韓国各地で福島原発事故9周年の記者会見

ヨン・ソンロク  (脱核新聞より)

3月11日、福島原発事故から9年目を迎え、韓国各地で事故を記憶し、脱原発を求める記者会見が開かれた。ソウルでは様々な団体が連帯するネットワーク組織である脱核市民行動が日本大使館の前にある平和の少女像の前で記者会見を行なった。原発立地地域である慶州(キョンジュ)、蔚山(ウルサン)、プサン、霊光(ヨングァン)でも、各地で記者会見を開き、地域の懸案事項を糾明し、脱原発を求めた。コロナ19の感染で困難に直面しているテグと慶州は、インターネットでの記者会見を行なった。緑の党など政界も論評を発表し、福島事故9周年の意味をふり返った。

■ ソウル、原発から一刻も早く退却しよう

ソウルなど各地域の31団体のネットワーク組織である脱核市民行動は11日、平和の少女像の前で、日本政府の事故収束作業の問題点を指摘し、東京オリンピックの開催は、多くの人を放射線にさらすことになるだろうと述べた。また、日本政府は福島事故の教訓を忘れ去っているが、韓国の最大野党の未来統合党も、永久停止した月城(ウォルソン)原発1号機の再稼働を求めるなど、「脱原発政策の廃棄」を総選挙の公約として発表したことを強く批判した。

さらに脱核市民行動は、福島の事故が示したように原発はたった一度の事故でも取り返しのつかない被害を与えるだけでなく、高レベル核廃棄物は処理方法がなく深刻な状況だとし、月城2・3・4号機の早期廃炉を要求した。そして、脱核宣言文を読み上げ、「私たちの安全と未来のために、原発から一刻も早く退却する道を共に歩もう」と述べた。

■ 慶州、マクスターに関する住民投票を慶州市に公式要請

慶州共同行動は、3月11日の記者会見で、慶州市と慶州市議会に対して、月城原発に使用済み核燃料の乾式貯蔵施設であるマクスターを建設することへの賛否を問う住民投票を公式要請した。

また、住民の意見集約のために昨年11月21日に設置された「月城原発地域実行機構」の10人の委員の構成をめぐり意見対立が激しく、発足から4カ月が経っても市民と全くコミュニケーションをとらないなど信頼性と公正さを失ったと指摘し、解散を求めた。

そして、マクスターの追加建設は慶州市民に多大な影響を及ぼす政策であるだけに、住民投票を通じた意見集約だけが意見対立を最小化することができるとし、26万人の市民が公論化の主役として参加できる唯一の方法は住民投票であると、その提案理由を説明した。

慶州共同行動は、11日に慶州議会議長と慶州市長へ「月城原発のマクスターに関する住民投票要求書」を渡し、3月20日までの回答を求めた。

住民投票要求に向け、3月12日から27日の午前8時30分から1時間、慶州市役所前で出勤時間に合わせたプラカードアピールを行なう予定だ。さらに、共同行動に参加する13団体は、3月から住民投票を要求する横断幕掲示運動を開始した。3月18日で97回となる脱原発巡礼は住民投票を要求する内容で行なう計画だ。脱原発巡礼は、毎週火曜日の午後2時に慶州駅広場から出発する。

■ 霊光、リスクを認める社会は不可能なのか

3月11日は、全羅南道霊光郡にあるハンビッ原発4号機が運転を停止してから1029日目となる。2017年5月18日に計画予防整備と呼ばれる点検作業を開始したハンビッ4号機の格納容器で、157cmに達する巨大な空隙など、121個の空隙が発見された。ハンビッ3号機の格納容器でも124個の空隙が発見され、整備中だ。

「ハンビッ原発対応湖南圏共同行動(全北、全南、光州)」は3月11日、霊光郡ハンビッ原発正門前で、「リスクを認める社会は不可能なのか?」というタイトルで記者会見を行なった。湖南圏共同行動は、ハンビッ1号機が昨年原子炉出力が急上昇する事故があったにもかかわらず再稼働中であり、3月6日には低圧給水加熱器のチューブから漏水が発見されたと指摘した。続いて「私たちが立っている正門の後ろでおぞましくそびえ立つ原発建屋の中に隠されたリスクは1つや2つではない」と述べ「なぜ私たちはこのようなリスクを取り除くことができないまま、不安の中で暮らさねばならないのか」と反問した。そして、ハンビッ1・3・4号機の閉鎖を要求し、福島事故による命の痛みと苦しみに慰労の意を伝えた。

■ プサン、不可逆的な脱原発実行要求

脱核プサン市民連帯は3月11日、プサン市役所の前で記者会見を行なった。市民連帯は、ムン・ジェイン政権が福島の警告と韓国の地震という脅威の前で脱核時代を宣言したものの、新コリ5・6号機の建設が再開され、脱核時代は60年後に延期されたと批判した。

また、現政権が国民の生命と安全に言及しながら、他国に原発を輸出し、他国民の生命と生活を脅かす矛盾した事態となっていると指摘した。

市民連帯は、韓国の核廃棄物の半分以上を抱えながら暮らす月城住民、甲状腺がんなど様々な病気に苦しむ原発周辺地域住民、送電塔建設の犠牲となった住民の苦悩について言及した。さらに、原発で働く下請け労働者の声は小さいながらも存在していると述べ、この苦痛は将来の世代にまで及びうると指摘した。そして、一日も早く原発時代から抜け出すことが福島事故の教訓だと強調した。

■ 蔚山、持続可能な生き方をめざし 脱原発をしよう

脱核蔚山市民共同行動は3月11日、蔚山市役所のプレスセンターで記者会見を行なった。蔚山共同行動は、まず、福島事故から9年が経過した日本の状況を説明した。

蔚山共同行動は、韓国社会が放射能災害に直面した場合、どのような事態に見舞われるかを推察してみたが、蔚山市と区・郡のマニュアルを確認した結果、災害弱者や一般住民の避難方法が現実的ではないと指摘した。

また、産業通商資源部が推進する「使用済み核燃料管理政策再検討」の公論化は、蔚山市民を意見集約から排除していると述べ、使用済み核燃料管理政策再検討委員会と慶州実行機構の解散を要求した。

そして、全国民的に原発と核廃棄物の処分方法に関する公開討論を行なうことを求め、持続可能な生き方をめざし、脱原発への大きな道へ進もうと述べた。
(訳/高野聡、次の記事も)

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【脱核プサン市民連帯 記者会見文】

福島を記憶せよ! 不可逆的な脱原発の実行を求める!

2011年の今日、福島原発事故が発生しました。9年が経ちましたが、放射能に汚染された海と土、水と大気は回復していません。除染作業が終わったとされる福島では依然として強い放射能の警告音が鳴り響きます。

日本政府は自然と人間の営みを徹底的に破壊した福島原発事故の記憶を消そうとしています。福島の復興を叫びながら、東京オリンピックを推進しています。福島は終わっていません。福島は9年の間、原発が人類の生存と命を破壊することになるという警告のメッセージを送り続けています。福島を記憶し、福島が送るメッセージに、人類は、原発を止めるという具体的な行動で応えなければなりません。

韓国は40余年もの間、答えのない核のゴミを生み出し人類を脅かす原発を稼働し続けてきました。福島の警告、地震という現実的な脅威の前に、コリ原発1号機は永久停止し、ムン・ジェイン政権は脱原発時代を宣言しました。しかし脱原発時代はコリ1号機の永久停止で止まりました。新コリ5・6号機は公論化という名の下、建設が再開され、脱原発時代は60年後に延長されました。また、国民の生命と安全に言及しながら、他国に原発を輸出し、他国民の命と生活を脅かす矛盾した事態が発生しています。

答えのない核のゴミに関しては、再公論化によってしっかりと10万年の責任について話し合わなければならないという市民社会の要求が、議論の見直しをもたらしました。しかし、昨年5月に発足した再検討委員会は、もっぱら臨時貯蔵施設の建設によって原発の稼働が止まらないようにすることのみに汲々としています。

総選挙が近づくと、脱原発を宣言したことはないと言い出す「共に民主党」議員の発言が飛び出すかと思えば、核融合の科学者を候補に担ぎ出す事態まで起こりました。

脱原発宣言は、政治家、官僚、産業界、メディア、学者などいわゆる核マフィアの強固なつながりを断つという、従って二度と脱原発から後退したり、逆行してはならないという宣言でなければなりません。しかし私たちは、脱原発時代を宣言したムン・ジェイン政権下で、脱原発に矛盾した行動、後退と逆行を目撃しています。脱原発政策は可逆的であってはなりません。私たちは不可逆的な脱原発政策の実行を強く要求します。

韓国の半分以上の核のゴミを抱えながら生きていかなければならないウォルソン住民と、原発により生業を奪われた住民を忘れてはなりません。原発と甲状腺がんの関連性について、放射能基準値だけを云々する者たちに「私たちの体が証拠だ」と憤り、叫ぶ住民たちを忘れてはなりません。送電塔問題をたどってみると原発に行き着いたと言い、脱原発の教えを伝えてくれたミリャンのおばあさんやおじいさんの声は今もはっきりと生き続けています。原発で命を削りながら被曝労働をしている下請け労働者の声は小さいながらもこの社会に存在しています。

原発に苦しめられてきた人々の声は、原発の歴史と共に存在してきました。そしてその苦しみの声は、現世代だけでなく将来の世代にまで継続せざるをえません。一日でも早く原発の時代をやめなければなりません。それが福島事故9周年の教訓であり警告です。

世界中で気候危機非常事態が宣言されています。現在まで人間が作ってきた、人間が順応してきたシステムへの問題提起をしなければなりません。

今までのシステムは、無限の利潤を求めて無限の競争をし、過剰に生産するシステムでした。生産の原動力となる燃料は、石油や石炭など、自然に対する略奪や搾取を基盤としてきました。それとともに、クリーンで安全で安いエネルギーという触れ込みで、原発も現在のシステムと共存し、核マフィアの権力を堅固なものとしてきました。

脱原発と気候危機への対応は切っても切り離せない関係にあります。システムと構造を根本的に変えない限り、解決への道は開けません。

「未来がないのに勉強に何の意味があるんだ」と街頭へと繰り出す少年・少女の声に注意を傾けなければなりません。将来世代が作り出そうとしている世界は、現在のシステムを打破してこそ可能です。現世代が作り出し、順応してきたシステムに対して、ノーと言いましょう。将来世代と共に、脱原発時代を開き、正義にかなったエネルギー転換によって、持続可能な未来を作っていきましょう。
2020年3月11日
脱核プサン市民連帯

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信163号(4月20日発行、B5-24p)もくじ

・韓国各地で福島原発事故9周年の記者会見
(ヨン・ソンロク)

・福島を記憶せよ! 不可逆的な脱原発の実行を求める!
(脱核プサン市民連帯)

・福島の教訓を忘れないで
(台湾・全國廢核行動平台)

・東海第二原発の再稼働の是非を問う「県民投票」の実現をめざして
(姜咲知子)

・宗教者が核燃料サイクル事業廃止を求める裁判
(大河内秀人)

・関電役員の追加告発人を募集中
(末田一秀)

・新潟県津南町議会が「除染土再利用の省令案の再考を求める意見書」を採択
(小木曽茂子)

・福島第一原発事故によるタンク貯蔵汚染水の陸上保管を求める共同声明

・『ノー・ニュークスで生きる権利-原発メーカー訴訟から新しい社会へ』
(島昭宏)

・東日本大震災と福島原発事故を題材にした小説を語る(2)
(宇野田陽子)

・老朽原発うごかすな
(アイリーン・美緒子・スミス、吉田めいせい、稲村守、高橋精巧)

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老朽原発うごかすな

(宮下正一・木戸惠子・中嶌哲演・藤本泰成・林広員・草地妙子・東山幸弘・井戸謙一・小橋かおる・末田一秀・滝沢あつこ・笠原一浩)
*ノーニュークス・アジアフォーラム通信・号外(2020年3月20日発行)より

■ 全国のみなさんの参加を心よりお願いします

 宮下正一(原子力発電に反対する福井県民会議)

2019年9月27日に、関西電力の会長や社長など幹部役員20名に3億2000万円ものお金が工事請負会社から還流されていたことが明らかになった。

この報道にとてもビックリした。「原発マネー」は、原発を建設・運転するために自治体首長や地域の有力者あるいは国会議員などに使われているものと思っていたからだ。

わかっているだけでも3憶2000万円の巨額資金が、こともあろうに発注者である関電幹部役員に還流されているとは思いもよらなかった。

電力会社は私企業であるが、市民一人一人が電気料金として支払っていることから極めて公共性が高い。さらに、電力事業者は、決して赤字にならないように法律によって守られている。

そのような関電の幹部役員たちのなかで、私腹を肥やす行為が蔓延していたのだ。「こんなこと絶対許せない!」と全国から集まった3,371名により2019年12月13日(翌年の1月31日も含め)、大阪地方検察庁に「事実を明らかにして関係者を処罰してほしい」と告発した。

3月14日に行なわれた関電の第三者委員会の最終報告では、森山氏から関電役員たちに渡された金品により、吉田開発などに不正な工事発注がなされていたことを認めている。

告発状は受理されていないが、ここまで来たからには、大阪地検に対して「直ちに告発状を受理し、捜査を開始すべき」と要請を強めていく。私たちは、今回せっかく掴んだ巨悪の尻尾は絶対離さず、その正体を見るまで、闘い続けよう。

関西を中心とした反原発団体は、高浜1・2号機や美浜3号機など、運転から40年間を超える老朽原発の再稼働を絶対許さないと、昨年11月からリレーデモなどを行ない、運動を強めている。

そして、大阪市の中之島公園で、「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」を1万人以上の参加を求めて行ない、老朽原発再稼働反対のうねりを大きく広げていきます。全国のみなさんの参加を心よりお願いします。

■ いまこそ、老朽原発を止めるチャンス

 木戸惠子(若狭の原発を考える会)

●若狭の老朽原発再稼働は、全原発の60年運転への道

福島原発事故は、人の営みを根こそぎ奪い去ることを、尊い犠牲の上に教えました。避難者は今でも故郷を追われて、苦悩の生活を強いられています。

それでも関電は、45年、44年、43年超え老朽原発、高浜1・2号機、美浜3号機の再稼働を画策しています。老朽原発では、取り替えることのできない圧力容器が大量の放射線に長期間曝されて脆化(固く脆くなり壊れやすくなる)し、配管の減肉(やせ細ること)や腐食が進み、事故の確率は格段に高くなります。全国に先駆けて関電が企てる老朽原発再稼働を許せば、全国の原発の60年稼働への道を拓くことになります。なんとしても止めねばなりません。

●40年超え運転は約束違反

「若狭の原発を考える会」では、原発立地・若狭の集落から集落へ反原発を訴えるチラシを配り歩く活動「アメーバデモ」を月2回、各回1泊2日で行なっています。アメーバデモが5年目になる昨年は主として老朽原発再稼働反対を訴えましたが、「関電は45年にもなる危険な高浜1号機を動かそうとしています」と言ってチラシを渡すと、地元の方から「約束違反やな」「若狭の原発は40年で廃炉になると聞いていた」「アカン、アカン、あんなもん動かしてどうするんや!」「政府も40年超え運転は“例外中の例外”と言っていたはず」など、老朽原発再稼働への怒りの声が数多く返ってきました。

昨年9月、私たちの電気料金で支払われた工事費が、関電幹部に還流され、福井県職員、小浜警察所幹部、元高浜町長などにも金品として贈与されていたことが明らかになりました。また、4月から電力会社の思いのままの原発稼働を可能にする「新」新検査制度が始まります。金にまみれ、企業倫理が地に落ちた関電に、危険な老朽原発をうごかせる能力も資格もありません。

●老朽原発を止めるのは、市民一人ひとりの行動

老朽原発うごかすな!の怒りの声は、昨年10月から11月の「老朽原発うごかすな!キャンペーン期間」に各地で行なわれた集会やデモ、11月23日から16日間の「高浜原発-関電本店リレーデモ」「12.8関電本店包囲全国集会」(161号参照)へと続きました。

「大飯原発運転差し止め」の仮処分を命じた樋口英明元裁判長は、「原発を止めるのは、首相や立地自治体の首長に原発を断念させること、裁判で原発を差し止めること」、そして「最も大切なのは市民一人ひとりの行動」と話されています。

安倍政権や関電の原発60年運転の野望を打ち砕くために、1万人を超える総結集で「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」を成功させましょう!

■ 第二のフクシマを未然に防ぐために

 中嶌哲演(原子力発電に反対する福井県民会議)

関西圏の大量の電力消費のために若狭に集中した15基もの原発群のうち、7基の廃炉は決定しているが、まだ8基の再稼働・延命が強行、画策されている。8基中7基は関西電力のそれ、とくに40年超の老朽炉の美浜3号機と高浜1・2号機の延命は許しがたい。

4000億円近くの巨費を投じた「安全対策工事」も終盤にさしかかっており(私が昨春12日間の断食で訴えたのは、その工事中止だったのだが)、高浜1号が6月ごろ、美浜3号が8月ごろに再稼働を強行突破しようというもくろみのようだ。

原発マネーの関電への不正還流を大々的に報道したメディアのはたらきと、それを告発した広範な世論と運動が、ついに関電経営陣のトップを辞任にまで追い込んだ。

老朽原発の廃炉をめざす「老朽原発うごかすな!大集会in大阪」が開催される。その大結集へ向けて、あらゆる大中小の団体・グループ、個人有志がこれまでに地道にとりくみ続けてきた個別の課題とも結びつけながら、共同・協働の輪を一気に広げよう。

地震や火山爆発は止められなくても、原発や核燃料サイクルを止めることはできる!

第二のフクシマの惨禍を未然に防ぐために!

■ ここに、日本の悲劇がある

 藤本泰成(原水爆禁止日本国民会議)

関西電力による会社ぐるみの収賄事件の第三者委員会の最終報告が出た。記者会見で但木敬一委員長は「刑事告訴は困難」と述べた。「不正の請託」が立証できないとの趣旨を述べているが、関電による「森山関連企業」への不正発注は事実であり、公共性の高い電気を独占的に販売してきたことを考えるならば、会社法による収賄罪や特別背任にあたるのは当然ではないか。明らかになった多くの事実があっても何らの処罰も受けないのは、電気を関電から買わされてきた市民にとっては納得がいかない。

電力業界は納得のいかないことばかりではないか。福島原発事故から来年は10年を迎える。巨大津波の可能性を指摘されていたにもかかわらず、何ら対策をとらずに事故を引き起こした経営陣は、無罪だという。フクイチは、未だに人を寄せつけない。事故収束の目処など全く立たない。周辺地域には住むこともできない。フレコンバックがあちこちに置かれている中に、一部住民は帰還を余儀なくされている。原発の危険性は明らかなのに、政府や電力会社は原発をあきらめない。

世間は原発などもってのほかと考えるから、どこにも新規原発はつくれない。つくれないとなると今度は、驚くことに、もっと危険な老朽原発を動かそうとする。しかも、40年を超えて60年超も認めようとの声が聞こえる。開いた口が塞がらない。

安倍政権に、将来を見据えた展望は全くない。原発などない方が良いし、石炭火力もない方が良い。そんなことは自明の理だ。であれば、10年、20年後のエネルギーをどう賄っていくのか誰しもが考えるが、考えない。あげくは、恥ずかしげもなく「日本の原発は世界一安全」を謳い文句に、売れないにもかかわらず、世界に原発を売り歩く。先を見る目が全くないのか見ないのか、今だけの政治がまかり通る。そこに、日本の悲劇がある。

■ 関西電力に原発を動かす資格なし

 林広員(オール福井反原発連絡会)

「関電問題は福井の恥です」と福井県民に怒りが広がっています。この怒りは、原発マネーを基に関電と立地自治体と政界が「持ちつ持たれつ」で、私たちの税金や電気料金を食い物にしているところからです。

第三者委員会報告では、役員報酬カット分を後で補填していることが明らかになりました。国民には電気料金を上げて負担を増やし、自らは内々に報酬を戻している関電の姿に、一般の企業のモラルなどありません。このような金まみれの関西電力に原発を動かす資格などありません!

金品の流れは福井県にも広がり、顧問弁護士を委員長にする内部の「調査委員会」が結果を発表。県の幹部109人が金品を受領したことや、杉本知事、西川前知事は贈答品を含めて金品の授受はなく栗田元知事は中元や歳暮を受け取っていたと公表。

これでは身内が身内を調べたもので不十分と、私たちは第三者委員会を設置せよと迫りました。しかし福井県は内部調査の発表で打ち切りにしています。

「老朽原発動かすな!福井県実行委員会」が県内の各自治体議長あてに「関電の原発マネー還流問題の真相究明を求める」請願を行ない、高浜町、勝山市、越前市、鯖江市で採択され全県で問題となっています。

このような腐敗構造を生んだ根本には、安倍政権の原発推進政策があります。「国策」として「原発推進政策」を行なう安倍政権は、エネルギー基本計画で原発をベースロード電源と位置づけ、将来全電源の20~22%を原発が占めるように策定。その中心を担わせた関電の問題に対して、安倍総理は「関電は民間企業だから。第三者委員会の調査に委ねる」との態度に終始。国として真相究明に背を向けています。

大集会を成功させて、関電と国・規制委員会、立地自治体首長など「原発推進共同体」を包囲し、世論と運動を盛り上げ、追い詰めましょう!

■ 見過ごせない!老朽原発の杜撰な審査

 草地妙子(老朽原発40年廃炉訴訟市民の会)

私たちは名古屋地裁で、関西電力の老朽原発3基に出された「運転期間延長認可」の取り消しを求めて裁判をしています。原子力規制委員会が杜撰な審査で認可していたことを明らかにし、当該原発を廃炉にすることをめざしています。

老朽原発が潜在的に危険なことはだれの目にも明らかです。それをあたかも「特別な審査」をしたかのように装い、お墨付きを与えているのが規制委員会です。老朽化最大の懸念事項である原子炉容器の劣化に関する審査においてさえ、試験の元データを見ることなく、関西電力の審査書の結果を鵜呑みにしていました。指摘されると、あろうことか「関西電力の品質保証体制を確認しており、信頼できるから問題ない」と開き直る始末です。関西電力の金銭不正受領事件で、企業としてのガバナンスやコンプライアンスの欠如が明らかにされた今、市民の納得はとうてい得られない本当に苦しい反論だと思います。

提訴からまもなく4年が経ちます。裁判が行なわれている間にも、関西電力は再稼働に向けた工事を進めてきました。進捗状況の詳細はわかりませんが、関西電力が再稼働するにあたっての障壁は少なくない状況に追い込まれてきていると思います。

あらゆる方面から様々な手段でさらに追い込んでいくために私たちの力を結集していきたいと思います。福井・関西の皆様をはじめとする全国的な運動に、名古屋からも参与できますことを大変意義あることと受け止めています。この輪をさらに大きく広げていくために共に頑張りたいと思います。

■ 危険な原発は廃炉に

 東山幸弘(ふるさとを守る高浜・おおいの会)

1月6日に定期検査のため高浜3号機は停止しました。前回定検のときに見つかった蒸気発生器細管の傷を原因不明のまま運転していました。そして、昨年10月に定検に入った4号機でも3台ある蒸気発生器のすべてから計5つの損傷が見つかりました。これも傷付けた原因不明のまま、栓をすることで原子力規制委員会は「良し」と許可し、早々に1月30日に起動してしまいました。何よりも恐れたことは、再度3号機の蒸気発生器細管に傷が見つかると、もう4号機は運転できません。そのため起動を急いだのです。やはり、またもやというべきか、2月18日に2つの蒸気発生器で各1本、2カ所に損傷が見つかりました。安全など二の次で、一日でも多く動かすことしか頭にありません。許すことができません。

加圧水型原発の最大の弱点は「蒸気発生器」で、1器3千本以上ある細管が応力割れや支持金具部での磨耗損傷を起こしており、「栓をする」ことで切り抜けています。しかし、1本でも破断すれば、一斉に制御棒が挿入されて緊急停止するとともに、緊急冷却装置ECCSが働き、冷却水が補給されます。現に1991年2月9日、美浜2号機で細管破断(支持金具との接触摩耗が原因と発表あり)によってECCSが働くという日本で初めての経験をしています。核燃料棒が溶解するメルトダウン一歩手前の状況でした。

関電は老朽原発延命のため、取り替えられるものすべてを取り替えているから「安全」だと宣伝していますが、一番重要な「原子炉圧力容器」は取り替えられません。長年の運転による中性子照射のため脆性化しており、ECCSが作動すると、強固なはずの圧力容器が、あたかも熱せられたガラスコップに冷たい水を注げばパリッと割れることと同じ状況になります。

原子炉破壊の危険度ワーストテンを順に並べると、玄海1号(廃炉)、高浜1号(40年超)、大飯2号(廃炉)、美浜2号(廃炉)、美浜1号(廃炉)、川内1号、高浜4号、伊方1号(廃炉)、美浜3号(40年超)、高浜2号(40年超)となります。近々稼働予定の高浜1号は日本一、危険な原発です。何としても再稼働させない、廃炉にすることです。

■ 壮大なウソ

 井戸謙一(福井原発訴訟<滋賀>弁護団)

福島地裁で行なわれている子供脱被ばく裁判、2020年2月14日には福島県立医大鈴木眞一教授の証人尋問が、3月4日には福島県健康管理アドバイザー山下俊一氏の証人尋問がそれぞれ行なわれました。

鈴木氏は、福島県民健康調査で発見された小児甲状腺がん患者の大部分の摘出手術を担当した医師ですが、すべては手術が必要な症例であったと証言し、過剰診断、過剰治療であるとの考え方を明確に否定しました。他方、福島県で小児甲状腺がんが多発しているとの見方を否定しましたが、「他の都道府県でも同じ割合で小児甲状腺がん患者が潜在しているとすれば、全国で1万人をこえる子どもたちが手術を待っていることになる、その子どもたちを救わなくてもいいのか」という質問に対しては、明確な回答はなされませんでした。

山下氏は、福島原発事故直後に行なわれた福島県内の講演会で、「100ミリシーベルト以下の被ばくでは健康被害がない」と言ったのは誤りで、正しくは「証明されていない」であること、「水道水からセシウムが出ない」と説明したのは誤りで、検出されること、「1ミリシーベルト被ばくをすると遺伝子が1か所傷つく」と説明したのは誤りで、「1ミリシーベルトの被ばくをすると遺伝子が37兆か所で傷つく」が正しいこと、すなわち37兆分の1の過小評価であったことを認めました。当時、未知の不安にさいなまれていた多くの人たちが、壮大なウソによって被ばく地に縛り付けられたことが明らかになった瞬間でした。

被ばく問題についてのウソ、それは今も大手を振ってまかり通っています。

■ 老朽原発を動かすな

 小橋かおる(さよなら原発神戸アクション)

高浜原発1・2号機、美浜原発3号機は、それぞれ運転より45年、44年、43年を超える原発です。本来の原則では、運転から40年を超えた時点で、廃炉となっていなければならない老朽原発です。この原則を外して老朽化した原発を動かすことがいかに危険であるかは、東京電力福島第一原発1号機を見れば明らかでしょう。

福島第一原発1号機は、1971年3月26日より営業運転を始めました。2011年には運転より40年を迎えるため、本来は廃炉になる原子炉でした。しかし、2010年3月から定期点検・点検停止していた1号機は10月に再稼働。そして、経済産業省原子力安全保安院は2011年2月7日、さらに10年間運転を延長する保安規定の変更を東京電力に認可し、3月11日、東日本大震災発生。そしてあの3月12日の水素爆発が起きたのです。

2010年当時の私は、その数年前から六カ所村の再処理工場に関心を持ちだし、原発については少し知っている程度でしたが、福島第一原発1号機の40年超えを認める再稼働には、とても憤りを感じていました。そして、福島第一原発事故。あの再稼働さえなければ、40年超えさえなければ、1号機が事故を起こすこともなく、2号機、3号機という連鎖的な事故も起きなかったのではないかと、今でも悔やみます。

同じ後悔をするわけにはいきません。私が住む神戸からも90キロほどしか離れていない高浜原発、そして美浜原発。あの40年超えの老朽原発を動かしてはなりません。関西電力という企業の経営収支のために、なぜ私たちの故郷、暮らし、健康、人生、未来が危険にさらされなければならないのでしょう? いったん事故が起きれば、近畿だけでなく、周辺何百キロもの地域が放射能汚染されかねません。

東京電力福島第一原発事故という人類史上でも最悪の原発事故をくり返さないために、また自分の住む町を放射能汚染で失わないために、老朽原発を動かすな。この災害列島で、どの原発も動かすな。

原発のない、そして無用な被ばくのない日本を、皆で実現したいと強く思っています。

■ 関電第三者委員会の報告を受けて

 末田一秀(はんげんぱつ新聞編集委員・関電の原発マネー不正還流を告発する会)

関電役員らが高浜町元助役森山氏らから金品を受領していた問題について調査していた第三者委員会が、3月14日に調査結果を公表した。関電の金品受領者は、当初の社内調査委員会が明らかにしていた20人から75人に変わり、総額も3億6千万円相当になった。森山氏の求めに応じて、関連会社に入札を経ずに工事発注をしていたことなど、様々な便宜行為や不正行為が認定されている。

関電が第三者委員会に提出した1994年の資料には、森山氏の10数件の関電への「貢献」が記されており、「公開ヒアリングを取り仕切って成功させた」「チェルノブイリ事故に際し、地元団体からの陳情書を町限りにとどめ公にしなかった」「原発内での業者の圧死事故に際し、警察・地元関係に対する無言の圧力により穏便に済ますことができた」などが挙げられている。関電が被害者でないことは明らかだ。

関電自体の企業統治が崩壊していたと断じざるをえず、関電に原発運転の資格はない。関係した役員や隠蔽に手を貸した監査役らの責任は極めて重く、関電は関係役員らの責任追及訴訟を提起すべきである。

関電は社外取締役を活用した会社形態「指名委員会等設置会社」への移行などの再発防止策を検討していると報じられているが、企業統治の強化は委員会など形を作ることだけでは達成できない。情報公開と説明責任の徹底を図り、市民の監視下に企業経営が置かれるべきである。

第三者委員会の報告書をもってしても、なお私たちの疑問には解消しない点がある。不当な金品により工作された全容は解明されたのか? 原発関連マネーが政治家へ流れていなかったのか? 寄付金名目で流されたお金は適正だったのか? などである。

これらの解明には、捜査権限を持つ検察が動く必要がある。12月13日に3000人を超える市民が行なった告発を、本稿執筆時点で大阪地検は受理すらしていない。直ちに受理して捜査を尽くし、実態を解明すべきである。

■ とことん腐敗している関電を許さない

 滝沢あつこ(脱原発へ!関電株主行動の会)

昨年発覚した関電原発マネー不正還流は怒りが頂点に達するできごとでした。私たち株主は年1回の株主総会で、名前があがっている役員の顔を見、答弁を聞いています。寄付金や報酬額の質問には答えません。森山氏に国税庁が入った一昨年も、内部告発文書が取締役に届けられた昨年も、株主には何も公表されませんでした。今年厳しく追及する所存です。

いま関電の不正を糺すために株主だからできること、それは株主代表訴訟です。昨年11月27日、株主のメンバー5人で関電監査役に対して「取締役に対する責任追及訴訟提起請求書」を提出しました。これは 取締役が会社に損失を与えたので、監査役として取締役を提訴しなさいというものです。請求後60日以内に提訴しなければ、私たち株主が監査役に代わって株主代表訴訟を起こします。期限は今年1月末でしたが、監査役から代理人弁護士に「第三者委員会の報告を待ってから決定する」と返答がありました。

3月14日、関電原発マネー不正還流の調査にあたった第三者委員会の報告がありました。精査はこれから行なわれると思いますが、放漫な金の使い方が露わになりました。報告書によると関電は、福島事故後の赤字に際して行なわれた役員報酬カットの分を業績回復時には補填すると決定していました。また高額の金品を受け取っていた豊松、森中、鈴木、大塚の各氏の追加納税分を会社が肩代わりすると決定していました。実際、豊松氏に昨年6月から報酬補填分90万円、追加納税分30万円、報酬と合わせて毎月490万円が支払われています。責任を問われ退任した元副社長豊松氏はエグゼクティブフェローという肩書きで報酬を受けていたのです。

とことん腐敗しているとしか言いようがありません。取締役は会社の社会的信頼を失墜させました。会社が損なった利益を取締役に請求し、会社に返却させることができるのは株主代表訴訟です。これから提訴の準備をしていきます。

■ 関電は再エネ先進企業として再生を

 笠原一浩(大飯原発差止訴訟・福井弁護団)

●歴史的な福井地裁判決

福井地方裁判所は、2014年5月21日、大飯原発3・4号機の運転差し止めを認める歴史的判決を言い渡しました。判決が言い渡された瞬間、弁護団や原告団事務局のメンバーが、それぞれ「差し止め認める」「司法は生きていた」という垂れ幕を掲げましたが、とくに後者について、深い共感を寄せた市民は多かったことでしょう。

この判決は、仮処分決定を別とすると、福島第一原発事故後初めての、原発裁判における司法判断です。福島第一原発事故の被害をふまえ、行政庁の判断を追認してきた裁判所の姿勢に変化が生じることが、多くの市民から期待されていましたが、この判決は、その期待に十二分に応えるものとなりました。

残念ながらこの判決は、4年後、名古屋高等裁判所金沢支部により覆されてしまいました。しかし、高裁判決も、福井地裁判決の事実認定そのものは否定していません。むしろ、地震に関する科学の限界について、福井地裁判決の指摘や島崎先生の知見を肯定しています。高裁判決は、私たちの訴えについて「立法論であって司法の役割ではない」と逃亡することによって、福井地裁判決の結論を覆してしまいましたが、両判決のいずれが正しかったのかは、翌年、歴史が証明することになりました。

●関電スキャンダルが意味すること

現在、関電スキャンダルが大問題となっていますが、この問題も結局のところ、原発という発電手段は、正常な方法では実現できないということを意味しています。

私たちが7年前に大飯原発差止訴訟を始めたのも、決して関西電力を倒すことをめざしたものではなく、より地域(関西一円)に愛される企業になっていただくことをめざしたものです。

私はこの裁判と無関係に一般業務で関西電力の関係者と接することも少なくありません。個々の従業員を見る限りでは、優秀で誠実な人が多いといえます。むしろ、今までのエネルギー政策では、この春に学校を出て関西電力に就職した人が、定年まで勤められないおそれが高いといえます。

再エネに舵を切ってこそ、関西電力にとっても今後50年、100年にわたって存続できるようになるといえますし、国のエネルギー政策に最も必要なことも、電力会社のそのような転換を応援することです。

私は刑事告発の弁護団にも加わりましたが、この事件を通じて、「再エネ先進企業としての新しい関西電力」の展望が開かれることを強く期待します。

 

韓国2019年 記憶すべき脱原発ニュース

韓国「脱核新聞」より

「2019年 記憶すべき脱原発ニュース」を日付順にまとめました。文在寅政権が脱原発政策を発表したにもかかわらず、原発の建設と運転許可が続いており、原発技術関連産業と輸出計画は依然として拡大中です。また、最低でも10万年間の責任を議論しなければならない高レベル核廃棄物管理政策の見直しが拙速に進められています。脱核新聞は「2019年 記憶すべきニュース」をまとめることで、改めて問題を想起し、各地域や現場でくり広げられるであろう2020年の闘いに少しでも力となれればと思います。
(まとめ:ジョン・スヒ、ヨン・ソンノク、キム・ヒョヌ、パク・ヒョンジュ、イ・ホンソク)(訳:高野聡)

1.核廃棄物の搬入が中断した慶州(キョンジュ)の中・低レベル核廃棄物処分場

2019年1月から慶州の中・低レベル核廃棄物処分場への核廃棄物搬入が中断された。これは原子力研究院による核種分析のエラーのためであり、規制当局の原子力安全委員会は、原子力研究院が15年以降に処分場へ運んだ核廃棄物を調査した結果、2600個のドラム缶のうち、2111個のドラム缶で3260件に及ぶ核種分析のエラーが検出されたと発表した。処分場を運営する原子力環境公団は核廃棄物の試料を採取して分析しており、結果は近々出る予定だ。一時期、処分場にあるすべての核廃棄物を取り出して再調査すべきだという問題提起や、韓国水力原子力と原子力安全委員会の責任も問うべきだとの主張もあったが、現在は沈静化した状態だ。

2.安全処置が不十分ながらも新コリ4号機に運転許可

19年2月1日、原子力安全委員会は、蔚山(ウルサン)の新コリ原発4号機の運転を承認した。加圧器安全放出バルブの漏洩などがあったにもかかわらず、原子力安全委員会は、主要設備の安全性確保を放置したまま、本格審査1日のみで運転許可を下した。

脱原発陣営は4月に蔚山を中心に「新コリ原発4号機運転許可処分取り消し訴訟」を開始した。訴訟人団の募集期間は一週間しかなかったが、全国で732人の市民が訴訟に参加した。訴訟は現在、ソウル行政裁判所で進行中であり、20年1月9日、2次弁論が行なわれる予定である。

一方、韓国水力原子力は19年12月6日に新コリ3・4号機の竣工式を行なった。

3.違法にもかかわらず工事を中止しない新コリ5・6号機

19年2月14日、ソウル行政裁判所行政第14部は、グリーンピースと市民599人が提起した「新コリ原発5・6号機建設許可処分取り消し訴訟」で、欠格事由のある原子力安全委員会委員が建設許可の決定に参加した点、放射線環境影響評価書にシビア・アクシデントの記載が抜け落ちている点を認定し、違法であると判断した。

しかし、建設を中断する場合、複雑な法律的争点が発生する上、建設中断による損失が大きいという理由をあげ、建設を継続してよいという「事情判決」を下した。

これに対し訴訟団は直ちに控訴し、ソウル高等法院で11月19日に控訴審3次弁論が行なわれた。現在新コリ5・6号機の工事は続いており、11月28日に5号機の原子炉が設置された。

4.ハンビッ1号機原子炉出力急上昇事故

5月10日、霊光(ヨングァン)にあるハンビッ原発1号機の出力が急上昇する事故が発生した。韓国水力原子力は、ハンビッ1号機の熱出力が18%急上昇したにもかかわらず、すぐに原子力安全委員会に報告せず、12時間近く運転を停止しなかった。

また、韓国水力原子力は運転を停止しなかった理由について、「原子炉出力急上昇の事実を知らなかった」と原子力安全委員会に虚偽の報告をした。

検察の捜査の結果、 韓国水力原子力はハンビッ1号機の再稼働の時期が延期になることを懸念し、無資格者が制御棒を操作した事実を隠して、不正確な資料と虚偽の陳述書を提出して調査に混乱を与えた。その結果、韓国水力原子力の関係者7人が起訴された。

しかし原子力安全委員会は根本的な改善策のないままハンビッ1号機の再稼働を許可し、11月2日には1号機が再稼働した。

霊光、高敞(コチャン)、光州(クァンジュ)、全州(チョンジュ)、井邑(ジョンウプ)など湖南(コナン)圏の市民団体と脱原発団体はハンビッ1号機の閉鎖を要求している。

5.プサン市機張(キジャン)の研究炉に運転許可。大田(テジョン)のハナ炉研究炉で相次ぐ自動停止

5月10日、原子力安全委員会はプサン市機張郡の研究用原子炉(熱出力1万5千kW)の建設を許可した。この研究炉は2022年3月までに完成する予定で、建設費は4389億ウォンにのぼる。プサンの市民団体は機張研究炉の運転許可取り消しを求めている。

大田にあるハナ炉研究炉(熱出力3万kW)は12月6日、再稼働の3日後に再び自動停止した。これを受け、廃炉を主張する市民社会の声はさらに大きくなった。ハナ炉はトリチウムやヨウ素などの気体放射性廃棄物の排出量が商業用原発並みに多い。

6.でたらめな高レベル核廃棄物見直し議論

産業通商資源部(産業部)が5月29日に「使用済み核燃料管理政策再検討委員会」を設置し、見直しの議論を進めている。再検討委員会は11月21日に「月城(ウォルソン)原発使用済み核燃料慶州地域実行機構」と協約式を結び、慶州実行機構を発足させた。全国の脱原発陣営は、再検討委員会と慶州地域実行機構の解体を求めている。産業部は、慶州地域実行機構を通じて、使用済み核燃料の「乾式貯蔵施設」を建設するかどうかを決定する予定だ。

しかし慶州実行機構は慶州市民だけで構成されているため、となりの蔚山(ウルサン)市の住民が強く反発している。蔚山市は月城原発の放射線非常計画区域内に人口100万人以上が居住している。蔚山市の中区庁、北区庁、東区庁などは市民団体とともに再検討委と慶州地域実行機構を批判する記者会見を開いた。

現在の高レベル核廃棄物の見直し議論は最終処分場が確定されるまで、使用済み核燃料を各原発立地地域が保管することを前提としている。国民が核廃棄物の問題をどのようにとりくむか議論する前に、核廃棄物の問題を地域住民に押しつけるものだ。

さらに悪いことには、再検討委は「乾式貯蔵施設」の問題を原発が所在する自治体が決定できるようにすることで地域社会に大きな対立と混乱を引き起こしている。

7.三陟(サムチョク)指定告示解と新蔚珍(ウルチン)3・4号機論争

5月31日、産業部は三陟の大津(テジン)原発予定地の指定告示を解除した。しかし、同じく新規原発の予定地に指定されている盈徳(ヨンドク)では、まだ告示が撤回されていないままだ。

このほか、新蔚珍(新ハヌル)3・4号機も白紙化の手順が正常に進んでいない。新蔚珍3・4号機は建設工事に着手してはいないが、2017年2月に産業部が発電事業を許可した状態だ。

現行の電気事業法は、事業者が法に違反したり、欠格事由がある場合にのみ、発電事業の許可を取り消すようにしている。文在寅政権は第8次電力需給計画を策定する際に、新蔚珍3・4号機は今後の電力生産がないものとみなして、再生可能エネルギーの拡大政策を打ち立てた。しかし政府は新蔚珍3・4号機建設白紙撤回の措置を迅速に行なっておらず、論争となっている。

原発「推進」陣営は、地域経済と原発産業活性化のために新蔚珍3・4号機の建設が必要だとして50万人の署名を大統領府に渡した。

8.低線量被曝労働の労災認定と不認定。原子力安全委員会の規定、一部の疾病は労災不認定

19年、注目すべき原発労働者の業務上疾病判定があった。低線量放射線被曝を業務上の疾病に認めたのだ。勤労福祉公団は7月3日、月城原発の日雇い労働者として勤務したAさんの血小板減少症(骨髄異形成症候群、白血病の一種)を業務上の疾病と認定した。勤務期間中の放射線被曝は基準値(実効線量1年累積基準値50mSv)以下だったが、血小板減少症は被曝により発症したと判断したのだ。

一方、勤労福祉公団は、月城原発で327日間働いて放射線にさらされたキム・ジョンイル氏の「ホジキンリンパ腫」については労災認定をしなかった。がん発症との関連性の根拠が弱いという理由だが、現在この件は訴訟へと至り、第二審が進行中である。この判定には、原子力安全委員会の「放射線作業従事者等の業務上の疾病範囲」の規定が影響を及ぼしたという指摘もある。この規定は、ホジキンリンパ腫を業務上の疾病の範囲から外している。

9.157cmの巨大な穴が発見されたハンビッ4号機

7月24、霊光(ヨングァン)のハンビッ4号機の格納容器のコンクリートで157cmに達する巨大な空隙(すき間)が発見された。格納容器のコンクリートの厚さが167cmなので、10cmの壁で原発を20年もの間稼動してきたということだ。

原子力安全委員会は、2016年6月にハンビッ2号機格納容器の鉄板の腐食が発見されて以来、全国19基の原発の格納容器で空隙と鉄板の腐食が生じていないか点検してきた。その結果、19年9月までに鉄板の腐食は10基で777カ所、空隙は8基で295カ所発見された。一方、霊光では「ハンビッ原発の安全性確保官民合同調査団」を組織し、韓国水力原子力と原子力安全委員会が発見できなかった安全上不安な点などを相次いで発見するという成果をあげた。霊光を除く他地域の原発の鉄板とコンクリートの状態に関する情報は詳細に伝えられていない。

10.警察庁長官、密陽(ミリャン)と青島(チョンド)に謝罪

7月25日、警察庁長官が密陽と青島の送電塔建設反対住民に直接会い、警察が行なった人権侵害について謝罪した。これは「警察庁人権侵害事件真相調査委員会」の勧告に従ったものだ。

真相調査委は、送電塔の建設強行とそれに伴う警察を大規模に動員した暴力的鎮圧、住民の取り調べや監視、通行制限、カメラ撮影、住民への買収などの人権侵害に関する事実を確認した。真相調査委は、警察庁長官の公式謝罪のほか、再発防止に向け、情報警察の業務と役割を統制する方法、住民通行権の保障、集会やデモの安全対策、カメラ撮影の規則改正など制度の補完を行なうよう勧告した。さらに密陽・青島の住民の精神的・身体的健康被害に関する実態調査を行ない、その結果に従った治療方法を策定することを勧告した。

しかし、警察庁長官の謝罪以外には、勧告に対する警察庁や政府の履行はまともに行なわれていない。

11.一審勝訴判決を覆したキュンド一家訴訟二審判決。最高裁に上告

8月14日、2012年に始まったキュンド一家訴訟の二審判決があった。一審の判決(訳注:14年10月、コリ原発近隣住民の甲状腺がんについて原発との因果関係を認めた)と異なり、二審の裁判所は、低線量放射線被曝とがん発症の関係は証明できず、科学的・医学的・生物学的根拠が不足だとし、キュンド一家の訴えを棄却した。訴訟団は直ちに上告し、現在最高裁判所の判決を待っている。

一方、キュンド一家の一審勝訴後に進められていた全国の原発立地地域住民による甲状腺がんの共同訴訟は、キュンド一家の二審判決の結果を見てから再訴することにしていたが、二審敗訴を受け裁判を延期した状態だ。

12.月城1号機の永久停止いまだ確定せず

慶州の月城原発1号機は、2012年に設計寿命(30年)を終えた。2015年に多くの物議を醸しつつ寿命の延長が決定されたものの、15年と16年に慶州・浦項(ポハン)大地震が発生した。裁判所は17年2月に、原子力安全委員会の「月城1号機の寿命延長」の決定は違法との判決を下した。

文在寅政権は新コリ5・6号機公論化の直後、「エネルギー転換ロードマップ」を発表し、月城1号機の閉鎖を約束し、これを第8次電力需給基本計画に反映させた。そして18年6月、韓国水力原子力は、理事会で月城1号機の永久停止の決定を行ない、19年2月に原子力安全委員会に月城1号機永久停止に向けた「運転変更許可申請書」を提出した。

しかし原子力安全委員会は、事業者が運転を中断したにもかかわらず、永久停止の決定を出さずにいる。(訳注:19年12月24日に原子力安全委員会は月城1号機の永久停止を決定した)

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信162号(2月20日発行、B5-24p)もくじ

・韓国2019年 記憶すべき脱原発ニュース  (脱核新聞より)
・トルコ、くすぶり続けるシノップ原発建設の動き (森山拓也)
・南オーストラリア・キンバでの放射性廃棄物処分場建設計画に500人が抗議
・伊方原発3号機差し止め仮処分決定に歓喜
― そして、電源一時喪失 燃料冷却43分停止 ― (大野恭子)
・被災した女川原発の再稼働を阻止しよう (舘脇章宏)
・「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」に集まろう (橋田秀美)
・ドキュメンタリー映画『サマショール 遺言 第六章』公開によせて (豊田直巳)
・演劇に原発を (くるみざわしん)
・東日本大震災と福島原発事故を題材にした小説を語る(1) (宇野田陽子)
・ノーニュークス・アジアフォーラム通信 No.144~161 主要掲載記事一覧
・NNAF 27年VTR  ― Korean/日本語/English//Mandarin ―

年6回発行です。購読料(年2000円)
見本誌を無料で送ります。事務局へ連絡ください
sdaisukeアットrice.ocn.ne.jp

  

『9.6老朽原発うごかすな!大集会inおおさか』

「ワイロよりハイロ!」「原発マネ―不正還流を許さない」「関電に原発動かす資格なし」「汚れた金で原発動かすな」 
PDF → チラシおもて


PDF → チラシうら

1000を超える賛同ありがとうございました
賛同団体・個人 https://blog.goo.ne.jp/takahamakarakanden

 

 

ハンビッ原発3・4号機を廃止せよ

井上年弘さんと、通訳のキム・ボンニョさん

「ハンビッ原発ゲート前集会に参加しました」

井上年弘(原水爆禁止日本国民会議)

「ハンビッ原発1号機再稼働反対と3・4号機廃止のための汎国民大会」が、10月19日にハンビッ原発(霊光原発)ゲート前の広場で開かれ、韓国各地から200名の仲間が集まりました。

集会は、原発による犠牲者への黙とうから始まり、続いて「核のない世界」光州・全南行動本部議長で作家の黄大権(ファン・デグォン)さんが「この時代で一番大事なことは気候問題よりも原発問題だ。しかしマスコミはそのことを一切報道しない。国民をバカにしている」、あまりにも問題が多い原発に対して、「地球のためにも脱原発が必要だ!」と訴えました。

円仏教の地元の教区長は、脱原発の必要性を訴えながら、韓国で問題となっている米軍の高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)配備撤回を求める発言もしました。

全羅北道井邑市の原発特別対策委員会は、「原発から31㎞離れ、30㎞圏外で避難計画はない。しかし放射能は30㎞で止まらない」と福島原発事故を踏まえながら発言しました。

訪韓して参加した私からは、日本はすでに廃炉の時代に入っており、福島原発事故以降21基もの原発が「廃炉」となり、原発輸出もとん挫、原子力政策・核燃料サイクル政策が破綻している現状を報告し、今後も引き続き日韓両国の連帯を強化し、共に脱原発を勝ち取ろうと訴えました。

集会後、放射性廃棄物のドラム缶の模型を背負った人たちを中心に、「決議文」を原発関係者に渡しながら、1時間余りゲート前を封鎖し続けました。

ゲート前集会で脱核新聞を読む子どもたち

「ハンビッ原発1号機再稼動反対と3・4号機廃止に向けた決議文」

今年5月、ハンビッ原発1号機で発生した原子炉出力急上昇事故では、けっして起きてはならない重要な過ちが3つあった。核反応度の値の計算ミス、熱出力制限値の5%超過、即時停止命令の失敗だ。

原子力安全委員会(原安委)は、原発の安全に直結するこれらの致命的ミス発生の根本的な原因の究明をせずに、調査結果および拙速な再発防止対策を承認し、その不十分な対策さえも実施を後回しにしたまま、あわてて再稼動を許可する決定をした。その過程で 原安委の専門委員の技術検討を省略しただけでなく、住民の同意はおろか公式の説明会も一度もなく、一方的な決定がなされた。

そして、7月にハンビッ原発4号機の格納容器コンクリートで発見された157cmの巨大な空隙(すき間)は、全国民を驚愕させた。現在までに、国内の原発で発見された空隙の94.2%(278件)がハンビッ原発であり、その内245ヶ所がハンビッ3・4号機に存在する。

格納容器の内部鉄板の腐食の発見件数も60%がハンビッ1・2・4号機に集中しており、3・4号機では格納容器の構造的な亀裂が懸念される鉄線潤滑油(グリース)漏れが数十件発見された。

ハンビッ原発では原発の最後の防護壁である格納容器だけに問題があるのではない。4号機では、原発の核心的な設備である蒸気発生器内部で重大事故につながりうるハンマーと鉄片が発見された。この他にも、ハンビッ1・3・4号機には一つ一つ列挙するのも難しいほど多くの問題が山積している。

さらに憂慮すべきことは、こうした原発の安全性に致命的な問題を、原安委と韓国水力原子力(韓水原)が20~30年も発見できずに放置していたことだ。

ハンビッ1・3・4号機は、手抜きの建設から、運用、点検、管理・監督、規制全体にわたり、多事多難そのものだ。今すぐ重大事故が起きてもまったく不思議ではないくらい危険な状況だ。

それでも原安委と韓水原は、まともな原因究明や根本的な安全対策をせずに、「安全上の問題はなく、補修して再稼動する」という言葉だけをくり返している。原発を安全に運営し管理する能力も資格もない破廉恥で無責任な韓水原と原安委に、私たちの尊い命を預けることができないことはさらに明白となった。

もしこのままハンビッ1・3・4号機が再稼働してしまったらチェルノブイリと福島の次の犠牲は、私たちになるかもしれない。

取り返しのつかない惨劇が起こることのないよう、私たちはハンビッ1号機の再稼働を阻止し、3・4号機を閉鎖させるために尽力することを決意し、国民の尊い命と安全を守る責務がある政府に要求する。

1. 根本的な原因究明。安全対策の履行。
住民同意のないハンビッ1号機の再稼働決定を撤回せよ!

2. 独立した調査委員会を組織し、ハンビッ1・3・4号機の真相を調査せよ!

3. ハンビッ3・4号機を補修しても無意味だ。即刻閉鎖せよ!

4. 規制に失敗した原安委を、住民や市民社会が参加する技術と安全中心の民主的な規制機関に再編成せよ!

2019年10月19日
ハンビッ原発対応湖南圏共同行動
脱核市民行動

「霊光(ヨングァン)住民は正しかった。真相究明と名誉回復の措置が必要」

キム・ヨングク(霊光原発安全性確保のための共同行動) 「脱核新聞」より

ハンビッ原発3・4号機は1980年代末に設計された韓国初の国内主導型「標準原子炉」だ。しかし建設過程で、手抜き工事に関する情報が住民に相次いで入ってきた。キム・ヨングク霊光共同行動・執行委員長は、韓国電力が、手抜き工事の問題を提起した住民たちを「不純分子」の立場に追いやるなどの過ちを犯したことに対して、謝罪し、名誉回復も行なうべきだと主張する。キム・ヨングク氏にインタビューを行ない、ハンビッ原発建設過程での手抜き工事疑惑に関する内容を整理した。(まとめ:ヨン・ソンロク編集委員)
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1990年代前半に建設されたハンビッ3・4号機では、耐久性に欠陥があるインコネル600という合金素材が蒸気発生器細管や原子炉上蓋など4000ヶ所余りに使用された。当時、霊光の住民はこれに関する設計の問題点を指摘した。

また、現代建設がハンビッ3・4号機の建設を行なったが、無許可でコンクリート工場を運営した。それだけでなく、公共機関が発注する工事は1月と2月の冬季にはコンクリートの打ち込みをしてはならなかったが、ハンビッ3・4号機は1月にも工事を行ない、しかもそれは24時間作業し続ける突貫工事だった。極寒の冬の夜にセメントを流し込んだが、コンクリート固化作業がまともに行なえるはずがなかった。

監督者がきちんといることはなく、韓国水力原子力(韓水原)も規制機関も夜通しの作業をまともに監督することのない中で作業が進行した。

「空隙(すき間)がたくさん発生するに違いない」という情報提供が非常に多くなされた。しかし韓国電力は「不満を抱いた建設労働者が虚偽情報を提供したまでだ」と主張した。

業者は格納容器の建設に必要な鉄筋も間引きした。

でたらめな設計、コンクリートの手抜き工事、鉄筋の間引き、いい加減な管理監督、やっつけ仕事の溶接など問題が非常に多かった。やっつけ仕事の溶接とは両側から配管を接続し、配管が余れば切断し溶接して、足りなければ他の配管を切って取り付けることだ。溶接した所は継続して劣化管理をしながら溶接の健全性を管理しなければならないが、やっつけ仕事だったのでその部分が見つからないまま、設計図面にただ従ったため、でたらめな所を検査することになる。本来は不適合処理をすべきだが、そうすると設計変更をしなければならず、工事期間が長くなるのでしなかった。

霊光では1990年から96年まで、住民がデモ、座り込み、国会請願などを数え切れないほど行なった。手抜き工事の霊光3・4号機の核燃料装填阻止闘争や5・6号機の建設反対闘争へとつながった。「霊光原発追放協議会」が集会を主導した。この協議会の構成はカトリック、円仏教、農民会、農業経営者連合会、霊光社会運動協議会、佛甲寺などが参加し、霊光郡議会が中心となって国会請願をした。90年から96年までに、のべ約10万人がデモに参加した。

ハンビッ5・6号機建設反対闘争へと話が移るが、1994年3月に5・6号機の環境影響評価書の草案の供覧が始まった。5・6号機は温排水の低減施設が決まらない状態で環境影響評価を行なった。住民は5・6号機の建設許可を出さないよう霊光郡に要求した。4号機と5号機の間には地質学的に破砕帯があり、これも問題だった。

霊光住民は96年3月に原発の前で、約5000人が集まって5・6号機建設反対集会を行なった。その過程でトラクターで原発の正門に突入したところ、警察が催涙弾を放った。煙を浴びれば目にしみなくなるという俗説があったため、住民は火をつけた。そして手抜き工事をしながら安全だと喧伝する広報館の壁に腐った乳汁を投げつけた。

その後、集会の主導者として、私をはじめ、カトリック核追放委員会事務局長、農民会幹事の3人が逮捕・取調べを受け、1審裁判で実刑1年6ヶ月を受けた。また、霊光聖堂のパク神父も実刑1年6ヶ月、さらに光州全南核反対団体のキム氏など多くの人が被害にあった。

最近、ハンビッ原発では、立て続けに、格納容器コンクリートの空隙が発見された。とくに、官民合同調査団の調査を通じて格納容器に大規模な穴が発見された。建設当時、住民が主張していた手抜き工事が確認されたということだ。

政府は、手抜き工事の実態と、おろそかな管理監督規制で現在まで運転され続けた実態について、徹底的に調査する必要がある。そして、この件に関して霊光住民が正しかったと確証すべきだ。政府は、韓水原に対して何らかの措置を行ない、霊光住民の名誉回復をどのように行なうかについて住民と協議をしなければならない。

キム・ヨングクさん

*1996年の闘争時、ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパンは不当逮捕への抗議声明を出し、カンパも届けた。現地での集会には、故大庭里美さん、続いて故浜本弘也さんが参加し、それぞれ連帯アピールを行なった。

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信161号(12月20日発行、B5-24p)もくじ

・インド北東部でウラン採掘に反対する先住民族カーシの闘い
・ハンビッ原発ゲート前集会に参加しました (井上年弘)
・ハンビッ原発1号機再稼動反対と3・4号機廃止に向けた決議文
・「霊光住民は正しかった。真相究明と名誉回復の措置が必要」(キム・ヨングク)
・(台湾)「蘭嶼、25.5億元の補償金を断る。核廃棄物の搬出を求める」
・南オーストラリア州での放射性廃棄物処分場建設計画に反対 (ANFA)
・(トルコ)「アックユ原発反対!」 メルスィン反核プラットフォーム・声明
・「老朽原発うごかすな!」行動・2ヶ月半の報告 (木原壯林)
・東海第二原発再稼働反対行動 (永野勇)
・原発は不正な金なしに動かない
― 3272名が関電の原発マネー不正還流を告発 (末田一秀)
・中国電力が海上「ボーリング調査」準備作業を開始 (渡田正弘)
・『原発をとめるアジアの人びと』が英訳されました
・若狭で市民の手による自然エネルギーの共同発電所が始まります (松村志保)

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NNAF27年VTR

Korean(한글) 반핵 아시아 포럼 27년 https://youtu.be/zsd-sXxX96s

Taiwan(Mandarin) 非核亞洲論壇26年 https://youtu.be/VlLAvLsKZjc

English No Nukes Asia Forum thru 25 years https://youtu.be/89BE9kbJpP0

Japanese(日本語) ノーニュークス・アジアフォーラム25年 https://youtu.be/ARRDXHv5_H8

*한글PDF VTR@27K-5페이지
*日本語PDF4ページ https://nonukesasiaforum.org/japan/archives/1382

第19回NNAF in 台湾 ダイジェスト、副総統あいさつ

第19回ノーニュークス・アジアフォーラム in 台湾 ダイジェスト
 
■ 9月21日

2019 NNAF開幕にあたり、20年前の9月21日に発生した「9.21大地震」の犠牲者を追悼する祈祷式が行なわれた。長老教会の鄭英兒牧師は当時をふり返り「多くの犠牲者に心から哀悼を捧げる。自然に対抗してはいけない。核を使わないことをここに誓う」と述べた。

続いて、台湾環境保護連盟会長の劉志堅さんが挨拶。「2018年11月の国民投票では、反核側が敗北した。いま私たちは『原発廃止、再生可能エネルギー推進』国民投票を呼びかけている。核のないアジアを作ろう」

施信民さん「台湾は過去5回NNAFを開催し、今年6回目の開催ができて光栄だ。『非核アジア』の目標のために団結し続けよう。各国の反核運動における長年の粘り強い努力に感謝し、33名の海外ゲストの参加を心から歓迎する」

民進党立法委員(国会議員)の陳曼麗さん(立法院再生エネルギー促進連誼会・会長)は、「現在台湾は『非核家園』政策を進めているが、野党の国民党は原発を再開させたいと考えている。1月の選挙では、原発反対の議員を落選させるわけにはいかない」と述べた。また、立法委員の呉焜裕さんは、「福島と同じ事故が台湾で起きたら、想像もできないほど恐ろしい。再生可能エネルギーを進めよう」と訴えた。

次は特別講演。ノーベル化学賞受賞者の李遠哲さん(中央研究院・前院長)は『原子力は私たちの選択肢ではない』と題して講演。「核のゴミを処理するには何十万年もかかる。一旦核災害が起きると、影響は全世界におよぶ。太陽光発電と風力発電がコストの面で一番安くなってきた。ライフスタイルを変えなければいけない」と述べた。

デーブ・スウィーニーさん(ICANオーストラリア共同創設者)は、2017年に受賞したノーベル平和賞のメダルを持参し、「我々は核兵器廃絶の条約を締結させることが目標で、約半分達成できた。今直面している課題は、気候変動と核兵器による大規模破壊だ。立ち上がって行動すべきだ」

呂秀蓮さん(元副総統)は『福島による台湾啓発』として、「台湾は約2300万人の島に4つの原発が立地し、首都から30km圏内に3つの原発がある。台湾の近海には70以上の海底火山があり、第2原発から5kmの海底にも火山がある。原発の近くには活断層もある。原発を廃止し、『非核家園』を実現するには政治的な力が必要だ」と述べた。

佐藤大介さんは「NNAF 25年」の映像(中文)を上映し、「26年間、アジア各国で励まし合ってきた。各地で闘ってきた全ての人々に感謝すべき」と述べた。

続いて、議題1「各国の原子力エネルギー開発と反核運動の状況に関する報告」が行なわれた。台湾:潘翰聲さん(台湾環境保護連盟)、日本:後藤政志さん(NPO APAST)、韓国:キム・ヒョヌさん(エネルギー気候政策研究所)、フィリピン:ディー・ジェイさん(非核バターン運動)、ローランド・シンブラン教授(非核フィリピン連合)、インド:ヴァイシャリ・パティルさん(反核運動全国連合)、中国:ウェン・ボーさん(環境保護基金)、モンゴル:Erdenetsogt Dorjpalamさん(環境と市民委員会)、トルコ:プナール・デミルジャンさん(反核プラットフォーム)、ベトナム:インラサラさん、オーストラリア:マーラ・ボナッチさん(FoE Australia)が報告した。

議題2は「核廃棄物問題と原発事故の被害」として、各国からスピーチが行なわれた。日本:里見喜生さん(いわき湯本温泉ホテル経営)、片岡遼平(原子力資料情報室)、アメリカ:アンエリス・ルアレンさん(カリフォルニア大学准教授)、インド:Marcony Thongniさん(Khasi Students)、台湾:蔡雅瀅さん(蠻野心足生態協会・弁護士)、台湾:楊木火さん(鹽寮反核自救会)が報告を行なった。

夕食は、立法院康園餐廳に移動して歓迎晩宴がひらかれた。美味しい台湾料理を食べながら生演奏や飛び入りの歌も披露され、各国の参加者が歓談して親交を深めた。(片岡遼平)

■ 9月22日

フォーラム2日目である。全般についてだが、発表者のうち半数が女性であり、また各国代表(台湾以外)10名のうち4名が女性であることに驚いた。ジェンダーは「非核」運動の中でも重要なポイントの1つである。

この日は4つの報告セッションと共同声明についてのセッション、閉幕式が行なわれた。4セッションのうち2つは台湾に関わるセッションである。全発表者名は「2019 NNAF 非核亞洲論壇 議程」に書かれている。

最初のセッションは「台湾のエネルギー転換 ─ NGO+産+官+学+研」である。再生可能エネルギーについて、NGO台湾再生エネルギー推動連盟、日益能源科技(太陽光エネルギー)股份有限公司、立法委員(国会議員)、シンクタンクRSPRC、台湾大の研究室が、それぞれの立場から発表を行なった。

第2セッションは「再生エネルギーの未来」である。3名の報告があった。陳惠萍さんは太陽光発電について博士論文執筆と社会的企業を起こし、クラウドファウンディング会社を立ち上げたプロセスを紹介した。明日香壽川さんは、日本の再生エネルギーの状況と課題について報告し、最後に太陽光発電のコストが下がり続けていることを指摘した。

第3セッションは「台湾の原発についての公民投票」。3名の報告があった。2018年の公民投票結果(「2025年までに原発の運転を全て停止する」という電気事業法の条文の削除)も踏まえた分析や、今後どう進めるかについての報告があった。3人目の施信民さんは「明確な公民投票の結果が出れば政府もそれに従う」と締めくくった。

第4セッションが「廃炉と原発事故の被害」である。5名の発表があった。その中で、青木一政さんは、放射能を測る中で見えた具体的な問題を紹介し「市民自らが測定し監視することが大きな力になる」とした。伊藤延由さんは福島・飯舘村に住むことについて話した。自然の恵みである山菜の汚染度が高いことや、一度事故が起これば取り返しがつかないことなどを話した。
また、第一原発と第二原発の真ん中に住んでいる郭慶霖さんが育ったところは素晴らしい景観があったこと、小学校入学時に原発建設が始まったことなど、原発が作られる(自然が奪われる)歴史を紹介し、原発廃絶の必然性を訴えた。

「総合討論/共同声明討論」では、全体についての議論のあと、共同声明案(長短バージョン)を示し、短いバージョンをもとに意見交換を行なった。

「閉幕式」では、台湾および台湾外からの10国(日本、モンゴル、フィリピン、オーストラリア、ベトナム、インド、韓国、トルコ、中国、アメリカ)の代表がひと言づつ挨拶をし、それぞれの現場で非核にとりくんでいくことを表明した。いくつかのコメントを抜粋する。日本「台湾にならって脱原発を頑張る」、フィリピン「(NNAFで)さらなる交流を深めたい」、インド「抗議活動をするとき弾圧されるがNNAFで勇気をもらった」、トルコ「民主化がなければ情報の透明化が実現できない(脱原発に必要)」、中国「啓発教育が大切」、アメリカ「ゼロ原発の世界を作りたい」。

次回開催予定の韓国の挨拶、閉幕挨拶をもって2日間の会議が終了した。(吉野太郎)

■ 9月23日

海外参加者30数名は、副総統(副大統領)の陳建仁氏を表敬訪問した。陳副総統は会見の冒頭、参加者一人ずつと握手した上で、「台湾総統と国民を代表して皆さんを歓迎するとともに、長年にわたる脱原発へのとりくみに感謝の意を表したい。政府として、2025年までに脱原発を達成するという目標を打ち出しており、先の国民投票の結果は残念だったが、持続可能な発展のために、脱原発政策を堅持する」などと挨拶をした。

続いて、参加者代表として、佐藤大介さん、後藤政志さん、デーブ・スウィーニーさんが副総統に向けてメッセージを伝えた。

午後は、郭慶霖さん(北海岸反核行動連盟)の案内で、まず第二原発周辺を見学した。排水口が接する海辺の広場は、周辺観光地を表す地図看板の表示名に「第二原発事故時の緊急避難先」とある以外は、ごく一般的な海辺であり、この日も釣り人が数人訪れていた。そのすぐ傍らに、排水口は防波堤で取り囲むようにあり、勢いよく水が噴き出していた(訪問時点で2機が稼働中)。1993年、この付近で背骨の曲がった魚が大量に発見されたという。

第一原発へ向かう途中、第二原発の下を走るとされる「山脚断層」を理解するため、金山区(新北市)に立ち寄った。小高い丘から海岸方向と内陸方向を眺めると、山脚断層は、海岸砂丘に直交するように横切っていることがわかる。原発が建設された当時は、断層上に原発があるリスクが認識されていなかったそうだ。なお、この近辺は第一、第二原発から10km圏内にあり、近くには、原発事故時の避難場所を示す案内標識が立っていた。

第一原発の先には緑濃い山々が見えたが、第一原発の排水は、その内陸部から流れる川の水と混ざり合っているという。排水口のそばで郭慶霖さんは、原発建設が始まった1970年代は戒厳令下にあり、情報もなく、異を唱えることもできないまま、ふるさとの自然やコミュニティが破壊されてしまった歴史を語ってくれた。

なお、第一原発は廃炉が決まり、運転は停止している。すぐ横には、観光スポットとして有名な寺院があり、多くの観光客で賑わっていた。

その後、バスは海岸線を走り、第四原発に向かった。第四原発のすぐそばに抗日記念碑があり、そこを見学する予定だったが、時間の都合で見送られた。第四原発周辺は海水浴場、温泉もあるというリゾート地である。第四原発は、過去には死者も出るような激しい反対運動も展開されたが、現在は建設凍結が決まり、正門前は静まりかえっていた。燃料棒は、2020年末までに8回に分けて順次米国に輸送され、原発施設の解体が行なわれる予定だという。

貢寮で、「反核自救会」の人たちを交えた夕食交流会が行なわれた。楊木火さんが第四原発の技術的な問題点を、呉文通さんが反対運動の経過をお話しされ、その後、参加者との質疑応答が行なわれた。

第四原発は、建設凍結中であるものの、来年1月の総統選の結果次第で情勢が変わる可能性がある。日本側からの意見として、まさに第四原発にも関わった東芝の元技術者後藤さんは、「万が一、第四原発の建設工事が再開され稼働することになれば、非常に危険だ。まず、建設から相当年数が経っているプラントは、さびなどの経年劣化がどこにあるかわからない。また、ABWRは最新型とはいえ、経済性を重視したプラントで、安全性が高いということではない。格納容器が小さいため、事故が起こると圧力が急に上昇してしまう」と問題点を指摘した。

飯舘村の伊藤さんは「移住したいと思うほど台湾の気候や食べ物が気に入ったが、今回、原発が活断層の上に立地していることを知りショックを受けた。台湾の方々には、福島事故の教訓をさらに学んでほしい」と訴えた。(白井聡子)

■ 9月24日

今日は、台湾の南端の屏東県に。台北駅8時半発の高速鉄道(新幹線)を利用し高雄市の左榮駅で下車。貸し切りバスで屏東県に向かう。屏東県は、農業や観光が主要産業。米が三毛作できる温暖な地域で、日射しも強く感じられた。しかし、地盤沈下や土地の塩化問題も起きているそうだ。

屏東は第三原発の立地県であるが、県政府が再生可能エネルギー利用に積極的にとりくんでいる。民間企業と共同での、台湾初の「水上(浮体式)太陽光発電」を見学し、

そして、太陽光発電と野菜・果物栽培をドッキングさせた「ソーラーシェアリング」の大規模設備も見学した。発電設備容量は約3000キロワットだそうだ。

昼食は恒春にある海鮮レストランで豪華な魚介類料理をいただく。これは屏東県政府のおごりらしい・・・。とっても新鮮でおいしく、屏東県は海の幸に恵まれていると納得。

午後からは、恒春の農業関係庁舎での「第三原発の廃炉問題に関する地元住民との座談会」。放射性廃棄物をどうすべきか、行政も含め議論中とのこと。原発のある地域一帯は「墾丁国家公園」であり、台湾有数の観光地として有名で観光産業が重要な収入源。しかし、地域住民には廃炉問題についてきちんと説明していないようだ。住民は、観光産業に打撃を与えないか、あるいは廃炉に伴う雇用減を心配している。

原発は海水浴ができる美しい砂浜が続くビーチ沿いに立地し、原発建屋がビーチから丸見えなのでびっくり。(渡田正弘)

■ 9月25日

台湾の南端にある国家公園内のホテルを8時にバスで出発。南湾を進んでいくと美しい砂浜が続く。風力発電装置が並び、さすがと思っていると、長く続く海水浴場になっているビーチのすぐ後ろに2基の第三原発があり驚く。

第三原発ゲート到着。「ノーニュークス 台湾! ノーニュークス アジア! ノーニュークス ワールド!」とアピールした後、屏東県庁へ。到着までバスで2時間、参加者それぞれが心のこもったスピーチを。

10時半、屏東県知事の潘孟安氏と面会、意見交換。潘知事は、私たちを歓迎してくださり、「第三原発の寿命延長は認められない。2025年に台湾は原発ゼロとなる。屏東県の民生用電力を2021年までに100%再生エネルギーにする」と決意を述べられた。

その後、県庁で記者会見をし、台北駅へと向かい解散。(大野恭子)

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陳建仁副総統 あいさつ  2019.9.23 総統府にて

みなさま、おはようございます!
皆様とお会いできて、本当にうれしく思います。第19回NNAFが台湾で開催されたことは、大変に光栄なことです。それは、海外の友人たちが非核国家をめざしている私たちの努力を認めて下さったからだと考えるからです。台湾へようこそいらっしゃいました。皆様を心から歓迎いたします。

1993年に設立されて以来ノーニュークス・アジアフォーラムは、核も原発もない未来の世界を実現するために、相互に学び合い励まし合いながら、関係性を醸成し、情報交換を行ない、共同行動を行なうことに尽力してきました。台湾環境保護連盟は、核も原発もない台湾を実現するため長年にわたって献身的に活動してきたことで広く知られています。長年にわたる脱原発へのとりくみに感謝します。連盟がNNAFのホスト国として名乗りを上げてくれたこの機会に、経験を分かち合うために台湾までお越しくださった各国からの参加者のみなさんに、私からお礼を述べさせていただきたいと思います。

当初から、この政権は非核政策を堅持してきました。2002年にさかのぼりますが、台湾は環境基本法を通過させ、非核家園(核も原発もない台湾)が私たちの目標であることを明示しました。

蔡英文が2016年に総統に就任した後、政府はエネルギー部門を改革するための政策に着手し、積極的に再生可能エネルギーを推進してきました。その政策は、現存する原発は運転期間が経過したら廃炉にすることをめざしており、それによって2025年には非核家園というゴールを実現するというものです。

もちろん、非核家園に続く道の途上では、異を唱える声が常にあがることでしょう。昨年は、国民投票16番が通過し、その国民投票の結果に基づいて、「2025年までに原発の運転を全て停止する」という電気事業法の条文を削除しました。

しかし台湾は小さくて人口稠密な国であり、放射性廃棄物を処分する場所もありません。ですから持続可能な開発を確かなものとするため、そして台湾市民の命と財産を守るため、私たちはさらに前進することを決意し、非核家園を実現するためこれまで通り邁進していきます。

ノーニュークス・アジアフォーラムは、非核政策を推進するため、日本、韓国、フィリピン、ベトナム、インド、トルコ、モンゴル、オーストラリア、アメリカ、中国が参加しています。私たちも非核家園を長年にわたり自分たちの目標としてきましたので、第19回NNAFが台湾で開催されたことには、とりわけ大きな意味があるのです。

ここで、私は改めて、台湾が非核家園となるために努力していくことを申し上げます。フォーラムに参加した各国代表者の交流が、エネルギー産業の改革と非核アジアを実現するためにさらなる可能性を発見するよう願っております。

もう一度、言わせてください。みなさん、台湾へようこそいらっしゃいました。
ありがとうございました!

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2019 NNAF 非核亞洲論壇 議程

■ 9 月 21 日
【開幕式】
司会:董建宏(台湾環境保護連盟・学術委員)
追思 921 祈禱儀式:鄭英兒(台湾基督長老教会・牧師)
挨拶:劉志堅(台湾環境保護連盟・会長)、施信民(非核亞洲論壇・台湾召集人)
来賓挨拶:陳曼麗(立法院再生エネルギー促進連誼会・会長)、呉焜裕(立法委員)
【專題演講】
司会:楊聰栄(台湾環境保護連盟・執行委員)、施信民(非核亞洲論壇・台湾召集人)
・李遠哲(中央研究院・前院長)・ Dave Sweeney(ICANオーストラリア)
・呂秀蓮(元副総統)・ Sato Daisuke(非核亞洲論壇・日本事務局長)
【各国報告】
司会:徐光蓉(媽媽監督核電廠連盟・理事長)、劉志堅(台湾環境保護連盟・会長)
・台湾:潘翰聲 ・日本:後藤政志 ・韓国:Kim Hyunwoo ・フィリピン:Djoannalyn Janier & Roland G. Simbulan ・インド:Vaishali Patil ・中国:Wen Bo ・モンゴル:Erdenetsogt Dorjpalam ・トルコ:Pinar Demircan ・ベトナム:Inrasara ・オーストラリア:Mara Bonacci
【核廃棄物問題と原発事故の被害】 
司会:劉俊秀(台湾環境保護連盟・前会長)
・日本:里見喜生 ・日本:片岡遼平 ・アメリカ:Ann-Elise Lewallen ・インド:Marcony Thongni ・台湾:蔡雅瀅(蠻野心足生態協会・弁護士)・台湾:楊木火(鹽寮反核自救会)

■ 9 月 22 日
【台湾のエネルギー転換 ─ NGO+産+官+学+研】
司会:葉国樑(台湾教授協会・環保組召集人)
・高茹萍 ・畢婉蘋 ・陳曼麗 ・林木興 ・高成炎
【再生エネルギーの未来】
司会:高茹萍(再生エネルギー推動連盟・理事長)
・日本:明日香壽川 ・陳惠萍 ・鍾寶珠
【公民投票について】
司会:吳明全(台湾環境保護連盟・学術委員会召集人)
・沈軒宇(緑色公民行動連盟)・葉慈容(臨門一腳團)・施信民(非核亞洲論壇・台湾召集人)
【廃炉と原発事故の被害】
司会:方儉(緑色消費者基金会・秘書長)
・日本:青木一政 ・日本:伊藤延由 ・謝蓓宜(環境法律人協会)・郭慶霖(北海岸反核行動連盟)・張怡(屏東県環境保護連盟)
【総合討論/共同声明討論】
司会:劉志堅会長(台湾環境保護連盟・会長)、リンダ・アリーゴ(台湾環境保護連盟)
【閉幕式】各国代表挨拶、次回開催国(韓国)挨拶

■ 9 月 23 日
・海外参加者が総統府訪問、副総統の陳建仁氏と面会
・第一、第二原発、凍結された第四原発へ ・夕食交流会(第四原発のある漁村・貢寮にて)

■ 9 月 24 日
・南部の屏東県へ、浮揚式太陽光発電とソーラーシェアリング施設を見学
・恆春で住民との座談会

■ 9 月 25 日
・第三原発へ ・屏東県庁を訪問、屏東県知事の潘孟安氏と面会

● 主催:台湾環境保護連盟、七星生態保育基金会、ママ原発監督連盟、台湾教授協会、台湾基督教長老教会、緑色消費者基金会、野薑花公民協会、国家展望文教基金会、台湾再生エネルギー推動連盟
● 共催:環境法律人協会、台湾樹人会、台湾北社、看守台湾協会、蛮野心足生態協会、緑色公民行動連盟、北海岸反核行動連盟、主婦連盟環境保護基金会、台湾環境公義協会、国立台湾大学研究生協会、台日産経友好協会、台湾数位電商創新協会、高雄市愛益獅子会、凱達格蘭学校校友会悦閲書巻社、澎湖青年陣線
● 協力:行政院経済部、行政院環境保護署、屏東県政府、義美環境保護基金会

*通訳・翻訳:管明芳、リンダ・アリーゴ、トニー・ボーイズ、近藤敦子、アンエリス・ルアレン、郭金泉、陳威志ほか
*写真:とーち、片岡遼平ほか

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信160号(10月20日発行、B5-28p)もくじ

・2019 NNAF 非核亞洲論壇 議程
・第19回ノーニュークス・アジアフォーラム in 台湾 ダイジェスト
(片岡遼平、吉野太郎、白井聡子、渡田正弘、大野恭子)
・陳建仁副総統 あいさつ
・ノーニュークス・アジアフォーラム2019 in台湾 共同声明
・NNAF in 台湾 に参加して
(青木一政、明日香壽川、伊藤延由、宇野田陽子、大野恭子、片岡遼平、後藤政志、佐藤大介、里見喜生、白井聡子、とーち、トニー・ボーイズ、吉井美知子、吉野太郎、渡田正弘)
・東電刑事裁判の「判決」に思う (武藤類子)
・隠される原発事故被害と「見える化」プロジェクト (満田夏花)
・関電の原発マネー還流事件を徹底究明し、原子力からの撤退を求める集会決議
・その後のシノップ (小川晃弘)

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「ノーニュークス・アジアフォーラム in 台湾」報告会(広島・大阪・東京)

■ 広島  10月27日(日)14:00~16:30
報告:渡田正弘
・広島国際会議場3階研修室2(広島市中区)

■ 大阪  11月29日(金)18:30~20:30
報告:吉野太郎、宇野田陽子、とーち、吉井美知子
・総合生涯学習センター第2研修室(大阪駅前第2ビル)
★同時開催「台湾脱原発ポスター展」(大パネル20枚)

チラシ表 https://nonukesasiaforum.org/japan/wp-content/uploads/2019/10/191129a.jpeg
チラシ裏 https://nonukesasiaforum.org/japan/wp-content/uploads/2019/10/191129b-1.jpg

■ 東京  12月14日(土)14:00~16:30 「アジア初の脱原発に向かっている台湾」
報告:佐藤大介、後藤政志
・「スペースたんぽぽ」(水道橋ダイナミックビル4F)

チラシ表 1214a
チラシ裏 1214b

来年1月11日の総統選挙・立法委員選挙を前にした台湾でノーニュークス・アジアフォーラムが開催された。11か国が参加し、国際会議のほか、副総統(副大統領)との面会、第一、二、三、四原発の現地へ。

第一原発1号機は昨年12月に、2号機は今年7月に40年の寿命を迎えた。廃炉が決定している。日立・東芝が原子炉を輸出した第四原発の建設は2014年に凍結。

2017年、民進党政権は民衆の声にこたえ、脱原発政策(2025年までに原発ゼロ)を決定した。しかし国民党をはじめとする原発推進派は、18年の国民投票で「2025年までに」を覆してしまった。韓國瑜(国民党の総統選候補)は第四原発を再開すると明言している。推進派とのせめぎ合いのなか、アジア初の脱原発に向かって奮闘努力している台湾の状況を報告します。

第19回NNAF in 台湾 ダイジェスト、副総統あいさつ


・・・ 海外参加者30数名は、副総統(副大統領)の陳建仁氏を表敬訪問した。陳副総統は会見の冒頭、参加者一人ずつと握手した上で、「台湾総統と国民を代表して皆さんを歓迎するとともに、長年にわたる脱原発へのとりくみに感謝の意を表したい。政府として、2025年までに脱原発を達成するという目標を打ち出しており、先の国民投票の結果は残念だったが、持続可能な発展のために、脱原発政策を堅持する」などと挨拶をした。

●「NNAF in 台湾」参加者より

「台湾第四原発は、私が東芝で設計に従事していた柏崎刈羽6号機と同型のABWR(改良沸騰水型)です。ABWRは最新の原発と言われますが、熱出力当たりの格納容器の容積が小さく、安全性が懸念されていた原発です。第四原発の門の前で、ノーニュークス・アジアフォーラムに参加された皆さんと、横断幕を広げてシュプレヒコールをしたことは万感の思いでした。また、第四原発の建設に反対して長い間たたかってこられた台湾の人たちと交流できたことは大きな成果でした」(後藤政志)

「台湾は脱原発を宣言、実行中であり、その中で住民運動が果たしてきたことを実感できました。見習うべき点が実に多いと感じました」(伊藤延由)

「台湾の脱原発政策を確立させてきた運動の歴史に感銘を受ける日々でした。とはいえ、今の若い人々に重苦しい雰囲気はなく、発表者にも女性の姿が多く、そして誰もが和気あいあいと楽しそうで、そのマインドが広く着実に受け継がれていることを実感し、台湾の脱原発運動の強さを見た思いがします」(白井聡子)

「脱原発は、まさに原発推進派、核推進派との長い闘争過程であることを学びまし
た」(青木一政)

「スピードの違いはあるものの、アジア各国でもエネルギー転換は確実に起きてい
る。今回のNo Nukes Asia Forumに参加していた人々は、一見、温和な感じがする人が多かった。ただ、その温和な顔の裏側には、それこそ多くの『血と汗と涙』が隠されているようにも思った」(明日香壽川)

「現在の素晴らしい台湾は、多くの台湾人が長年の苦難を乗り越えてきた歴史の上に築かれていることを是非知ってほしい」(渡田正弘)

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信160号(10月20日発行、B5-28p)もくじ

・2019 NNAF 非核亞洲論壇 議程
・第19回ノーニュークス・アジアフォーラム in 台湾 ダイジェスト
(片岡遼平、吉野太郎、白井聡子、渡田正弘、大野恭子)
・陳建仁副総統 あいさつ
・ノーニュークス・アジアフォーラム2019 in台湾 共同声明
・NNAF in 台湾 に参加して
(青木一政、明日香壽川、伊藤延由、宇野田陽子、大野恭子、片岡遼平、後藤政志、佐藤大介、里見喜生、白井聡子、とーち、トニー・ボーイズ、吉井美知子、吉野太郎、渡田正弘)
・東電刑事裁判の「判決」に思う (武藤類子)
・隠される原発事故被害と「見える化」プロジェクト (満田夏花)
・関電の原発マネー還流事件を徹底究明し、原子力からの撤退を求める集会決議
・その後のシノップ (小川晃弘)

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ノーニュークス・アジアフォーラム2019 in台湾 共同声明

2019年9月21日から25日、私たちは第19回ノーニュークス・アジアフォーラムを台湾で開催した。5日間にわたって討論や現地訪問を行ない、私たちは下記の声明をとりまとめた。

1.私たちは、長い経験とこのフォーラムでの議論を通して次のような現状認識に至った。

● 原発は人道において賢明な選択肢ではない。原発は大地と、今の世代のみならず子々孫々の健康をも破壊する。可及的速やかに再生可能エネルギーへと転換を行なうことは、気候変動の緊急事態に対する唯一の信頼できる対応である。この転換は、その土地に暮らすコミュニティにいかなる被害をももたらさずに実現されなければならない。

● 原発はクリーンでもなく、安全でもなく、巨額の費用なしには存在できず、ましてや再生可能エネルギーではない。化石燃料による発電よりも発電段階での排出二酸化炭素が少ないという理由だけで、気候変動への解決策として受けとめられてはならない。ウラン採掘に始まり使用済み核燃料の再処理や貯蔵まで、さらには原発の建設や核燃料製造などでの二酸化炭素排出も含めて、核のサイクル全体として計算されなければならない。さらに、原発からは放射性物質や排熱も放出されるし、放射性廃棄物も生成される。

● 原発、核兵器、化学兵器は密接に絡み合っている。それらは環境と世界平和に対する重大な脅威である。

● 先住民や少数民族、とくに辺境地域に暮らして政治的な力や声を持つことができない人々が、放射能汚染の被害者となる事態が連綿と続いてきた。それはウラン採掘、核実験、原発の運転、放射性廃棄物の処分におよび、そうした事例はオーストラリア、台湾、中国、インド、アメリカ、南太平洋諸国などでみられる。「経済発展」などという神話で、少数者に破壊や死を強いることを道徳的に正当化することはできない。彼らの土地を強制的に収用したり汚染したりする行為は、文化的そして物理的な大量虐殺として認識されるべきである。そしてその過ちを正すためには、金銭的な補償だけではなく、彼らの土地権を復活させること、線量のモニタリングを改善すること、健康を守るためのサービスを活用できるようにすること、土地の包括的な回復などが行なわれなければならない。

● 多くの原発が運転期間の終わりに近づきつつある。廃炉、敷地の除染、線量のモニタリング、放射性廃棄物の管理(いわゆる中間貯蔵施設も含めて)などの難しいとりくみが、すべて厳格で持続的な独立性のある監視の下で行なわれなければならない。

● 原発はいわゆる先進国では減少しつつあるが、中国やインドなどの発展途上国では新規原発の計画や建設が行なわれている。それらは多くの場合、技術的な問題点を隠すような強権的な政府の下で行なわれている。福島での経験にもかかわらず、原発の再稼働や、棚上げにされていた原発の建設を再開しようとする国もある。古い原発を運転延長することは、さらに危険を高めることになる。

● 私たちは、エネルギーの民主主義を求める。これは、メディア、政府、産業界の透明性を高めること、社会でのコミュニケーションを促進すること、政策に関する教育とディベートに十分な時間と場所を確保することなどによって構築できる。市民による選挙と投票のプロセスの中で、利害対立を含めて完全な情報開示がなされなければならない。

2.こうした状況に直面し、私たちはお互いに学び合い、協力し合い、密に情報交換を行ない、あらゆる国での反原発運動をサポートするために共同行動を続けなければならない。これからとりくむべきことは、核も原発もないアジア、世界を究極的な目標として、自然エネルギーを開発し活用するよう市民や地域社会に働きかけることだ。この時点でとるべき具体的な行動は以下である。

● アジアのすべての国々に対して、核兵器禁止国際条約を支持、署名、批准することを求める。

● 原発や核技術の輸出を行なう原子力産業や国家に反対していく。それらは、この惑星やそこで暮らす人々を傷つけることで利益を得ようとする行為である。

● 地震の危険性が高い国々が原発計画を断念するよう指導し決断させる責任を果たすことを、IAEAに要請していく。それは、インドや台湾やトルコなどとくに断層の活動が知られている国々に対して、福島原発震災の教訓から学ぶことによってなされることが重要である。

● オーストラリア、インド、南太平洋諸国、中国、モンゴル、ロシア、台湾、日本を含む国々において、ウラン採掘、放射性廃棄物処分、核実験などによる放射能汚染の被害者が認定され、支援を受け、補償されるようすべての機関や政府に促す。

● 台湾の人々に対して、「原発廃止、再生エネルギー推進」国民投票のための請願署名に参加するよう促す。建設中の台湾第四原発は、まだ放射能で汚染されていないのだから、このまま完全に閉鎖し、自然エネルギーの発電所にするか、地域のニーズによって転換すべきだ。近い将来廃炉にしなければならない原発は、責任をもって対処されなければならない。低レベル廃棄物の焼却は中止すべきだ。蘭嶼島から放射性廃棄物処分場は撤去されるべきだ。

● 私たちは、放射線防護に関する新しいICRP勧告案を拒否する。改定される被曝線量のレベルは、原発事故の後にその場所にとどまってもリスクは低いということを示唆するものとなっている。

● 私たちは、福島原発事故の責任を問う刑事裁判の東京地裁判決を非難する。判決では、3人の東京電力幹部が無罪とされた。私たちは、福島原発事故の被害者を支持することを宣言する。

● 私たちは2020年が、東京での夏季オリンピック開催と、広島・長崎への原爆投下から75周年という、日本にとって非常に意味のある年になることを認識している。オリンピック精神の真の理念が、福島原発事故がもたらす終わりのない、解決されない人的影響及び環境的影響から耳目をそらさせるためのプロパガンダとして利用されてはならない。

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★ノーニュークス・アジアフォーラム通信160号(10月20日発行、B5-28p)もくじ

・2019 NNAF 非核亞洲論壇 議程
・第19回ノーニュークス・アジアフォーラム in 台湾 ダイジェスト
(片岡遼平、吉野太郎、白井聡子、渡田正弘、大野恭子)
・陳建仁副総統 あいさつ
・ノーニュークス・アジアフォーラム2019 in台湾 共同声明
・NNAF in 台湾 に参加して
(青木一政、明日香壽川、伊藤延由、宇野田陽子、大野恭子、片岡遼平、後藤政志、佐藤大介、里見喜生、白井聡子、とーち、トニー・ボーイズ、吉井美知子、吉野太郎、渡田正弘)
・東電刑事裁判の「判決」に思う (武藤類子)
・隠される原発事故被害と「見える化」プロジェクト (満田夏花)
・関電の原発マネー還流事件を徹底究明し、原子力からの撤退を求める集会決議
・その後のシノップ (小川晃弘)

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Joint Statement of 2019 No Nukes Asia Forum – Taiwan

On Sept. 21-25, 2019, we, as below, held 2019 No Nukes Asia Forum – Taiwan. After 5 day’s discussion and visiting, we reached the conclusions and declarations stated below.

Ⅰ. From our long experience and from our discussions in this forum, we have come to the following realizations of the current situation:

  • Nuclear power is not a wise choice for humanity. It destroys the land and health of this and innumerable future generations. The urgent transition to renewable energy sources is the only credible response to the climate emergency. This transition must be done without causing any harm to Indigenous communities.
  • Nuclear power is not a clean, safe, affordable or renewable energy source. It cannot be accepted as a response to climate change simply because it has lower carbon emissions than fossil fuels. It must be considered within the life span of nuclear chain. Beginning form uranium mining to nuclear waste processing and storage, including nuclear power plant construction and fuel processing carbon emission steps should be calculated as a whole. Furthermore, it releases radioisotopes and waste heat and generates radioactive wastes.
  • Nuclear power cannot be an energy solution while it is insoluble with its nuclear waste issue and climate crisis makes it more risky because of uncertain access to cooling water. We can not accept to use our planet’s precious water to cool nuclear power plants while the world itself will be experiencing droughts and disasters.
  • Nuclear power, nuclear weapons, and chemical weapons are closely entwined; they are a massive threat to the environment and to world peace.
  • Indigenous and minority peoples, especially those who live in remote areas and who often have little political power or voice – have long been the victims of radiation contamination from mining, nuclear weapons testing, nuclear power plant operation, and nuclear waste disposal – as seen in Australia, Taiwan, China, India, U.S.A., and the South Pacific. The myth of “economic development” cannot morally justify destruction and death for a minority. Expropriation and contamination of their land must be recognized as both cultural and physical genocide, and rectified not just with monetary compensation, but with restoration of their land rights, improving radiation monitoring, access to health services and comprehensive rehabilitation of the land.
  • Many nuclear reactors are now approaching the end of their operational life. This poses serious challenges, including decommissioning, land cleanup, radiation testing, and management of nuclear waste (including so-called temporary storage), must all be subject to rigorous and ongoing independent monitoring.
  • Nuclear energy is shrinking in developed countries, while in China, India and other developing countries new plants are being planned and constructed, often under authoritarian governments that readily cover up technical shortcomings. Despite the experience of Fukushima, some countries are planning to restart inactive reactors and revive designs for plants that were shelved. The continued operation of older reactors brings them into a stage of higher risk.
  • We need energy democracy. This can be built by improving the transparency of media, government and industry; promoting communication in society; allowing sufficient time and place for education and debate on policy. In citizens’ electoral or voting processes, there must be complete disclosure of information, including conflict of interest.

  • Ⅱ. To meet this situation, we must learn from each other and cooperate with each other, closely share information, and continue joint actions to support the anti-nuclear movements of all countries. The further task is to stimulate citizens and local communities to develop and utilize green renewable energy, with the ultimate goal of a future that is a nuclear-free Asia and nuclear-free earth. Specific actions to be taken at this time are as follows:
     
  • Urge all Asian countries to support, sign and ratify the International Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons.
  • Contest the nuclear industry and countries exporting their nuclear plants and technology in order to make a profit from harming the planet and its people.
  • Urge IAEA to take responsibility to guide and to convince the countries especially which are very well known with their fault lines, such as India, Taiwan and Turkey, to stop their nuclear projects by learning from lessons such as of earthquake and consequences of Fukushima nuclear disaster .
  • Urge all parties and governments to acknowledge, support and compensate the victims of radiation contamination from uranium mining, radioactive waste dumping and nuclear testing, including those in Australia, India, South Pacific, China, Mongolia, Russia, Taiwan, and Japan.
  • Urge the people of Taiwan to participate in signing the petition for a referendum on “Abolish Nuclear, Get Renewable”. The uncompleted Nuclear Power Plant No. 4 must be fully dismantled while it is still not radioactive. The site should be transformed to renewable energy generation and/or local needs. For the nuclear power plants that must be decommissioned in the near future, nuclear waste must be dealt with responsibly. Burning of low-level nuclear waste should be stopped, and the nuclear waste dump should be removed from Orchid Island.
  • We reject the new ICRP draft on radiological protection. Its revision of reference levels for exposure doses suggests that staying in place after an accident poses a lower radiological risk than evacuating.
  • We condemn the verdict of the Tokyo District Court, which found three former TEPCO executives not guilty in the criminal lawsuit concerning the Fukushima nuclear accident. We declare our support for the victims of the Fukushima NPP accident.
  • We acknowledge that 2020 will be a significant year in Japanese nuclear-free politics with the hosting of the summer Olympics and the 75th anniversaries of the Hiroshima and Nagasaki bombings. The true ideals of the Olympic spirit must not be subverted for partisan or propaganda use to distract from the continuing and unresolved human and environmental impacts of the Fukushima crisis.