPL4N2P20F2 2021年8月15日閲覧。

Reuters. January 22, 2021. “Lynas signs deal with U.S. for light rare earths separation plant.”  https://www.reuters.com/article/us-usa-rareearths-lynas-corp-idUSKBN29Q30O 21年8月15日閲覧。

和田喜彦。2015。「マレーシアでのレアアース資源製錬過程による環境問題 ―エィジアンレアアース(ARE) 事件の現況とライナス社問題」『環境情報科学』第43巻 第4号, pp. 32-38。

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(8月20日発行、B5-24p)もくじ

・第四原発とお別れしよう! ― 12.18公民投票 (全国廃核行動平台)
https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2260       

・脱原発アジェンダを確定し、大統領選挙に対応しよう (ヨン・ソンロク)     

・中国・台山原発の「放射能の脅威」が、なぜ、インドで懸念されるのか (ソナリ・フリア)
https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2253  

・ライナス社レアアース製錬工場の現状報告 (和田喜彦)            

・「第二の原発」リニア中央新幹線にも関心を (石橋克彦)            

・広島原爆「黒い雨」訴訟の成果 (湯浅正恵)                 

・美浜原発3号機の運転禁止仮処分について (中野宏典)            

・伊方原発廃炉のために (名出真一)                     

・柏崎刈羽原発反対50年 (後編) (矢部忠夫)

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両国の「反日」と「嫌韓」フレームは悪循環 ー 脱原発に国境はない。韓日反核連帯が必要 ー 小原つなき

汚染水の海洋放出に対して国際的に懸念の声が集まっていますが、これに関して日本と韓国の間で起きている状況は非常に複雑です。日本と韓国の反原発運動を熟知する筆者によるこの論考は、韓国のネットメディア「レディアン」(5月25日付)と脱核新聞に掲載され、大きな反響を呼びました。問題のありかが明確に描き出されていますので、ぜひとも日本の方々にも読んでいただきたい内容です。筆者の小原つなきさんは光州在住で脱核新聞編集委員。(原文:韓国語)

日本政府は4月13日、福島第一原発で発生する放射能汚染水の海洋放出を閣議決定した。国内外の反対世論にもかかわらず、「汚染水は十分に浄化した後、基準値以下にまで希釈して放出するので安全だ」との詭弁をくり返している。海洋放出以外に方法はないとし、むしろ原発サイトから海洋に汚染水を放出することは昔からの国際的慣行であると強調している。

日本から最も近い韓国で抗議の声が高まるのはごく当然のことだ。発表と同時に、脱原発を主張する市民社会団体をはじめ、漁業組合や大学生組織など各界が強く反対し、各地で連日、記者会見やキャンペーンなどがくり広げられている。国民的関心も高い。

韓国では、福島原発の汚染水を海洋放出することは「核テロ」だと訴えている。本来、人類が「核」を扱うこと自体が「テロ」だと言えるかもしれない。核が開発されて以来、今日まで数多くの「核テロ」が全世界でくり返されてきた。米ソ冷戦のあいだには、核保有国によって2000回を超える核実験がくり返されてきた。再処理関連施設でも、大量の汚染水が海に放出されてきた。中・低レベル核廃棄物の海洋投棄も1993年に禁止されるまでくり返された。「軍事的」であれ、「平和的」であれ、人類が核を扱う以上、核テロは、「日常」であった。

このような背景をふまえ、日本政府は、今回の汚染水海洋放出の決定に関してIAEAと米国の強固な支持を取り付けて、海洋放出を公然と正当化する手段を備えた。日本国内ではマスコミが、日本政府や東京電力の主張をそのまま代弁し、海洋放出を正当化することに加担している。

日本の保守的なマスコミは、韓国で一部の運動団体が旭日旗を破ったり燃やしたりしながら、「汚染水は日本が飲め」のような刺激的なスローガンを叫んでいる様子を積極的に報道している。韓国の人たちが海洋放出に反対する声を、「反日」運動のフレームで日本の世論に紹介することによって、汚染水問題の本質をあいまいにする絶好の機会としているのだ。

国民的感情の対立を、先にそそのかしたのは日本の政治家たちだ。一部の政治家による、「汚染水は飲んでも大丈夫だ」とか、「中国や韓国なんかに言われたくない」などの妄言は、韓国の人たちの感情を刺激するのに十分だった。汚染水の本質的な問題点を後にしたまま、両国で、「反日」と「嫌韓」という感情の対立が作られたのだ。このような民族主義的な感情対立をあおるのは、かえって汚染水問題の核心がわかりにくくなるという逆効果として作用する恐れが大きい。

一方、韓国で一部の運動団体が、福島原発事故の放射能による被害に関して、奇形動植物の写真など、正確でない「にせ」の情報を利用して不安感を増幅させていることも憂慮すべき点だ。たとえば、よく登場する奇形の写真のなかで、頭が二つあるサメの写真は、福島事故が起きる前の2008年にナショナル・ジオグラフィックで公開された写真だ。奇形ひまわりの写真も肥料の過多摂取などが原因であることが明らかになっている。その他にも、日本の有名芸能人たちの突然死や癌による死亡などに関しても「放射能被ばくのせい」という根拠のはっきりとしないうわさが事実のごとく語られる場合がある。

このような「怪談」に一番大きな傷を受けるのは、実際に被ばくによる被害を被っている人たちだ。放射能による被ばくは様々な危険性を内包する一方、その因果関係を証明することは非常に難しい。因果関係が明らかでないということを口実に、加害者である東京電力と日本政府は様々な放射能被害に対する責任を回避してきた。今回の汚染水の海洋放出の決定は、放射能被害を無視してきたこれまで態度のくり返しだ。したがって、確認されていない「怪談」を真実のごとく話すことは、海洋放出を中止させるのに全く役に立たない。むしろ韓国内での海洋放出反対の主張を、「非常にレベルの低いもの」として歪曲するのに口実を与えるだけだ。

同じ脈絡から、「汚染水の海洋放出容認=親日」というレッテルを貼り付けることも、話をさらに複雑にする。韓国の原子力安全委員会は、すでに昨年10月、福島汚染水の海洋放出について、「意味のある影響は現れないだろう」いう見解を明らかにしている。さらに、原子力マフィアの一員である韓国原子力学会もまた、4月26日、「汚染水は日本の主張どおり処理水と呼ぶことが正しく、放出しても韓国に及ぼす影響は無視できる水準だ」と主張した。このような立場を打ち出すのは、彼らが決して「親日だから」ではない。日本政府が指摘したように韓国の原発からも、放射能汚染水が日常的に海洋に放出されているためだ。

日本の主張どおり、とくに重水を使用する月城(ウォルソン)原発では、他の原発よりもはるかに多くのトリチウムが液体と気体の状態で自然界に放出されているのは事実だ。これは、原発を運営するすべての国で日常的に起こることで、各国の原子力関連機関は一様にこのようなやり方を正当化している。だから、程度の差をもって、とくに韓日の市民たちの間で、その点について議論するのはあまり望ましくない。量がどれ程にせよ、核種が何にあるでせよ、「毒」は、「毒」だからだ。それによって、被害と苦しみを受け続けているのは、両国の市民すべてだ。

韓国政府が、今後どのような戦略で日本政府を圧迫することができるかも懸念すべき点だ。最近、韓国政府は問題の解決に向け、韓日両国が協議する場を構築することを日本政府に打診し、日本政府が受け入れる意向を明らかにした。しかし、韓国政府が協議を有利に運ぶというよりは、むしろ、海洋放出に太鼓判を押す機会として日本に利用されるのではと懸念する声が聞かれる。

もし、韓国政府がこの問題について引き続き生ぬるい態度を取ったとしても、これをもって現在の韓国政府が「親日的」と批判するのも間違っている。文在寅政府の問題点は、脱原発を宣言しながらも、国内の核問題についてずっと不徹底で中途半端な二重的態度をとり続けていることだ。

文在寅大統領は最近開かれた韓米首脳会談で、原発産業の推進と輸出に関しての協力を約束するなど、脱原発と原発推進の政策のあいだを行ったり来たりしている。

とにかく、福島の汚染水の海洋放出は決して容認できず、必ず阻止しなければならない。しかし、韓国内で日本政府の決定を覆す有効な方策を探すのも容易ではない。依然として、一番重要なのは、日本の市民自らが日本政府や東京電力の蛮行を阻止する力をつけていくことだ。

汚染水の海洋放出は、福島原発事故の収拾作業の一環として行われる過程の中の一部に過ぎない。汚染水の海洋放出を防ぐためには、根本的に日本政府が提示している「廃炉ロードマップ」を全面的に再考することから始めなければならない。廃炉ロードマップは30~40年以内に事故現場をすべてきれいさっぱりに取り除くという、現実的に不可能な構想を前提としている。これが、日本政府が汚染水処理を急ぐ一番大きな理由だ。

これに対して、日本の市民社会は包括的な観点から多様な代案を提示している。韓国でもすでに多く紹介された「陸上長期保管」や「モルタル固化」などだ。追加的な汚染水の発生を防ぐために、事故が起きた原子炉を水ではなく空気で冷却する案もまた、日本の市民社会の核工学専門家たちが積極的に提起している。

残念ながら日本の市民社会の力は強くない。汚染水の海洋放出に反対の世論が60%を超えるともいわれるが、具体的な反対の声は日常的によく聞こえてこない。社会の過ちに対して市民が積極的に声を上げ、社会を変えていく底力を持っている韓国市民社会との大きな違いだ。だから、韓国をはじめ全世界の人々が共に声を出し、日本の脱原発運動陣営と市民たちに力を貸してほしい。昨今、韓日関係が急速に悪化したことにより、市民レベルで良好に続いてきた様々な交流までも打撃を受けている。日本政府と保守的なマスコミが、連日、「嫌韓」感情を煽っていることも事実だ。悪循環だ。

過去の先輩たちが繋いできた韓日の反核連帯の歴史は長くて深い。アジア地域の反核運動の連帯のために作られた「ノーニュークス・アジアフォーラム」は1993年、韓国の提案で始まった。それ以降、ほぼ毎年アジア各国で開催されており持続的な信頼と絆が構築されてきた。

脱原発は長期戦だ。韓国と日本の慢性的な感情対立を乗り越えて、各国が真っ向から核マフィアと闘っていくために、お互いを激励して応援できればどれほどすばらしいだろうか。脱原発の道に、国境はない。

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信170号
(6月20日発行、B5-28p)もくじ

・汚染水を海に流すな! 6.2国際共同アクション
https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2178
               
・理解と合意のない汚染水の海洋放出処分を中止し、陸上保管とトリチウム分離技術の実用化を求める要請書 (脱原発福島ネットワークほか) 

・福島県農林水産業・消費者の協同組合の共同声明                

・原発処理水の海洋放出「人権にリスク」 国連特別報告者            

・両国の「反日」と「嫌韓」フレームは悪循環 (小原つなき)            

・9年目に、ヨンドク原発建設計画、白紙化 (イ・ホンソク)           

・新古里5・6号機は、建設地選定・耐震設計など違法性が明確だ (キム・ソクヨン)  

・寿都町長選挙で「地層処分にNO!」 (小野有五)              

・柏崎刈羽原発反対50年 (矢部忠夫)                    

・「柏崎刈羽原発の『設置許可取り消し』を求める署名」へのご協力を訴えます
(柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会) 

・関電株主代表訴訟第2回口頭弁論・陳述 (畑章夫)              

・若狭の老朽原発の危険性 (山本雅彦)                   

・「6.6老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」に1300人が結集 (橋田秀美)

ノーニュークス・アジアフォーラム通信は、年6回発行。購読料:年2000円。
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602 International Joint Action on Fukushima Wastewater Dumping 汚染水を海に流すな! 6.2 国際共同アクション

On April 13, the Japanese government decided to release radioactive water from the Fukushima nuclear power plant into the ocean. On June 2, prior to World Environment Day on June 5 and World Oceans Day on June 8, rallies, standing demonstrations, and protests and requests to Japanese embassies were held in 15 countries.
日本政府は4月13日、福島原発の放射能汚染水の海洋放出処分を決定した。世界環境デー(6月5日)、世界海洋デー(6月8日に先立ち、6月2日、15か国において、集会、スタンディング、日本大使館への抗議・要請文提出などが行われました。

Fukushima
Tokyo
Philippines
Croatia
Seoul
Korea,Tongyeong. 110 Fishing Boat Demonstration

Other Korea Photos 
http://kfem.or.kr/?p=216755

Nepal
Nigeria
indonesia 608
Germany 608

USA 605
Joint statement from US environmental, peace and anti-nuclear groups (70 groups in total) against the release of contaminated water from Fukushima Daiichi into the ocean.
また、米国の環境・平和・反核団体(計70団体)が5日、汚染水海洋放出に反対する共同声明を発表し、ニューヨークの日本総領事館に提出した。

http://mp-nuclear-free.com/Fukushima/20210608.html?fbclid=IwAR1O5n64R5gx29yA4KMc0onfAKv85glXTEF6LeVWmzHbRmMam4AqPZyVoWo

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On the 10th Anniversary of the Fukushima Nuclear Disaster: International Signature Campaign Against the Discharge of Contaminated Water and Calling for the Discontinuation of Nuclear Power Plants Now! 国際署名「福島原発事故10年、汚染水を海に流さないで! 原発もうやめよう!」 – ノーニュークス・アジア・フォーラム ジャパン (nonukesasiaforum.org)
77,050 signatures (from 110 countries) were submitted to the Japanese government. Signatures will continue.
国際署名継続中(現在 77,050名、110か国)

English:http://chng.it/djybxBBC
French:http://chng.it/fypX2JfF
Germany:http://chng.it/SxwrRGjt
Japanese:http://chng.it/rQ2DWbJk
Korean:http://chng.it/CPtZwx9W
Russian:http://chng.it/P9t7RWQr
Spanish:http://chng.it/LRk9PbmRGF
Taiwan Mandarin:http://chng.it/XgzQzHz6
Turkish:http://chng.it/QLygqbjq
Italian:http://chng.it/WJpGsKXCCc

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信170号
(6月20日発行、B5-28p)もくじ

・汚染水を海に流すな! 6.2国際共同アクション                 

・理解と合意のない汚染水の海洋放出処分を中止し、陸上保管とトリチウム分離技術の実用化を求める要請書 (脱原発福島ネットワークほか) 

・福島県農林水産業・消費者の協同組合の共同声明                

・原発処理水の海洋放出「人権にリスク」 国連特別報告者            

・両国の「反日」と「嫌韓」フレームは悪循環 (小原つなき)

https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2214            

・9年目に、ヨンドク原発建設計画、白紙化 (イ・ホンソク)           

・新古里5・6号機は、建設地選定・耐震設計など違法性が明確だ (キム・ソクヨン)  

・寿都町長選挙で「地層処分にNO!」 (小野有五)              

・柏崎刈羽原発反対50年 (矢部忠夫)                    

・「柏崎刈羽原発の『設置許可取り消し』を求める署名」へのご協力を訴えます
(柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会) 

・関電株主代表訴訟第2回口頭弁論・陳述 (畑章夫)              

・若狭の老朽原発の危険性 (山本雅彦)                   

・「6.6老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」に1300人が結集 (橋田秀美)

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Joint Statement of Fukushima Agriculture, Forestry, Fisheries and Consumers’ Cooperative

Joint Statement on the Decision to Discharge ALPS Treated Water into the Sea

It is extremely regrettable that the government’s decision on April 13 to release treated ALPS water into the sea was made without sufficient response or explanation to the concerns and opposition expressed by the people of Fukushima Prefecture, as well as fishermen.

In addition, the government’s “measures for production, processing, distribution, and consumption” are lacking in concrete details, and there is a concern that the hard efforts of the agriculture, forestry, and fisheries industries of this prefecture and consumers to get rid of the unprecedented “food insecurity” and “harmful rumors” that have arisen after the Great East Japan Earthquake and the nuclear power plant accident will be lost in an instant.

Furthermore, although the government has stated that it will instruct TEPCO on how to compensate for damages in the unlikely event of reputational damage, it is impossible to dispel the fears of the agriculture, forestry, and fisheries industries based on TEPCO’s past stance on compensation for “reputational damage.

Therefore, we, a cooperative organization of agriculture, forestry, and fishery businesses and consumers, support the fishermen of this prefecture who are resolutely opposed to the government’s decision.

We are opposed to the ocean discharge until we are convinced that not only the fishermen, but also the international community and the people of Japan will be able to understand and formulate public opinion in a sincere manner, and that there will be no “anxiety” or “harmful rumors,” and that the recovery of our prefecture’s fishery, fisheries, and all other industries will be unhindered and progress will be steady.

We also hope that the government will actively develop technology and establish a safe treatment method for tritium removal, which was deemed “technically impossible” in the process leading to the government’s decision.

April 30, 2021
Fukushima Cooperative Council for the Promotion of Local Production for Local Consumption
Fukushima Prefecture Federation of Fishery Cooperatives
Fukushima Prefecture Forestry Cooperative Union
Fukushima Consumers’ Cooperative Union
Fukushima Central Union of Agricultural Cooperatives

福島県農林水産業・消費者の協同組合の共同声明

「ALPS処理水海洋放出決定に関する共同声明」

4月13日に決定された福島第一原子力発電所事故に伴うALPS処理水の海洋放出方針は、本県漁業者はもとより国民・県民の懸念や反対の意思表明に対して十分な回答や説明がなされないばかりか「関係者の理解なしには如何なる処分も行わない」という約束を反故にする極めて不誠実な決定であり極めて遺憾である。

政府から「風評影響への対応」として示された「国民・国際社会の理解醸成」についてはこれまでの政府の説明姿勢から十分な取組みが期待できないほか、「生産・加工・流通・消費対策」も具体的内容が希薄であり、東日本大震災・原発事故後に発生した未曽有の「食の不安」および「風評被害」から脱却するための本県農林水産業者および消費者らの懸命な努力を一瞬にして水泡に帰す懸念がある。

さらに、政府は「万一、風評被害が発生した場合の損害賠償についても東京電力を指導する」としているものの、「風評被害」にかかる東京電力のこれまでの賠償姿勢から農林水産業者が抱く不安を拭うことは不可能である。

このことから、われわれ農林水産業者ならびに消費者で構成する協同組合組織はかかる決定に断固反対する本県漁業者を支援するとともに、漁業者はもとより国際社会や国民の理解醸成や世論形成が真摯になされることを通じて、「不安」や「風評被害」が発生せず本県漁業・水産業をはじめすべての産業において復興が阻害されず着実に進展していけるということに確信が持てるまでは、海洋放出には反対する。

また、政府決定に至る過程で「技術的に不可能」とされたトリチウムの除去についても、積極的に技術開発に取り組み、安全な処理方法の確立を切望する。

令和3年4月30日
地産地消運動促進ふくしま協同組合協議会(地産地消ふくしまネット)
福島県漁業協同組合連合会
福島県森林組合連合会
福島県生活協同組合連合会
福島県農業協同組合中央会

福島で燃やされたオーストラリアのウラン

ジム・グリーン & デービッド・ヌーナン

福島原発の事故では、オーストラリアのウランが燃やされました。しかし、その教訓は生かされず、オーストラリアのウラン産業は、その無責任なウラン輸出政策によって、世界の核に対する不安をあおり続けています。

福島原発事故は、オーストラリアのウラン産業と日本の原子力産業が、規制当局や官僚と結託して、傲慢になり、利益を得ようとしたために起きたと言えます。

日本の国会に設置された事故調査委員会は、2012年の報告書で、「事故は、予見できたし、防ぐことができたはずの深刻な人災」であり、「福島原発が、3月11日のような出来事に対して何の準備もしていなかったことを示す、多くの誤りと故意の過失」があるとしました。

そして事故は「政府、規制当局、東京電力の癒着」の結果であると結論づけました。

■ ウラン採掘

しかし、海外の関係者たちは、日本で起きた、このとても許容することができない原子力のリスクを見て見ぬふりしてきました。そうした態度について、きちんとした調査がされたこともないし、また非難も受けていない。オーストラリアのウラン産業はその一例です。

広島平和研究所の田中利幸氏は「今回の原発事故の責任は、日本だけにあるわけではない。GEによる原子炉の製造から、カナダやオーストラリアなどによるウランの提供まで、多くの国が関与している」と述べています。

オーストラリアのウランが福島原発で使用されたことは、はっきりとしています。しかしながら、「商業上の機密性」や「安全性」を理由に、鉱山会社はその事実を認めようとしません。

しかし、オーストラリア連邦政府の「保障措置および核不拡散局」は、2011年10月に次のように認めています。「オーストラリアから送られた核物質が福島第一原発の敷地内およびそれぞれの原子炉にあったことを確認している。それは6基の原子炉のちの5基において、もしくは、そのすべての原子炉においてである」

世界最大級の鉱山会社であるBHP社とリオティント社は、オーストラリアのウランを東京電力に供給し、そのウランが福島原発の燃料として使用されていたのです。

■ 津波

それら鉱山会社は、管理や規制が不十分な福島原発で自社のウランを使用した結果、日本社会に壊滅的な影響を与えたことについて、一切の責任を取っていません。

さらに言えば、鉱山会社は知らなかったとは言えないし、すでに警告のサインは、はっきりしていたのです。つまり、オーストラリアのウラン産業は、東京電力をはじめとする日本の原子力企業で、スキャンダルが続き、また事故が続いている間、何もしなかったのです。

たとえば、2002年に東京電力が25年以上にわたって組織的、日常的に安全データを改ざんし、安全規則に違反していたことが明らかになったとき、オーストラリアのウラン産業は何もしませんでした。

2007年には、日本で300件以上の「不正行為」が明らかになり、そのうち104件が原発関連であったときにも何もしなかったのです。

日本の原発が地震や津波に耐えられるかどうかについて、業界関係者や独立した専門家からの批判が高まっていたにもかかわらず、何もしなかったのです。

■ 悪循環

オーストラリアのウラン産業は日本の原子力規制当局との間にある複数の利害関係についても、何もしていません。

オーストラリア北部準州にあるリオティント社のレンジャー鉱山の土地は、アボリジニであるミラル氏族が所有しています。そのリーダー、イボンヌ・マルガルラ氏は、レンジャー鉱山のウランが東京電力を含む日本の原子力企業に輸出されていたことを「深く悲しんでいる」と述べています。

イボンヌさん(ジャビルカ・ウラン鉱山開発を止めたイボンヌさんたちの闘いは、映画『ジャビルカ』で詳しく描かれている)

ウラン鉱山会社からはそのような謙虚な姿勢は一切感じられません。オーストラリア・ウラン協会は、そうした謙虚さを「人類が悲劇に直面した際の単なる日和見主義」「全くのナンセンス」と表現しています。

しかしながら、オーストラリアは、原発の管理改善と規制強化をウラン輸出の条件とすることで、日本の原子力産業の管理不行き届きの悪循環を断ち切る役割を果たすことができたはずであると、私たちは考えています。

懸念を示す強い声が日本の電力会社の耳に届いたとしても、多くの人が関心を示さなければ、日本のメディアに取り上げられることもないのです。

■ 安全性

しかし、ウラン産業は自身の責任を否定し、批判は何も聞かないという態度をとり続けています。福島原発事故の原因となったことを否定しているのだから、今後、何らかの責任ある行動をとるとは思えません。

歴代のオーストラリア政府は、日本の原子力産業の到底許容できないような基準について、これまで何もしてきませんでした。福島原発事故当時の首相であるジュリア・ギラード氏は、福島原発事故は「ウラン輸出についての私の考えに何の影響も与えない」と述べています。

電力会社、規制当局、政治家、政府機関からなる日本の腐敗した「原子力ムラ」が、福島原発事故からわずか数年後には元通りになってしまいました。原子力発電の規制には依然として問題があるのです。

老朽化した原子炉に加え、深刻な経済的ストレスと厳しい競争に直面している企業など、日本の原子力安全に対する懸念は尽きません。

九州大学の吉岡斉教授は、2011年から12年にかけて、政府の「福島原発事故調査委員会」の委員を務めました。

■ 規制

その委員会は2015年10月にこう言いました。「残念ながら、新しい規制体制は日本の原子力施設の安全性を確保するには不十分です。第一の問題は、施設の審査・検査の根拠となる新しい安全基準が、単純に甘すぎることです」

「新ルールが国際基準に基づいているのは事実ですが、国際基準自体が現状維持を前提としています。この基準は、すでに稼働している原子炉のほとんどが達成できるように設定されています。つまり、規制当局は日本のすべての既存の原子炉が手頃な価格で断片的な改造をすれば新基準を満たすことができるようにしたのです」

福島原発事故の後、国連の潘基文事務総長が、ウラン取引に関する独立した費用対効果の調査を求めたにもかかわらず、オーストラリア連邦政府は何もしませんでした。

不適切な規制が福島原発事故の根本原因であるにもかかわらず、オーストラリアは、中国、インド、ロシア、米国、日本、韓国、ウクライナなど、原子力規制が明らかに不十分な数多くの国とウラン供給契約を結んでいます。

■ 政府の暴走

同様に、オーストラリアのウラン産業と政府は、韓国、インド、ロシア、ウクライナなど、ウラン供給契約を結んでいる国での原発の汚職スキャンダルを見て見ぬふりをしています。

実際、オーストラリアはウラン取引を拡大して、治安の悪い地域に販売する契約を結んでいます。

2011年、福島原発事故が起きた年に、オーストラリア連邦政府はインドへのウラン輸出を許可しています。インドの原子力規制が不十分であるにもかかわらず、また、インドが核兵器とその運搬能力を拡大し続けているにもかかわらず、許可したのです。

アラブ首長国連邦とのウラン供給契約は、政治的にも軍事的にも不安定な地域にウランを販売することのリスクが明らかであるにもかかわらず、2013年に締結されました。この地域の核施設は、秘密裏に行われている核兵器開発を阻止しようとする敵対勢力によって何度も標的にされています。オーストラリアは、1979年にイランのシャー(パーレビ国王)が失脚する数ヶ月前に、シャーへのウラン販売を計画していました。

■ 強制労働

ウクライナとのウラン供給協定は、安全性やセキュリティ面で多くの懸念があり、ロシアに併合された地域で国際原子力機関(IAEA)が保障措置検査を実施できない状況にもかかわらず、2016年に締結されました。

2014年、オーストラリアはロシアへのウラン販売を禁止し、当時のトニー・アボット首相は次のように述べています。「オーストラリアは、現在のロシアのように明らかに国際法に違反している国に、ウランを販売するつもりはない」

2006年に締結されたオーストラリアと中国とのウラン供給協定は、不十分な原子力安全基準、不十分な規制、透明性の欠如、内部告発者の弾圧、世界最悪の保険と責任の取り決め、セキュリティリスク、広範な汚職など、多くの証拠があるにもかかわらず、見直されていません。

市民社会やNGOは、中国へのウラン販売に重点を置いて、ウラン取引による核拡散をくい止めるためのキャンペーンを行っています。

中国の人権侵害やさまざまな戦略的安全性の問題は、ウラン販売の中止を正当化するものです。中国が現在行っているチベットでの人権侵害や、新疆ウイグル自治区でのウイグル人に対する大量拘束や強制労働は、国際人道法や国連条約に対する重大な違反があります。

■ 武器

中国は、核兵器製造のノウハウをパキスタンに拡散させ、オーストラリアをサイバー攻撃の標的とし、インド国境、香港、台湾、太平洋で地域不安を引き起こしています。

BHP社のオリンピック・ダム鉱山は、現在もオーストラリアのウランを中国に販売している唯一の企業です。私たちオーストラリアの良心が求めるのは、ウラン販売を完全にやめ、中国へのウラン販売を終了する責任を担うことです。

オーストラリア連邦議会の査問委員会が、中国での強制労働と、それに対するオーストラリアの対応策を検討しています。この委員会は、中国をオーストラリアのウラン販売の対象から外すことを求めています。

オーストラリアは、核の安全リスクを軽視してウランを供給しています。同様に、核の拡散リスクも軽視していると言えます。

オーストラリアは、米国、英国、中国、フランス、ロシアといった「申告済み」の核兵器国すべてとウラン輸出協定を結んでいますが、これらの国はいずれも、核不拡散条約の下での軍縮を誠実に追求する義務を真剣に受け止めていないと言えます。

■ 白紙委任状

オーストラリアは、核爆弾の材料となる核分裂性物質の生産を阻止するために活動していると主張していますが、それにもかかわらず、兵器用核分裂性物質生産禁止条約(カットオフ条約)の締結を妨げる国にウランを輸出しています。

またオーストラリアは、日本の再処理とプルトニウム備蓄を無期限に許可していますが、日本のプルトニウム備蓄は地域的な核拡散リスクと北東アジアの緊張をもたらしています。

しかし、自由な輸出政策にもかかわらず、オーストラリアのウラン販売量は長期的に減少しており、現在では世界のウラン使用量の8.9%を占めるにすぎません。

レンジャー鉱山が閉鎖されたため、いまオーストラリアで稼働しているウラン鉱山は、BHP社のオリンピック・ダム鉱山と、ゼネラル・アトミック社のビバリー鉱山、フォーマイル鉱山だけです。

ウランは、オーストラリアの輸出収入の0.3%以下、オーストラリアの全雇用の0.1%以下しか占めていません。

それなのに、こんなに小さな産業が、なぜ政府から好き勝手にやらせてもらえるのか、私たちは不思議でならないのです。

*著者、ジム・グリーン博士はFoE オーストラリアの反核運動家。デービッド・ヌーナンは環境運動家。  (翻訳/小川晃弘)

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信169号
(4月20日発行、B5-28p)もくじ

・汚染水の海洋放出決定に抗議する ― 国際署名を提出 (満田夏花)      

・世界の市民、日本政府に「放射能汚染水の放出やめよ」訴え (ハンギョレ新聞より)

・福島で燃やされたオーストラリアのウラン (ジム・グリーン & デービッド・ヌーナン)

・福島原発事故10年 「脱原発、宣言を超えて行動へ」 (脱核釜山市民連帯)  

・トルコ・アックユが「世界最大」の原発建設地に (森山拓也)            

・福島原発事故10年、インドの反核団体の声明 (反核運動全国連合ほか)    

・「老朽原発うごかすな!」今が正念場 (木原壯林)             

・関電原発不正マネー全容糾明 ― 株主代表訴訟が始まった (畑章夫)    

・東京電力の“オウンゴール”― 柏崎刈羽原発を運転する資格はない (菅井益郎)

・不当判決は私たちに火を付けた! (片岡輝美)               

・「2021年も福島はオリンピックどごでねぇ」 集会アピール           

・「原発のない社会へ・2021びわこ集会」基調報告 (井戸謙一)         

・東海第二原発差し止め訴訟、勝訴 (海渡雄一)            

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Submission of International Signature Against the Discharge of Contaminated Water – Video, News 「汚染水を海に流すな」国際署名提出、報道など

4.12 首相官邸前 in front of Prime Minister’s Office

4月12日、 64,431筆(88か国)を、政府に提出し、記者会見、首相官邸前抗議アクションを行いました。しかし13日、政府は汚染水海洋放出を決定。国際署名は継続します。署名日本語:http://chng.it/rQ2DWbJk
64.431 signatures (from 88 countries) were submitted to the Japanese government. Signatures will continue. 
On the 10th Anniversary of the Fukushima Nuclear Disaster: International Signature Campaign Against the Discharge of Contaminated Water and Calling for the Discontinuation of Nuclear Power Plants Now!

【署名提出・記者会見 Press conference 映像】
https://www.youtube.com/watch?v=KdT1s7N7eDw&t=717s

【官邸前抗議アクション、映像】
Emergency action in front of Prime Minister’s Office,
200 people, on April 12,
https://www.facebook.com/FoEJapan/videos/366567817923088

【記者会見 NHK 4.12】
Press conference NHK 4.12
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210412/k10012970511000.html?fbclid=IwAR1khoo9Kh9tgFI-bNV56HOnM2VkgRe3ZDptz5qxZ7r8Qu_Ha8ZfTVdgn1U

市民グループが12日都内で共同で会見を開き、このうち、原子力資料情報室の伴英幸共同代表は「海洋放出は、復興につながらない」と。このほか参加団体からは、大型のタンクを増設し、長期に保管する方法や、水をモルタルで固めて地上で処分する方法などの代替案が十分に検討されていないと指摘もあがり、政府に対し方針を見直すよう求める意見が相次ぎました・・・

【日刊ゲンダイ 4.13】「菅政権『汚染水』放出決定の暴挙に国会周辺で抗議活動が広がる ー 海洋放出は10年間の漁師の努力を踏みにじる」https://news.yahoo.co.jp/articles/6e284ba1a96f694967532f4b71d0c8218063d534

12日、国内外で集めた海洋放出反対署名6万4431筆をFoEジャパンやグリーンピース・ジャパンなど7つの市民団体が経済産業省に提出。その後、団体らが主催した記者会見が参議院議員会館で開かれ、その後、首相官邸前で抗議集会をおこなわれた。会津若松市在住の片岡輝美さんは、福島の民意不在で決定されたことに怒りもあらわ。浪江町から避難している今野寿美雄さんは「流したら漁業者が10年かけてやってきたことが全部ダメになってしまう・・・

【ハンギョレ新聞 4.13】「世界の市民、日本政府に『放射能汚染水の放出やめよ』訴え」
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/39684.html?fbclid=IwAR2JKn7nI8HFvvhCqJ-6bALrDqND5ZPzDTXSb4ityVlw91xO-I51u0PQXtI

環境運動連合、緑色連合、市民放射能監視センターなどの韓国国内の環境団体を含む、世界24カ国の311の環境団体は「福島第一原発の汚染水を海洋に放出してはならない」とする書簡を日本の経済産業省に届けたことを12日に明らかにした。同書簡には、世界各国の市民およそ6万5000人が署名している・・・

【朝日 4.16】 国連人権理事会の特別報告者は15日、深い遺憾の意を表明した。「放出は太平洋地域の何百万もの命や暮らしに影響を与えかねない」と批判。
https://www.asahi.com/articles/ASP4J35ZDP4HUHBI03L.html?fbclid=IwAR3c3bLgOfFBvxm0_PfuH8ddKSu8pCcIRjYOxg6NZW7MZPU2axrIIBqejGI

UN experts say deeply disappointed by decision to discharge Fukushima water
https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=27000&LangID=E

【FoEジャパン声明:処理汚染水の海洋放出決定に抗議する】
Statement of FoE Japan: We strongly condemn the decision by the Japanese government to release contaminated water into the ocean https://www.foejapan.org/en/energy/doc/210413.html
声明:処理汚染水の海洋放出決定に抗議する|FoE Japan

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汚染水の海洋放出決定に抗議する ― 国際署名を提出

満田夏花(国際環境NGO FoE Japan)

 日本政府は4月13日、関係閣僚会議にて、福島第一原発の敷地でタンク保管されているALPS処理汚染水の海洋放出処分を決定した。

 これに先立ち12日に、ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン、原子力資料情報室、FoE Japanなど311団体(24か国)が呼びかけ、88か国から集まった64,431筆の反対署名を提出し、記者会見、首相官邸前抗議アクション(200名)を行った。

 汚染水の海洋放出は、放射性物質の環境中への放出を意味する。実際に放出される水に含まれる放射性物質の総量は不明なままだ。いったんALPSに通したのにもかかわらず、タンクの水の7割以上で、ストロンチウム90など、ALPSで取り除けるとされていた多くの核種が全体として基準を上回っている。東電は二次処理を行うとしているが、結果的にどの核種がどのくらい残留するかは明らかにしていない。

 貯留されている水のトリチウム総量は約860兆ベクレル。政府は年間22兆ベクレルを放出するとしているが、福島第一原発が2010年に海洋中に放出したトリチウムは約2兆ベクレルだ。その10倍もの量を数十年にわたり流し続けることになる。政府は、トリチウムは世界中の原発から排出されていると強調するが、それが安全を意味するわけではない。有機結合型のトリチウムがDNAに取り込まれたときのリスクを指摘する専門家もいるし、原発周辺における健康影響を指摘する報告もあるが、こうした意見は真正面から議論されなかった。

 福島の県漁連は、「海洋放出には断固反対であり、タンク等による厳重な陸上保管を求める」との意見を表明。全漁連も「断固として反対」としている。2018年に開催された説明公聴会では、意見を表明した44人中42人が反対。福島県では59市町村のうち43市町村議会が、海洋放出へ反対もしくは慎重な意見書や決議を可決した。これらを無視しては、意見聴取はポーズにすぎなかったというそしりは免れまい。

 地元の漁業者は、事故直後から東電による汚染水の意図的、非意図的な放出に煮え湯を飲まされてきた。東電が汚染水の漏洩を後から発表したこともある。そうした経緯もあり、県漁連が地下水バイパスやサブドレン(建屋近傍の井戸)からの水の海洋放出について了承せざるをえなかった2015年、ALPS処理水については、東電に「関係者の理解なしには処分をしない」と約束させた。今回の決定は、約束違反だ。

 技術者や研究者などから構成される「原子力市民員会」は、陸上におけるモルタル固化処分や、石油備蓄で使われている大型タンクによる長期安定保管を提言している。しかし、これらについてはほとんど検討されていない。政府の小委員会でも、敷地北側のスペースを活用するため、積んである土を中間貯蔵施設に運びだす可能性が委員から指摘されたが、「調整に時間がかかる」ことを理由に退けられた。東電は敷地の利用計画として、今後取り出すとするデブリの保管場所や研究施設を含めているが、デブリの取り出しは困難を極め、多くのリスクを伴う。

 処理汚染水を海洋放出する場合、希釈してトリチウム濃度を1,500ベクレル/Lとすることになっている。政府は、これを「基準の40分の1に薄めて放出」としているが、これは嘘である。6万ベクレル/Lはあくまでトリチウム単体であった場合の基準である。福島第一原発では、地下水バイパスからの排水のトリチウム濃度を決める際、敷地境界線上における法令上の基準である年間追加線量1ミリシーベルトを達成するため、敷地内の施設からの放射線量など他の線源を考慮し、また、排水に含まれる他核種も考慮に入れて1,500ベクレル/Lと決められた経緯がある。つまり1,500ベクレル/Lは、あくまで規制上の要求であったことに注意が必要である。

 代替案の検討を怠り、真正面からの議論を避け、反対の声を聞き流し、意見聴取会に産業界のみを招へいし、都合のよいロジックによって強行した今回の決定には、何の正当性もない。いまからでも遅くない。政府は代替案やリスクを真剣に議論し、公の場での公聴会を開催すべきだ。

(ノーニュークス・アジアフォーラム通信169号より)